日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

日比谷高校第一志望ながら、日比谷、開成、塾高のどこに入学すべきか、都立合格発表まで悩んだ父親が贈る、上をめざす君と家族を応援する徒然日記

都立小石川中等教育学校躍進の秘密 ~日比谷高校との比較

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 11月3日の小石川中等教育学校の説明会では、親子合わせて1,000人程の参加者があり、受験生からの関心の高さが伺えました。

進学指導担当からは、平成29年度センター試験の7教科900点満点の小石川受験生平均点は、日比谷高校に次いで都立では2位と説明があり、進学面で日比谷高校を意識しているのだなと感じました。
都立受験界隈では、高校の日比谷、中高一貫校の小石川のように、それぞれの代表として比較されることの多い両校。

公立中高一貫校への受験を検討している家庭の中には、小石川に進学した方がよいのか、高校受験で日比谷に進学すべきなのかと悩む方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、都立受験第一志望の君が気になる、日比谷高校と小石川中等教育学校の共通点や東京都教育委員会が考える両校の役割などについて、日比父ブログの観点から比較してみたいと思います。

 

小石川は日比谷高校の中高一貫校版

 まず初めに結論から述べると、小石川中等教育校は、日比谷高校を中高一貫校化した学校だということができると思います。

言い換えると、小石川は日比谷高校のカリキュラムを踏襲しながら、中高一貫校として再構築した学校と言えるでしょう。

掲示板などで、日比谷高校は中高一貫校化すべきという意見を目にすることがありますが、東京都教育委員会は小石川という器を使って、既にそれを実行していたのです。

小石川開設準備室と東京都教育委員会は、小石川高校を中高一貫校化するにあたって、まずは都立のフラッグシップ校である日比谷高校のカリキュラムやシステムを徹底的に洗い出したのではないでしょうか。

そして日比谷高校で実績が上がっている優れたシステムの内、そのままコピーすべき点はそのまま踏襲し、中高一貫校に馴染まない点は改善あるいは再構築して落とし込み、そして一貫校としてのメリットを最大限生かすためのプラスアルファを加えて小石川向けのカリキュラムとして運用したのだと思います。

私はこの秋に複数回、小石川中等教育学校から直接説明を受ける機会を得ましたが、初めて学校説明を聞いた際には、あまりにも日比谷高校と共通する部分が多いため、思わず一人で笑ってしまいました。

日比谷高校の保護者や学校関係者が小石川のカリキュラムや仕組みについて聞く機会があれば、おそらくほぼ全員が、日比谷高校と同じだと感じるのではないかと思います。

小石川の関係者には少々失礼な表現かも分かりませんが、よくぞここまで日比谷高校をコピーしたものだなと思ってしまう程、日比谷高校をよく知るものから見ると学びの根本部分について何もかもが同じなのです。

逆に見ると、小石川は都立中高一貫校の代表として失敗は許されない立場だったが故に、実績が見込める日比谷型を踏襲したとも考えられますし、あるいは日比谷型カリキュラムが実際に非常に合理的によくできているということの裏付けかもしれません。

そんな中、秋の小石川学校説明会が行われる前日に、ちょうど良いタイミングで日比谷高校武内校長の著書『日比谷高校の奇跡』が刊行されました。

ここには日比谷高校の制度やシステムなどが余すことなく詳細に記載されていますから、小石川に通う生徒や保護者の方も、逆に日比谷のカリキュラムについて詳しく把握することができる状況にあります。そしてこの本を読んでみると、小石川の仕組みと共通する内容が多いことに驚くのではないかと思います。

こうした状況は、東京都教育委員会が小石川設立の当初より、中高一貫校型日比谷高校の設立を意識していたものなのか、あるいは小石川設立メンバーの自主的な検討過程において、日比谷高校のカリキュラムの優位性に改めて気づき、そのシステムを採用する形となったのか、どちらであるかは私には分かりません。

ただ結果的に、日比谷高校と小石川中等教育校は、学びの土台部分の制度設計が近い、高校単独および中高一貫それぞれ別の形式の学校として存在することになったと言えるでしょう。

しかしここに述べられたような意見は、今まで他のどこでも聞いたことがありません。後発の小石川が日比谷高校の中高一貫校版というのは本当でしょうか?
では何がそれほど同じなのか、次から具体的に見てみましょう。

 

