2021年東大入試の行方 ~東京大学新聞より

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 新型コロナの影響で、2021年度大学入試がどのようになるのかは、全ての受験生に共通する悩みです。

そんな中、日本の大学入試をけん引する東京大学の21年度入試への考えが、東京大学新聞2020年7月28日号に掲載されていましたのでご紹介します。

英語4技能試験結果の入試判定への不採用をいち早く宣言するなど、その後の入試動向に大きく影響を及ぼす東京大学の方針を確認することは、先行き不透明な来年度の大学入試の方向性を予測する上ではどの大学の受験生であっても参考となることでしょう。

東大入試担当理事・副学長である福田 裕穂氏のインタビュー記事を元に、独自の考察を交えながら来年度入試について考えます。

 

入試日程の延期は行わない

 まず基本的な大前提として、今後の感染拡大の状況がはっきりしない中では、入試時期を遅らせることは賢明ではないと断言しています。

理由としては、試験時期を遅らせたとしても入試環境が好転するとは限らない中で、受験勉強の長期化による高校生の負担増への懸念が挙げられます。

「東大としては高校生をなるべく早く受験勉強から解放し、より広い視野で勉強できる大学の教育を受けさせてあげたいと考えています。」

出典:東京大学新聞 2020年7月28日号(以下同様)

 

入試科目数の減少はあり得ない

 また都立高校入試などで既に対応が発表されている入試範囲の縮小については、東大の高大接続研究開発センターなどを通じた全国の高校の状況把握から、2か月程度の学習の遅れなら入試までに取り戻せるとの判断により、現時点で出題範囲の変更などは考えていないものの、各教科毎に状況把握の上対応する可能性はあるということです。

ただし、

文系も理系も手を抜かずに幅広く勉強してほしいとの狙いから、大学入学共通テストや二次試験で出題科目を絞ったり、休校が続いたことを理由に問題を故意に簡単にしたりすることは「あり得ないです。」

ということです。

少なくとも東大入試に関しては、受験勉強の強度緩和につながるような変化はないものと考えられます。

 

東大推薦入試の実施方針

 一般入試以上に実施対応方針が不透明なものが推薦入試ではないでしょうか。

特に、各種の学術イベントや海外研修などの実施が事実上制限されている現在、推薦受験を希望する生徒の中には、厳しいと言われる出願資格を満たすことが既に困難となった受験生も多数いることでしょう。

これに対して大学側は、「厳格なエビデンスは求めない予定」方針ということです。

「ポテンシャルはあるが厳格なエビデンスがない、という人を門前払いすることはないので、安心して出願してほしいです。」

ただし、誰でもというわけにはもちろんいかず、

高校2年までの取り組みや面接などで保管しつつ評価する方針だ。

ということですので、俄かに推薦を受けようと考える受験生には太刀打ちできず、高校入学後の早い時期から将来の学問に向けた活動や準備をしてきた生徒にとっては、むしろ追い風となる東大推薦入試となりそうです。

いずれにしても、2021年度からは合格上限数が1校4人までと枠が拡大される状況にありますので、厳格なエビデンスが必要でない状況となる来年度入試においては、どの受験生も早めに学校の担当教師に相談することが求められます。

 

強い志を求む

 コロナ感染拡大で、東京に遊びに行くことすら考えられない状況が続く中、来年度は特に地方を中心に、東大を目指す受験生が減る傾向にあるかもしれません。

そのような状況の中、コロナ拡大の状況にかかわらず、東大入学に足る能力と意欲を持つ生徒が合格できる入試となるよう最大限の努力を惜しまないという大学側の強い意志が現れた入試対応になりそうです。福田入試担当理事は、

「受験生は未曽有のコロナ禍をネガティブに考え過ぎず、安心して東大をめざしてください。」

という大学からのメッセージを贈るなど、受験生に寄り添う気持ちをと配慮を欠かさない、流石の対応といわれるような安心と納得を両立できる東大入試を実現する考えのようです。

 

東大アドミッション・ポリシー

 では次に、現役東大生の長男が東大受験で最も大切な事前対策だというアドミッションポリシーを確認したいと思います。

個人的な想像ですが、どの大学の受験生の中にも、大学の求める生徒像や入試基本方針を確認することなく受験する生徒が多数存在するように思います。30年以上前の私自身が正にそうでした。

しかし東京大学のアドミッションポリシーには、受験対策をする上での最も拠り所となる出題内容についての指針が示されているため、これを理解せずに受験勉強に臨むことは考えられない暴挙であるとの長男の認識です。

なかなか希望する大学に合格できないのは、勉強量や努力の不足のせいではなく、そもそも基本ルールを理解せずに参加するスポーツ競技と同じ状況であるかもしれません。

では以下に東大アドミッション・ポリシーの抜粋を掲載します。詳しくは、東大ホームページを確認ください。

期待する学生像(抜粋)

 東京大学が求めているのは,本学の教育研究環境を積極的に最大限活用して,自ら主体的に学び,各分野で創造的役割を果たす人間へと成長していこうとする意志を持った学生です。入学試験の得点だけを意識した,視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも,学校の授業の内外で,自らの興味・関心を生かして幅広く学び,その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野,あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人を東京大学は歓迎します。

出典:東京大学ホームページ(以下同じ)

入学試験の基本方針(抜粋)

東京大学の入試問題は,高等学校できちんと学び,身につけた力をもってすれば,決してハードルの高いものではありません。本学の学部入学試験は,以下の三つの基本方針に支えられています。

  • 第一に,試験問題の内容は,高等学校教育段階において達成を目指すものと軌を一にしています。
  • 第二に,文系・理系にとらわれず幅広く学習し,国際的な広い視野と外国語によるコミュニケーション能力を備えていることを重視します。
  • 第三に,知識を詰めこむことよりも,持っている知識を関連づけて解を導く能力の高さを重視します。

長男の弁によると、東大入試は東京の私立が出題するような重箱の隅をつついて落とすための知識確認試験ではなく、高校で学ぶ基本知識を理解した上で、その情報を如何に結び付けて応用させるかという、第三の方針が試される試験だということです。

従って徒に難しい問題対策に走るのではなく、基本の応用に時間を使うのが大切ということになります。

2021年度東大入試方針(おさらい)

 2020年7月27日現在、来年度東大入試は以下のようになりそうです。

  • 入試日の延期はない
  • 入試科目の削減調整はない
    (科目毎に範囲調整などの可能性はある)
  • 推薦入試は厳格なエビデンスは求めない
    (高校2年生までの取組み実績は必要)
  • 安心できる入試環境を確保する

ますます先の読めないコロナ感染拡大状況の中、強い志を持って志望校に臨む受験生が相対的に良い結果となりそうな予感です。

現役生の君も浪人生の君も、一過性の環境や状況に惑わされない、自らの希望と将来を見越した対応が求められそうです。

来年度の受験生を陰ながら応援しています。

ではまた次回。

 

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