日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

日比谷高校第一志望ながら、日比谷、開成、塾高のどこに入学すべきか、都立合格発表まで悩んだ父親が贈る、上をめざす君と家族を応援する徒然日記

日比谷か開成か?両方合格したらどちらを選ぶか

2017年11月26日更新:

f:id:mommapapa:20171126150053j:plain 写真出典:毎日新聞WEB版


開成高校合格の皆さん、おめでとうございます。

平成29年度の開成高校受験は大きな変化を迎えました。
出願者も受験者も例年より100人以上マイナスの約18%減、過去5年で初めて600人を下回り、受験倍率も初めて3倍を切りました。

目立った原因といえば、慶応義塾との競合の影響が大きいのでしょうか。
劇的な変化です。

そして、残念ながら合格に届かなかった君も、まずはお疲れさまでした。
もしかすると繰上げの連絡が届くかもしれませんし、来ない場合でも、開成合格のために真剣に受験に向かい合った君であれば、その受験勉強は決して無駄ではありません。

公立中学の君が開成高校を目指して勉強するということは、多くの場合どこかの塾にお世話になったのではないかと思います。そしてそれは、自分で気がついているかどうかに関わらず、要するにこの1年間、高校の学習範囲を先取りで勉強したということ。

だから都立高校志望の君であれば、どの高校に進もうとも、既に学習面ではスタートダッシュをしている状態ですから、この1年間の取組は決して無駄にはならないのです。

同時に、最後に残された都立高校の試験に対しても、全てが自校作成問題となる現在、内申点のマイナスを跳ね返す大いなるアドバンテージを持つことになるでしょう。

 

日比谷か開成か、悩める君へ

 開成高校の合格発表の12日以降、開成記事へのアクセスが急増しています。
日比谷高校をはじめとする都立進学重点校の試験までは残り10日。このまま開成高校に進学すべきか、都立を受けるべきかどうか悩んでいる受験生や保護者の方も多いのではないかと感じています。

そんな君の悩みを見越したかのように、実は今年1月末に、まさにその点についての驚くべき公開討論の記事がサンデー毎日より発表されています。

『初対談 日比谷・武内彰校長vs.開成・柳沢幸雄校長 両校に「合格」したら、どちらを選ぶ?』

この討論会は「毎日小学生新聞創刊80周年特別座談会」として企画されたものです。

それにしても、これ程直接的なテーマの公開討論会が企画されたこと自体も驚きですが、何よりも、学校の優劣比較に繋がりかねない直接的な題名の座談会に、武内校長と柳沢校長がよく登壇を了承したなという点に正直驚きます。

もしかすると主催者は、二人にはこのような内容ではなく、小学生を持つ保護者のために、広く教育や進学に関する話を聞かせてほしいという打診で誘い出したのではないかと疑ってしまう程の生々しいテーマです。

いずれにしても、日本における公立高校と私立一貫校を代表する両校長が、200人の保護者が見守る目の前でこのテーマについて直接言及するのですから見逃せません。

今回はこの驚くべき企画記事の内容を垣間見ながら、高校からの進学選択について考えてみたいと思います。

 

意外だった冒頭質問の結果

 この企画は本当に野心的で、参加者200人に異なる色のついたカードを持たせ、司会者の質問にどちらかの色で答えるという試みを行っています。

私が最も注目したのは、開始早々の質問です。

お子さんが両校に合格したら、どちらを選びますか。日比谷なら緑色、開成なら黄色を上げてください。」

両校長を前にして、いきなり剛直球ストレートの質問です。
これほど明確な二者択一の人気投票的な状況に晒される経験は、人生においてなかなかないのではないでしょうか。

もしかすると、紙面に掲載するために要素のみ抽出した結果そういう表現に校正されたのかもしれませんが、社会的な立場のある両校長を前にした遠慮のない進め方に、読者の方がやきもきします。このような状況に晒されて、二人の心中いくばかりかです。

この質問は、開始直後の冒頭質問、まだ対談が始まる前に参加者の立ち位置を確認するためのものでしょう。
ですから保護者一般の認識を表す貴重な結果です。


・・・半々くらいですね。」


私は正直この回答結果に驚きました。

小学生新聞を購読する家庭、しかもわざわざ今回の対談に参加する保護者というのは、教育に相当関心が高く、しかもそれなりの収入があると思われます。
多くの家庭が中学受験により中高一貫校を志望しているのではないでしょうか。

実際後半の質問では、3年制高校よりも中高一貫校がよいと答えた参加者が圧倒的多数です。

そのように中高一貫校を志向する家庭であっても、日比谷と開成の両方に合格した場合には、半数が日比谷高校にわが子を進学させようと考えている。
しかもこの結果は、参加した保護者が潜在的に抱く意見です。
中学受験を志向する家庭の中で、高校受験に臨むのであれば日比谷高校がベターと考えている家庭が半数存在することになります。

