都立高校入試本番、インフルエンザで休んだら ~学校感染症患者等への追検査実施方法

平成31年1月26日更新:
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<本記事の内容>
 インフルエンザ等で試験を欠席した受験生への追試制度について、実際欠席となった場合の対応方法についてお知らせします。


  受験生にとって、試験直前期に最も大切な受験対策の一つが健康管理。
言うまでもなく、特に警戒すべきはインフルエンザです。入試に向けて準備してきたその努力が全て無に帰するようなその威力は、受験生にとっては大いなる脅威に違いありません。

現在日本各地で猛威を振るっているインフルエンザに対し、過敏になりがちな受験生も多いことでしょう。青春期の拠り所を決する一大イベントを前に、それはある意味当然の反応です。

そんな中、平成30年度都立入試からは、このインフルエンザをはじめ学校感染症のために試験当日欠席となる受験生に対しては、追試が実施されることとなりました。

これは平成28年10月14日付で文部科学省が全国の教育委員会や私立高校に求めた通知に基づく対応だと思いますが、これにより、都立高校においても試験当日のインフルエンザ等やむを得ない欠席による無念の不合格が回避されることとなります。

もちろん、体調万全で試験本番に臨むのがベストな状況に変わりありませんが、過去最多のインフルエンザ感染者となった今年、本人や家族が十分注意をしていても、万が一の状況を完全に排除することはできないもの。
そういう意味では、ちょうど良いタイミングで最低限のセーフネットが備わった、といえるでしょう。

では、実際にインフルエンザの影響で、試験当日に欠席せざるを得ない場合はどのような対応になるのでしょう?
今回は、入試直前の不測の事態に備える精神的なお守り代わりに、今年度から新たに始まるこの都立高校追試制度について、詳しく見てみたいと思います。

 

追検査の実施詳細

 追検査の対象となる受験生は概ね以下の通りです。

追検査の対象者

第一次募集で出願した受験生の内、以下をすべて満たす者

  • 試験当日のインフルエンザ等の学校感染症罹患者
  • 特別措置を申請した者
  • 当該都立高校校長から承認を得た者

または

  • 試験当日の本人の責めによらないやむを得ない入院等の者
  • 第三者機関によりその事実を証明できる者
  • 中学校長経由で当該都立高校長から承認を得た者

試験当日に1教科でも受験した生徒は対象外になりますので、試験途中で退席するような場合は追試を受けられません。

本制度は大部分の都立入試が対象となりますが、分割募集を実施している学校は追試対象にはなりません。これは制度上、予め2度の受験機会が設定されているためです。
そして特に記載はありませんが、推薦入試の場合も追試には該当しません。これは元より学力試験のチャンスが控えているからでしょう。

また、学校感染症だけでなく、不幸にも当日事故や病気等で緊急入院を余儀なくされた場合なども追試対象となる可能性があります。

そして追検査を受けるためには、試験を欠席した際に「特別措置の申請」を行う必要があります。ではこの『特別措置』とはどのような手続きになるのでしょう。
インフルエンザによる欠席の場合、東京都教育委員会の資料からは以下のスキームとなりそうです。確認してみましょう。

Step1:試験欠席の中学校への連絡

 まずは学力試験欠席の旨を在籍中学校へ連絡し、特別措置の意思表示と学校側の対応を依頼することが基本です。連絡時間については記載がありませんが、常識的に試験開始前の連絡が望ましいように思います。
ただし、試験当日に既に中学を卒業している場合や、都外の学校に在籍している場合、このステップ1は必要ありません。ステップ2からとなります。

Step2:試験欠席の受験高校への連絡

  • 都内中学校在籍者(Step1を行った者)
     所属中学校から受験高校へ連絡
  • 既卒業生、都内中学校に所属しない受験生
     本人または保護者が直接受験高校へ連絡

こちらも当然、試験開始前の連絡が望ましいことは同じです。

Step3:病院発行の罹患証明書の取得

 追試対象者であることを証明するための書類の取得が必須条件となります。
尚、追試対象となる学校感染症等の詳細は、『追検査実施要項』内に別表3として掲載されています。それ以外の一般疾病による発熱等で休む場合は、追検査の対象とならないと考えられますから注意が必要です。

