新型コロナウィルスに翻弄された2021年度都立高校入試が終了しました。
本年度日比谷高校を実際に受験した中学生の方から、入試評価をレビューしてほしいとの問い合わせがありました。合格発表までの1週間が不安で仕方ないのだと思います。
このため、2月23日時点では十分な情報がそろっていない状況ですが、コロナ禍での入試状況について考察したいと思います。
男子合格倍率はやや上昇1.5倍
本年度の男子受験者数は、昨年より2名増える横ばいの状況となりました。
コロナ禍の安全志向で受験人数が減るかと思いましたが、むしろ微増となった結果、最終受験倍率は昨年よりもわずかながら上昇し、1.63倍となりました。
その結果、仮に、合格数を昨年同様の147人と仮定した場合には、実質的な合格倍率は1.5倍をわずかに上回る程度になる見込みです。
この数字を合格者と不合格者で表すと以下のグラフとなります。
受験生の最大の関心事は、合格ボーダーラインが何点かという点だと思います。
合格倍率が1.5倍程度という入試状況から見る限り、内申も試験の得点も平均的な受験生は十分合格圏、内申が平均以上ある場合は、多少試験の出来が悪くても落ち込む必要はない状況です。
女子の実質倍率は1.6倍下回る
女子についてはコロナの影響か、受験者が10名ほど減少し、入試制度が変更となった2016年以降最低数となりました。
その結果、受験倍率は1.66倍となり、男子と比較するとやや高い状況がありますが、例年通りの落ち着いた入試が継続しそうです。
合格者数が昨年同数と仮定した場合、合格倍率は1.58倍となり、ここにきて日比谷高校の入試環境は、女子と男子でほとんど同じ状況となる見込みです。
ですから男子受験生同様、本番の出来が悪い場合でも、内申点が平均程度にある受験生の場合は、合格発表の掲示板を見るまでは望みを捨てる必要はないと思います。
5教科試験問題評価
ではここからは、2021年度入試問題について確認します。
例年試験直後には、SAPIX中学部が入試問題分析を公表するのですが、今年は2月23日時点では共通問題のみが公表されている状況です。
肝心の自校作成問題、英・数・国の試験難易度を比較する指標がない状態ですが、それでも試験直後にいただいた受験生からの声に応えるべく、過去の経験とできる限りの情報を基に、本年度の入試難易度について考えてみたいと思います。
尚、以下は個人の主観に基づいた情報であり、特に本年度は情報正確性の点において信頼度の高くない参考値である旨を十分理解した上でご覧ください。
理科・共通問題
理科に関しては、難化したという意見もある中で、SAPIXの分析によるとむしろ易化している状況です。
昨年度の理科共通問題と比較すると、「記述力」と「分析力」で1段階階易しくなったという結論です。
これは易化したというよりは、2020年試験がやや難しすぎたので、例年の難易度に戻るように調整したというべきかもしれません。
それでも2019年度と比較すると「思考力」に関して1段階難化となっていますので、本年度の受験者平均点は、2020年度よりは高く、2019年度よりはやや低いというところでしょうか。
社会・共通問題
社会に関しては、SAPIXの分析では、この3年間難易度は変わっていません。
社会は2019年度に難化して以来、理科と異なりその難易度を維持したままのようです。
コロナにあっても、記述力と分析力を重視した試験を維持している点は、大学入試で求められる資質の変化を意識したものだと思います。
自校作成問題の難易判定
自校作成問題となる英数国に関しては、なかなか判断が難しいところです。
理由は先に記載した通り、例年の参考指標であるSAPIXの分析が、本年度は未だ公表されていないからです。
本ブログでは、教育委員会や大手学習塾が公表する、公共性と客観性の高い1次情報に基づく評価分析を旨としていますが、コロナの中で忍耐強く結果を待つ受験生の心情に応えるべく、本年度は思い切って、入試後に連絡いただいた受験生の声と、受験掲示板での声を頼りに問題の難易度を探ってみることにしました。
英語=難化
英語に関しては、本年度関係代名詞が入試範囲対象外となったことから、試験が成立するのか少し懸念がありましたが、結果的には例年よりも難しいと感じる受験生が大多数のようです。
文章量も増加し、読解や英作文も骨のある問題が並んだ結果、例年よりも平均点は下がることが予想されます。
