内申点45なら推薦入試を受けるべきか?

2020年1月3日更新:

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日比谷高校推薦選抜における評価の観点

 都立推薦入試出願直前。

早い時期から特別な対策を行ってきた家庭を除いては、今でも推薦出願するかどうか迷っている家庭は少なくないでしょう。内申点が受験生母集団より高い場合、志望校を複数回受験できる機会を逃すのは勿体ないものです。

わが家は内申45の満点でしたが、結局推薦を受けませんでした。

しかし、受けないことを最終的に決定するまでには、1か月ほどの紆余曲折、家庭不和まで生じるほどの論争があったのです。

最終的になぜ見送ったのか、その点をお伝えすることで、未だ推薦出願を行うかどうか悩めるご家庭への受験判断の参考になればと思います。

 

推薦受験で合格可能性は増えるか?

 今でこそ冷静でいられますが、当時は親としては冷静ではいられませんでした。

どうしても推薦を受けてほしいと思っていたからです。保護者の立場として推薦を受けてほしい理由は以下の通りでした。

親の意見
  • 推薦と学力試験の両方受ければ、合格する可能性が高まる
  • 男子の内申45は推薦にも有利
  • 海外駐在経験がアピールポイント
  • 部活代表もアピールポイント
  • 幼少より論理的思考に強く、弁も立つ

保護者としては実質的に日比谷高校一択という気持ちが強かったため、合格につながるチャンスは全てチャレンジするのがベストな選択と考えていました。

当日の出来に左右される学力試験一発勝負は避けて、入試に2回挑戦できるのは非常に魅力的だと感じました。

1年生の頃から5教科9教科共に継続的に成績が良く、中学校側の判断としても推薦を反対されることもまず考えられない状況です。

特に男子の場合は、内申が45点に満たない生徒も多く推薦を受けるだろうという状況もあり、受験チャンスをみすみす手放すのは余りにもったいないという、ちょっと卑しい気持ちがあったことも事実です。

ところが親の想いとは裏腹に、わが子の考えは全く違ったようです。

推薦は絶対受けたくないと言うのです。

子供の意見
  • 推薦準備に時間が取られ、逆に学力試験に合格する可能性は下がる
  • 内申45の推薦受験生は珍しくない
  • 日比谷の場合、海外経験者は特別な存在ではない
  • 部活の部長や生徒会長も普通にいる
  • 何より推薦で受かる気がしない

推薦入試に合格しようとすれば、小論文など結構な時間をかけて対策を講じる必要があるわけです。

これまで推薦の対策などしていないのですから、本番までに対応が求められます。その分、5教科向けの勉強時間が削られるため、学力試験への影響も少なくない。

結果的に推薦と学力試験の両方受ける方が、合格の可能性は逆に低くなるという判断です。

時間をかけて対策しても、合格するか不確定なものであるから気が乗らない。それよりは、学力試験でしっかり点数が取れるようにしたい、ということです。

整理すると、推薦と学力試験について、

  • 親: 両方受けると合格可能性が上がる
  • 子: 両方受けると合格可能性は下がる

感じ方が全く違います。

要するに、二兎を追うもの一兎をも得ず、に陥る可能性があるというわけです。

個人的にも、「もろ矢を持つべからず」の徒然草の言葉は学生の頃より今も胸に響く教えでしたので、言っていることは分からなくもありません。

ただ親としては、長い間わが子を見守ってきた中での適正判断も含めて、推薦に受かる可能性はそれなりに高いという気持ちもあり、推薦を受験できる権利的なものを手放す気持ちにはどうしても至らないのです。

親子の意見の対立のため、しばらく家庭内での険悪な雰囲気が続きました。この件で出張先から妻に何度も連絡したことを、今でも覚えています。

 

学力を試したいという強い気持ち

 学校に推薦を申し入れるかどうか、親子間の不協和音が続く中で、愚息が交換取引として言った言葉に、当時軽いショックを覚えました。

推薦を受けるから、そのかわり開成も受験させて欲しい

ん?

父親として、息子に開成高校を受けたいという気持ちがあるとは、年末に近づくその時まで全く知らなかったのです。

寝耳に水とはこのことです。

学校での成績は良いにしても、中学受験も経験しておらず、高校受験用に塾には通いましたが、初めから日比谷高校第一志望と明確に意思表示しています。しかも中3の10月末にやっと部活を卒業したばかりですから、都立の受験対策を超えた勉強に真剣に取り組んでいるとは夢にも思っていなかったのです。 

わが子は3年生から、塾の平日の英数の授業に加え、本人の希望で、日曜には各校から生徒が集まる上位の選抜特訓クラスに通うようになっていました。そしてそのレールに乗っていつの間にか駿台模試でも名前が載るように学力が上がり、本人も自分の力を試したいと思うようになっていたのです。