日比谷と小石川カリキュラムの比較

 日比谷高校と小石川中等教育学校が同じであると感じる最大の理由は、学校の根幹をなす日々の授業カリキュラムにあります。具体的には、

日比谷高校授業
  • 1コマ45分 x1日7時間授業
  • 土日休日
小石川中等教育学校授業
  • 1コマ45分 x1日7時間授業
  • 土日休日

全く同じです。
全国的に、中学高校での授業時間は50分6時間授業が主流。
都立重点校の西、国立、戸山、青山なども、都立一貫校の桜修館も両国なども皆、50分授業という状況の中での一致です。

もうこの時点で、日比谷と小石川は7割程度同じ学習制度を持つ学校だと断言してよいのではないでしょうか。

最近は特に、文武両道を謳う学校において、45分x7時間授業制に切替える学校が散見されます。おそらくは日比谷型カリキュラムの実績を意識してのことでしょう。

そしてこの他にも、小石川の設立にあたって日比谷高校を強く意識したと思われる共通点が実に多くあります。
もちろん小石川も、設立のベースとなった小石川高校と、その源泉として来年100周年を迎える府立五中の流れを汲む学校ですから、教育理念をはじめ創立当時から続く制度もあるかと思います。
ただ現在の学校制度は、一貫校として再スタートする際の十余年前に再設計したもの。現在数多ある有名校の制度を検証したことは間違いないでしょう。

 

小石川と日比谷の理念と共通点

 では改めて、日比谷高校と小石川の制度上の共通点を見てみましょう。
両校の共通点はいろいろありますが、ここでは教育の根幹をなす理念とカリキュラムに絞って比較してみます。

1)教養主義

 両校とも、進学実績向上のための受験優先型カリキュラムではなく、国際社会で活躍するリーダーを育成するための素養として、受験科目に関わらず理化社会をはじめ全科目を履修する教養主義を標榜しています。
明らかな違いは、小石川が先取りにより主に4年間で行う内容を、日比谷高校では3年間で完結している点でしょう。

2)文理不分

 教養主義の実践として、両校とも高校3年生(6年生)になるまでは、文理クラス分けをしない点をアピールしています。高校2年生までは、芸術の選択科目などを除いては、必修科目として進学希望の文理関係なく、全員が同じ教科を学ぶのです。

3)SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)

 日比谷高校は今年、3期連続11年目となるSSH校に指定されました。
3期連続で指定されることは珍しく、過去の取組みが評価されると共に、引き続きその活動が期待されているということでしょう。
小石川の場合も、昨年1年間のブランクはありましたが、今年に入って3期目となるSSH校として再出発しています。

小石川では総合的な学習を、「小石川フィロソフィー」と名付けて、SSHへの取組みを各学年継続授業として行っています。

4)グローバルマインド、グローバル10

 両校とも、グローバルリーダーの育成の旗印の下、4技能アクティブラーニング型の英語学習に力を入れています。小石川は独自の活動として、海外ステイや修学旅行など在校生全員に様々な海外体験プログラムを実施しています。

一方の日比谷では、東京都教育委員会が指定する東京グローバル10指定校として、ケンブリッジ英検の全員受験や有志選抜参加型の海外活動が行われています。

5)全クラス演劇

 その他の重要な共通点として、文化祭での全学年演劇があります。
3年生の秋の文化祭まで全力で演劇に取組み、終了後は受験に頭を切り替える。
西、国立、日比谷の都立トップ校はこの演劇文化を持っていますが、小石川はその取組に意義を見出し、採用したのではないかと思います。

しかも小石川の場合は、時間のゆとりを生かすべく中学3年生から4年間続けての演劇発表となりますから、都立トップ校を上回るレベルの内容が見られるようになるのかもしれません。

6)カリキュラム 

 改めて、両校共45分x1日7時間授業が基本となる日々の授業。
そして各学年における個々のカリキュラムも非常に近いものがあります。このためここでは、高校課程での各学年の必修科目を比較してみましょう。

表の見方として、色付きのマスは科目内容および必修時間共全く同じ内容を示します。時間の赤字は主要5教科を、黒字は実習科目のそれぞれ1週間の履修時間を示します。

高1(4年)必修科目

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 日比谷と小石川の高校1年(4年生)の必修カリキュラムは、上記の通り非常に近いものがあります。異なるのは、概ね理科と社会の組合せのみといっていいでしょう。

特に理科については、日比谷高校は各教科を1年間でまとめて仕上げることに対し、小石川では一つの科目を複数年度に亘って学ぶという点が目立った違いでしょうか。
これは高校短期集中型の日比谷と、一貫ゆとり型の小石川の考え方の相違が現れたものといえるかもしれません。