尚、日比谷名物の50語自由英作文について、今年は2019年度の歩きスマホにも通じるような社会的マナーやルールに基づく設問となりました。
自由英作文の傾向として、特定の知識や状況に依存しない普遍的なテーマとなる社会性や道徳に関する設問が今後とも続くのでしょうか。
数学=易化
本年度の数学は、三角関数が対象外となり、また図形問題も取り組みやすい問題となったようです。
しばらく難化傾向にあった数学の平均点は、過去2年と比べて上がることが予想されます。女子の場合、平均点が50点を下回ることはなさそうです。
このため、数学が苦手で本番に手ごたえのあった生徒も油断はできませんし、逆に数学が得な生徒にとっては、ライバルを大きく引き離すことは難しいかもしれません。
国語=易化
数学と並び、国語も相対的に解きやすいと感じたようです。
このため、苦手な国語がそこそこできた受験生も安心はできない状況ですし、逆に国語を得点源と自認している生徒にとっては、やや物足りない状況であるかもしれません。
2021想定平均点と合格ボーダー
以上の情報に基づき、令和3年2021年度日比谷高校入試における合格ボーダーを検証してみたいと思います。
改めての注意事項ですが、本情報は個人的な見解である点と、また本年度は英数国3教科について客観的な根拠が不足すると自覚している点を十分に理解いただいた上でご覧ください。
まずは想定平均点です。
直近の2019、20年と比較して、男女共5教科平均点は上昇する見込みとなります。男子で概ね350点、女子で340点程度になるものと思われます。
男子3教科は10点ほど、女子は6点ほど平均点が上がるものと考えられます。また理科社会は男女とも前年の平均点同程度と想定されます。
その結果、合格ボーダーについては、内申点平均は昨年並みとしてみた場合、1000点満点に換算した最終的な結果は以下の通りです。
都立高校入試の場合、内申平均点は換算前の素内申で発表されるため、4教科実技を考慮した換算内申点は明確には判断がつきません。
このため、内申点に上下幅を持たせた表示となってしまうのですが、2021年度の想定平均点は、男子764点、女子754点付近ではないかと考えられます。
日比谷高校の入試説明会に参加すると口頭で説明があるのですが、合格ボーダーは平均点の少し下ということが言われますので、本年度の想定合格ボーダーは切りよく男子760点、女子750点としたいと思います。
男女とも合格倍率が概ね1.5倍、3人に2人は合格する試験ですから、合格ボーダーは平均よりだいぶ下になりそうな気もしますが、実際にはそれだけボーダー付近に統計上のピークが出来上がっているということだと思います。
ですから、合格ラインの前後1点が合否を分ける大きな隔たりとなるわけですが、ここに掲げたボーダー予測はあくまで個人の想定ですので、最終的にはどのような結果になるか分かりません。
もし上記得点が確保できていない場合でも、それほど悲観せずに、合格発表に強い気持ちで臨んでほしいと思います。
二次募集はあるか?
最後に、本年度の二次募集の可能性について触れたいと思います。
本年度は昨年同様二次募集の可能性はそれほど高くはないものの、昨年よりはややリスクが上昇していると考えられます。
その理由は学芸大附属高校の一般入試の定員が、今年から20人近く増加したからです。
大混乱の末に2次募集が発生した平成31年度入試から、昨年40人分の正規合格を増やしたことにより、3月の都立高校合格発表後の繰り上げ状況はやや落ち着きを取り戻す結果となりました。
本年度、同校が定員を20名程度増やしたものの、同時に正規合格者も20名程度増やしているため、単純な算数の世界では大きな混乱にはつながらない結果が期待されますが、仮に都立合格発表後の辞退者が近年同様の割合で出る場合には、増加した20名枠分がリスクの増大に対する不確定要素としてどのように働くか、今のところ誰にも分かりません。
そうした潜在的リスクについて、念のためここで指摘したいと思います。
本年度の受験生は、忍耐強さが求められる入試となりました。できるだけ多くの受験生が、第一志望の合格切符を手に入れることを願ってやみません。
ではまた次回
【動画】2021年日比谷入試速報
本記事の合格ボーダー<追加>情報
2020年度日比谷高校入試結果
2019年度日比谷入試結果
日比谷二次募集はなぜ発生したか?