日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

日比谷高校第一志望ながら、日比谷、開成、塾高のどこに入学すべきか、都立合格発表まで悩んだ父親が贈る、上をめざす君と家族を応援する徒然日記

共通テストの記述問題は誰が採点するのか? ~2020年大学入試改革を読む

2017年11月13日更新:

 5月の改革中間発表から半年後となる11月13日より、大学共通テストのプレテストが始まりました。試行を繰り返してテストの中身や運用体制がどのように変わっていくのか、まだまだ目が離せません。
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 5月16日付で、文部科学省から高大接続改革の中間報告が発表されました。
マスコミでも、このニュースが大きく取り上げられているのは周知の通りです。

今回の改革は、「高校教育改革」、「大学入試改革」、「大学教育改革」の3本柱から成るものですが、特に世間の関心は、『記述問題の導入』や『民間英語検定の活用』など、共通テストの実施内容に集中しているように思います。

現在中学生の君だけでなく、浪人不安の高校生も、中学受験を考える小学生も、そしてどの保護者の方も、自らが大学入試を迎える際にどんな試験や制度になるのか、誰もが大なり小なり不安を抱えているはず。

今回の改革の主旨を一言にまとめると、

 『学習指導要領に基づいて高校でちゃんと勉強してね』

ということだと思います。

そしてそれが端的に表れている課目が「国語」です。
改革検討委員会の国語に対する並々ならぬ熱い思いが、文部科学省の様々な公式資料から伝わってきます。

そこで今回は、国語の記述問題導入の経緯を中心に、2020年大学入試改革について考えたいと思います。

 

大学入試改革の論点整理

 入試改革全体を抑えるために、先に改革全体を俯瞰します。

いろいろな情報が交錯する現状ですが、情報の渦の中で必要以上の不安に陥ったり迷子にならないよう、実際の運用を確認する際には、まずは以下の点に留意が必要です。

 1)2020年の実施内容は確定していない
 2)平成29年5月16日以前の情報は無視する

特に2)は大切で、今回発表された実施案に対して「骨抜き」とか「現実路線」という言葉が使われるように、古い情報になればなるほど理想が先行し、実際に行われる制度とは乖離している場合が多いです。

例えば、共通テストは複数回受験が可能なので、中高一貫校に有利で公立高校に不利という情報がありましたが、今回の実施案からは共通テストは1月中旬の1回限り、現状のセンター試験と同じ運用となりました。

そんな中、大学入試改革の中身を知る上で、大学共通テストに係る現在の状況を分かりやすく端的に示した一覧が存在します。
個人的には、文部科学省が作成した膨大な資料の中で、この一覧が現在一番分かり易いものだと思いますので、まずはご覧ください。

 

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この表は、5月16日付の文科省が発表した、「高大接続改革の進捗状況について」の中の以下の資料の2枚目に掲載があります。 

高大接続改革(大学入学者選抜改革)

以降は、この資料に基づいて制度改革の内容を確認していきます。

マスコミ、学校、塾、SNS、口コミや井戸端会議まで、現在様々な経路でこの大学入試改革に関する情報が届き戸惑う方が多いと思いますが、必要以上の不安に陥らないためにも、まずは上記の情報をしっかり把握して、それ以外の情報は全て古いか誰かの想像上の世界だと判断するのがよいと思います。

現状では、大学入試改革や新テストについて検索すると、2017年5月16日以前の情報が多くヒットしますので、日付による情報の取捨選択は重要です。

細かい点は気にせずに極端な言い方をすれば、ここに書かれた内容以外は現在のセンター試験の運用と大差ない、と言えるでしょう。

それでは先の表に記載された今後の課題について、個別に見てみましょう。

 

共通テスト記述問題の導入

 共通テストの今後の課題として、表一覧には以下の3点が挙げられています。

 1)採点の「民間事業者」の活用

 2)国語・数学で記述は3問程度

 3)平成36年度から他教科の記述を検討

 

記述問題の採点を行うのは誰か?