小石川の数学Ⅰの時間が1単位短いのは、中学課程で先取をしているためでしょうか。

そして総合的な時間として、小石川では先に述べた「小石川フィロソフィー」と呼ばれる、各学年継続的なSSHへの取組みが行われます。

高2(5年)必修科目

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高校2年生(5年生)も、同様に大きな相違はなさそうです。

ただ日比谷では、芸術(美術、音楽、書道)を2年まで必修で行うのに対し、小石川では代わりに総合学習として先のSSHの取組みを行っています。

この点を見ると、日比谷高校は3年間という短い時間ながらも、芸術分野も含めたより全人的な教養に対しての造詣を求めているといえるかもしれません。
日比谷は更に、SSHの活動は必修時間外で行っていますから、盛りだくさんの忙しい学生生活を過ごすことになるわけです。

また高校1年生では同じであった必修科目時間は、小石川の方が週1時間少なくなっており、このことからも日比谷の教養主義への強い理念が伝わってきます。

高3(6年)必修科目

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高3(6年生)も、基本的に大きくな相違はない内容です。

ただし、体育と英語の必修時間がそれぞれ1時間ずつ小石川の方が短いため、週2時間分の必修科目が少ない状況です。 
週2時間程度の違いですが、このあたりはやはり日比谷の教養主義へのこだわりか、あるいは受験学年まで必修を引っ張らないという、中高一貫校のゆとりの成果なのかもしれません。

5教科必修科目まとめ

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 高校(後期課程)3年間では、日比谷高校の方が5科目必修時間が4単位多くなっています。内訳では、理科・社会がそれぞれ1単位、英語が2単位多い。

この3年間全体の必修授業時間の違いを見ると、両校の教養主義に対するそれぞれの考え方が見えてくるように思います。

つまり、日比谷高校はより総合的な教養を身に着けることを目的としているのに対し、小石川は学校が掲げる理数教育にやや重きを置いた素養を求めているのだと。
これはカリキュラム上では微々たる相違にしか過ぎませんが、理科と社会の必修時間の中に学校側のメッセージが込められているように思います。

必修時間からは、日比谷高校は物理、化学、生物を科学の基本に置いているのに対し、小石川は物理、化学を基本に置いているように思います。これは高々生物1単位だけの相違なのですが、この1単位に学校側の強い思いが反映されているように感じます。

同様に、日比谷は日本史と世界史を社会の素養と考えているのに対し、小石川は日本史を基礎的素養ととらえているのかもしれません。

また、小石川の方が数学Ⅰが短く数学Bが長い点、英語の必修単位が少ない点は、中学課程の科目毎の単位時間が確認できないのであくまで想像ですが、中学での先取り授業の結果ではないかと思います。


それにしても日比谷高校は、3年間という限られた時間の中で、中高一貫校を上回る全科目履修型のカリキュラムを採用していることが今回確認できました。
その上での現在の大学進学実績ですし、まだ伸びる途上にありますから、学校の覚悟と学生の集中力は本当にすごいことだなと素直に感心します。 

まことに小さな国が、開花期を迎えようとしている。

世の中全体が効率優先思想の中、まさにそんなセリフが聞こえてくるような、進学実績偏重の時代におけるある種の時代錯誤のように、頑なに高校単独校を貫きながら次世代の雲の上を目指す人材の育成に真面目に応えようとする学び舎と、そこで逞しく生きる学生の姿が浮かんできそうです。

 

小石川と日比谷の相違点 

 では次に、両校の相違点を見てみましょう。
冒頭に、小石川は日比谷を中高一貫校化した学校だと書きましたから、この違いを確認することで、一貫校化の利点が見えてくるように思います。

それは中高接続によって生じる余剰時間の差、つまり高校受験組が最も多忙となる中学3年時が、逆に一貫校生にとっては時間的にも心理的にも最もゆとりが生まれる状況が可能とするプログラムの差となって現れているように思います。具体的には、

  • 中学3年次生徒全員海外ホームステイ
  • 海外修学旅行

この2点が、中高一貫校化の恩恵を享受する取組みだろうと思います。

取組みの詳細はここには記載しませんが、国際協業のための英語4技能学習の重要性が叫ばれる昨今、こうした海外体験プログラムの存在は、受験生やその保護者の方にとっては非常に魅力的に映るものと思います。

これまで見てきた通り、小石川中等教育学校は後発の利を生かし、既に実績を残している都立高校や私立中高一貫校の良いとこどりをした、いわば後出しジャンケンのような学校ですから、今後ともライバルたちを凌駕するような実績の向上は十分見込めることでしょう。

