学芸大附属定員充足率と日比谷辞退数

 日比谷高校合格発表前にお伝えした、本年度の二次募集予想について、最終結果が確定しましたので事後検証を行いたいと思います。

結論として、2021年度は二次募集は発生しなかったわけですが、注目すべきは、事前に想定した学芸大附属高校と日比谷高校の入試関係性について、本年度もはっきりと確認できた点です。

両校の関係性について、改めて確認します。

学芸大附属と日比谷高校入試

 まずは事実確認として、日比谷高校の入試結果を掲載します。

2021日比谷一般入試結果/出典:日比谷高校HP

2021日比谷一般入試結果/出典:日比谷高校HP

これを踏まえて日比谷高校の入試を総括すると、以下のようになります。

2016-21年 日比谷高校一般入試実施状況

2021年度の日比谷高校入試結果は、二次募集に関連する指標に注目すると、以下の通りとなります。( )内は昨対比です。

  • 合格数:272人(△3)
  • 合格定員余剰数:18人(△2)
  • 辞退者数:12人(±0)
  • 欠員までの余剰数:6人(△2)

結果的に、本年度の入試運用に関しては、概ね昨年と同じ状況となりました。

二次募集が発生しない限りにおいては、安定した入試運用が実現したといえる結果ですが、二次募集につながる欠員発生までの入学手続き者の余剰人数は6人となり、欠員の発生した2019年を除くと過去5年で最も低い数字となります。

水面下では、毎年数名内の微妙なバランスの上に成り立っていることが伺えます。

2019年度のように、何らかの理由、おそらくは受験者の得点分布の影響で合格者数が若干少なかったり、何らかの影響、おそらくは学芸大附属高校の正規合格者数が適正数より少なく、その後の繰上げ合格者数の増加の影響により、日比谷の辞退者数は大きな影響を受けることとなります。

両校の入試運用関係性

 そして、その両校の今年度の結果を並べると、以下のようになります。

2016-21年 学芸大附属高校合格充足率/日比谷入学辞退者数

両校の入試運用の接点となる、学芸大附属(附高)の「定員充足率」と日比谷の「入学辞退者数」の関係を表すグラフとして、前回の検証で掲げた予想直線に、本年度の結果をプロットすると以下の通りとなります。

2021年度結果

  • 縦軸/日比谷高校辞退者数:12人
  • 横軸/附高正規合格者定員充足率:1.84倍

学芸大附属高校/日比谷高校入試関係性指標

本年度の結果は、予測グラフ上に一致する結果となりました。

ちなみに本年度の学芸大附属高校の入学定員は、「120人程度」となっていますので、ここでは120人として充足倍率を考えています。

「程度」の幅を示す範囲として、定員数が上下5人の115人および125人の場合の充足倍率の変化に対するプロット位置のずれ幅について、x軸方向の赤いエリアとして合わせて表示しました。

いずれにしても、想定される1次直線のずれ範囲内に納まる結果となり、グラフの信憑性が増す結果となりました。

学芸大附属高校の入試が安定するまでの入試では、当面このグラフの相関関係が概ね成り立つのではないかと想定されます。

学芸大附属高校の適正合格者

 さて、本年度附高の繰上げ合格者が何人であったのか、正確には学校側しか知りえない情報になりますが、ネット上では今年もそれなりの数の繰上げが出されたとされています。

その場合、定員に対する直近の正規合格者の充足倍率1.8~1.9倍では、現実的にはまだ足りないという結論になります。

個人的には、グラフ上に黄色で示したように、少なくとも2倍近い正規合格者を、2月17日に出した方がよい状況に今はあると思います。

本年度定員を120人とした場合、合格余剰2倍の場合は240人の正規合格、本年度実際の221人よりも19人多い結果となりますから、まだこれでも十分余裕がある状態といえるのではないでしょうか。

2倍の合格者を出したほうが良いと考える理由は、何も日比谷高校や都立高校の入試運用安定性を求めるためではありません。

その理由は何よりも、学芸大附属高校側が最も重視する、「第一志望ファースト」を実現するためです。

あるべき第一志望ファースト

 学校側が第一志望の受験生を大切にしたいのであれば、第一志望の受験生を「正規合格」で採用することをもう少し大切にした方がよいと思います。

もちろん、憧れの学校に入学するという結果の点では、正規合格でも繰上げ合格でも同じでしょう。

でも志願者や保護者の喜びや心理的負担、もしかすると経済的負担は相当異なります。

学校側の意図としては、2018年度に経験した、入学手続き者が多すぎるという事態を避けたいという心理があるのは理解できます。少なめに合格者を設定し、不足分を後から追加した方がよいと考えているのかもしれません。

あるいは、受験生からの評価と自己評価の間にギャップがあるために、本気で適切な合格数を設定しているつもりでも、結果的に欠員が発生してしまっているのかもしれません。

もし前者であれば、それは学校側が説明会でアピールする想いに加え、入学確約書まで使って実現しようと試みる第一志望ファーストの本質とは異なる結果を招いているということになりますし、自らの利益優先で他校の入試への配慮に欠けるという結果にも名つながりかねません。

後者であれば、今はまだ、もう少し現実を冷静に受け止めて対処すべき事態だということになります。

私自身は、企業の中であるブランドの価値を高めることに責任を負う立場にあるのですが、そうした目から見ると、いじめ事件以来の学芸大附属高校の対応は、控えめに見ても、あるべき方向性とは逆の方向に進んでしまい、本来は高いはずのブランド価値を学校自ら棄損しているのが残念でなりません。

学校評価を本来あるべき状態に早く戻すためにも、何よりも、同校への入学に憧れる第一志望の受験生のためにも、そして結果的に、何かと制約の多い都内の高校受験全体を健全なものとするためにも、改めて正規合格者の数については検討すべき段階にあるのではないかと思います。

日比谷高校と学芸大附属高校は、都内高校受験界においては何かと比較されるライバル関係にあります。

公立中学に進む生徒にとって、それぞれが憧れの国公立の学校であるように、高校受験における双璧をなす好敵手としての信頼関係を構築し、続けてほしいと思います。

それぞれの学校に合格された皆さん、おめでとうございます。

ではまた次回。

 【動画】学芸大繰上げと日比谷二次募集

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