2022年1月23日更新:
受験シーズンが終わりを迎えると、入れ替わるように新学期に向けた新たな塾選びが始まります。
都内高校受験を中心に、上位を目指す生徒や保護者が意識する学習塾として、早稲田アカデミーとZ会を思い浮かべる家庭は多いのではないでしょうか。
どちらの塾も知名度および合格実績共に高いものがありますが、では、どちらを選んでも同じかというと、この二つの学習塾は実は全く性格が異なります。
ですから当然のことですが、どちらの塾も、合う子と合わない子が現れます。
今回は、これら二つの塾についてそれなりに知る親の目から見た、両塾の選択や活用方法について、初めて塾選びを経験する保護者の方に向けてお伝えしたいと思います。
尚、ここに記載する情報は、あくまでも一保護者の主観的意見であることを予めお断りすると共に、記載された情報の正確性については、各学習塾にお問い合わせいただくことを前提にご覧ください。
早稲アカ志向、Z会志向
中学受験はもちろんですが、子がまだ中学生である高校受験のための塾選びについても、保護者の意志はそれなりに反映されると思います。その際に、代表的な大手二つの学習塾の状況を把握することは、塾選びのミスマッチングを生じさせないための基礎知識として重要な情報だと思います。
現役東大生と現役公立中学生を持つ保護者の立場から見た早稲アカとZ会の違いは、高校受験を目指す中学生の場合、あくまで個人の体験に基づく主観的な意見ですが、以下のようになります。
身近にある
- 早稲アカ:△
- Z会:✖
塾に通う上で一番ネックになるのが、当然のことながら、自宅から通うことができるかということになります。
早稲アカは、23区であればそれなりの主要駅にあるという印象ですが、Z会へ通塾するハードルは相当高いものがあります。教室自体が早稲アカと比較しても圧倒的に少ないからです。
Z会の教室は以下の通りです。
23区9教室の内、二子玉川、自由が丘、荻窪の3教室は個別指導塾ですから、実質的な学習塾は6か所のみとなります。要するに、副都心と中学生の多い世田谷、練馬、江戸川区にそれぞれ1校となります。
ですからZ会に通う場合は、副都心に通塾するという覚悟が求められると同時に、お互い地域も学校も異なる知らない仲間との授業になります。
副都心まで通わなければならない場合は、敢えてそうした環境を求める生徒や家庭にとってはよい塾ですが、そうした環境に馴染まない子供にとっては、通塾そのものがストレスに感じる可能性もあります。
早稲アカは、どの駅にでもあるという程ではないですが、それでもZ会に比べると、周辺地域の生徒が集まってくるという状況ですので、ある程度知った仲間の中で上を目指したいという場合は早稲アカの方がよいと思います。
ちなみに、通信教育を希望する場合はZ会の一択となります。
Z会の通信教育は、数年前よりオンライン中心のタブレット講座にシフトしてきましたが、これがコロナ禍に見事にマッチした印象です。一時期資料請求も届かないほどの活況を見せていました。
ただしZ会通信講座は、Z会進学教室の内容とは全く異なる別の学習手段と認識するのが正しい認識です。
誰でも入塾可能
- 早稲アカ:〇
- Z会:△
早稲アカとZ会の大きな違いの一つが、生徒数にあります。
早稲アカは、学力や本人のやる気に関わらず、基本的に誰でも入塾することが可能であり、受け入れ許容範囲が広く生徒数も多いのが特徴です。
一方のZ会は、基本的には入塾テストの基準点を満たさない生徒は入塾できない状況にあります。
この点は、塾の経営方針の違いが端的に表れる項目となります。
早稲アカは、各教室とも「レギュラークラス(R)」と「特訓クラス(T)」に分かれており、この二つは授業の進度やレベルに相当な違いがあります。
早稲アカの誇る上位校への高い合格実績は、Tに所属する生徒が叩き出すといっても過言ではありません。ですから、Tクラスに所属できるかどうかが結果的に上位校への合格のカギとなります。
そしてTクラスの中の特に学力の高い生徒は、ExiVと呼ばれる副都心の教室で開かれる「必勝コース」に参加する道が開かれます。
