九段小学校・幼稚園 新校舎落成 ~ブランド小学校に通うコスト

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写真出典:広報千代田 平成30年8/20号

 ブランド小学校好きのママたちが待ちに待った、千代田区九段小学校と幼稚園の新校園舎が2018年9月から開校しました。

そして日比谷高校の星陵祭が行われた9月22日には『落成を祝う会』が行われ、誰でも自由に校舎を見学することがができましたので、校内を隅々まで見学してきました。

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2018年9月22日 九段小学校・幼稚園見学順路

この①から㉔まである見学順路には、主な学園施設がすべて掲載されていますから、一覧を確認することで、新しい九段の学校機能の概略が理解できます。私自身もこの順路に従って、すべての学校施設を見学しました。

今回は、自ら撮影した写真を中心に九段小学校の新校舎を紹介しながら、お受験ママの聖地である、番町界隈に暮らすコストについて、合わせて考えてみたいと思います。

 

私立以上?千代田区立の学校設備

 麹町中学校をはじめ、千代田区はこの数年来区立小中学校の建て替えを積極的に進めているようです。

その結果、千代田区内の学校では、数多ある私立の伝統校よりも、公立の方が教育設備環境が整っているという、一般的な概念からの逆転現象が起きているように感じます。財源の潤沢な千代田区の成せる業だと思います。

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九段小学校の床可動式屋内プール

例えば、上の写真は東棟の最上階にある室内プールですが、可動床を採用しており、プールとして使用しない場合には、屋内遊技場などとして利用可能となっています。

また校内は、床、壁、屋内建具を中心に、室内の木質化が積極的に行われており、全体的に温かく親しみやすい印象を受けます。普通教室は、廊下側に壁がなく、可動建具で仕切られたオープン教室型を採用しています。

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九段小学校北棟普通教室廊下

そして最新の教育設備を盛り込みながらも、九段小学校は永く地域に愛された歴史的校舎の想い出を保存することも忘れていません。卒業生や地域の方々の記憶を壊すことなく、その愛着をいつまでも残すことを選択しました。

校舎は西棟、北棟、東棟から成るコの字型をしており、この中で西棟は、旧校舎の意匠を保存する建物となっています。このため内装の壁の色や質感なども、かつての面影を保存するために相当こだわって選んでいるそうです。

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旧校舎の記憶を保存する九段小学校西棟

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往年の面影を残す西棟正面玄関

新しい九段小学校は、古きよき伝統と最新設備が兼ね備わった、故きを温ね新しきを知る学校施設だといえるかもしれません。

 

東郷元帥の面影

 九段小学校の敷地には『東郷元帥記念公園』が隣接しています。

こちらは平成31年末目処にリニューアルを目指し、現在も改装工事が続いています。公園の改装中、公園デビューするはずのママたちは、どこに集まっているのでしょうか。

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子供たちの帰りを待つ旧東郷邸のライオン像

実は東郷公園と九段小学校が隣接しているのは偶然ではありません。

どちらの敷地も、東郷元帥の私邸跡地を譲り受けているからです。東郷とは、日露戦争の日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を撃破した、あの東郷平八郎連合艦隊司令長官のことです。

このため小学校内には、元帥にまつわる様々な記念の品や写真などが展示されています。校園長室には、旗艦『三笠』で元帥が利用した洗面台や机なども置かれています。

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記念室に飾られる、東郷元帥記念写真

東郷公園周辺は、東郷ファンや司馬遼太郎の『坂の上の雲』ファンにとっては、横須賀港に展示されている軍艦三笠と並び、訪れるべき場所の一つではないかと思います。

 

九段幼稚園

 九段小学校には、幼稚園も併設されています。

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九段幼稚園廊下

現在九段小学校・幼稚園エリアでは、区の当初の計画を上回る勢いで子供が増加しているようです。

九段小学校新校舎の計画段階では、1学年2学級、全校で12学級の整備を基本に、将来の学級増の対応及び少人数指導など多様な教育実践への対応を鑑み、15教室を整備することとした。
 しかし、当初の予想を上回る児童数の増加が見込まれる結果となり、開校後まもなく学級数が15学級を超えるとともにしばらく児童数の増傾向が続く可能性が高い。そのため、現行の整備計画を見直し、開校時に普通教室18教室を整備する計画に変更する。

