2019年日比谷入試得点レビュー

 様々な波乱のあった平成最後の高校入試も、漸く終わりを告げました。

受験生とその家族の長い入試が終わる頃、世間では既に次年度の入試がスタートしています。学習塾が新しい生徒を獲得しようと行う入試報告会が各地で開かれる中、日比谷高校もまた、3月23日に2019年度入試結果を公表しました。

巷では入試難易度が上がったと言われる2019年度入試結果について、参加した保護者の方から早々情報をいただきましたので、説明会に参加できなかった君のために、結果を含めた来年度入試に向けての情報お届けします。

 

5教科平均マイナス20点の難化

 日比谷の学校説明会の2日前に行われた大手学習塾の入試分析会資料によると、今年の日比谷高校の自校作成問題は、英数国3教科ともに「易化」と評価されています。

ところが実際の受験生全体を母集団とした結果では、数学は前年並みであるものの、英語と国語については明らかに平均点が下がる結果となりました。

この両者の結果ギャップが何を表すのか、入試結果を見ながら考えてみましょう。

 

2019日比谷[女子]受験者平均点

 ではまず昨年度入試から平均点が大きく下がった女子から確認します。

2019日比谷高校[女子受験者]平均点

2019日比谷高校[女子受験者]平均点

女子受検者全体で見ると、自校作成問題となる英国数3教科で20.1点、5教科で26.8点も平均点が下がっています。

これはすなわち、合格点が大きく下がったことを意味します。試験終了直後に泣き崩れ、合格発表までの1週間を暗い気持ちで過ごした女子受験生の多くが、合格発表当日には一転、満開の笑顔となって一足早い春を迎えたのではないでしょうか。

特に、入試の入口となる国語の平均点が12.5点も下がっていることから、極度の緊張の中、過去問などの手ごたえよりも難しく出来も悪いと焦りを感じた国語終了後の休憩時間に、気持ちを立て直すことができたかどうかが合否を分ける鍵となったのではないかと感じます。

数学はほぼほぼ昨年と同水準、英語は8.6点下がり、3教科すべてが平均点60点を割る結果となりました。

2020年以降の入試においても、女子受験生にとっては自校作成問題の平均点が60点を下回る程度の現状のレベルが継続するのではないでしょうか。

共通問題の理社については、理科が易化する一方で、社会の平均点が昨年を10点以上も下回りました。日比谷で10点下がったということは、都立全体では大きく平均点が下がった可能性があります。

社会難化の具体的な要因は、教科書の図表にしか載っていないような「アユタヤ」の位置を知っていないと解けない問題が出題されるなど、従来の傾向よりも細かい知識の出題が数問登場したことが挙げられます。

国立附属など、5教科難関型の受験準備をしている受験生にとっては常識的な知識のため、逆に点差をつける追い風となったのではないでしょうか。

私立英数国3教科型の勉強を優先している受験生にとっては、理社の難化が来年度も発生するのか、気になるところです。

 

2019日比谷[男子]受験者平均点

 では次に男子の結果をお伝えします。

2019日比谷高校[男子受験者]平均点

2019日比谷高校[受験者]平均点

男子受検者全体で見ると、自校作成問題の英国数3教科で13.4点、5教科で16.3点の平均点のマイナスとなり、女子程ではないにしても、やはり10点以上も下がる結果となりました。

科目毎の平均点についても女子同様、英国社は大きく下がり、数学はやや解きやすく、理科は易化という結果傾向は変わりません。

グループ作成問題最終年度である2017年入試の主要3教科の平均点が80点に迫る状況を考えると、平均点が60点前後に収まる現在の入試は、内申点だけでなく学力により正当な得点差が開きやすい良好な入試環境といえるのではないでしょうか。

 

