学習塾選び、悩める君が確認すべき2つのこと

2023年4月30日更新:

 2学期は、内申点を決定する定期テストや受験校選択の希望調査が始まるなど、入試本番前の最大の山場を迎えます。勉強方法や塾の悩みは夏休み中に解決して、2学期に集中したいものです。ただ当事者にしか分かりませんが、入試は結果がはっきりするまでは、1年通して本当に悩みの種は尽きません。

 今回は前回に引き続き、まだ塾選びに迷っていたり、これから学習塾を選ぼうと考えている君や保護者に向けて、自分やわが子の将来を預けるべき信頼できるパートナーの在り方について、考えたいと思います。

把握すべき塾の合格実績とは?

 受験は個人から見れば特別なイベントですが、社会的に見れば毎年のルーティーンの繰り返しですから、模擬試験の結果判定と同様に、ある塾のあるクラスに通う受験生の合格の確からしさは、内申点という要素はあるにしても、統計的に確認できるのです。

そしてその確からしさを確認するために、君が把握すべき情報は、何でしょうか?

それは前回お伝えした通り、自らが所属するクラスから、志望校に対して毎年何人の合格者が出ているのか?ということです。繰り返しになりますが、塾全体の合格実績を目当てに通塾しても意味がありません

第一志望の合格実績が特定のクラスに限られている場合、君がそのレベル以上のクラスに所属できないのであれば、合格する可能性は低いと言えるでしょう。

逆の見方をすれば、合格の見込みが低いクラスに所属し続けることで、不合格の実現性を固定化することに繋がる可能性が高いのです。

特に難関国私立クラスと都立トップクラスが分かれている場合など、受験学力の高い生徒は都立第一志望であっても国私立クラスに集まっている可能性があるため、こうした内部での実績は把握したい数字になります。

規模の小さい学習塾でも、過去に見た生徒の情報から、塾側は同様の確からしさは把握しているはずです。なければその受験指導は感覚的なものでしかありません。

合格実績より大切な、もう一つの数字

 そしてもう一つ、決定的に重要な数字があります。それは、 

その合格数は、何人受験した結果なのか?

つまり不合格となった受験生は何人いるのか、ということです。 

この数字ははなかなか表に出てきませんね。塾にとって不都合な真実なのでしょうか。

常識的に考えて、合格者の大小だけでは意味がないと誰もが感覚的に理解できることであるのに、なぜか合格数の多さばかりが誇張され競われます。不思議ですね。

合格実績が、実際は何人の受験生により達成されたものであるのか?50人の合格者を出すのに50人受験しているのか、あるいは100人受験しているのか、これは説明するまでもなく、全く意味の異なることです。

そしてこの答えこそ、特に都立高校を第一志望とする受験生や保護者が把握し、納得しておかねばならない大切な情報なのです。

この数字を気にするのは、単に合格率という、合格の確からしさや指導力の優劣を確認するということ以上に、特に保護者にとっては特別な意味があります。つまり、 

”合格率には、その塾の受験指導方針や経営方針が反映されている可能性がある”

ということです。 

どういうことか、もっとストレートに表現すると、

”合格実績を上げるために、塾が上位校に対する無理な受験励行指導を行っていないか?”

ということです。

要するに、合格可能性が低い生徒を一縷の望みにかけて無理に上位校に送り出そうとする傾向がないか、特に合格のボーダーライン付近にいると感じる家庭では、自己防衛のためにも予め確認した方がよいということです。

そんなことは本当に行われているのでしょうか?