中学受験でも高校受験でも、筑駒、開成といった最上位に合格する生徒はこの特別コースに所属することが基本前提となり、地域の一般教室の特訓クラスよりも講師や教材の内容は更に質の高いものとなります。
企業的に見ると、合格実績は上位に位置する必勝や特訓クラスの生徒が、収益はそれらを支えるレギュラークラスの生徒が担うようなピラミッド型の構図となります。このため早稲田アカデミーは、どのような学力の生徒でも受け入れるという姿勢となります。
これに対しZ会は、教室数が圧倒的に少ないことからも分かるように、所属する生徒は基本的に早稲アカの特訓クラス以上と考えることができます。
高校受験向けのクラスの場合、上位コースのVクラスと、一般クラスのKコースに分かれていますが、早稲アカのTとRとは異なり、特に学年が低い頃は授業進度や内容自体に大きな差はありません。
Z会は中学受験、高校受験、大学受験のどの教室をとっても、基本的に少人数程度の生徒数しかおらず、規模よりも質を求める教育集団という印象です。
ちなみに、クラス分けとなるVやKが何を表す頭文字なのか、Z会自身の中でも明確には分かっていないようです。
経済性
- 早稲アカ:△
- Z会:△
塾代に関しては、両塾とも地元密着の学習塾と比較すると高めです。
大手の塾でも地元密着型の場合は、都立や公立を指向する塾が多いと思いますが、難関校合格を謳う場合には、レベルの高い生徒を上位の学校へ誘う教師の確保や教材の開発費などにそれなりのコストやノウハウが求められるのだと思います。
早稲アカは組織を大規模にすることで、Z会は小規模を維持することで、その辺りの経費や体制を確保しているのだと思います。
Z会の副都心校に通う場合は、交通費もそれなりに見込む必要があります。
塾代総額表示
- 早稲アカ:✖
- Z会:〇
これは塾を検討している際には気づきにくいことですが、予め塾代の総額を把握しておかないと、通塾後にやられたと感じる可能性がある点に留意する必要があります。
この点Z会は、カタログに明記された塾代の中に、授業料や教材費の他、月例テストなどの代金がすべて含まれており、後から思っていたのと違うということがありません。
一方の早稲アカの場合は、受講料と年会費、教材費やCT(コンピュータテスト)と呼ばれる月例テスト代などがそれぞれ別建て表示になっており、総額がいくらになるか分かりにくくなっているので注意が必要です。
このため高校受験コースの場合、入塾カタログ上ではZ会の方が高い金額が表示されている場合でも、実際に必要な金額を足してみると、早稲アカの方が実は高かったという可能性が往々にしてあります。
企業的に見ると、少しでも経済的に見える工夫ということだと思いますが、保護者の立場から見ると、この点はZ会の方が誠実です。
いずれにしても、両塾以外の塾を検討する場合でも、実際にはどれだけの費用が必要なのか、予め確認する必要があります。
学校テスト/内申点対策
- 早稲アカ:△
- Z会:✖
定期テスト対策も内申点対策も、都立高校を目指す受験生であれば、どちらも同じ意味になると思いますが、Z会は定期テストや内申点対策というものはありません。
主として副都心に様々な地域から様々な学校の生徒が集まる環境ということもあり、教科書も進度も異なる中で、事実上そのような指導は不可能だとも言えます。
早稲アカも、基本的には学校のテスト対策向けの塾ではありませんが、Z会よりは教室数が多く、それなりに同じ学校の生徒が集まってきますので、過去問やテスト対策などの情報交換はZ会よりは期待できる部分があります。
いずれにしても、都立第一志望で、学校のテストや内申点対策に重きを置きたい場合には、両塾ではなく地元密着型の塾に通う方が、塾代も相対的に安く合理的です。
バイト講師なし
- 早稲アカ:✖
- Z会:〇
この点は会社規模がそのまま結果となって表れているのだと思いますが、早稲アカは所属する多くの生徒の授業を賄うために、TかRクラスかに関わらず、地元教室には大学生バイト講師が普通に配置されています。