ただ、小石川が確実に受験界の頂点に登りつめるためには、ある一つのきっかけが鍵になるように思います。

 

都立小石川大躍進のカギ

 小石川中等教育学校は最後発にもかかわらず、というよりも先に述べた通り最後発だからこそ、短期間でライバルに伍すような進学実績を残す結果につながっているのだと思います。
そして実績はまだ伸びる余地が十分あると思いますが、今後受験業界で圧倒的なスターダムにのし上がるとすれば、あるイベントがきっかけになると思います。

それは、国立大学附属校の入試改革です。

もし、現在検討されているような、国立附属中学の抽選入試が導入された場合、例えば現在筑波大付属駒場中学へ進学している家庭の多くの目が小石川に向かうでしょう。

それはちょうど半世紀前の1967年、「日比谷潰し」と呼ばれた学校群制度をきっかけに、受験生が都立高校から国私立校に逃げ出した状況と同じコペルニクス的大転換。
国立附属の抽選入学制度は、東京では「筑駒潰し」と呼ばれることになるでしょう。

個人的には制度設計が新しい分、現時点でも国立大学附属よりも小石川をはじめとする都立中高一貫校の方が、今時のカリキュラムを持つお値打ちな学校のように思います。
客観的に見て、従来型エンジンで走る筑駒と、ハイブリッドエンジンを搭載した小石川といった違いがあるように感じます。
もちろん、どちらがよいか、どちらを好むかは各家庭の価値観だと思いますが、そのような制度上の差異があるのは確かでしょう。

ですから国立附属入試改革が実行されれば、国立附属支持層が一気に小石川に流れて、偏差値面でも実績面でも、受験業界のトップに躍り出ることが決定的になるのではないかと思います。

 

都立小石川か都立日比谷か

 さて結局のところ、都立志向の受験生と保護者の方が一番気になる点は、中学から小石川を目指した方が良いのか、高校から日比谷を目指したほうが良いのか、ということではないでしょうか。

現在君がまだ小学生であり、中学受験を考えており、日比谷高校という響きに強い憧れを抱いていない状況であれば、教育プログラム上は、中学から小石川を狙うのが合理的であるように思います。
日比谷的教育機会を早期に獲得するチャンスを逃すのはもったいない。

万一合格が叶わなかった場合でも、公立中高一貫校の適性検査は、これからの教育現場で求められる学びのベクトル上にあるアプローチですから無駄ではないでしょう。

ただ君が、現在既に日比谷高校に強いあこがれを抱いていたり、中学受験に向けて取組むことが困難な状況であるならば、中学受験には望むことなく真っすぐに日比谷高校を目指せばよいでしょう。日比谷高校は、小石川と比べても、他の有力国私立中高一貫校と比べても、積極的に選択する価値のある学校だと思います。

例えばわが家と同じように、中学受験よりも海外赴任を選択した君であれば、その得難い経験を持って日比谷高校に進むのは、それが例えどこの国であろうと、本当に意味のあることではないかと思います。

日比谷と小石川、この2校は東京都教育委員会を親とする、兄弟のような関係にあるのかもしれません。

兄である日比谷と弟である小石川。

どちらの立場となるのか、それは兄か弟か自ら決めることができないように、君の置かれた環境や人知を超えた意志の采配がもたらす結果であるように思います。

素直な小石川とタフな日比谷。

両校を性格面から眺めてみれば、同じ環境で思春期を過ごす均質的な仲間の中でゆとりをもって過ごす6年間の中高一貫校と、3年間異なる環境で過ごした多様な背景を持つ生徒が刺激し合い短期間で駆け抜ける高校単独校の違い。
そしてそれぞれが持つ歴史や学校環境の相違。

仮に日比谷高校が、これまでの歴史や伝統、そして学校環境を維持したまま中高一貫校化するならば、国立附属入試改革の有無に関わらず、本当に入学が困難な最難関校に躍り出るでしょう。そしてそれは、都立高校受験生の憂鬱でもあります。

そうではない現実に、我々は大いなる幸運を感じるべきかもしれません。
高校から日比谷高校に進むことができる幸福、そして高校からしか入学できない幸福。

中学校から小石川中等教育学校に進むべきか、高校から日比谷高校に進むべきか、都立学校群制度導入から半世紀を迎えた今、再び始まる歴史の大きなうねりの入口に、我々は立たされているのかもしれません。

ではまた次回。


公立中高一貫校訪問 ~桜修館・白鷗編

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