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平成28年5月24日教育委員会資料

 少子化が進み、小中学校の統廃合で学級数が減少する校区も多いと思われる中、ブランド学区周辺の児童数は実際に増えているようです。

児童の増加に伴い、九段幼稚園への入園も、本年度は落選者が出ています。

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平成29年度は九段は希望者全員入園、番町幼稚園は落選者がありましたが、新校舎落成の影響でしょうか、本年度は状況が逆転しています。

とはいっても数字を見ると、全国的な待機児童の状況と比較すれば、まだまだ恵まれた地域であるといえるのではないでしょうか。平成31年度向け園児の応募に関する情報は、10月5日の千代田区広報に掲載予定となっていますから、同地区に入園を希望する保護者の方は要チェックです。

 

九段小学校・幼稚園の指定学区

 さて、新しくなった千代田区立九段小学校・幼稚園ですが、新校舎に通うためにはどの程度のコストがかかるか調べてみましょう。

千代田区のホームページによると、九段小学校の指定学区は以下の住所となります。

  • 三番町
  • 四番町(1・2・3・8・11)
  • 九段南二・三・四丁目
  • 九段北三・四丁目

地図上では、概ね以下の通りです。

九段小学校・幼稚園指定学区

九段小学校・幼稚園指定学区(概要)

この地図の中に書かれた周辺施設を見れば、番町界隈に暮らすことの特殊性が伝わってきます。地図上の西側には、人気の番町小学校、南側には麹町小学校があり、千鳥ヶ淵に面した皇居西側の一帯は、千代田区のブランド小学校学区を形成しています。

 

九段小学校に通うコスト【中古】

 今回九段小学校に向かう東郷公園の交差点付近で、マンション業者のチラシをいくつか受け取りました。明らかに新校舎見学に集まる世帯向けのビラ配りと思われます。

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築20年78㎡リノベーション・1億2千万円

この九段小学校学区内の物件は、靖国通りを挟んで靖国神社の南側に位置する1998年竣工の築20年、専有面積78.84㎡の14階建マンションですが、リノベーション後の販売価格は11,980万円となっています。坪502万円です。

一人っ子限定の大した贅沢設備もない中古物件でこの価格です。明らかに数年前よりも物件相場が上がっているのではないでしょうか。

SUUMOで検索する場合でも、同じような価格情報が現れますから、2ベッドを求める場合、物件の年数やグレードに関わらず、最低予算1億円からとなりそうです。

 

九段小学校に通うコスト【賃貸】

 次に賃貸物件の場合、2018年9月30日現在2K以上の物件に絞ってSUUMO上で検索してみると、空き物件情報は、

  • 三番町:134件
  • 四番町:2件
  • 九段南:6件(九段学区外含む)
  • 九段北:26件(九段学区外含む)

となり、それなりに空いていることがうかがえます。

ただし上記の内、九段学区が確実な三番町、四番町に限定して、2K以上の空き物件を検索すると、家賃の安い順に以下の通りとなります。

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SUUMO検索結果:千代田区三、四番町2K以上

まず2居室以上を確保する場合、家賃30万円程度で収めようとすると、昭和時代に建てられた物件しか対象になりません。例えば九段小学校の目の前にある赤茶色のマンションは、築50年の物件にも関わらず、2LDKで30万円近い家賃となります。

平成時代のマンションになると、同条件の場合、最低でも家賃40万円からとなり、一般的な会社員の世界観からは逸脱した金額であることが分かります。

もっとも、こうした物件に対し、源泉徴収後の給与所得から正直に家賃を払う者は少ないのではないでしょうか。法人指定の社宅として月々の自己負担が限定的であるか、個人事業者が事務所兼自宅として企業の経費で支払うなど、いずれにしても自分の懐があまり痛まない種類の人々の居住区ではないかと思います。

 

九段小学校に通うコスト【新築】 

 そして新築マンションですが、2018年9月末現在、SUUMO上では九段小学校区域の新築マンションは1件ヒットします。

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SUUMO検索情報:プラネスーペリア四番町

現在先着順で購入可能な部屋としては、1LDK42.38㎡の7,300万円か、3LDK103.42㎡の2億3,980万円があります。それぞれ坪569万円と766万円です。

