コロナ重症化予防とワクチン接種

 コロナ禍2年目となる2021年に登場したワクチン。

当初は感染拡大が抑制されると期待されましたが、現在ではワクチン接種の目的は、主に重症化を防ぐことと認識されています。このため2022年に入っても、引き続きパンデミックの終焉は見通しにくい状況にあります。

そして重症化防止効果に関しては、当然のこととして報道の中で語られるものの、エビデンスについては定かではない印象があります。

そこで今回は、厚生労働省と首相官邸がホームページで公開している公のデータに基づき、ワクチン接種と重症化抑制の関係について確認したいと思います。

ワクチン接種後も増える重傷者

 まずは重症者数の推移について、厚生労働省のデータを確認します。

データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報

様々なデータが公開されている中で、重症者数推移のグラフをコロナ発生時から現在まで全て表示すると、以下のグラフとなります。数字は厚生労働省ホームページ「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報」のオープンデータに基づきます。

新型コロナ重症化数推移

このグラフを見て素直に思うことは、コロナワクチン接種が開始された2021年2月17日以降にも、第4波、第5波の重症化のピークが訪れていることです。しかもその波のピークは、ワクチン接種が始まる前よりも明らかに高い状況です。

素人的な発想では、ワクチンに重症化防止効果がある場合、重症化のピークの山は、接種が進むほど下がるのではないかと思いますが逆に増加しています。

そこで状況をより詳しく確認するために、重症化数とワクチン接種回数の推移を比較してみます。ワクチン接種回数に関しては、首相官邸ホームページ内の新型コロナ特設ページのデータに基づきます。

新型コロナワクチン接種数_首相官邸

ワクチン接種が開始された2021年2月17日から4月9日までは、厚生労働省がワクチン接種数を発表していましたが、それ以降は首相官邸が管理公表しています。この事実は、ワクチン接種数という情報が、かなり政治的意味合いの強い情報であることを裏付けるものだと感じます。

公開データに基づき接種者数を重傷者推移と重ねると、以下のグラフとなります。

新型コロナ重症化数-ワクチン接種数推移

こうしてみると、第3波まではワクチン接種の影響下にない形で感染が拡大したことが理解できます。第3波の重症者発生ピークを過ぎた2月中旬から、医療従事者中心にワクチン1回目接種が始まりました。

第4波はワクチン接種開始から1か月遅れで始まり、重症化の増加と並行して、あるいは追いかけるように接種が進む状況が確認できます。グラフからは、第4波はワクチン接種の急拡大に伴って収束に向かったようにも見えますが、実際のところは今一つ判断ができません。

ところが第5波に至っては、ワクチン接種の増加から2~3か月後に、接種増加の傾きに合わせるように重傷者の増加が見られます。

しかも増加数もピーク数も、ワクチン接種の概ね1/10,000で数字が揃っており、ピークについても接種前の第3波の2倍を超える過去最大数となっているため、これでは重症化を抑えるどころか、むしろワクチン接種が第5波の重症化ピークを助長しているのではないかという印象さえ生じる結果です。

ワクチンは重症化を抑制したか?

 この疑問に対する一つの検討材料としては、グラフにはコロナ感染者数(正しくはPCR陽性者数)が表示されていないということが挙げられます。このため、感染者に対する重症化割合を判断する材料にはなりません。この重症化率については、Yoahooニュースオリジナル記事である、以下の文章が指摘をしています。

2021年6月下旬頃から始まった第5波は、全国では8月20日に過去最多となる25851人の新規感染者数を記録し、それ以降は減少に転じました。

(中略)

第5波では、重症者数も過去最多となりました。
新規感染者数のピークであった8月20日から2週間ほど遅れ、重症者数は9月4日にピークとなる2223人を記録しました。
ちなみに、第4波では新規感染者数のピークは5月8日の7233人、重症者数のピークは5月26日の1413人でした。
単純計算では、第5波は第4波と比べて新規感染者数に占める重症者数の割合が減少していることになります。

例えば私が住んでいる大阪府では、第4波では55318人の感染者のうち1757人が重症化しました(重症化率:3.2%)。

一方、第5波では(9月24日時点のデータでは)95218人の感染者のうち942人が重症化しました(重症化率:0.99%)。

重症者は遅れて増えますので、第5波の重症化率はもう少し高くなる可能性がありますが、第4波と比べて大きく減少することは間違いなさそうです。

Yahoo!ニュース
新型コロナ第5波を振り返って 過去最多感染者数と低下した致死率 今後取るべき対策は?(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース

感染者に対する重傷者の割合について、何故か全国の値では比較せずに、筆者の地元の大阪の数字を参照して重症化率が下がった根拠としています。また感染者数の中のワクチン接種者と未接種者の割合が示されていませんので、ワクチン接種が重症化を抑える効果について、”間違いない”と断定する程の根拠がそこにあるのか、正直この文章では判断がつきません。

ただ感染学的な知見からではなく一市民としての視点で見ると、第5波の感染総数が第4波の倍ほどに増加し、重症化数も同様に増えている中で、相対的に重症化率が数パーセント低下していることを取り上げてワクチンの効果を大々的に謳うのは、ワクチンがパンデミックを終焉させる唯一無二の絶対的な方法として接種を促した当初のキャンペーンの勢いからすると、何か釈然としない気持ちになることも確かです。

国民の8割近くがワクチンを接種した後の変異株により感染が倍増したことで、ワクチン推進派の方々が早々に感染防止効果キャンペーンをあきらめて、重症化予防にワクチンの正当性を持たせることにシフトした感も拭えません。

この辺りは、ワクチンを推進する専門家や医師によっても見解やエビデンスの裏付けが異なるため、一般的には明確な根拠を持たないままに、何となくそれが正し見解であるかのように認識している状況だと思います。

そもそもの感染ピークの話

 一方で今回の統計グラフを見ていると、そもそも感染のピークについては、ワクチン接種の有無に関わらず、等間隔で発生しているのではないかという素朴な疑問が湧いてきます。明らかに相似形の放物線が規則正しく並んでるように感じます。

第3波から5波までの各波のピークは、

  • 第3波:2021/01/26|1,043人
  • 第4波:2021/05/25|1,413人
  • 第5波:2021/09/03|2,223人

となり、それぞれ直前からのピーク数は、

  • 第4波:3波の4.0か月後|1.35倍
  • 第5波:4波の4.3か月後|1.57倍

となりますから、ワクチン接種とは何の関係もなく、ただただウィルス側の都合で変異を繰り返しているようにも感じます。季節にも直接関係しない単純な繰り返しである点も、ウィルス側の都合によるものと感じさせます。

その場合、現在迎えようとしている第6波は、1月10日現在、既にピークを迎えてもおかしくない時期に差し掛かっているはずですが、実際には年明けにやっと感染数が増大し始めたことから、むしろコロナそのものが日本人との共存に入り、収束を迎えようとしているのではないかという予感さえ感じる状況です。

第6波の行方

 そして発生時期は今までよりも後ろにずれながらも、2021年末より、いよいよ第6波の足音が聞こえ始めました。その際それに前後するかのように、政府は各地で無償のPCR検査を進めています。

これに対して最近の報道では、もう経済を犠牲にして自粛する必要はないのではないかという論調に変わりつつあります。PCR検査を行わなければ感染者数が増えないことが、一般にも認知されるようになってきました。

症状を自覚することを通じ、通院により感染者と認められる一般の感染症とは異なり、感染状態ではない疑陽性者を大量に生み出すPCR政策に、一般市民もウンザリし始めています。

特に受験シーズンを迎える今の時期、受験生とその保護者にとっては、PCR検査陽性は悪魔の宣告に近いものがあり、止めてほしいというのが正直なところでしょう。

市民と政治とのこの意識の差は、まだしばらく埋まりそうにもありません。

”ワクチン・検査パッケージ”という、ワクチンに高い感染防止効果が期待できない時点で既に意味を失った対策が、現在も堂々とまかり通る背景には、政府側に何らかの思惑があるものと考えてしまいます。

もしかするとそれは、憲法改正による緊急事態条項を導入するために、パンデミックの恐怖心を利用する必要があることから、コロナが収束に向かう懸念を排除し、感染拡大を演出するためのキャンペーンではないかとさえ感じることがあります。

もしそうであるにしても、既にその目論見は多くの国民に見透かされているため、市民をコントロールするための手段としては悪手ではないかと感じます。若者の行動を制限してまで自粛を促す本当の理由はどこにあるのでしょうか?

いずれにしても、第6波がどのような結果に落ち着くのか、一人の国民として保護者として注目せずにはいられません。学生の皆さんが、制限のない学校生活に一日も早く戻れることを願っています。

ではまた次回。