実際には参加者の大半は子供に高校受験をさせる気持ちはないし、現在小学生の子供がいる家庭ということは、第一子であれば30代が中心、第二子以降であれば30代後半から40代、上に兄弟がいる場合でも、都立高校の情報について詳しい保護者はそれほどいないと思われます。

何よりこの世代は、自分が物心ついた頃から開成が東大合格ナンバーワン。
都立は学校群制度がすっかり定着して、大学進学実績は私立が圧倒的優位の時代を過ごした、都立高校に対する評価の著しく低い世代のはず。

参加者のほとんどは、日比谷高校の東大合格者数が1桁があたり前の時代の高校生。
比較相手の開成は、学生時代から既に男子中学受験組の憧れの一つのはずです。

であるにも関わらず、半々に希望が別れるというのはいったいどういうことでしょう。
私は素直に、日比谷高校を選択する家庭がずいぶん多いなという驚きを覚えました。

 

社会的認知度が高まった都立改革

 半数の保護者が日比谷高校を選択した理由の一つは、いわゆる都立高校改革が、子供を持つ家庭を中心に、広く社会に認知された結果ということができると思います。
そのフラッグシップたる都立日比谷高校。

都立躍進に言及される際、日比谷高校に対しては必ず「復活」の文字が伴います。

かつての圧倒的な存在、大学に進学する学生自体が限られた時代にあって、現在の灘、麻布、開成、筑駒どのブランドよりも強力なアイコンだった事実が、小学生を持つまだ若い保護者にとっても一般的な認識として根付いてきたのでしょう。

日比谷高校が背負ってきた社会的使命や、全国の高校を代表する歴史的背景への評価も、学歴やブランド好きの若い世代の保護者への急速な認知と受入れを推し進める要因の一つとなったことと思います。

公立に子供を通わせるのは抵抗があるけど、日比谷ならいい。
そんな声なき声が聞こえてきそうな結果です。

若い親世代の意識も変わりつつある。
今回の冒頭質問の結果を見て、本当にそう実感しました。

個人的には都立でも私立でも、そして国立附属でも、好きな学校に行くのが一番良いと思います。どこが一番、という絶対的な評価などあるわけがありません。

日比谷高校が合う生徒もいれば、西高校がしっくりする生徒もいる。同様に開成高校の方が、また国立附属の方が合うという、志向の多様性は健全な感情です。

ただ、中学受験を経験しない場合でも、都立上位校に進学することで、自主自立を確保しながら中高一貫進学校に対する学習進度のキャッチアップとリベラルアーツを両立し、高校ブランド力の獲得を実現することが可能になった現在の状況は、都内の3/4を占める公立中学校の生徒にとっても社会にとっても喜ばしい状況だと思います。

本年度は東京大学50人超えの速報を皮切りに、本ブログの開設に共鳴するかのように7月辺りから、日比谷高校の復活を印象付ける大手メディアの記事が目立ちました。
そしてこの2月にも、何故だか2月4日には朝日新聞デジタル版での日比谷「復活」と題する記事が、昨日2月13日には都立西高校の特集記事が掲載されています。

この一年は、特に都立高校に対する前向きな認知度が、一気に社会全体に広まった年ではないかと感じています。

 

兄貴である武内校長、父親である柳沢校長

 それにしても今回の企画で少し残念な点は、せっかく日比谷と開成の両校長が同席しているにもかかわらず、二人が直接言葉を交わすことがないということです。

司会者の質問に二人がそれぞれの回答を返すという形式で進んだためか、お互い言葉も視線も合わせることがないような状況のように感じました。
滅多にない機会なので、直接対談する姿を見たかったと正直思います。

同じ都内の学校であっても、都立と私立の関係者が同席して、例えば大学入試改革に対する課題について一緒に協議したり、もっと広く意見交換するという機会は日頃から無いのでしょうか。
教育委員会は、そういうコミュニケーションの場を積極的に設けてもよいのではないかと思います。

いずれにしても日比谷の武内校長は、物事を数値化して評価・分析するとともに、自ら現場も取り仕切る代表取締役兼執行役員、生徒や教員を直接引っ張る兄貴タイプ。

開成の柳沢校長は、組織の進む方向性や教育理念を発信する会長兼代表取締役、生徒や教員を見守る父親タイプ、というような印象を持ちました。

この性質をよく表す質問があります。


「塾にはどの程度の人が通っていますか。」


武内校長:「3年生は1~2科目選んで通っている生徒が多いです。通塾している割合は3年79%、2年45%、1年25%です。」

柳沢校長:「塾は弱点の補強に利用できますが、最初から勉強の仕方を学ぶと良い結果を招きません。自分に適した勉強の仕方を見つけ出す努力が必要です...」

日比谷高校では、毎年生徒に対して様々なアンケートを集計していますが、武内校長はその結果を自ら把握、分析し、教師や生徒への指導に活用しているように思います。

柳沢校長は、分が悪いと感じて一般論を述べたのか、あるいは具体的な数字については把握していないための答弁か分かりませんが、質問に明確な回答を示してはいません。

これはどちらがいいという事ではなく、改革期にはリーダーシップを発揮して自ら組織を引っ張るキャプテンが必要であるし、評価の固まった安定期にはむしろ、大きく構えて大勢を見守る存在が必要だという事例でしょう。

