NHK探検バクモン 日比谷高校“生きる力”の授業

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画像出典: NHK探検バクモンホームページ

 「日比谷高校“生きる力”の授業 東大合格都立No.1の次世代教育」と題したこの番組では、2018年度の星陵祭優勝クラスの3年生を中心に、大学入試前の秋口までクラス演劇に集中するリアルな生徒像が浮かび上がりました。

 

過去最高の2018年星陵大賞

 今回NHKが取材に来るきっかけとなったのは、今年の星陵大賞、つまりクラス演劇優勝を果たしたクラスのパフォーマンスが、過去10年間の星陵祭の歴史の中でも群を抜いて優れていたからだと思います。

3年生の演劇は、テレビCMでもお馴染みの有名劇団のプロ審査員が評価しますから、あくまで想像ですが、その出来の高さが業界で噂となって広がり、NHKの耳に届いたのではないでしょうか。

はじめてかきこませていただきます。

もう1週間以上経つのに星陵祭の興奮がさめやらずいろいろネットで検索しているうちに貴サイトに出会うことができました。

私は演劇好きなのと学校の近所に住んでいる縁で、学校自体とは何ら関係が有りませんがもう10年以上前から星陵祭にお邪魔しています。

3年生はほぼ毎年全クラス、数えてみたらこれまでに100公演以上を拝見してきました。整理券制度が導入され、学校の人気とともに毎年チケットをとるのが難しくなっていますが、今年もなんとか3年生は全公演を拝見することができました。今年の31Rのチケットはまさにプラチナ化していましたね笑。

34Rの公演はたしかに今まで見たことのない内容でしたね。賛否はあろうかと思いますが、印象に残ります。
38R、35Rもとても印象的でした。装飾の作りこみがすごかったです。

なかでも31Rは圧倒的だったように思います。

劇団四季のオリジナル版では流れなかった涙が、あふれ出てきました。

これまで目頭が熱くなることはありましたが、ここまで星陵祭の演劇で泣いたのははじめてのことでした。演者の技量が圧倒的で、観客席を通す花道があったり、自動ドア(?)化された障子戸があったり、高校生の50分劇でよくぞここまでという仕上がりでした。

2年前にもユタを演じたクラスが優勝したと記憶しています。それもすばらしかったのですが、今年の31Rはここ10数年の星陵祭ではわたしの中では群を抜いた最高傑作です。もちろんものすごい情熱で準備してきたのだろうと思います。

しかし、演者の才能はもとより、すばらしいカーテンコールまで脚本に盛り込んだ人、舞台装置を作った人、ほぼ完璧な音響を作った人など、これだけの才能が1つのクラスにあつまったこと、そしてそれを束ねる人がいたこと、これらはある意味奇跡だったのではないかとも思う出来でした。

これを上回る演劇がいつか出てくるのでしょうか。また来年も楽しみです。

RUMIKOさんのコメントより


この文章は、本年度の星陵祭をレビューした日比父ブログの記事に対し、日比谷高校演劇ファンを名乗る学校周辺住民の方が、抑えることができない感動を誰かに伝えるために投稿してきたと思われるコメントです。

この投稿を読んでみると、何故NHKが日比谷の文化祭に興味を持ったのか、つまり、大学入試では圧倒的に不利と言われる公立高校の生徒が、如何に学校行事や学生生活の充実と、大学受験での実績を両立しているのかの謎に迫りたいという動機が生じるのではないでしょうか。

学校行事を縮小して受験勉強に集中させたり、厳しい校則や生活指導で生徒の自主性を奪うような、ある種の受験マシーンが並んだ受験監獄とは異なる、主体的な「生きる力」を育む教育の現場を垣間見ることができるのではないか、番組のタイトルからはそのような期待と興味が沸いてきます。

2018年星陵祭31Rポスター

画像出典:2018年星陵祭31Rポスター

 

2018年合唱祭梁田賞の完成度

 個人的には、毎年6月に行われる非公開行事である合唱祭の、2018年の最優秀クラスに贈られる「梁田賞」の合唱パフォーマンスについても異次元の出来だったと感じています。

『無伴奏混声合唱のための「 After…」より Ⅱ.絶望』

谷川俊太郎作詞のこの合唱曲は、勝手な想像ですが、高校生のクラス合唱の演目としては普通は選択しないのではないかと思います。難しいからです。

ところがこの難曲に果敢に挑み優勝した32Rは、おそらくは上手いという水準を遥かに超えた完成度で、聴く者を驚かせてくれました。

それはまるで舞台上に小型スピーカーが立体的にいくつも設置されているのではないかという錯覚に陥るような、初めて体感する圧倒的な立体音響とでもいうべき、見事に制御された音の束の織りなすパフォーマンスです。

今年初めて合唱祭に参加した1年生や保護者の方は、本当に驚いたのではないでしょうか、私自身も3年目にして初めて感じた、今自分はすごいものを目の当たりにしているに違いないという、目の覚める思いを感じました。

納得のいく作品完成度として仕上げるまでに、舞台裏では一筋縄ではいかない厳しい状況が何度も訪れたようです。

1曲に集中したあまり、もう1曲が疎かになっていることも伝わってきました。

2曲の総合力でみれば他のクラスが優勝してもおかしくない状況でしたが、その挑戦曲の出来が高過ぎたために、審査委員の方々も最優秀から外せなかったのだろうと思います。

 

学力の向上と芸術性の向上

 昨今の大学合格実績の向上を見るにつれ、実は現役日比谷生の保護者としては、ある一つのことを心配していました。

次第に生徒の意識が大学受験に強く向かうようになり、学校行事、特に受験本番間近の9月末に行われる星陵祭への参加意識が薄れ、パフォーマンスのレベルも下がってしまうのではないかということです。

ところがその不安は、愚息の学年でもある2018年度の3年生が、杞憂であることを見事に示してくれたようです。実際にはむしろ集団の学力や知性が上がるほど、藝術面でのパフォーマンスも向上するのかもしれません。

それは自らがリリースする脚本や衣装、音楽や大小道具類への強いこだわりなど、多教科対応が求められる難関大学受験のための準備と同様に、限られた短い時間の中で細部にまで高い完成度を求める意識が導く、必然的な結果であるのでしょうか。

 

学びの姿勢を確かめる入試

 いずれにしても番組では、「生きる力」と題し、生徒の自主性を促す教育現場に身を置く等身大の日比谷生の姿が浮かび上がりました。個人的にもよく知った生徒の顔が何人も登場し、非常に身近な番組のように感じました。

今や早稲田・慶應でも4割近くががAO入試だと言われ、今後国立大学でも推薦入試や学力試験のない入学審査が増加する趨勢の中、都立高校が積極的に新しい学びを取り入れようとしている実態に驚いた方も多いかもしれません。

そのような中、日比谷高校の入試英語は、番組で登場した英語の授業、日本語でも扱うのが難しい課題を議論するための模擬試験となっています。

「次の〔質問〕に対する答えを自分で考えて、20 語以上の英語で書きなさい。」

これはもはや英作文問題でも読解問題でもなく、正答のない自分の考えを、英語という言語を使って表現する、「生きる力」を求める学びの姿勢に対する、日比谷高校から君への挑戦状なのだと思います。

どのような回答を書くべきなのか、塾や学校の先生から受け継いだ受験テクニックや受け身の答えではなく、君自身の主観が問われているのです。

ではまた次回。 


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