内申点と合格点の探求 ~分析基礎編

2023年5月1日更新:

 2学期は都立入試本番の内申点が決定する、中学3年生の君にとっては本当に重要な時期となります。

3年生の1学期まで内申点のよかった君は、2学期の定期テストでしくじりはしないだろうかと心配し、これまで悪かった君は、何とか今回だけは良い点が取れないかと期待する。

これから先は試験本番まで、本人も保護者も、何かにつけてドキドキハラハラ一喜一憂の、精神的にも特に不安定になりがちな時期となります。

今回は、都立高校入試の特徴の一つであり、都立入試の合格点や受験対策が複雑多様化する要因でもあり、少し皮肉を込めて表現すれば、入試に関わる悲喜劇を華やかに演出する内申点について、合格点確保という観点からお話ししたいと思います。

内申1点は合格判定の何点か?

  受験生にとっての最初の関心毎は、正にこの1点に尽きると思います。

先ず説明は抜きにして、情報を見てみましょう。

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はい、いきなり結論が出ました。

この一覧が都立高校受験生を悩ます数字の正体です

このマトリクス表は見たことがないですね。今回作ってみました。

この一覧に記載された調査書300点と、学力検査700点の合計1,000点満点で合否が判定されます

同点の場合は学力試験の点数の高い者が上位となります。表の見方としては、

  • 横軸が主要5科目(英数国理社)の素内申合計点(5科x5=最大25点)
  • 縦軸が実技4科目(音美体技)の素内申合計点(4科x5=最大20点)
  • 交わった個所が、学力試験に加算される調査書点
  • 階段状の破線は、素内申40点となる参考ラインです

詳しい算出方法は抜きにして、幽霊の正体見たり、まずは恐れずにこの事実をはっきり認識することが必要でしょう。

一覧にしてみると、自分の立ち位置と周辺状況の双方が直ちに理解できますね。内申点の見える化、これが大事です。

”素内申”はやや聞き慣れない言葉ですが、通知表に記載の評価点、一般に内申点といえばこの数字のことです。9教科x評価点5=45点が満点となる、馴染みのある評価点です。

上記一覧の300満点調査書点を算出する過程で、4教科評定2倍の傾斜得点を反映した”換算内申点”が登場するため、はっきり区別するために、素内申と呼ぶことがあります。

9教科オール5、素内申45の生徒であれば、調査書点は300点獲得となります。

敵か味方か、小悪魔的な内申点

 9教科がオール5の内申45であれば何も悩む必要はないのですが、これが44以下に下がると、なかなか厄介です。内申点がじわじわと暴れ出すからです。

トップを目指せば内申点数不足が牙をむいて容赦なく襲い掛かってきますし、実力よりレベルを落とした志望校であれば、試験本番のミスから天使のように優しく守ってくれる。

同じ内申点であっても、それを扱う相手により、いろいろ違った表情を見せる。トップを目指す受験生の多くを悩ます、本当に小悪魔的な存在です。

例えば、素内申40の破線ラインを見ると、評価の内訳により、表面上は同じ内申40でも、合否判定の調査書点は最大23点(276-253点)の開きが生じるのです

そして、素内申満点の45と40の受験生を比較すると、試験を受ける時点で既に

  • 最大47点(300-253点)
  • 最低でも24点(300-276点)

の得点差があることが表から見て取れます。平均的に見ても、初めから35点程の得点差がついているわけです。

また別の比較ですが、

  • 主要5科がオール5の25点で、4教科がほぼオール4となる15点(=素内申40)の受験生と、
  • 5科がオール3の15点で、4教科がオール5の20点(=素内申35)の受験生は、

調査書点では同じ253点になります。お分かりですか?

