2021年10月2日更新:
日比谷高校と麹町中学校、日本を代表するこの二つの名物校長も、現在は定年に伴いそれぞれの学校を後にしました。
二人の在任中に、是非とも公立教育対談を実現してほしいと願っていたころが懐かしいです。ただよく考えてみると、公務員を辞めた今だからこそ、自由に対談できる立場ではないかと思うのです。
もう長い間、実現してほしいと思う教育企画があります。
それは、日比谷高校・武内校長と千代田区立麹町中学校・工藤校長の対談です。
昨今どちらもメディアへの登場回数が増えている印象を受けますが、二人が直接対談するイベントは見たことがありません。
立場が許すのであれば、自分自身で企画してみたいと考えているこのコンテンツを、誰が最初に実現するのか。シンポジウムでもテレビ番組でも書籍でも塾主催の講演会でもよいので、是非実現してほしいと思います。
クールな武内、セクシーな工藤
武内校長と工藤校長はそれぞれ1961年、60年生まれの同世代。
武内校長は昨年まで長男が日比谷で3年間お世話になったこともあり、様々な機会に人となりを身近にで感じる機会に恵まれました。
本人は記憶にないと思いますが、直接お話しさせていただいたこともあります。
武内校長は、失礼ながら写真映りはあまりパッとしないのですが、話すと魅力的という印象があります。
特にシンポジウムなどでは、司会者の質問に対して簡潔で無駄のない回答を返すため、聴衆も質問者側ももう少し話を聞きたいと感じることが多いのですが、逆に必要なことを短く端的に言い切るために、話の内容が明確で頭に入りやすい。
一方の工藤校長は、一見してモテそうな匂いを感じる渋みのあるハンサムガイ。
工藤校長とは直接お話ししたことはありませんが、麹町中学校の麹中祭(文化祭)の舞台上で講評する姿を拝見したことがあります。また東京大学のイベントで、語る姿を間近にしたこともあります。
武内校長がクールで淡々と物事を論じる研究者肌なら、工藤校長はエネルギッシュで熱く語る兄貴分のような印象を個人的には受けています。
一見タイプの異なる二人の校長ですが、興味深いのは、二人とも東京理科大学卒業だということです。
校長や教頭と聞くと、教育学部や文系学部卒というイメージがあるように思いますが、理系出身の方が教育的命題に対しても、論理的な思考とアプローチで問題解決への糸口を明確に導くことができる側面があるのかもしれません。
武内校長が日比谷の改革として取り組んだ内容を追ってみると、物事を可視化、数値化して組織全体で情報を共有し評価するという方法論に帰結しますが、正にそのような考え方は理系校長の特徴が表れているようにも思います。
同時に工藤校長の、学校の「当たり前」をやめるという発想も、教育専門学部ではない応用数学的なアプローチがあるからこそ、当たり前を疑い、変えるというアプローチが可能となった側面はあろうかと思います。
いずれにしてもその辺りも含めて、二人が直接対談した場合にどのような教育議論になるのか、興味は尽きません。
個人的には、教育関連イベントとしては、現在最も人を動員することができるプログラムの一つではないかと思います。
千代田区中高連携プログラム
永田町駅を挟んで南北に位置する日比谷高校と麹町中学校は、地図上で確認できる通り、徒歩数分という地元感の強い距離に存在します。しかし残念ながら、私自身の知る限りでは、積極的な学校交流が行われている事実はありません。
でも、これはもったいない。
なぜならば、現在教育界からの注目を集めている千代田区の中高完全独立型のこの二校が、中高一貫校とは違った形で学術面や文化面での中高連携交流を積極的に行い、一つのモデルケースを確立したならば、全国の大部分を占める独立型の公立中学と高校の在り方を先導する、新しくて面白い取り組みができるのではないかと思うからです。
それは全国の公立中学高校に波及し、公教育の質的向上に寄与する可能性もある。
おそらく麹町中学の生徒の中には、日比谷高校に進学したいと強く希望している生徒が少なからず存在していることでしょう。
そうでなくとも公立の中学生にとって、部活や特定のイベントや日々の授業の中で、日比谷の先輩たちの諸々の活動への取組み姿勢を垣間見る機会を得ることができれば、学びの姿勢に対してより前向きで積極的な気持ちが生じるように思います。