これは、私立受験であれば広く行われている、ということは直ぐ理解できるでしょう。

特に、難関国私立校などの合格可能性が少しでもある場合には、前哨戦とか試験慣れのためなどと、できる限り多くの受験を推奨することはよく聞くことです。

本人や保護者にとっても認められたような気持になるので、耳に心地いい話でもあります。私立の場合は、本人や親の負担に問題がなければいくつ受験してもいいわけですから、大きな問題はないのです。

しかし、都立高校の場合は状況が全く異なります。

都立高校を受験するということ 

 塾も営利企業で、生徒の奪い合いに必死なのですから、人気校、上位校の合格実績を伸ばしたい動機が生じるのは自然な心理です。

塾の合格実績でよく見る、右肩上がりの矢印を示したいわけです。

しかし、行き過ぎた上位校受験奨励は、特に都立高校受験の場合は社会悪につながる可能性があると考えます。

なぜこの点にこだわるのかというと、以下の二つの理由があります。

  • 1)都立トップ校に不合格となった場合、待ち受ける現実が厳しい
  • 2)本当に受かる見込みがあるのか?という生徒が結構受験する 

1)は以前の記事に概要の記載があるので、以下をご覧いただければと思います。

 

一部学校で2次募集があるにしても、都立高校受験は一生に一校となる、生徒にとっても保護者にとっても本当に大切なイベントとなります。

都立第一志望の場合、不合格ということは私立の場合とは意味が全く異なります家計の負担を取っても、ライフプランに大きな影響が発生する可能性が生じます。 

2)は失礼ながら、学校の成績からするととても都立トップ校を受験しそうもない生徒が日比谷高校を受験し、不合格になる実例をいくつも知っているからです。

成績も内申もそこそこの生徒たちだと思いますが、都立第一志望であればおそらく学校からはやめるように指導されている状況で受験する生徒です。

塾の甘言に踊らされているのか、本人や家族の切望なのか、2、3番手校であればもっと現実的な合格圏にあると思うのですが、本人は本当に納得しての受験だったのでしょうか。

納得できる私立や国立の併願校に合格が決まっていれば問題ないですが、そうでない場合は望まない高校生活となる懸念が残ります。

いずれにしても、どの家庭も不合格の可能性とその意味を十分理解した上で受験しているのであればもちろん各家庭の価値観ということになりますが、この辺りは当事者ではないものの、もやもやとした疑問が解けません。同じ塾に通う生徒達です。

都立トップ校の進学実績を謳う塾の場合は、この辺りは特に注意したいものです。

信頼できるパートナーであるために

 ここでお伝えしたいのは、塾を評価するために必要な情報を、良い部分も悪い部分も、少なくとも利用者に対しては積極的に提供してほしいということです。

合格者数だけ見せられても、どう判断すればよいか困ってしまいます。

学習塾が提供するサービスは、最終的には志望校への合格か不合格かのどちらかに帰着します。

日比谷高校でも、最終受験者のうち、概ね2人に1人の合格者、逆に見ると2人に1人は不合格となる試験です。

塾はサポートの立場であって、最終的な結果責任は受験者側にあるわけです。

だからこそ、お互いの信頼を築くためにも、常に隠さず誠実な情報を示してほしいと思うのです。そして現実を知ったうえで第一志望に立ち向かう。

信頼できるからこそ、相手の話に真摯に耳を貸し、挑戦した結果にも納得性が出るのです。

保護者の立場としては、学習塾や受験産業全般には以下を広く実践してほしい。

  • 合格者と受験者数は同時に伝える
  • 合格実績の更なるディスクロジャー

受験産業全体に暗黙の了解があるのでしょうか?業界として最も遅れている企業努力の一つなのではないかと感じます。

都立高校受験は、君にとっても保護者にとっても本当に大切な決断となります。

だからこそ結果がどうであれ、その選択は間違っていなかった、できることはやったとお互いに納得できる、パートナーとの信頼感が本当に重要なのです。

そしてそのために聞いてください。

君が所属する、その塾やクラスは、毎年何人が合格し、何人が不合格になるのか?

合格率をみるためではなく、塾の姿勢を確認するために。

その質問への対応が、塾の多くを物語るのだと思います。

受験勉強が君の人生において価値ある時間であるために、信頼できる指導者との出会いに恵まれますように。

ではまた次回。