2019年度想定合格ボーダーライン

 では次に、平成31年度入試における合格点について確認したいと思います。

ただし直近の説明会では、内申点についての情報はなかったようですので、内申点情報は昨年2018年度入試の値を参考値として流用します。

内申点については男女とも毎年大きな変動はないことから、参考値としては適切な評価はできるものと考えます。

2019日比谷高校換算点

2019日比谷高校換算点

この一覧は、先に見た5教科平均点を700点に換算した数値を示したものです。

合否判定の基準となる1,000点満点ベースで考えると、学力試験は女子で37.5点、男子で22.8点も得点が下がったことになります。

内申点の水準が昨年相当だとした場合、合格ボーダーが上記得点分だけ下がったことになりますからインパクトは相当大きいです。

では具体的な想定合格点を見てみましょう。内申点は2018年度の情報をそのまま利用します。

ちなみに、300点換算内申点に上下幅が生じるのは、学校が公表する受験者平均内申点が素内申、つまり換算前の値であるためです。実技4教科内申が2倍となるため、4教科内申点の内訳によって、同じ素内申点でも換算後の内申点は異なる結果となります。

2019 日比谷高校想定合格ボーダー

2019 日比谷高校想定合格ボーダー

この一覧は、700点換算の試験得点と、300点換算の内申点を足した合計点を表したものです。

試験平均点と内申平均点を足して想定合格点を確認する方法については、統計的根拠に欠けることは重々承知していますが、男女とも実質合格倍率が概ね2倍程度、つまり受験者平均点が合格ボーダー点に近い現在の状況を考えると、大まかな想定合格点を知るための方法としては簡易で分かりやすい検証値だと考えています。

上記数字の意味を理解いただいた上で、2019年度の想定合格点を考えると、1,000点満点換算の中間値である以下の数字が、合格点の目安として浮かび上がります。

2019年度日比谷合格ボーダー目安
  • 女子:740点
  • 男子:760点

つまり、日比父ブログが採用している例年の目標ボーダー780点と比較すると、概ね男子で20点、女子では40点も合格点が下がったことになります。

つまり、本年度の入試においては、例年以上に試験当日の出来が合否により大きく影響したのではないかと想定されます。

 

2020年度以降の合格目標点

 おそらく学校側としては、内申点に依存しすぎず、試験得点で合否が決まる入試環境を継続して確保したいと考えていると思います。

しかし、逆にこれ以上問題を難しくする、つまり3教科平均点が50点前後となる場合には、逆に試験の得点ではなく内申点の影響が出やすい入試環境となる懸念があることから、今後の自校作成問題は、平均点が60点を割る程度に落ち着いた本年度の入試難易度が今後も継続すると考えるのが適当ではないかと思います。

そしてこの場合における目標得点は、

  • 国英数:各60点x3=180点
  • 理社 :各90点x2=180点
  • 5教科合計:360点

5教科で360点を獲得するということが、入試目標となりそうです。これらの数字の組み合わせは分かりやすくもあり、獲得すべき目標として馴染むのではないでしょうか。

すなわち700点換算では、360x700/500=504点、内申点280点と合わせて、従来通り780点の獲得を目指す。

これまで780点が合格必要条件だった入試環境が、今後は合格十分条件となる、日比谷自校作成問題の難易度といえそうです。

 

国語難化への対応

 本年度の受験生を悩ませた国語の難化ですが、来年度以降も継続するのでしょうか?

まずその前に、国語難化の要因を確認してみましょう。

1)漢字問題の難化

 まず受験生を驚かせたのが、漢字問題です。

確かに本年度の漢字書き取りは、社会人でも難しい。漢字そのものは難しくはないのですが、日常生活で利用することが稀な単語が出題されました。

  1. 通りを行きう人の多さに驚いた。
  2. イキョクを尽くして説明する。
  3. 恩師の説をソジュツする。
  4. ユウシュウの美を飾る。
  5. イッチハンカイの状態では相手を説得できない。