例えば、日比谷高校合唱祭の優勝チームが、麹中祭の合唱コンクールに特別参加して、高校生の自主練習の成果を発表するということは、中学生にとっては目指すべき高みを知る刺激になるなど、更なる成長機会の獲得につながるのではないでしょうか。
東京都教育委員会も千代田区教育委員会も、せっかく今そこにある機会なのですから、中高連携に関する検証プログラムを組んでみてはいかがでしょうか。
武内・工藤の二人の定年
さて、様々な共通点をもった二人の注目の校長ですが、2021年現在、ついに二人とも定年退職を迎え、それぞれの学校を去ってしましました。
2020年オリンピックイヤーに還暦の年齢を迎える工藤校長と、その翌年に定年を迎える武内校長。
カリスマ校長として名前が知れた二人も、公務員としての例外はありませんでした。二人とも、それぞれ女子校に新天地を求めて赴任しています。
そして二人の校長が去る日比谷と麹町、どちらの学校にも共通して求められるのは、後任の校長は奇をてらわず功を焦らず、なによりも管理教育を行わないということです。
生徒が自主自律して学校生活を維持する文化が根付いた両校である以上、新しい校長に必要な要素は、生徒や教員を信じて任せる度量が最も重要ではないかと思います。
日比谷高校であれば、大学進学実績を更に一段伸ばそうと、学業面での管理強化を強めたり学校イベントの縮小や部活時間などを制限すること。麹町中であれば、「麹中の当たり前」を止めて宿題や定期テストを復活させるといった普通の公立中学並みの管理教育に戻すなど、生徒の自主自立を脅かす方針を打ち出さないことが肝心です。
もしかすると、教育員会からの再委託などでまだしばらく二人が校長職を継続する可能性もあるのかも分かりませんが、そうでない場合でも、引き続き魅力的な公立の学校の代表として存在できるような対応がどちらの学校にも期待されます。
それは教育委員会にとっても難しい課題だと思いますが、全国の生徒や保護者の期待は大きいとの自覚で真摯に取り組んでいただきたいと思います。
かつて、番町、麹町、日比谷、東大と言われ、平成の時代に再び注目を集めた日比谷高校と麹町中学が、新しい令和の時代においてどのような評価として定着するのか、両校の今後の飛躍に注目です。
都立中高一貫校より麹町・日比谷
もし仮に、希望する都立中高一貫校への中学進学か、麹町中から日比谷高校への進学のどちらか好きなルートへの入学を無条件に実現できる権利があったとするならば、現在であれば迷わず後者、つまり麹町中から日比谷への進学を選択します。
その理由は、あくまで個人的価値観に基づくものですが、立地に始まり教育環境や学校施設の充実度、ブランド評価などを総合的にみてのことですが、少なくとも現在であれば、後者の方がまだまだ価値が高いと感じるからです。
麹町中学は、千代田区内に住む者であれば必ず通うことができる学校ですが、現実的には経済面その他の理由でそれを実現できる家庭は多くはないと思いますし、ましてや麹町中から日比谷高校に実際に進学できる生徒の数も多くて毎年5、6人といったところです。
このため後者のルートが魅力的と感じていても、やはり都立中高一貫校を受験するという家庭の選択に至るわけですが、現在の都立一貫校については、正直今一つ魅力に欠けるというのが個人的な印象です。
その最大の原因は、実際に子を預けたことがないので単なる印象に過ぎないのですが、保護者として実際に多くの学校イベントに参加して得た実感として、都立一貫校は勉強にシフトし過ぎているきらいがあるように感じるからです。
宿題や先取り学習はほどほどでよいので、もっと一貫教育の優位性を活かした豊かな教育に取り組んでほしい。
都立中高一貫校ほど正に、宿題なし、中間・期末テストなし生徒任せの環境を実現した方が、現在よりも魅力的な教育環境が実現でき、かつ生徒の自主性育まれ学力も伸びるのではないか。一人の保護者としてはそう感じています。
武内校長と工藤校長。
二人の有名校長は、現在の都立中高一貫校に対しどのように感じ、どのように対処しようとするのでしょうか。そしてこれからの教育に対してどんな考えを抱いているのでしょうか。
是非とも二人の考えを、対談という形で直接聞いてみたいものです。そしてその際は、発案者として私も呼んでほしいです。
ではまた次回。
麹町中学校と工藤校長