秋分の日も過ぎ、いよいよ試験本番の冬に向かっての後半戦。
今回は、情報の秋の第4弾、学校説明会の話題でふれた通り、9月の第二木曜日、9月8日に東京都教育委員会が発表した、平成29年度都立入試要綱の内、推薦入試についてお話します。
2017年入試もどうせ中身は昨年と同じだろうという予想に反し、日比谷高校の推薦入試に関する得点配分が劇的に変わっていますので、推薦を狙っている君には特に重要な情報となります。
2017年度 推薦点数配分 劇的変更
さて、まずは百聞は一見に如かず、変更点を見てみましょう。
<日比谷高校・推薦得点配分>
H28 H29
調 査 書 450 450
討論・面接 300 → 200(-100)
小 論 文 150 → 250(+100)
合 計 900 900
ちょっと、面接と小論文の得点配分が100点も変わっていますよ!
割合に直すと、
H28 H29
調 査 書 50.0% 50.0%
討論・面接 33.3% → 22.2%(-11.1)
小 論 文 16.7% → 27.8%(+11.1)
合 計 100 100
見間違いかなと思って何度も見比べましたが、正しいようです。
理由はとにかく、人物重視から論理的思考能力重視に変わりました。
こんな劇的な入試制度の変更が、静かに進行していたなんて知りませんでした。
寝耳に水とはこのことではないでしょうか。あるいは、来年度の受験生には既知の情報なのでしょうか?
日比谷高校は思い切った配点変更を実施しましたね。華麗なる方向転換です。
小論文と聞くと、自分自身の将来について語ったり、抽象的な事象について自由に述べるようなイメージがあるので、口頭で語るのではなく文章で語る方法に変わっただけと思う方がいるかもしれませんが、日比谷の小論文は、資料から客観的事実を読み取って論理を展開していくという、どちらかというと社会科学的な設問なんです。
平成28年度の小論文の設問を見るとよく理解できますので掲載しておきます。
【日比谷高校 平成28年度小論文】
http://www.hibiya-h.metro.tokyo.jp/pdf/28syoumon.pdf
とにかくまずは下にある、東京都教育委員会のページから、配点変更の事実を自分の目で確かめてみてください。
そして、学校説明会に参加する予定の君は、是非学校側から直接この事実を聞いてみてください。設問の傾向が変わるようであれば、その点も触れる可能性があります。
本日9月26日現在、まだ11月5日分の日比谷高校学校説明会の参加枠は残っていますから、推薦を考えている君は、必ずご家族の誰かが出席することを強くお勧めします。
できれば説明会参加後に、本サイトまで学校が発表する変更理由を教えていただけるとよいのですが。
東京都教育委員会
>入試情報(本ブログのリンク先)
>平成29年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目について
>普通教育を主とする学科・総合学科
【平成29年度都立入試 得点配分】
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2016/pr160908a/02.pdf
平成28年度はこちらになります。
【平成28年度都立入試 得点配分】
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2015/pr150910a/02.pdf
年度表記が入っていないので、開くと何年度の情報か分からなくなる資料です。
日比谷高校以外にも、国立高校の推薦得点配分も変わっていますので、併せて記載しておきます。西校およびその他の進学指導重点校では変更はないようです。
<国立高校・推薦得点配分>
H28 H29
調 査 書 500 → 450(-50)
討論・面接 200 → 150(-50)
小 論 文 300 300
合 計 1000 900(-100)
割合に直すと、
調 査 書 50.0% 50.0%
討論・面接 20.0% → 16.7%(-3.3)
小 論 文 30.0% → 33.3%(+3.3)
合 計 100 100
国立は間接的な方法ですが、やはり面接点が下がり、小論文が高まりましたね。
ちなみに変わっていませんが、西高校の推薦配転も参考までに記載します。
<西高校・推薦得点配分(変更なし)>
H28 H29
調 査 書 360 360(40.0%)
討論・面接 240 240(26.7%)
作 文 300 300(33.3%)
合 計 900 900
西高校の場合は、小論文ではなく作文なんですね。
西の作文は、一般的な小論文のイメージに近く、抽象的な命題に対して自分の考えを自由に述べるという設問です。
西校は3校の中ではもともと作文重視です。
都立トップ3校の推薦配分点の違いをまとめておきます。
都立トップ3校の推薦ウエイト
<トップ3校・H29推薦配分(%)>
日比谷 西 国立
調 査 書 50.0 40.0 50.0
討論・面接 22.2 26.7 16.7
小 論 文 27.8 33.3 33.3
合 計 100 100 100
こう見ると、各高校の配点の違いがよくわかります。
高校入試の調査書点は、大学推薦入試でいうところのセンター試験のようなものでしょうか。学力試験がない代わりに、基礎学力の最低ラインを押さえているのでしょう。
日比谷は平成29年度から、他2校同様に面接よりも論文重視となりました。これまでの人物像重視は他校と比較するとむしろ例外だったのですね。
変更理由はいろいろと想像がつきますが、ここでは触れません。まずは、事実をしっかり受け止めることが大切でしょう。