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Step4:特別措置申請

  • 都内中学校在籍者(Step1を行った者)
     中学校長を経由で第一次出願高校へ申請
  • 既卒業生、都内中学校に所属しない受験生
     本人または保護者が直接受験高校へ申請

 申請日時:
  平成31年2月25日(月)午後5時〆切

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Step5:追検査の出願

 特別措置の申請は、あくまで追検査の許可を得るための意思表示にすぎません。追試を受ける場合は別途出願行為が必要となります。
この際、出願先の変更はできませんので、必ず欠席した受験校への応募となります。

 出願日時:
  平成31年3月6日(水)9時~15時

実はこの追検査の出願は、分割後期募集・全日制第二次募集への出願と同じスキームとなります。つまり、一次試験を止むを得ない理由で欠席した場合は、分割後期募集・全日制第二次募集制度に沿って第一志望校への再チャレンジとなるわけです。
分割募集実施校が本制度の対象外であるのはこれが理由です。

このため、日比谷高校をはじめとする自校作成問題を課す学校へ出願した者が追試を受ける場合、その試験科目は推薦入試、一般学力試験どの方法とも異なる特別な審査方法が適用されることとなります。その試験方法とはどのようなものでしょうか。
それでは早速追試験の中身を見てみましょう。

追試験検査内容

1)学力検査

  国・数・英3教科の共通問題
  (分割後期・全日制第二次と同一問題)

2)出願校が実施する面接等

 追試においては、要するに共通問題を3教科受けることになります。
ですから、進学指導重点校の受験生がインフルエンザなどで欠席して追試に回った場合には、自校作成問題を受ける機会はありません。英数国の共通問題で高得点を狙うことになります。

また、本来の学力試験では課されるはずの理科、社会の共通問題の受験機会も省略されてしまいますが、重点校をはじめ多くの学校では、この理社に関しては別の形式で問われることになりますので後ほど紹介します。

1.学力検査の実施

  • 3教科共通試験:平成31年3月11日(月)
  • 試験会場:東京都教職員研修センター 

 追試を受験する場合は、生徒は1ヵ所に集まっての受験となります。
実際にインフルエンザによる追試対象者は各校1名いるかいないか程度だと考えられますから、運営側の都合、つまり試験官の配置から考えると、志望校毎の別教室試験は考えにくいでしょう。このため、トップ校の生徒も一般校の生徒も同じ教室で試験を受ける可能性が高いように思います。

ただし、追試受験者がある程度の数存在する場合は、受験校の学力に応じて席次を考慮してほしいものです。トップ校受験生は共通問題であれば、おそらく猛烈なスピードで回答していくと思われますから、一般校の受験生が近くにいる場合は、ペースや気持がかき乱されそうですから。

2.各校個別面接等:3月11日以降

 追試験のもう一つの特徴は、3教科学力試験に加えて面接など各校が定める検査が行われる点です。その内容は、既に『追検査実施要項』として都教育委員会のホームページ上に公開されていますのでここで確認してみましょう。
3教科試験に加えて実施される検査には、以下の2種類があります。

  • 個人面接(理社の内容含む)
  • 小論文・作文(理社の内容含む)

つまり、

3教科学力試験 + 個人面接 + 小論文

の組み合わせで追試特別選考が行われます。そしてここで気になる点は、面接と小論文の内容に理社が含まれる点ではないでしょうか。いったいどのような形式の試験問題になるのでしょう?
面接と小論文についての実施有無やその内容は、各高校により配点も含めて大きく異なりますので、主なトップ校の選考内容を見てみましょう。

日比谷公高校
  • 英数国(共通問題300点)
  • 3月12日:小論文(50分・250点)
     社会又は理科に関する文章や統計資料を読んで、自分の考えを論理的に記述。
  • 3月12日:個人面接(10分・150点)
     高校生活への期待・将来の展望など
     社会又は理科に関する口頭試験
  • 上記700点 + 内申点300 =1,000点満点

公開された情報からは、小論文は推薦入試で課される適性検査的な問題と同様の内容だと考えられます。万一追検査を受けることになった場合は、日比谷の推薦入試の小論文問題を対策することになるでしょう。