 入試改革の目玉の一つとなっている記述式問題ですが、特に国語の記述をどう採点するか、というのは大きな課題です。先の表には、

採点には「民間事業者」を活用する。

と書かれています。

同資料『6.記述式問題の実施方法等』には、

多数の受検者の答案を短期間で正確に採点するため、その能力を有する民間事業者を有効に活用する

採点については、処理能力や信頼性、実績を有する民間事業者を活用する

と記載があります。

そして今回発表された資料の一つに、『記述式問題のモデル問題例』があります。
例えば国語のモデル問題を見ると、記述式解答の字数については、

<モデル問題例1>

 問1.40字以内で述べよ
 問2.35字以内で述べよ
 問3.20字以内で述べよ
 問4.合計80字以上120字以内で述べよ

<モデル問題例2>

 問1.40字以内で述べよ
 問2.120字以内で述べること
 問3.50字以内で述べよ

となっています。

また『10.実施期日等』には、

成績提供時期については、現行の1月末から2月初旬頃から、記述式問題のプレテスト等を踏まえ、1週間程度遅らせる方向で検討する

とあります。

現在のセンター試験の受験者数は57万人程度。
新しい共通テストの利用について、より多くの大学に求めるという改革の趣旨からすると、受験生全体で60万人程度。
60万人の上記の記述問題を5営業日で公正に採点するわけですから、やはり能力的にもキャパ的にも相当なポテンシャルが必要となります。 


採点はあの人が行う(と思う)

 今までの情報を見て何かピンときませんか?
私は今回の記述採点に関する前提条件を見た際に、こうした採点を得意とする人々がいることに気づきました。

そう、「赤ペン先生」です。

例えば最大手のベネッセの擁する採点能力は以下の通りです。

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 出典:ベネッセホールディングスHPより抜粋


中学生以下の会員が多数とはいえ、245万人の添削を1ヶ月程度で対応可能であれば、60万人分の共通問題レベルの記述解答3問程度を1週間で対応するのは現実的です。

同社の能力を総動員した場合、赤ペン先生一人当たり50人(60万/1.2万)の受験者分を1週間、1日10人分添削するのは現実的です。

実際には赤ペン先生の内、どの程度を動員するのが適切か分かりませんが、いずれにしても現行のセンター試験+1週間での採点は、非現実的な話ではなさそうです。

実際に文部科学省は、

『記述式問題採点業務に関する技術アドバイザリー業務』について、

<国語>

  • 教育測定研究所
  • ベネッセコーポレーション

<数学>

  • 教育測定研究所
  • 内田洋行

各社とそれぞれ契約してモニター調査を実施していますから、まさに国語の記述採点はベネッセの添削対応能力が基準だと考えられます。
トライアルを実際に対応しているのは赤ペン先生かどうか分かりませんが、60万人分の処理をまとめて行うのは、その辺りしかないように思います。

2020年の実施段階では、他社も受注に向けて手を挙げることも考えられますが、いずれにしても公正を確保しながら、短期間に大量に対応できる能力が求められます。

それにしても内田洋行に対しては、オフィス機器のイメージしかありませんでしたが、IR情報を確認してみると、現在は「教育・自治体関連事業」、「オフィス関連事業」、「情報関連事業」の3セグメントの売上高がそれぞれ同じなんですね。

しかも教育と情報分野が、赤字続きのオフィス事業をよそ目に稼いでいます。
同社はいつの間にか、ハード事業からソフト事業に華麗な転換を図っていたのですね。
教育事業って利益が出やすいのでしょうか。

それはさておき、確かにWeb上では、内田洋行社の中学生テスト採点のアルバイト情報が多数ヒットしますので、ベネッセの規模には届かないながらも、採点事業は大々的に手がけているようです。

大学共通テスト実施の際も、アルバイトの方が採点に参加するのでしょうか?
受験側の感情としては、専門性の高い方に適切に対応してほしいです。

ちなみに、記述問題採点アドバイザリー業務に関する落札価格は、

<国語>

  • 教育測定研究所: 4,687,200円
  • ベネッセ: 7,242,480円

<数学>

  • 教育測定研究所: 4,687,200円
  • 内田洋行: 5,400,000円

となっています。
以下から落札情報が確認できます。

 アドバイザリー業務落札情報(国語)

 アドバイザリー業務落札情報(数学)

総合評価方式で、教育測定研究所は価格面の評価、ベネッセは技術力の評価がそれぞれ高く、内田洋行は中間的な評価となっています。
提案書の中身は分かりませんので、同一業務に対する応札価格かは分かりません。
ベネ社は学校・政府系の業務実績も多く、ベネッセ駿台記述模試に見られる大学受験事業まで大規模全方位的に事業を展開していますから、発注者側からすると抜群の技術力、安定感があるのでしょうか。

アドバイザリー業務の主な内容は、

  • 記述式試作問題作成
  • 採点基準作成
  • モニター採点業務

となっていますから、現時点では共通テストの記述式問題に関し、モデル問題の作成から採点まで、これらの企業が深くかかわっていることになります。

 

そもそも何故記述問題なのか?

