日比谷高校2018年入試合格点 ~自校作成問題結果レビュー

2018年4月12日更新:
 3月24日の学校説明会で公表された2018年度入試結果について、4月12付で数字の訂正が発表されましたので、訂正結果に従って記事を更新します。様々な情報をお知らせいただきました保護者の皆さまに、御礼申し上げます。

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自校作成問題復活となった平成30年度入試。その結果はすべての都立受験関係者の気になるところ。そこで今回は、2018年度入試結果および来年度入試に向けた、入試傾向について考えてみたいと思います。

春は多くの塾で無償の入試報告会が行われますが、得点情報は語られません。学習塾向け入試結果説明会は6月に行われるからです。このためどの塾よりも早い、日比父ブログオリジナルの評価をお届けします。
 

過去4年間の平均点推移(女子)

 まずは直近4年間の入試結果について見てみましょう。いつも男子からなので、今回は女子から掲載してみます。

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 理科社会の平均点が伸びているのに対し、自校作成問題となった英数国の平均点は明確に下がっています。昨年比で数学は▲11.4点、国語で▲7.6点、英語で▲8.6点平均点の下落です。自校作成問題導入の成果が分かりやすく結果に現れました。

重要なのは、グループ作成問題のままであった場合、あくまで仮定ですが3教科の平均点は共通問題である理社と同じように、逆に2017年よりも上がっていただろうという点。その場合、英語は平均点が80点を超えるような、もはや学力の高い生徒を選抜する設問とは言えない入試問題となったでしょう。適切な入試が維持される、ギリギリのタイミングで自校作成に切り替わったということができると思います。

日比谷女子の特徴は、グラフから明らかなように、他の教科と比較して数学を苦手にしているということでしょう。平均点が他より20点も低いです。今春の入試において東大文系の数学が理系と異なり難化していないのも、この辺りが理由ではないでしょうか。

将来医学部を狙うような数学が得意なリケジョであれば、数学は他の教科と比較して得点差をつけやすい状況がありますから、本番でかなりのビハインドを覆すことができるのではないでしょうか。

平均内申点は自校作成問題かどうかに関わらず、不変という感じです。

過去4年間平均点推移(男子)

 では次に男子の結果を振り返ります。

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 男子の場合も自校作成問題導入の成果がはっきり現れる結果となりました。
昨年比で数学は▲11.5点、国語で▲9.1点、英語で▲8.0点平均点が下がっています。女子と比較すると、英語の落ち込みが少ない印象です。英語は平均点が70点を超えていますから、平成31年度では入試難易度を更に上げてくるかもしれません
(70点を超えた英語の平均点は学校の発表間違いでした)

私は学校の教員でも塾関係者でもありませんのであくまで企業人としての発想ですが、もし自分が入試担当責任者であれば、それでも英語の難易度を上げるよう作成者に指示するかもしれません。理由は、現在の問題レベルであれば、今後の入試では男女とも平均点70点を超える可能性があるからです。優秀な生徒を確保する目的であれば、平均点は60点前半に抑えたいところですから、その目的達成のためにレベルの調整を行うのは自然な発想です。逆に国語や数学は、今のところ今年並みでよさそうです。もちろん、個人的な感想でしかありませんが。

日比谷高校がHP上に発表した試験結果の内、最大の訂正点はこの男子英語の得点でしょう。国語、数学同様に平均点が下がりました。このことから、必ずしも来年度入試で難化するとは言い切れませんが、他2教科と比較すると男女とも高めの平均点ですので、やはり調整はあるかもしれません。

意外だったのは、男子内申平均が微妙に上がったことです。
自校作成問題になれば、学力の高い受験生にとっては内申点のビハインドを試験当日に引っ繰り返し易い状況が生じると思いますし、実際に平均点が下がることでそうなったでしょう。
つまり、グループ作成問題よりも実質的な内申点の価値は下がったと思いますが、どうしたのでしょうか。  

2017年から18年にかけて、日比谷以外の主要4校が受験者数を伸ばしたのに対し、日比谷高校だけは逆に受験者を減らしています。 これは、学力上位層が日比谷に集結している状況と一見矛盾するかのように見えますが、実はそうではないようです。実際には、学力上位層が集結しているからこそ、むしろボーダー上の不安な受験生が危険回避のために他校へ流れたことを示すサインだといえるでしょう。