そして、小論文・作文の設問内容も学校により大きく異なります。各高校の特徴がよく表れた設問となっていますので、改めて見てみましょう。
【日比谷高校 H28小論文】
[設問1] 図1は、気象庁が大気中の二酸化炭素濃度を観測している地点である綾里り、南鳥島及び与那国島の位置を示している。また、図2は、これら3地点における大気中の二酸化炭素濃度の変化を示したものである。あとの各問に答えなさい。
問1 図2から、3地点の大気中の二酸化炭素濃度の変化に共通する特徴を二つあげなさい。
問2 南鳥島、与那国島の2地点はほぼ同じ緯度であるが、大気中の二酸化炭素濃度の変化に相違がある。相違点とそれが生じる要因について、あなたの考えを 80~100 字で書きなさい。(以下省略)
【西高校 H28作文】
次のことばについて、あなたが感じたり思ったりすることを六百字以内で述べなさい。
「人生には二つの道しかない。一つは、奇跡などまったく存在しないかのように生きること。もう一つは、すべてが奇跡であるかのようにいきることだ。」(アルベルト・アインシュタイン)
【国立高校 H28小論文】
国立高校は本文が長いので、設問のみ掲載します。
[設問1](本文省略)
問1 1以外に共通な約数を持たないピタゴラス数を(3,4,5)と(5,12,13)の他に3組つくりなさい。ただし、どの組も2桁以内の正の整数だけで構成するようにしなさい。
問2 1以外に共通な約数を持たないピタゴラス数は無限に存在するのでしょうか。あなたの考えを、その理由も合わせて述べなさい。(以下省略)
3校それぞれの求める思考力が全く異なっており面白いです。
ある意味、この推薦入試の論文の設問内容は、各校の特徴や求める生徒像を一番端的に表しているのかもしれません。
設問は学校からのメッセージですから、逆に学校のカラーを知る手がかりの一つとして、第一志望を選択する際の参考になるのではないでしょうか。
そしてここでは触れませんが、集団討論のテーマも三者三様です。
それぞれの学校の詳しい内容については、本サイトに各学校のリンクがありますから、各自確認してください。
君の頼る塾の情報収集能力は適正か?
さて、平成29年度入試に関し、教育機関向けの実施要綱説明会が9月26、27日、10月3日に実施されますので、君の通う中学校では、それ以後に校内で行われる進路指導説明会まで今回の情報は出てこないかもしれません。
しかし、2017年度の推薦入試は、年明け1月23日(月)と決定していますから、本番まで既に4か月を切っています。
本気で推薦を狙う君は、今回の配分変更に対してどう対応するのか、内申点が確定していない現段階ですが、推薦を受ける受けない含めて検討する必要があるでしょう。
日比谷も、西、国立と同様、面接よりも小論文のウエイトが高くなりました。
今までそういう受験生がいるか分かりませんが、内申45で、あとは得意のディベートや面接で勝負というのは通用しにくくなるように思います。
社会的な統計資料を読み取って、論理的な文章を構成するという練習をする必要があるでしょう。そのために、学力試験へ回す時間が減ることも考慮しなければなりません。
学習塾であれば、遅くとも9月8日には既に今回の情報は把握しているでしょう。
小論文ウエイトの増加は、塾にとっては望ましい変更かもしれません。理由は、小論文対策講座への需要が増える可能性があるからです。
そして少なくとも、既に日比谷や国立の推薦入試向けに小論文などの講座を受講している生徒に対しては、早々に確定情報として伝え、その影響や対策を打ち出しているはずです。
逆に万一、現時点で今回の変更情報を塾から聞いていなければ、君の通う塾の情報収集能力と指導力を大いに疑うべきでしょう。
いずれにしても、日比谷高校の推薦入試を目指す君にとっては、小論文にどう対応するかという点が、推薦入試だけでなく、その後の学力試験の結果にも影響してくる可能性があるわけですから、内申45だからといって、安易に推薦を受けることがベターな選択かどうか、という検討は当然必要になります。
小論文対策に時間を使うのか、学力試験に集中するのか、推薦と一般入試のどちらか一方に合格すればよいのですから、戦略的な見極めと判断が非常に重要です。
そしてこれも重要ですが、今まで推薦入試で合格した先輩の合格体験談は、今後は必ずしも参考になるとは限りませんので注意が必要です。
今回は、推薦入試における得点配分が変更になった事実を伝えることが目的ですので、推薦入試を受けるべきかどうかについては、また別の機会にお話ししたいと思います。
星陵祭の影響で、推薦入試の得点配分変更に関する情報発信が遅くなってしまいましたが、どうもウェブ上には今回の変更情報は現時点でも見つからないようですから、多くの受験生はまだこの事実に気づいていないかもしれません。
あまりにも話題に挙がっていないので、実は今でも、もしかすると見間違いか学校側か教育委員会側の記載ミスではないか、と思っているくらい静かなる劇的変化です。
いずれにしても、日比谷の推薦入試を検討している君にとっては大きな影響がある今回の内容ですから、早めに詳しい情報の収集に努めるのがよいのではないでしょうか。
推薦に挑戦する君は、制度の変更に動じない強い志をもって、日比谷高校の一角を担う新しい生徒像として、星陵の丘で春を迎えることをお祈りしています。
そして本日9月26日は日比谷高校の開校記念日。学校はお休みです。
ではまた次回
推薦得点配分変更の理由に迫る
内申高得点なら推薦を受けるべきか考える
都立入試改革の今後の方向性について迫る
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