このエリアへの居住地を求める小移民と呼ばれる多くの家庭が狙うであろう、一人っ子向け2LDKの物件は、ちょうどこの10月下旬販売開始となっています。販売済み物件の価格からみる限りでは、1億5千万円前後の価格設定になるのではないかと思います。

2LDKを残しているのは、ボリュームゾーンとなる物件に、なるべく高い価格を設定したいと考えての販売戦略でしょう。現在は九段小学校の開校後の物件照会状況など、人の動きをを見定めているのだと思います。

従来この地区で一番人気の番町小学校は現在も古い施設のままですから、新しい九段の人気がどのようになるのか、不動産業者としては人の流れが気になるところです。

いずれにしても新築でこの地域に暮らす場合は、一人っ子の場合でも、1億円台後半程度の住宅購入予算は覚悟する必要があるのではないでしょうか。

 

日比谷高校最寄り新築物件(おまけ) 

 星陵祭を訪れて気づいた方もたくさんあるかと思いますが、現在日比谷高校と衆議院議長公邸の間に、新築マンションの建築が進められています。

日比谷周辺の永田町界隈は、古くから住居地域として位置づけられた番町麹町エリアよりも、住居供給量が少ない更に希少価値の高い住区といえるでしょう。

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SUUMO検索情報:ブランズ永田町

この14階建ての邸宅は、11階以上が各階1部屋占有の3LDK+α 178.34㎡の物件です。12階が5億6千万、13階が5億8千万、それぞれ坪1,038万と1,075万で現在先着販売されています。これに月々の維持費として、管理費と修繕積立金が毎月18万円程度必要です。

こうした物件を誰がどのような目的で購入するかは知る由もありませんが、建築資材原価は大きくは変わらないと考えた場合、住居を供給する側の不動産業者にとっては、ブランド地区でのマンション販売は、やはり魅力的に映るのではないかと感じます。

 

ブランド学区への移住判断

 世の中には様々な価値観や嗜好の方が暮らしているのはもちろん承知していますが、こうしたブランド地区で子供を育てたいと考えるのが給与所得家庭である場合は、所得が2、3千万程度あっても、無理して引っ越すのは止めた方が賢明ではないかと考えてしまいます。

理由としては、一般的には高いとされる所得のアドバンテージの大部分を、都内でも特に高い不動産相場に食いつぶされてしまい、所得から期待される暮らしの質感とは異なる、ゆとりのない生活に陥ってしまう可能性が少なくないと思われるからです。

それだけの給与所得があれば、23区内の他のエリアでも、もっと豊かさを感じることができる暮らしはいくらでも実現できるものです。

都内は不動産価格が高すぎるために、車は高級、子の通う学校も上級にも関わらず、住居は三流という家庭が多いように感じます。地方であれば、それほど所得の高くない家庭が住まうような広さとグレードの住居に、地方では見かけない高級な外車が止まっているという光景は、都内では一般的な姿です。

あるいは逆に、不動産に対して絶望的な現実が広がっているからこそ、狭くてペラペラな住居に甘んじても、車や子の通う学校に対しては、これ程にも費用やプライドをかける保護者が多いのかもしれません。

仮に私自身がこうした地域に住むのであれば、所属法人からの指定住居に住まう場合か、給与所得ではない事業経費や不労所得によって生活費が賄える程度でなければ、その土地の持つ価値を十分に楽しむことができないのではないかと考えてしまいます。

ファーストトラックの生活を夢見るあまり、逆により高回転のラットレースに陥ってしまう可能性を否定できないからです。

子のためのよりよい教育環境を求めてこうした地域に移動しようとする方々が、実際にはどのような暮らしぶりが実現できそうであるのか、自らの憧れやネット上の誰かの甘言に耳を傾けることに終始せず、子の中学受験校を決定する場合と同じように、財布と相談しながら実際にその場所を訪れて、不動産業者の顔色を伺いながら、本当に実現可能な暮らしぶりを自分の目で確かめることが大切ではないかと感じます。

平成20年に耐震改修が行われたものの、施設は古いまま残った番町小学校。

同校が歴史的なソフトパワーでこれまでの人気を保つのか、あるいは最新の施設となった九段小学校がその強力なハードパワーで保護者の人気を奪うのか、ブランド学区好きの保護者にとっては悩ましい選択となりそうです。

ではまた次回。