2019年入試に向けた基礎知識 ~ライバルの学力を知る

男子上位層の学力レベルは確実に高くなっていると思いますので、考えられるのは高学力で高偏差値の受験生の割合が増加したか、内申が低めの受験生が減少したかです。
正確なことは分かりませんが、おそらくは、素内申が41以下で学力がほどほどの受験生が他校に回避した結果ではないかと思います。
この層は従来日比谷受験者の中に大量に存在したと思いますが、自校作成問題に対応する学力に自信がない層が抜けたのではないでしょうか。そういう意味では、学力勝負の入試に近づいたのではないかと思います。受験者の減少はその辺りを物語っているように思います。

 

自校作成問題合格点の検証 

 毎年感じることですが、結局受験生が一番知りたい情報は、何点取れば合格できるかということではないでしょうか。もちろん毎年試験問題も受験生も変わりますから、絶対的な合格ボーダーはありません。

しかし特に昨年度は、合計800点を超えても不合格というような状況がありましたから、どの受験生も自校作成問題復活初年度の合格点には注目しているはずです。特に注目すべき点は、

  • 合格点が800点を超えたかどうか
  • 2019年度合格目標点を何点とするか

もちろん正確な数字は個人では知り得ませんが、例年通り自校作成問題時代の合格点について検証してみます。

尚これ以降は、日比父ブログ独自の考察であり、実際の入試結果や次年度以降の動向とは直接関係ない旨を理解した上でご覧ください。

まずは次の一覧を確認ください。

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この一覧は、先に見た平均点から割り出される、合格判定1,000点満点に換算した得点情報です。試験当日の得点や内申点の換算に詳しくない方のために、簡単に表の見方と換算方法を説明します。

まず基本情報として、都立高校普通科の合否判定は次の点数で決まります。

 試験700点 + 内申300点 =1,000点満点

この1,000点満点の得点の多い順に合格が決まるわけです。

試験得点の700点換算

 まずは試験得点を換算します。女子5教科平均点は353.7点ですから、

 353.7 x 700 /500 = 495.18

となります。5教科500点を700点に換算しただけです。つまり入学試験の得点は1.4倍されます。

内申点の300点換算 

 内申点の場合は少し複雑です。5教科と実技4教科での換算割合が異なるからです。

このため学校が発表するような、内申合計の平均点では正確な換算内申点平均は求められません。なぜならば、2倍される4教科内申点の点数により、換算点数が変わるからです。つまり、同じ内申点でも、実技4教科の得点が高い方が合否判定に関わる換算後の内申点は高くなるということです。

この点は日比父ブログの読者であれば既知のことだと思いますが、何のことか分からない場合は、本文の最後に換算得点を解説した記事へのリンクがありますから、先にそちらをご覧ください。

では日比谷女子の換算内申点を考えます。

女子内申平均は42.6点です。この場合の換算内申点の上下レンジの得点可能性は以下のようになります。

  • 上限 = 4教科が満点の場合
    4教科20 + 5教科22.6
    = 20x2 + 22.6
    = 換算内申 62.6点

この換算点を更に300点換算します。
   ⇒  62.6x300/65=288.9点 

  • 下限 = 5教科が満点の場合
       (4教科が最小の場合)
    5教科25+4教科17.6
    = 25 + 17.6x2
    = 換算内申 60.2点
    ⇒ 60.2x300/65=277.8点

最後の300/65の65は、内申満点45の換算内申点(5教科25+4教科20x2倍)です。つまり内申65点を300点に換算しているわけです。

男子も同様に換算した結果が先の一覧となります。改めて同じ表を再掲します。

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2018年日比谷合格点の検証

 さて、基礎となる得点が出たところで、本年度入試の合格ボーダーを確かめます。

まずは試験の得点と内申の換算得点を単純加算します。次のような結果となります。

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試験の平均点と内申の平均点を足して合格点目安を求めるという方法にどれほど数学的な妥当性があるかは分かりませんが、ここでは結果の厳密性よりも、大まかな傾向を知るための検証ですのでこれで十分です。