そして校長のリーダーシップと共に、日比谷高校は東大京大での推薦入試の実施や大学入試改革に見られるような、新しい教育体系に向けた自己変革の途中にあると言えると思います。

先の記事で紹介した海外姉妹校の拡大推進など、目に見える変化がまだまだ続きそうな、春の気配が感じられます。

日比谷にわが子を通わせる親としては、短期的な大学合格実績による世間の評価がどうであれ、圧倒的な伝統と知名度を背景に、中高一貫進学校では実現が困難な、高校3年型に特化した充実した教育環境を、全国の公立高校に先駆けてこれからも提供し続けてほしいと思います。

 

新高入学はお得なコースなのか?

「開成は高校からの入学もあります。完全な中高一貫にする予定はありませんか。」

柳沢校長:「まったくありません...3年間で中高6年分を経験できる生徒にとって非常にお得なコースですから、やめるつもりは全くありません。」

我が家は昨年開成合格後に入学金を納入していますから、開成高校に入学した際の情報も、都立合格発表まで真剣に調べました。

ですから、柳沢校長のこの「3年間で6年分を経験できる”お得”」という言葉が何を指しているのか気になります。
発言を聞いても、ピンとくるものがありませんでした。

中学校の行事はもちろん共有できない訳ですから、そういう意味ではなさそうです。
「卒業時には、教員でも新高生か旧高生かを区別できなくなります。」とも発言していますから、卒業時には中学入学組と同化しているという事かなと理解しました。
あるいは学力面でのキャッチアップのことかもしれません。

ただし、別のインタビューで柳沢校長は、以下のようにも語っています。

開成で過ごす6年間で彼らの「世界一の能力」が培われると感じています。

初めて参加する中学1年生も中学2年生の振る舞いをみて学びます。とにかく「先輩の背中を見て学ぶ」という「自主性」が6年間を通して身についていく。

開成では意図的に高校3年生と中学1年生が交流する機会を多く設けています。
開成の学生は世界一、ハーバードよりも優秀 | 注目の中高一貫校 校長が語る我が校のDNA | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準


この4ページに渡るインタビュー記事からは、開成の人間形成はやはり6年間が基本。
特に中学での3年間の礎の大切さを感じます。

素晴らしい環境だけれど、高校から参加するのは本当に賢い選択なのか?
高校からの入学を考える保護者にとっては、中高一貫校の優れた点をアピールする程、冷静な疑問や迷いを生じます。

そして開成OB代表の次の言葉は、開成卒業生の正直な気持ちを語っているでしょう。

「開成は高校からも入れますが、基本的には中高一貫の男子校です。」

返事は『おう』だ!先輩の洗礼 開成、運動会の伝統|出世ナビ|NIKKEI STYLE


開成学園は得難い教育環境と仲間たちが待ち受ける学校だと思いますが、高校から進学するのであれば、別の選択肢でも惜しくはない。
そう感じます。

最終的には、親の世間に対する面子だとか第三者からの評価だとか、誰かのために進学するのではありませんから、君の思う通りの道を選択すればよいと思います。

女子であれば、慶応女子との間で揺れ動く気持ちが生じるのではないでしょうか。

開成にしても、慶応女子にしても、そしてその他の私立大学附属や国立附属にしても、どこを選んでも一長一短。
それぞれ良さも悪さもあるのですし、これらの高校に合格している家庭の多くは、私立無償化とは関係のない世帯だろうと思いますから、まずは君の素直な希望を親にぶつければいいと、そう思います。


そして2017年11月26日。
日比谷・武内校長と開成・柳沢校長、そして学芸大附属高校の改革を任された大野校長によるパネルディスカッションが行われました。日本を代表する私立、国立、公立高校の3校長が、お互いを尊重しながら日本の中高大の教育を語る姿が印象的でした。

行きたい学校に行くのが一番だと、改めて実感する機会となりました。
君自身の選択を信じることが最良の選択に違いありません。

ではまた次回

 

本記事の元となるサンデー毎日 日比谷 vs 開成

高校からの開成入学の実態に迫る 

公立の底力の秘密:進化する日比谷高校の取組み