 新テストへの切替に際し、記述式試験の導入に対しては検討委員会の並々ならぬ導入熱意を感じます。
それはなぜでしょう?

その答えを求める前に、まずは一つのデータをご覧ください。

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この一覧は、前回平成28年8月31日付の中間報告で発表された、国立大学二次試験における記述式問題の出題状況です。

私はこれを見て非常に驚いたのですが、現在は国立大学の入試においてでさえ、国語が課されていない学部が大半です。

国立前期試験において、7割の学部で国語を選択せずに合格できるのです。
多くが理系学科であるかもしれませんが、我々親世代の国立大学二次試験では、理系であっても前期試験で英・数・国が免除されるという感覚は全くありませんでした。
最低でも5科目入試が基本。
しかも記述式が当たり前の試験です。

いつの間に、こんなに試験数が少なくなってしまったのでしょうか?

現状、私立大学を中心に、推薦、AO入試では、学力試験を全く受けなくても合格可能な仕組みを多くの大学が採用しています。

試験を課す場合でも、センター試験を中心とした選択式問題。
少ない科目かつ知識偏重型の勉強で大学に入学する高校生が多いのです。

高大接続改革を国公私を通じて推進するため、、、特に記述式問題を導入し、より多くの受検者に課すことで、高等学校に対し、「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善を促していく大きなメッセージになる。

先の資料に書かれた、「記述式問題の導入意義」にはこう謳われています。

口うるさい大人たちに、楽せずもっと勉強しろと言わせるスキを、昨今の高校生は与えてしまったのかもしれません。
あるいは大学の安易な商業化に対する、大人たちの反省なのかもしれません。

、、、すべての国立大学受検者に、個別試験で論理的思考力・判断力・表現力等を評価する高度な記述式試験を課すことを目指す

いずれにしても今後は、詰込み型ではない、いわゆる21世紀型の教育が、大学入試の改訂を機に本格化するのではないでしょうか。

 

日比谷高校と大学共通テスト

 今後の大学入試改革に対して、日比谷高校はどのように対応していくのでしょうか?

保護者の目から見ると、正直日比谷高校に通う生徒にとっては、英語の4技能強化も含めて、大学共通テストや、国立二次試験での記述の増加は通常授業で十分対策になっているように思います。

冒頭に見た、高大接続改革のまとめ一覧の冒頭には、

受験生の「学力の3要素」について、多面的・総合的に評価する入試に転換
 ①知識・技能
 ②思考力・判断力・表現力
 ③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度 

 とあります。

一方、日比谷高校平成29年度の学力試験における『出題基本方針』には、次の記載があります。

出題に当たっては、
 ①基礎的・基本的な知識及び技能の定着や、
 ②思考力、判断力、表現力などをみるとともに、
 ③体験的な学習や問題解決的な学習などの成果もみる
ことができるようにする。


表現の異なる点もありますが、意味するところは全く同じです。
つまり、日比谷高校の入学試験は、高大接続改革が求める能力試験と同じ考えに基づいて作成されているということです。

そしてこれは、日比谷だけでなくグループ作成問題を課す進学指導重点校すべてに当てはまる方針です。

つまり、都立進学重点校を目指す君は、高校入試を通して、2020年の大学共通テストや国立二次試験の事前対策を行っていることになるのです。

興味が湧くのは、来年度平成30年入試より復活する自校作成問題が、どの程度この共通テストを意識してくるかということ。
この点が、前回平成25年入試まで続いた自校作成問題との、出題形式や内容の相違になるかもしれません。

 

日比谷の小論文は、共通テスト21世紀型記述問題の先取り

 5月16日に公表された、共通テスト記述式問題の国語のモデル問題例を見て感じたことは、これは日比谷推進入試の小論文の設問形式と同じだな、ということ。

「大学入学共通テスト実施方針(案)」によると、国語の記述問題の評価すべき能力・問題類型は、

多様な文章や図表などをもとに、複数の情報を統合し構造化して考えをまとめたり、
その過程や結果について、相手が正確に理解できるよう根拠に基づいて論述したりする思考力・判断力・表現力を評価する。

とあります。
これに対し、日比谷高校の小論文の評価の観点は、

・出題の意図を的確に把握する力
・資料を正しく分析し、考察する力
・根拠を明確にして自分の意見を的確に表現する力
・文章を論理的に構成する力


どちらも、複数の資料や図表、文章から読み取ることができる情報について、考えをまとめる問題、設問の意図はやはり全く同じです。
異なるのは、日比谷の小論文の方が、500字前後と記述文字数が圧倒的に多いこと。

