ああ悩ましき、併願校選び ~現実理解編

2020年6月13日更新:
2016慶應義塾合格発表
 平成28年度 慶應義塾高校合格発表

 
 前回の導入編では、以下の命題を投げかけました。  

日比谷高校を第一志望とする受験生にとって、最適な併願校が存在しないという現実

ああ悩ましき 併願校選び

今回は、併願校選びについて、なぜ悩ましい状況が発生するのか、理由を交えながら考えましょう。

 

都立トップ校を希望する理由

 日比谷を第一志望とする受験生の特徴は、概ね以下の通りと思います。

 1)国公立大学(医学部含む)進学希望

 2)伝統名門校希望

 3)高校一斉スタート

 4)男女共学

 5)経済的負担の軽減

そもそも、日比谷高校だから、という絶対的動機を持つ受験生もいるかと思いますが、理由としては概ね上記のようなものではないでしょうか。

家庭によっては5の経済的理由が最上位に来るかもしれません。

いずれにしても志望動機を整理すると、優先順位は別として、上記のような要素が強いかと思います。

では上記の希望理由を見ながら、併願候補を見てみましょう。 

 

併願校としての早慶附属

 まずは、入試問題が近い併願先として名前の挙がる、早慶附属を考えます。

ここは日比谷を目指す受験生であれば合格すべきラインになりますし、全国的知名度を誇る伝統名門校(実質的には伝統、名門と呼ぶには早すぎる新設附属校も多いですが)ですので、併願先としてまず候補に挙がります。

しかし誰にでも明らかなように、どちらも大学附属校であり、進学校ではないのです。このため入学する際には、国公立大学への進学それ自体を手放す覚悟が必要です。

必然的に将来の進路や方向性は大きく変わります。特に医学部を志望する一般家庭にとっては、致命的になりかねません。

しかも親の経済的負担は私立高校の中でも最も大きい進学先の一つのため、資金繰りに不安な家庭は早い段階で資金計画が必要になります。

逆に万一の場合は、大学も早慶に進むとの積極的な考えであれば、最適な併願校の一つである、と言えるでしょう。

注意点は、どの程度の数を受けるのか?という点です。

長男は慶應義塾と早稲田高等学院の2校のみ受験しました。

結局どちらも合格したのはうれしいことですが、他校も含めた優先順位と合格状況によっては多くの入学金を準備し、捨てる覚悟も発生しますから、合格状況による入学金の支出パターンは予め整理しておくことをお勧めします。

所属する学習塾からより多くの早慶附属校を受けるような猛プッシュがありましたが、それなら受験料くらいは出してほしいと思うのが正直な気持ちです。

 

併願校としての開成・国立附属

 では、開成や国立大学附属校の場合はどうでしょう。

問題は、合格枠が圧倒的に少ないということです。

2016年(平成28年度)の各校の募集人員は概ね以下のような状況です。内部生の情報も記載します。

日比谷
 男166 女151(推薦含):内進(0%)

筑波大駒場
 男40(帰国枠含):内進約120(75%)

学芸大付属
 男女約121(帰国枠含):内進約230(65%)

筑波大附属
 男女80(帰国枠含):内進約170(68%)

開成
 男100:内進約300(75%)


これらの高校の偏差値が高くなる理由の一つは、この合格枠の少なさにあるでしょう。高校受験で入る方が難しいと言われる所以であり、中学入学を前提に学校を組織していると考えられる理由です。

このためこれらの学校は、日比谷やトップ校を第一志望とする生徒にとっては受験勉強の質と量を引上げるペースメーカーとしての役割だと考えると分かりやすい。

合格すれば自信や達成感が得られますが、一発入試は当日のコンディションや出題傾向で大きく結果が変わるもの。だめな場合でも引きずらないとの割り切りが大切です。

尚、学費免除を考慮しない場合、入学金を含む学費に関しては、3年間でザックリ、

  • 都立 38万円
  • 国立附属 100万円
  • 開成 250万円
  • 参考:早慶 300万円

となります。経済的な負担をどう考えるかにもよりますが、高校受験の一つの到達点として、前記事で示した通り、積極的に狙う選択はあります。  

決して無駄な道ではありません。むしろ高校生活のスタートや大学受験に向けての大いなる価値があります

ああ悩ましき 併願校選び

 このスタートダッシュについては、別の機会にお話ししたいと思います。

 

第一志望が唯一無二

 ところで、何より日比谷高校を目指す高校受験生にとっての大問題は、ある程度納得できる進学実績や伝統を持った名門併願校が上記以外に非常に少ないということです。

東京にはこれほど多くの私立高校が存在するにも関わらず、ほとんどの進学実績上位校には高校入学枠がありません

そして令和の時代を迎え、その状況はますます厳しいものになっています。このため、第一志望が叶わなかった際の進学先として、

 a)中高一貫の開成、国立附属から国立大学を目指す

 b)大学受験は見送って早慶附属へ進む

 c)名門進学校の一角を目指す新興進学校へ入学して、大学受験で再起を図る

 d)都立高校2次募集を狙う


といった選択になるのです。いずれにしても、初めに掲げた1)~ 5)までの何れかを大きく妥協しないといけない状況が生じます。

日比谷を目指す受験生にとっては、第一志望が高校受験における唯一無二の存在であり、最適な代替校がない状況です

これは何も、都立を持ち上げるための誇張表現ではありません。第一志望進学が叶わない場合を真剣に考えた保護者として、素直に抱く感想なのです。

逆の言い方をすると、都内で高校受験に臨む生徒にとっては、復権を果たした都立高校の存在が本当にありがたいと身に染みるのです。

中高一貫私立上位校の高校入学枠については思うところも多いので、また別の機会にお話ししたいと思います。

ではまた次回。

トップ校受験、ゴールをどこにすべきか。

高校入学時点での到達学力

都立高校の偏差値が低い理由

 開成と日比谷、高校入学者の東大比較

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