2017年度日比谷高校入試結果・合格点レビュー ~平成30年度入試基本情報

2018年2月15日更新:

 平成29年3月に行われた学校説明会に参加した新中学生の方から、平成29年入試結果について、学校発表の情報提供をいただきました。
メールの文面がきちんとしていたので保護者の方かと思いましたが、何と小学校を卒業したばかりの新中学1年生と気づいて驚きました。

小学校6年生で自ら説明会に参加して、3年後の日比谷高校受験に備えるのですね。
わが家が説明会や学校訪問に出席し始めたのは中3の夏以降。
自律した小学生が、早くから日比谷を志す姿に心打たれました。

ただ保護者としては、受験ばかりに気を取られずに、学生生活の充実を第一に充実した中学生活を過ごしてほしいと思います。応援しています。

そして新中3の保護者の方からも、同様に情報をいただきました。
そこで今回は、都立トップ校への志を胸に、新しい中学校生活を歩み始める君や受験生となる君のために、平成29年度日比谷高校入試結果をもとに、平成30年度以降の合格のために必要な対応について考えたいと思います。

 

平成29年度 日比谷高校入試結果

 今回いただいた情報と、過年度の情報を合わせて一覧にしましたので、まずはご覧ください。
残念ながら説明会に参加できなかった受験生や保護者の方、そして今は遙か海の向こうで頑張る受験生のためにも、情報を提供くださった方々に感謝です。

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いかがでしょうか。

素内申という言葉は度々出ますが、要するに45点満点の通信簿の合計点です。
2015年度の女子の情報がないのは、学校説明会で直接情報を聞いた際に、女子の数字をメモしなかったからです。

その時点では、まさかこんな文章を書くようになるとは夢にも思いませんでしたので、わが家には関係ない情報だと思ったのです。

さて、この一覧を見て何を感じるでしょうか?
個人的には、平成30年度以降の受験動向を知る鍵として、以下の3点に着目しました。

  • 5教科平均点が年々上昇している。
  • 2016、17年度の内申平均点はほぼ同じ。
  • 数学は概ね他教科より低く、男高女低。

それでは何故この3点に着目したのかについて、中身を見てみましょう。

 

5教科平均点の上昇

 わずか3年分のデータしかありませんが、男女共きれいに試験の合計点が上昇しています。男子はこの3年間で1年毎にぴったり20点ずつの上昇、女子は今年1年で30点も上昇しています。しかもどの教科も概ね揃っての上昇です。
4点x5教科=20点ですから、つまり各教科とも、1~2問程度は正解率が上がっているということです。
これはなぜでしょう?

考えられる主な理由は以下の2点ではないでしょうか。

  • 日比谷受験生母集団の受験学力の上昇
  • グループ共通問題の難易度低下

これはどちらも可能性があるでしょう。
どちらの影響がより強いかは、情報がないため分かりません。
非常に限定的な情報ですが、日比谷受験生も受けている都立共通問題の社会を見ると、2015年から16年にかけて平均点は横ばいですから、試験難易度としては同程度だったということができます。
一方、日比谷受験生は男女とも社会の平均点を、男子で8点弱、女子で4点ほど上げていますから、受験学力向上の一つの目安になるかもしれません。2016年から17年にかけても緩やかな上昇は続いています。

理科は難易度の上がり下がりが見られ、日比谷受験生も同様の動きを見せています。下がり方は緩いですが、判断材料とはなりにくい指標です。

いずれにしても、男子は2年で5教科平均が40点、女子は1年で30点も平均点が上昇している事実は、問題の易化だけでは説明がつかない伸びのように思います。
ですから、日比谷高校受験生母集団の受験学力の上昇は確かな傾向でしょう。


逆に、この平均点上昇が入試問題の難易度低下が主な原因だと仮定すると、この場合はレベルの異なる複数の学校に対して統一した入試問題を設定することの難しさを端的に表すことになるのではないでしょうか。共通問題の難易度は、母集団の低い側のレベルが標準となる傾向にあるといえるでしょう。

これは都立高校に限らず、大学入試のセンター試験や全国の多くの公立高校の全校統一問題に共通する傾向のように思います。

受験者平均点が8割近くに達しようとする現状は、その受験生の母集団から見ると試験問題が簡単すぎるということが言えるでしょう。
難関校の入試問題としては、国数英の平均点は6割前後、高くても7割は超えない程度に設定するのが健全な選抜試験ではないでしょうか。