西高校
  • 英数国(共通問題300点→700点換算)
  • 3月12日:作文(50分・300点)
     与えられたテーマについて考えたことを記述
  • 個人面接(20分・200点)
  • 上記1,200点満点 + 内申点300点 =1,500点満点

西高校の場合も、作文は推薦入試で課される形式と同じだと考えられます。ですから、西の場合も推薦入試の作文対策が現実的な対応になると思います。

国立高校
  • 英数国(共通問題300点→700点換算)
  • 3月12日:個人面接(10分100点)
  • 小論文(実施なし)
  • 上記800点満点 + 内申点300点 =1,100点満点

この情報を見る限り、国立の面接は10分間で、しかも理社の内容を含むと明記されていませんから、入学意思や人物確認といった基本的な内容となるように思います。
実施要項の情報からは、ここに掲げた5校の中では、面接や小論文に対する要求が一番緩いようにも思いますが、短い時間と簡単な質疑応答で結果が決まることになるため、逆にシビアかもしれません。

戸山高校
  • 英数国(共通問題300点)
  • 3月12日:個人面接(75分・100点)
     社会及び理科の内容の口頭試験を含む。
  • 小論文(実施なし)
  • 上記400点→700点換算 + 内申点300 =1,000点満点

戸山高校の面接については75分という長い枠であるため、人物確認だけでなく、理社についても詳しい説明が求められる口頭試験になりそうな雰囲気が漂っています。

青山高校
  • 英数国(共通問題300点)
  • 3月9日:個人面接(30分・200点)
  • 高校生活への期待・将来の展望
     現代的な課題に対する1分間の意見発表
     中学校までに学習した理社の質疑応答
  • 小論文(実施なし)
  • 上記500点→700点換算 + 内申点300 =1,000点満点

青山高校の面接についても、戸山高校同様に的確な説明が求められそうです。しかも、この面接試験の配点が著しく高いです。共通問題ではなく、本人の能力をしっかり確かめたいという学校の意思の現れでしょうか。
また、現代的な課題に対する意見発表というのは、学校側が与えたテーマについて語るのでしょうか、あるいは自主的なテーマなのでしょうか。いずれにしても、日頃の時事問題等への関心が求められそうです。


こうしてみると、各校それぞれ独自の考えで追検査を行う様子が理解できます。
それにしても日比谷高校は、受験対象者が出るかどうか分からない試験に対して本試験と同様の小論文問題を新たに1問準備しておくのでしょうか?日比谷の小論文は作成するのにかなり時間がかかりそうですから、あらかじめ準備しているとすると、手を抜かない気合の入った対応です。

その他都立各校の詳しい試験内容は、下にリンクのある「学力検査以外の検査の内容」をご覧ください。

 

追検査合格者の決定

 追試の合格者基準については、以下のような記述があります。

  • 追検査を受検した者のうち、各都立高校が定めた基準に達していると認められた者の中から、あらかじめ定めた人員を、その都立高校の合格候補者とする。
  • 当該都立高校長は、選考委員会で決定した合格候補者を合格者として決定する。

これはつまり、最低合格基準点を各校が定めているということです。
ですから当然、自校作成問題に代わって学力水準を見るための英数国の共通問題3教科についても、合格基準点が設定されているはずです。それが何点なのか。

これについては、分かりません。
ただ毎年の試験難易度によって動く相対的な基準ではなく、絶対基準として線引きするものだと思われますから、例えば90点以上といった具体的な数字が設定されているように思います。

 

繰り返しになりますが、この制度はあくまで緊急事態への対応であるので、予め気にしても仕方がない。それよりも受験当日まで、体調管理に気を使って十分な栄養と睡眠を確保することに気を回すべきだという点を改めて強調したいと思います。

今年も全国でインフルエンザが大流行しているとの報道がなされています。

そのような状況の中で、受験のセーフネットとなる追検査制度が実施される状況に感謝しつつも、すべての受験生が追試を利用することなく学力試験本番が迎えられることを願ってやみません。

ここまでくると、学力よりも当日の体調が成否を大きく分ける要素となりそうです。
睡眠負債や体調不良を抱えることなく、気持ちよく試験本番を迎えることができますように。

ではまた次回。

 

>>平成31年度追検査実施概要

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