内申点と合格点の探求 ~何点必要か?確認編

 10月も後半となり、いよいよ都立試験の内申点が決まる学期末テストが近づいてきました。
都立高校の調査書点の対象となるのは、3年生の2学期の内申点のみですから、泣いても笑ってもこれが最後のチャンスです。
ただ、入試で採用される内申点は2学期の数字ですが、この点数は2学期の期末試験の結果だけで決まるわけではないようです。昨年まで通った区立中学校の説明では、少なくとも2学期の中間テストの結果も加味されます。ですから、先のテストで良い結果の君はそのままに、ミスした君は挽回できるようしっかり準備したいものです。

ところで、この「都立高校入試の対象内申点は3年生2学期の数字」というルールは、都立高校入試要綱等には謳われていないようです。どこで規定されているのでしょう?
教育委員会が発表する公の資料をご存知の方がありましたら、ぜひお知らせください。

さて今回は、ボーダーラインの検証から引続き、  

合格点を確保するために、

・受験学力上位の生徒にとっては、内申点は最低何点必要なのか?

・内申点上位の受験生にとっては、学力試験は最低何点取ればよいのか?

2016年度 日比谷高校合格点ボーダー検証 - 日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

 君が気になるこの点について考えたいと思います。

 

内申点からみる学力検査合格点

 まずは内申点に応じた、合格に必要となる試験の点数を考えてみてみましょう。
具体例として、前回検証した直近の平成28年度入試結果を参照します。

尚、入試合格点については学校側が公表していないため、ここでお知らせする情報は、あくまで学校が発表した平均点に基づいて算出した、本サイトの想定参考値である点を予めご理解いただいた上でご覧ください。 

平成28年度の日比谷高校合格ボーダーラインは、検証値ですが以下の通りです。

1)試験得点 = 男子514/女子488点
2)調査書点 = 男子276/女子284点

1)および2)より、

【男子】514 + 276 = 790点
【女子】488 + 284 = 772点

ということになります。

2016年度 日比谷高校合格点ボーダー検証 - 日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

 

合格に求められる試験の点数は、合格ボーダーから調査書点を引けばいいわけです。
ここでは分かりやすいように、5教科500点満点に戻して表示します。
では早速見てみましょう。

男子必要学力検査点

 女子必要学力検査点

はい出ました。今回は男女別です。
そして実技が苦手な君向けに、4教科オール2の8点台まで表示してみました。

この一覧情報はあくまで平成28年度入試における想定得点ですので、平成29年度以降の入試にそのまま通用するものではありません
平均点が上がれば一覧の値も上がりますし、逆に下がれば下がります。毎年試験問題も受験者も異なるため、内申点と学力検査点の固定値というものはありません。

表の見方としては、以下の通りです。

  • 階段状の男子緑線および女子赤線は、それぞれの平均内申点の参考となる素内申41および42点のライン。 
  • 左上の黄色のマスは、学力検査平均点以下でも合格可能な範囲、つまり内申点がプラスに働く範囲。
  • 破線は素内申40の参考ライン。
  • グレーの1点鎖線は、素内申36(平均オール4)となる参考ライン。
  • グレーの2点鎖線は素内申30のライン。
  • 右下の鶯色および桜色のマスは、試験400点以上、つまり1科目平均80点以上が合格圏となる範囲。
  • さらに右下の濃いマスは、試験450点、つまり1教科平均90点以上合格の範囲。

具体的には、例えば男子の場合、
内申満点45の受験生(一覧の一番左上)は、学力テスト5教科の合計が350点以上あれば合格圏内という意味です。黄色のマス内にあるので、試験当日多少のミスがあって、平均点(367.1点)より17点低くても合格可能です。

また、受験者平均上にある素内申41(5教科24、4教科17の場合)の男子の受験生は、試験で374点以上取れば合格となることを示しています。

ここまで読んでもよく分からない方は、まずは以下のリンクから調査書点算出の基本ルールを把握した後にお戻りください。 

表の見方としては、
横軸が主要5科目(英数国理社)の素内申合計点(5科x5=最大25)
縦軸が4科目(音美体技)の素内申合計点(4科x5=最大20)
交わった個所が、学力試験に加算される調査書点 階段状の破線は、素内申40点となる参考ラインです

内申点と合格点の探求 ~導入編 - 日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

 
さて、この合格点一覧を見てどうお感じになるでしょうか?

個人的な第一印象としては、内申点が有利に働く範囲の少なさです。
単純な素内申点や換算内申点の絶対値だけで比較しても、あまり意味がないことが視覚的によく理解できます。
素内申が平均点以上あっても、4教科内申次第ではビハインドが生じるのです。

表中の数字は実際の運用点数と比較すると、多少のずれがあるでしょう。
しかし都立入試を経験した保護者の立場からすると、多少の誤差はあるにしても、志望校の選択や合否の判断材料となる情報は、何であっても喉から手が出るほど欲しいものだと思うのです。都立の情報は、ネット上にもあまり有効なものがありません。

特に、内申点に不安を抱えた受験生にとっては、暗中模索の中で漠然と勉強し、同時に志望校を選択しなければならない状況と比較すれば、自分の置かれた状況を知ることで、気持ちも新たに効果的な受験目標を立て、合格を目指す有効な情報となるではないでしょうか。

それが、このように踏み込んだ得点情報を提供する意味であり、全体と自分の立ち位置を一目で把握して比較検討できるように、本ブログオリジナルとなる内申点マトリクス表を作成しているのです。

ところでマトリクス内の数字は、内申点と合格点に対応するエクセル計算式の結果を表示していますので、合格点を変えればすぐに結果が反映されるように作ってあります。本当は、エクセルデータそのものをお渡しできるとよいのですが、保存領域がないため残念ながらできません。ご了承ください。