1、4は日常レベル、2、3、5は得点の分かれ目だといえるでしょう。漢字は読み書きともに各2点、読み書き全体で20点もあり侮れません。先の難題3問で6点ですから、内申点で考えれば概ね5教科で素内申2点分、技能4教科で1点分に相当します。

実際の入試では、得点の大小というよりは、第一志望の本番最初の試験の最初の問題でいきなり解答に行き詰るという、ショックや焦りなどの精神的ダメージが大きかったのではないかと想像します。

今後の漢字対策のための基本情報としてお伝えすると、実はあまり一般には知られていないことですが、公立高校入試での漢字問題は、学習指導要領の規定により「読み」は常用漢字2,136字から出ますが、「書き取り」は小学校で習う漢字1,006字(2020年新要領では1,026字)からしか出題されません。このため、徒に特殊な漢字を覚える必要はありません。

ただし基本漢字の書き取りとはいっても、先の出題のように、単語や熟語となるといくらでも難しくできるのです。このため、小学校で習う漢字の組み合わせによる日ごろ利用する機会の少ない単語熟語が、今後も書き取り問題に登場すると考えられます。

2)設問の長文化

 本年度の国語の設問は、昨年の自校作成問題と比較しても長文化が著しいです。

  • 問3:約6,000字(4,700字)
  • 問4:約4,000字(3,200字)
  • 問5:約3,500字(2,600字)
         ( )内は2018年度

こうして比較すると全体で約3,000字、大問1問程度に相当する文章量の増加がみられます。

あくまで個人的見解ですが、漢字はもう少し日常的に馴染みのある言葉が出題される可能性があるように思いますが、平均点60点前後を維持するために、問題の長文化は現状を継続するのではないかと思います。

ですから過去問を解く場合など、国語に限らず英語でも、実際の入試問題よりも文章量の少ない設問に慣れてしまわないような注意が必要になるのではないでしょうか。

自校作成各教科の合格目標点が60点だとする場合、大量の情報の中から回答可能な問題を見極めて必ず得点するという、試験中のタイムマネジメントは、これまで以上に重要になります。

 

日比谷受験生のレベル

 こうして2019年度入試を合格点から俯瞰的に眺めてみると、冒頭に記載した大手学習塾による日比谷自校問題に対する「易化」という評価は妥当でないように感じます。

易化したにも関わらず、受験者平均点が大きく下がっている現実があるとするならば、そこから導かれる状況は、以下のいずれかになるのではないでしょうか。

  • 易化した出題でも平均点が下がる程、日比谷受験生母集団のレベルが下がった
  • 難化した出題にも関わらず、むしろ得点が上がり易化したと判断する程、同塾内の日比谷第一希望者のレベルが上がった。

現状では明らかに後者、学力上位受験生のレベルが上がっているのだと思います。実際塾側も、塾内合格者の偏差値の高止まりを挙げてそのように解説しています。

つまり、難関私立国立附属高校を併願とするような受験生にとっては、日比谷の自校作成問題はまだまだ易しく感じるレベルの問題である一方、日比谷の入試問題を最難問として対策している受験生にとっては、従来よりも難易度が高く厳しい状況になっているということです。

高い内申点に頼って学力がほどほどの受験生にとっては厳しい入試が続き、内申点には自信はないものの、学力が高い受験生にとっては追い風となる入試になっている。

それは学校側が意図した状況なのでしょう。

そのような状況に対し、君はどのような対応で入試本番に臨もうと考えるだろう?

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

来年度の日比谷高校入試では、そんな状況がぴったり当てはまりそうです。今回お届けした情報が、君の受験戦略検討の初期段階の基礎情報としてお役に立てば幸いです。

そして最後に、日比父ブログは読者の皆様の支えで成り立っています。ライバルとなる受験生に塩を送るような寛容な心でいつも情報を提供してくださる、受験生や保護者の皆様に感謝申し上げます。

ではまた次回。

 
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