そういう意味では、各校が自校の理念や学力レベルに適した入試問題を各校で設定するという自校作成問題の復活は、タイミング的にも入試制度的にも、また学校にとっても受験生にとっても納得のいく方向転換だといえるでしょう。

東京都教育委員会および都立高校入試検討委員会の素早い英断に拍手です。

 

2016、17年度内申平均点が同じ

 これも男女共に共通した、はっきりした傾向です。

わずか2年の結果でしかありませんが、個人的には現行の評価制度が続く間は、日比谷受験生の平均内申点に関しては概ね本年度の傾向が続くものと思います。 

これは、男子の2015年度の内申点から16年度にかけて内申点が1点上昇したことからも逆説的に裏付けられるように思います。

15年から16年にかけては、評価制度の変更、つまり4教科内申点2倍評価と特別選考枠の廃止です。これにより、内申点に不安のある受験生の回避が促され、つまり内申平均点を下げる受験生が減少した結果、平均点が上昇したものと考えられます。

ですから、内申点評価方法が同じ間は、内申平均点は横ばいではないかと思うのです。


ところで内申点に関しては、学校が公表するような素内申点が分かっても、受験情報としてはあまり役に立ちません。

何故ならば、例えば素内申41点の場合、受験合否判定に利用される300点換算得点は、281.5点~263.0点までの幅広い得点の可能性を含んでいますから、情報としては雑把過ぎるのです。

高校側も、受験生の合否目安情報として提供するのであれば、4教科傾斜配点後の換算内申点の平均点を発表してほしいと思います。
そうすれば、合格ボーダーをより判断しやすくなります。

幅広い得点とはどういうことかというと、つまり以下の通りです。
4教科2倍換算の影響により、同じ素内申であっても、4教科の得点が高い点数構成の方が換算後得点も高くなるため、獲得可能な得点に上下幅が発生するのです。
素内申41を例にとって具体的に記載すると、

 上限 = 4教科が満点の場合
   5教科21+4教科20=21+20x2
    =換算内申61点
    ⇒ 61x300/65=281.5点

 下限 = 5教科が満点の場合
   5教科25+4教科16=25+16x2
    =換算内申57点
    ⇒ 57x300/65=263.0点

となります。
同じ内申41でも、実際は18.5点の差が生じる可能性がありますから、受験生の得点を特定することができないわけです。
尚、本ブログでは、各科目の内申点についての最低点を2として考えています。

300/65の意味が理解できない場合は、都立高校受験の基本知識がないと判断されますので、以下の記事を確認いただくのが良いと思います。  

調査書点の算出方法を記載します。簡単な算数です。
1)4教科の評定を2倍する
 (4科x5x2=最大40)
2)5教科と1)を合計して「換算内申点」を算出する
 (25+40=最大65)
3)換算内申点(65点満点)を300点満点に換算する

つまり、以下の通りです。

調査書点 = 換算内申点 x 300/65(小数点以下切り捨て)

内申点と合格点の探求 ~導入編 - 日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

 

数学が他教科より低く、男高女低

 数学については平均点が6割程度で、得点差の出やすい科目と言えそうです。
そして男女差がつきやすい。
男女差は、共通問題であるはずの理科でも目立ちます。

日比谷高校のこの入試結果一覧を見ると、一般の男女混合試験における男子有利の状況がよく理解できます。

直近の2年続けて、東京大学の数学が易化しているという事実があるようですが、理由は女子合格者を増やすためと言われています。
日比谷高校の入試結果を見るとその対応意図が分かる気がします。

問題が易しくなれば、数学が得意な受験生の点数も伸びるでしょうが、従来手が出なかったという受験生の加点が進む結果、相対的に数学が得意でない受験生の加点の方が勝り、得点差は縮まるのでしょう。 

日比谷など都立高校の場合、試験は男女別枠となりますから、受験生も学校側も男女の学力格差を気にする必要はそれほどありません。

理社は全都共通問題ですから仕方ないとして、国語、英語の平均点も今年は8割に迫る勢いですから、来年平成30年度からの日比谷の自校作成問題復活の際には、国語も英語も平均点が6割に近づく程度には難易度を上げてくるのではないでしょうか。
もちろん、個人的な意見にすぎませんが。

 

平成29年度1,000点換算平均得点

 ではこれまでの情報を元に、日比谷高校の合否判定基準となる、平成29年度1,000点換算総合得点について考えてみます。

まずは、学力試験と内申点をそれぞれ、700点と300点に換算します。

学力試験は単純に500点満点を700点にしますから、平均点も700/500倍します。

これに対して内申点は、先に見た通り上下幅が出ますから、上限、下限それぞれの値を出してレンジを抑えます。 
正式には、300点換算内申点は小数点以下は切り捨てというルールですが、今回は内申平均点が小数点で示されているため、小数第1位まで残して計算します。