さて、結果は男女とも平均点の中間値として、概ね780点となりました。
中間値はグループ作成問題最後の2017年と比較して、女子で▲35.9点、男子で▲34.3点となり、800点を下回ることに成功したようです。

ただし実際の合格点は、これを下回ります。
なぜならば、日比谷高校の最終合格倍率は、男女とも2倍を切っているからです。

2018年度日比谷高校合格倍率
  • 女子: 1.70倍
  • 男子: 1.65倍

2倍で半分合格ですから、平均点以下に実際の合格点が存在することとなります。もうここから先は見積もりの世界ですが、2018年度は男女とも780点をとれば合格という水準だったのではないでしょうか。

 

2019年度入試合格目標点

 以上のことから、自校作成問題における目標点は以下の通りではないでしょうか。

  • まずは780点を確保する
  • 目標は800点超えに設定

少なくとも平成31年度入試が始まった現時点での現実的な合格目標設定は、上記で十分なように思います。もちろん単なる個人の意見にすぎませんが、正確な情報が少ない4月の現時点において、心構えを定める上では十分な参考情報ではないでしょうか。今後徐々に学習塾からの情報が多数発信されるでしょうから、正しくはそちらに従えばよいと思います。

 

2019年英語難化の可能性検討

 最後に、先述した英語の難化可能性について簡単に考えてみたいと思います。

日比谷高校のセンター試験の学校平均点は毎年全国的にも高く、最難関中高一貫校と伍すレベルです。総じて英語が得意な集団だといえると思います。

仮に英語入試問題の難易度を調整するとした場合、その方法として手っ取り早いのが、長文化することでしょう。そこで、日比谷高校の英語の試験問題がどの程度のものなのか、語数に焦点を当てて考えてみたいと思います。

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この一覧は、平成30年度都立入試における英語問題を語数換算で評価したものです。

一覧からはっきり言えることは、進学指導重点校の英語の長文は、共通問題の2倍程度の分量があり、現状でもかなり長いことです。日比谷の2,670語には英作文中の語数は含まれませんから、実際は2,750語程度になります。

重点校同士は総語数に大きな違いはありませんが、日比谷高校英語の大きな特徴は、

  • 記述回答の設問と得点割合が高い

という点ではないでしょうか。記述回答の得点が半分近くを占めています。2018年入試では次の構成です、ヒアリングを除くすべての設問内に自由作文が含まれます。

  • 設問2:30語以上の自由記述 x1題
  • 設問3:20語以上の自由記述 x1題
  • 設問4:20語以上の自由記述 x2題

日比谷の英作文は日本語の英訳ではなく、本文に沿って自分の考えを英語で述べるもの。英語ができても適切に答えられるとは限りません。つまり、四者択一の鉛筆コロコロ神頼みや、あやふやな知識の詰込みでは得点が伸びないということです。 

そのような問題の構成を大きく変えずに難易度を上げるとすれば、問題文の長文化、設問数の増加、あるいは記述語数の増加などでしょうか。
個人的には、受験者の力量が試され、大学入試改革の方向性にも沿った、記述の難易度を上げたいと感じます。 例えば現在20語以上の回答条件を30語以上に上げるなどが考えられますが、それに伴う採点者の負担も増えるのが難点かもしれません。

もちろん、英語の難化は決まったことではありませんが、受験者平均点が70点に達することも考えられる現在、そうした想定はしておくのが良いように思います。いずれ大手学習塾の分析結果や傾向と対策が示されるでしょう。

さて、いかがでしたでしょうか。
自校作成問題復活となった平成30年度入試では、合格点は780点程度まで圧縮されたと言えるでしょう。今回の速報情報が、不安に思う来年度受験生の君や、現在遠方で暮らす君の気持ちを多少なりとも落ち着けることができれば幸いです。

最後に、学校説明会情報を快く提供くださった保護者の方に改めて感謝申し上げます。日比父ブログはいつも読者の応援に支えられて成り立っています。
ライバルに塩を送るような寛容な心に、来春笑顔の花が咲きますように。

ではまた次回。


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