では次から、一覧の情報を使って様々検証してみましょう。


学力最上位層にとっての内申点

 一覧を見て分かることは、2016年入試において、当日の試験で400点(8割)を獲得すれば、内申点は男子で33~38点、女子で31~35点でも合格圏内であっただろうという事実です。

この年の試験に臨んだわが子の場合、この表の結果に基づけば、結果的に素内申が30あれば合格圏内にあったことが今回初めて理解できました。
こうして結果が明らかとなれば、合格発表当日まで受かるかどうかドキドキ心配した日々は何だったのだろうという感じですが、情報がないというのはそういうことです


開成や慶応女子、国立附属高校に合格するレベルにある君にとっては、毎年難易度が上下するとはいえ、当日の試験で400点を確保するのは現実的な目標の範囲内だと思いますので、オール4(表中の一点鎖線)程度の内申点があれば、日比谷合格は十分に達成可能な目標にあるといえるでしょう。

5教科が25点満点に近い内申があるのであれば、体育や音楽の苦手な君も、実技4教科で2を取らないよう日々努力することが、地味ですが非常に重要な課題ということになります。

ただし学校の進学指導では、日比谷高校志望の場合、素内申40を割るような場合は志望校変更の指導が入るかもしれません。どれほど日頃の実力があっても、体調不良や試験当日のミスにより、内申点不足が致命傷になるためです。

ただし、家庭の事情で絶対都立に入学しないといけないという制限がなく、不合格を容認してでも日比谷に入りたい、という強い意志を持つ学力最上位層にとっては、素内申30台をもってすれば検討可能な目標であるといえるのではないでしょうか。

ですから学力上位の君は、内申が今一つであっても、都立トップ校は無理だと初めからあきらめずに、内申マトリクス上のどのマスを狙うのか、目標を定めて4教科対策を行うというのが現実的な対応ではないでしょうか。

 

内申点上位層にとっての学力試験

 では、内申点は高い半面、学力試験の方はあまり自信がないという受験生はどうでしょう。特に、女子に多い傾向ではないでしょうか。

第一印象としてお伝えした通り、内申点がプラスに働く黄色いマスの範囲は案外小さいということが分かります。素内申が受験者平均以上にある場合でも、実技4科目が低い場合には出遅れていると認識することが必要です。

調査書点をアドバンテージとしておくためには、4教科については満点の20点、または1教科4の19点以上は獲得しておく必要があるでしょう。

そしてたとえ内申が満点の45であったとしても、試験当日のボーナス点は10~20点程度しかない事を認識しておく必要があります。
内申点が高い君であっても、試験の得点が平均点を割るようでは合格できるとは限りませんから、特定の科目に絞って突出させる以上に、受験平均点を常に上回るような安定した学力を身に着けることが必要となります。
理社は標準的なレベルの共通問題ですから、ここでしっかり点を稼ぐことは大切です。

さて、内申点の影響をさらに理解しやすくするために、先の学力検査得点一覧を合格点からの差異に置き換えた表を作ってみました。端数処理の都合上、±1点程度の誤差が生じる箇所がありますが、全体の状況を把握するための情報ですので、細部はあまり気にせずにご覧ください。

男子試験平均点差異

 

女子試験平均点差異

 
見方としては、表中のプラスの数字が合格点からのビハインド、つまり合格するために受験者平均点に上乗せする必要のある点数です。黄色のマスのマイナスは、逆にアドバンテージとして働くボーナス点です。

こうして見ると、内申満点であっても、試験の点では10~20点程のアドバンテージしかないということが視覚的にはっきり認識できます。
多くの受験生がこの平均点±10~20点でしのぎを削っているのです。

そして男女とも、まさに黄色のマスと試験400点のカラーのマスに挟まれた、合格点からのビハインドが10点程度の範囲にある、男子でいえば素内申41~39、女子は42~40程度の白いマスのエリアに内申点がある受験生は、おそらく受験生の母集団の最も多い、当日のテストの1点の差で合否が変わる激戦区にあるといえるでしょう。
そしてその下の白いマスに位置する受験生も、試験当日のテストでの逆転を狙って挑戦してきます。

ここに位置する受験生は、当日試験の結果が平均点では合格できませんから、学力を伸ばして安定させることと同時に、特に実技4教科の内申点をできる限り多く確保しておくことが受験を優位に進めることに繋がります。
期末テストに向けて、改めてどこに重点を置くべきか、中間テストの結果と合わせて改めて確認することにも意味があるのではないでしょうか。


特別選考枠は誰を救ったのか?

 今回は、内申点と合格に必要な学力検査の得点の関係についてみてきましたが、ここで一つ大いに気になることが残っています。

それは、平成27年度で廃止された、特別選考枠が救った受験生の立ち位置です。特別枠とは、内申点に関わらず、1割程度の試験の高得点者が合格となる仕組みです。

これまで見てきたように、学力最上位の受験生であれば、内申点30そこそこで十分合格できる可能性が残されていますから、大部分の対象者は特別枠を利用するまでもなく合格圏に達すると思うのです。
5教科が偏りなく高得点で、かつ合格点に達しないほど低い内申点の持ち主というのはどういう受験生でしょう?

この点は来年度以降の受験生には直接関係のない話ですが、少し気になるところですので、また別の機会に検証できればと思います。特別選考枠に詳しい方がいらっしゃいましたら、当時の選考ルールなどお知らせいただくと助かります。

さて今回お伝えした情報により、闇に包まれた内申点の謎に対する君の迷いやもやもやが多少なりとも晴れ、日比谷合格に向けた後半戦の力になれば幸いです。
ではまた次回。

 

更に上がった2017年度合格ボーダーの検証 

 

本記事のベースとなる平成28年入試に迫る