尚、切り捨てルールは、「平成30年度 東京都立高等学校に入学を希望する皆さんへ」の6ページ最下段に記載があります。
結果は以下の通りとなります。 

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この一覧の700点と、上限下限300点を加算して1,000点換算平均点を得ます。
以下の通りです。
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これを見ると、2017年入試において、合否判定となる総合得点が本当に高かったことがうかがえます。
男女とも1,000点換算得点平均は800点を超えています。本当にたった2年の内に、ずいぶん平均点が上がっていますね。

学校が発表している素内申点情報では、上限値に近いのか下限値に近いのか判断がつきませんが、仮に中間値だとすると、平均点は男女とも815点程度。

平成29年度の最終受検倍率は男子が1.92、女子が1.75ですから、男子の合格ボーダーは平均点の少し下、もしかすると800点を超えているかもしれません。女子も800点前後ではないでしょうか。

来年度からは自校作成問題となり、この3年間の得点情報はあまり参考にならなくなるのでボーダーの特定は試みません。
総合点は2015年度に近い値に回帰するようにも思いますが、試験難易度が上がったとしても、引続き総合800点は確保する目標で臨むのがよいのではないでしょうか。

 

過去問は平成25年以前を意識する 

 最後に、直近8年間の入試基本情報を一覧にまとめてみました。

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これを見ると明らかなように、自校作成問題かつ4教科2倍の入試制度は平成30年度が初年度となります。

このためどのような受験動向となるかはっきりしませんが、倍率については、直近2年間と大きくは変わらないように思います。
男女ともざっくり2倍、合格率50%と考えておけば当面はよいのではないでしょうか。
こうして並べてみると、平成28年度から受検倍率の傾向が変化した事実がはっきりと分かります。

そしてこの一覧の大事な情報は、黄色で塗った自校作成問題出題の年度です。

毎年出版される過去問集は、直近5年の問題が掲載されたものが多いはず。
しかし今年平成30年入試向けとして発売される過去問題集は、今年で終了するグループ作成問題が大部分の過去問集となるでしょうから注意が必要です。

塾に通っている君であれば、塾側が承知の上で過去問を選んでくれるでしょうが、独学や通信教育中心で受験勉強をしている君は、試験本番の問題よりも易しい過去問で対策してしまわないよう、意識することが必要でしょう。

バックナンバーはなくても、図書館の貸出しや、ウエブ上でも過去問の配信をしているサイトがありますから、解く解かないは別にして、入試直前期になって慌てないよう、過去の自校作成問題の確保は早めに準備しておくのがよいと思います。

どうしても入手が困難な場合は、グループ作成問題の内、日比谷独自の差し替え問題が参考となるでしょう。

来年度入試に求められる学力や解答スピードがどの程度のものか、これから望む受験期間を有効に過ごすためにも、入試問題傾向が変わる重点校の平成30年度入試に向けて、予め志望校の問題傾向や難易度は把握しておくことが望ましいのではないでしょうか。

備えあれば患いなしとは、今まさに君に求められる成語でしょう。


さていかがでしたでしょうか。
自校作成問題復活初年度となる2018年入試に向けて準備を開始した君は、年間通じて、入試情報には特に注意を向けること大切なのだと思います。
そしてウェブ上の、根拠のあいまいな情報には心かき乱されない。

最近は、本ブログを参考にしたという連絡をいただくことが多々あります。
運営者の不明なサイトの情報を信じ過ぎるのは、一般的に推奨されるものではないと思いますが、有用な情報が少なく複雑な入試制度をもつ都立高校受験生とその保護者の方にとって、幾重にも絡み合った情報を、直感的に分かりやすい表現で再構築し、お届けできればと考えています。

受験産業とは一線を画した視点から、興味本位以上職業未満で真面目に世の中を見つめてみたいと思います。

最後に、多くの受験生のために、学校説明会で発表された入試情報をご提供いただいた方々に対して、改めて御礼申し上げます。

ではまた次回。

日比谷高校学校公表情報

平成30年度 日比谷高校自校作成問題 出題の基本方針


自校作成問題復活!2018年度合格点

2019年入試のライバルの学力
内申1点の価値と影響は如何に

平成30年入試でも基本となる得点換算方法 

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