ただ講師の所属大学は、東大や早慶をはじめそれなりの大学の講師を集めているようではありますので、気になるようであれば塾に問い合わせすることもありだとは思いますが、講師の学歴や所属大学は、生徒に対しても塾内の講師間でも、基本的には非公開となります。
Z会は、基本的には講師を職業とする「プロ講師」という名目を謳っていますが、全員がZ会所属の社員講師ということではなく、非常勤講師も見られます。また個別指導教室では大学生アルバイト講師が配置されています。
少し余談ですが、Z会の東大進学教室には別塾に所属する有名講師が非常勤で務めており、大人数教室や衛星授業を受け持つような人気講師を、驚くほどの少人数で独占して授業を受けることができる場合があり面白いです。
通塾の目的
塾に通う目的は、小中高大いずれの進学を目指す場合でも、志望校への合格ということになります。
ところがこの明確な目標に対して、早稲アカとZ会では、考え方やアプローチの仕方に相違がみられます。
早稲アカは、どちらかというと近視眼的で、良くも悪くも志望校合格を目標に定めて、最短距離で成果を得るような効率重視の勉強法という印象があります。これに対してZ会は、がむしゃらに志望校合格を目指すというよりは、先を見据えた学びに重点を置くように感じます。
別の見方をすると、早稲アカは脇目を振らずに目標一直線、Z会は急がば回れ的にあれこれ寄り道しながら考えるという印象です。
ですので、無駄なく合格を勝ち取るノウハウにあやかりたいと考える場合は早稲アカの方がしっくりくると思います。数をこなして実力をつけるという印象です。
Z会は、もちろん志望校への合格が第一目標にあるのは間違いありませんが、腰を落ち着けてじっくり目標に向かうイメージです。場数を踏むというよりは、良問をじっくり考えながら力をつけるという印象です。
向く子/向かない子
これまで見てきた通り、二つの塾は大きく性格が異なります。このため当然、どちらの塾にも向くこと向かない子が現れます。
まず、自分から進んで勉強できる子は、どちらの塾を選んでも、結果は伴うでしょう。
ですから塾選びは、塾の良し悪しを探すよりは、どちらの雰囲気が好きか、馴染むかという点で選択すればよいと思います。
ところが自ら勉強に向かえない子は、早稲田アカデミーが向いていると思います。
なぜならば、宿題もそれなりに出されると共に、塾が発破をかけたり指導したり、あの手この手で生徒が勉強するように仕向ける仕掛けがあるからです。
これに対してZ会は、子の自立心を尊重するというか、もちろん宿題はありますが、基本的に勉強するもしないも本人任せという状況があります。
ですので、勉強に向かうためにある程度の強制が必要な子がZ会に通うと、家ではあまり机に向かわずに、成績も思うように伸びないということが発生するかもしれません。
逆にマイペースでじっくり勉強に向かいたい子が早稲アカに通うと、少し煩わしさを感じるかもしれません。
保護者にしても、早稲アカが向く親とZ会が向く親は異なります。
志望校合格という結果にコミットすることを第一に考える場合には、早稲アカに子を預ける方が気持ちが落ち着くように思います。仕事は過程や手段ではなく結果だと考えるタイプです。
逆に、学びの過程も含めて将来につながる学力を身に着けてほしいと考える場合には、Z会に預ける方が落ち着くのだと思います。仕事は過程が大事で、結果は後からついてくると考えるタイプです。
いずれにしても、合格実績はわが子とは異なる他人の子どもが上げた成果ですから、そうした他人の数字で学習塾を選択するのは、あまり賢明ではないように思います。
わが子目線の冷静な判断が、保護者には求められます。
今回は、都内高校受験で実績の高い大手2校を例にして、塾選びの基準について考えてみました。
いずれにしても、カタログやホームページ上の情報で判断するのではなく、体験授業や無料の模試に参加したり、保護者自身が塾に出向いて講師の話を聞いたり、場合によっては自分自身が体験授業に参加したりする手間を惜しまないことが大切だと思います。
それぞれの子に合った、塾選びの一助となれば幸いです。
ではまた次回。