5科目(英数国理社)がオール5の生徒とオール3の生徒が、実技4教科次第では同じ持ち点になるのです。通知表の内申が5点も離れているのに、何だか少しショッキングですね。でも現実です。

この点が、都立高校入試において、どこで点を稼ぐかの見極めが必要な理由であり、都立受験を複雑多様化し、受験生や保護者を悩ます理由です。  

受験高校の最終確定までには、試験直前の出願変更制度があるため、発表された応募倍率を横目に、想定する合格点を念頭に調査書点と学力を考慮しながら、進むか退くか、最後の最後まで本当に悩みます。

都立入試、大切なルール把握

 ルールを把握しないと、何故このような点差が生じるのか意味が分からないまま漠然と悩むことになりますし、1点を争うと言われる受験において、素内申40だから良いか悪いか、という大雑把な議論をしてもあまり意味がないことがお分かりいただけると思います。

ですから、まずは早めに事実をきちんと把握して、それから対策を考える。後から、

「それならあっちの教科にもう少し時間を回せばよかった」と焦っても遅いのです。

でも初めからそれほど恐れる必要もありません。なぜかと言って、受験生全員が同じルール上で競い合っているからです。 

 学力最上位で内申がそこそこの受験生も、学力はそこそこで内申が45に近い受験生も、みなそれぞれの弱点を抱えているために、同じように悩むのです。

まずは間もなく始まる2学期の最初の定期試験に向けて、素内申点ではなく調査書点の何点を確保するのか、そのためにどの教科に力を注ぐのか、一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。

内申点を考える上での注意点

 都立の入試制度は、社会環境や保護者や学校側のニーズによって変更となる可能性があります

直近では、全ての普通科高校が、男女区別のない男女合同選抜への移行が決定されています。

つまり、自分が受験する時点での現行ルールを意識することが決定的に重要です。

WEB上には、過去に発信された古い入試情報があふれていますので、情報を閲覧する際には特に注意が必要です

この点に留意せずにSNSやインターネットで情報収集を行った場合、誤った入試制度で受験対策を考える危険性が高まるからです。

同様に、SNSなどに記載された先輩方の学校評価や合格体験記なども、過去のものは情報が古いために実際の現在の状況とは異なる可能性がある点も注意が必要です。

それは本ブログについても同様であり、情報の発信時期を確認することの大切さを予めお伝えしておきます。

調査書点の算出方法

 最後に、一覧に記載した調査書点の算出方法を記載します。簡単な算数です。

  1. 4教科の評定を2倍する(4科x5x2=最大40点)
  2. 5教科と1.を合計して"換算内申点"を算出する(25+40=最大65点)
  3. 換算内申点(65点満点)を300点満点に換算する

 つまり、具体的な計算は以下の通りです。

  • 調査書点 = 換算内申点 x 300/65(小数点以下切り捨て)

計算途中で登場する換算内申点を一覧にまとめると、以下のようになります。先に見た300点換算と同じ構成です。

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内申点の過大評価に注意

 これまでの内容を確認すると、内申点の影響がとてつもなく大きいように感じるかもしれません。例えば内申45と40の受験生の開きが47~24点あるという点。

これでは試験での逆転が厳しいと感じてしまうかもしれませんが、これは正確な認識ではありません。

先の47~24点は、合否判定1,000点満点換算における得点ですから、筆記試験100点満点における1点と等価値ではありません。

5教科試験500点満点は700点に換算されますから、試験の1点は700/500倍される、つまり1.4倍の1.4点となります。

ですから内申47~24点の差は、入試試験100点の価値に戻すと1/1.4の勝ちに圧縮されるため、実際には試験1点に対して33.6~17.1点となります。

この感覚は、内申点を過大評価し、恐れをなして逃げ出さないために必要なものだと思います。

何となくで判断せず、事実を正しく定量化して冷静に状況を見極める。願書提出に向けた最終判断の際には、この感覚が非常に大切な要素となるでしょう。 

以上、都立入試の重要要素である内申点について簡単に整理しましたが、更に突っ込んだ考察については、別の機会にお話ししたいと思います。

ではまた次回。