 小論文と聞くと、自分自身の将来について語ったり、抽象的な事象について自由に述べるようなイメージがある、、、、、日比谷の小論文は、資料から客観的事実を読み取って論理を展開していくという、どちらかというと社会科学的な設問なんです。
推薦入試激変!平成29年配点変更あり - 日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

 実際、日比谷の小論文試験の出題形式は、大学共通テストの国語における記述問題設問形式と非常によく似ているのです。

むしろ日比谷高校の小論文の設問にこそ、試験時間や採点能力の制約から諦めざるを得ない、大学入試改革によって共通テストで実施したかった21世紀型記述問題の原型があるといえるでしょう。

 

理社の自校作成問題導入はいつか?

 大学共通テストの記述問題は、平成32年のスタート時点では国語・数学の2教科のみとなっていますが、平成36年度からの理科・社会での記述導入が検討されています。

こうなると、都立重点校にとっては、高校入学試験における記述問題の先取り実施を行いたくなるもの。

外部有識者の意見
社会と理科も自校作成を認めるといった、各学校のニーズに応じた自校作成体制を作る必要もある。

平成30年度 自校作成問題復活に見る、都立高校改革の行く先 - 日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

従来であれば、理化、社会の自校作成化の導入意義についての社会的根拠がはっきりしませんでしたが、高大接続改革においては、むしろ自然な流れ。

個人的には、平成33年、共通テストにおける理社の記述問題が始まる3年前までには、都立重点校における理社の自校作成化が実現しているのではないかと思います。
あくまで根拠のない、個人的な想像ですが。

 

大学入試改革は、公立高校に不利にはならない

 最後に、都立高校に進学を希望する君の不安の一つである、大学入試改革は中高一貫校に有利で都立をはじめとする公立高校に不利になるのではないか、という前情報について考えたいと思います。

個人的には、5月の中間発表で明らかとなったように、公立高校に不利になるような検討事項は今後も実現に至らないと思います。

理由はいたって明快で、共通テストの制度導入を検討する、

「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」検討・準備グループ委員

の9人のメンバーの一人に、宮本久也・都立西高校校長が入っているからです。

宮本氏は、現在「全国高等学校長協会」の会長も務めており、このため国私立も含めた全国の高校側の代表として、上記の委員に選定されているものと思われます。

先に見た、共通テストの実施時期検討における、1月中旬1回のみの実施となった理由についても、報告書には、

記述式問題の導入に伴い、試験実施期日を12月に早める案も検討したが、この案に対しては、

  • 全国高等学校長協会から、受検までに学習指導要領に示された学習内容を終了させることが困難であること
  • 多様な教育活動(学校行事や部活動)を行うことが困難になる

といった懸念が示された

このため複数回実施を取りやめたと記載があります。

つまり、宮本校長が全国高等学校の総意として止めろと言ったから止めた、ということです。

今後も、高校単独の都立、公立高校に著しく不利になるような制度については、採用されないと考えるのが自然なことだと思いますので、公立志望の君は、必要以上に心配することはないだろうと思います。


さて、いかがでしたでしょうか。
皆が気になる大学入試改革も、こうして全体を俯瞰してみれば、それほど恐れることはない、ということが言えると思います。

実力のある現在小中学生の君であれば、あえて大学附属に逃げる程のことでもないように思います。
志の高い君にとっては、むしろチャンスの喪失であるかもしれない。

妻によると、今週あった日比谷高校の保護者会でも、2020年の新制度導入の年は、国立大学に入る大チャンスだと学年主任から説明があったようです。

目的を持ってではなく、入試改革を嫌って大学附属校を選択するのであれば、それは正に今回の改革で文部科学省が撲滅しようとしている、楽して大学まで進みたいと考える学生の一人になることを意味するのだと思います。
自分が本当はどうしたいのか、今回の中間報告を受けて改めて冷静に考えてみるのもよいかもしれません。

共通テスト導入初年度の受験生となる中学3年生の君が、情報の渦の中で溺れてしまわないように、引き続き高大入試改革については発信したいと思います。
そして日比谷高校を志す君が、必要以上の不安に駆られることなく自信をもって受験勉強に集中できるよう、ささやかながら応援しています。

ではまた次回。

 

日比谷高校小論文問題
 日比谷小論文(平成29年度)
 日比谷小論文(平成28年度)
 日比谷小論文(平成27年度)

2020年改革の全体像
 高大接続改革の進捗状況について(平成29年5月16日):文部科学省


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