詳細は飛ばして結論だけ記載すると、妻の援護もあり、結局は本人の希望通り、推薦は受けずに開成は受けるということになったのでした。

なんだか母子と塾とにうまく丸め込まれたようで納得のいかない気持ちもありましたが、日比谷は絶対受かるから、という愚息の言葉を信じて任せることにしたのです。

結局のところ、推薦に受かる気がしないという気持ちは本心だったのでしょうが、それ以上に、1年間一生懸命続けた受験勉強に対する自分の到達点を確かめたいという強い気持ちがあったようなのです。

確かに側で見ていて、特に部活終了後の数か月は本当によく勉強していたと思います。日比谷生が星陵祭後に、頭を切り替えて集中するのと同じような経験だと思います。

 

子の前向きな志を尊重する大切さ

 結果的に日比谷にも開成にも合格したので言えることですが、わが家の場合は推薦を見送ったことは吉と出たように思います。

推薦の合格発表は、私立の入試解禁前ですから、合格するとその時点で受験は終了。
他のどの学校も受験できないのです。

日比谷に合格こそすれ、自分の学力を見定めずに終わることへの抵抗感、というよりは1年必死で受験に取り組んできた自分の力を試したいという、ある意味で純粋で前向きな動機があったのです。

学力試験で日比谷に合格し、開成をはじめ幾つかの有名難関高校にも合格したことで、わが子も強い達成感と受験勉強に立ち向かう自信がついたようです。

親としては、学校が推薦受験を了承し、また実際に受かる可能性は高いと判断しているのですから、その権利を放棄して一般入試一発に入学の是非を求めるというのは穏やかな気持ちではありません。

ただ、子供の意思に反してまで、強制的に親の考えを押し付けて推薦入試で合格していたとしても、子供にとってはある種の喪失感が残ることになったかもしれません。
あるいはモチベーションが下がり、推薦どころか学力試験でもミスを連発して合格に手が届かないということがあったかもしれません。

いずれにしても、子供が目指した自らのゴールを信じ見守った経験は、親子が自立する過程としても大きな一歩になったように思います。

こうした親子の葛藤や、子供が自らの進路を自ら考え選択し、結果に責任を負うという人生初のイベントを15歳で経験するということは、親が主体の中学受験とは全く異なる、高校受験の長所なのかもしれません。

 

推薦を受けるべき君へ   

 推薦入試を受けようと考える君の受験動機は何でしょう?

  • どうしても日比谷に入りたいので2回受験したい
  • 内申の割に学力は高くないが、推薦なら合格できる
  • 思いがけず内申45を取ってしまった
  • 塾や親、学校の先生に勧められて

もちろん、人それぞれ様々な背景を持ち、それぞれの理由があると思います。

本記事で紹介した例は、内申も学力も高い受験生の判断の一例に過ぎないのですから、すべての受験生に当てはまるわけではありません。

ただ、我が家の例を状況が異なる他のご家庭にも適用するならば、

  • 子供の意志
  • 推薦入試準備の状況
  • 学力試験への影響

このあたりが大きく関わりそうです。

受験でもスポーツでも、本人のモチベーションが行動結果に大きく影響を及ぼすことは明らかです。

君自身がどうしても推薦を受けたいと思うのであれば、その後の学力試験や、その先の将来への影響を考えると受けるべきだと思います。

また、小論文の特訓など推薦入試の準備をしてきたにも関わらず、内申点が想定していたよりも低い場合でも、自分が納得できる理由が見つからないのであれば、学校や親を説得して受けるべきではないでしょうか。

こうした場合は、推薦の結果に関わらず、受けないことでのその後のモチベーションの低下や将来的な悪影響が懸念されるからです。

わが家とは反対に、推薦対策時間分を学力試験対策に回しても、逆に集中できずに良い結果につながらない可能性もあります。

そして、推薦を受けると決めた君は、準備にも万全を尽くす事が必要でしょう。  

日比谷の推薦入試の設問については、 評価の観点に明記してある通り、与えられた与条件から導かれる結論を自分の考えで論理的に述べる、理社論文複合の適正検査型出題ですので、一定の練習を積んでおかないと、時間が足りない、あるいは与条件に関わらず一般的な解釈で回答してしまうという結果になりがちです。

元来内申点の高い受験生が集まる入試母集団ですから、小論文対策を行わず、面接頼りにとりあえず推薦を受けるということは通用しにくい試験といえるかもしれません。

推薦を受けるか受けないか、どのような状況であれ、もちろん最終的には本人とご家庭の責任に基づく判断となります。

日比谷高校への合格を勝ち取るために、推薦と学力試験、どちらの道を進むのが合理的な判断であるのか、そしてそれ以上に、受験生である君自身がどのような選択を望むのか、出願前の今こそ真剣に自分自身に問いかける必要がありそうです。

間もなく始まる推薦出願を前に、本心では受けたいのか受けたくないのか、残念な結果に終わってしまった場合に禍根を残さないためにも、改めて親子で本心を確認し合うことが大切ではないでしょうか。

結果にかかわらず、悔いの残らない受験選択となることを願っています。

ではまた次回。

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