2021日比谷高校難関大学合格速報

 東京大学63人合格で世間を驚かせた2021年度日比谷高校。

昨年2020年は、東大の合格数はいま一つでしたが、国公立医学部合格が伸びるなど悪くはない結果でした。今年は逆に東大が伸びた分、医学部をはじめ、他の難関大学合格数に影響が出ているのでしょうか?

今回は、学校の実力を測る目安となる現役合格数に着目しながら、日比谷高校の合格実績推移について考えます。

尚、今回は速報値として、受験と教育情報サイト「インターエデュ」の合格実績を採用します。正確な数字は、国立二次試験合格発表後、学校がホームページで公表する値となりますので、今回の数字はあくまで速報のための参考値となります。

東大+国公立医学部【現役】合格数

 初めに東京大学と、その難易度に匹敵するとされる国公立医学部の合格数の推移を確認します。

日比谷高校「東京大学+国公立医学部」現役合格実績

2021年度は、国公立医学部合格はやや減ったものの、東大合格が20人以上増えたために全体として大きく合格数が伸びました。

その結果、東大と国公立医学部を合わせた現役合格数は68人となり、3年生の5人に1人は東大または医学部に合格することとなりました。

2016年から19年までは、この合計数は概ね40人程度で安定していましたから、昨年度以降急激に増加していることになります。

グラフの中の水色の背景、2015年から18年までは、旧都立入試ルール、

  • 4教科内申は1.4倍
  • 定員の1割内申不問枠

で入学した卒業生の実績です。

2019年度の合格実績は、4教科内申2倍、内申不問枠廃止後の初めての卒業生で、東大と国公立医学部の現役合格数が減ったことから、内申重視の入試の影響が出たのではないかと囁かれることもありました。

ところが翌年の2020年、そして今年、そうした評価を吹き飛ばすように最難関合格が急伸しており、内申重視の影響はむしろ限定的であったことがある意味証明される形となりました。

最近の学校説明会で度々学校側が言及することですが、実は日比谷の場合は学力が高い生徒ほど内申点も高い傾向があるということですので、今年の結果を見る限りでは、学力の優秀な生徒を確保するために内申点を廃止すべきという意見は、現在の内申点割合程度であればあまり的を得た意見ではないのかもしれません。

東京一工国立医学部【現役】合格数

 では次に、上記に最難関大学の基準として取り上げられる、京都大学、一橋大学、東京工業大学を加えた合格数を確認します。

現役の合格力を確認するために、その他の国公立大学合格数も合わせて表示します。

日比谷高校「東京一工国公立医学部」現役合格実績

東京一工および医学部全体で見ると、隔年毎に増減しながら全体としては着実に増加していることが理解できます。

そして何と2021年度は、凡そ100人近い3年生が最難関国公立大に現役合格したことになります。東大が増えた分、他が顕著に減っているということがありません。

その他の国公立大学を加えた全体合格数も同様です。

1学年の生徒数を320人と仮定すると、1/3以上、本年度の結果はまだ分かりませんが、概ね1/2に近い生徒が現役でいずれかの国公立大学に合格する状況にありそうです。

国公立大学を受験する生徒は、基本的にその大学が第一志望と考えられますので、現在日比谷高校の生徒は、学年の約半分、150番程度の成績であれば、国公立大学へ現役で合格する可能性がある状況ということになります。

早慶上理+私立医学部【現役】合格数

 では次に、私大の難関とされる、早稲田、慶應、上智、東京理科大に私立大学医学部を加えた現役合格数を確認します。

日比谷高校「早慶上理+私立大医学部」現役合格数

私立大学の場合は、一人が重複合格可能ですのであくまで参考値ですが、こちらも内申点重視の入試に変わった後の方が合格数が伸びているように感じます。

重複はあるものの、全体合格数として、難関私立合格数は生徒総数を上回っています。

日比谷高校の場合、毎年早稲田と慶應は全国で上位の合格数となります。2021年度も、早稲田は3位(早稲田系列校を除くと実質1位)、慶應は2位となります。

内申点強化の影響

 これまで見た通り、2016年度からの都立入試における内申点強化の影響は、少なくとも日比谷高校の現役大学合格実績を見る限りでは、マイナスの影響は現れていないように見受けられます。

ただしこの点は、内申点重視にした結果実力の高い生徒が確保されたというよりは、以下の結論と考える方が正しいように思います。

  • 都内高校受験学力トップ層の日比谷志向が高まった
  • トップ層は内申点が高い、または影響を受けない

東大合格数だけではなく、今回見た本年度全体の伸びを受けて、来年以降はより一層高校受験生の日比谷志向は高まることが予測されます。

学習塾の方でも、都立トップ校の位置づけや対策について、改めて見直しを迫られる状況となるでしょう。

2021年度の東大合格数の衝撃を考えると、内申点不問の入試にすべきという声は下火になるかもしれません。取り上げるのであればそれよりも、

  • 学校間や教師間の内申点格差の是正

を問う方が、より建設的で健全な議論ではないかと感じます。この点については、別の機会に考えたいと思います。

都立進学指導重点7校の比較

 では最後に、他の都立重点校との合格実績の比較を行います。

2021年都立進学指導重点7校の難関大学現役合格実績比較

このグラフを見ると、少なくとも2021年度の最難関国公立大学への合格に関しては、日比谷高校が完全に抜けていると言うことができます。

  • 日比谷:単独第1グループ
  • 西、国立:第2グループ
  • 戸山、青山:第3グループ
  • 立川、八王子東:第4グループ

最難関国立大の合格実績からは、これら4グループに分かれることが見えます。その他の国公立大学の数字はどのようになるのでしょうか。

ちなみに昨年度状況は以下の通りです。

2020年都立進学指導重点7校の難関大学現役合格実績比較

昨年と比較すると、西高の難関国公立合格数が増加したことが確認できますが、日比谷の伸びに隠れて目立ちにくくなっています。

2020年は、難関以外の国公立も含めると、日比谷、西、国立、戸山の第1グループと、青山、立川、八王子東の第2グループに分かれるように見えましたが、果たして2021年度の国公立全体を含めた結果はどう変化するのでしょうか。

今回は、日比谷高校東大合格63人の数字を確認するために、国立二次試験発表前の速報値に基づき2021年度の結果を確認しました。

その結果、日比谷高校は、東大が増えた分他の難関大学合格数を減らすのではなく、全体として伸びていることが理解できました。

この結果が、来年度の高校受験の勢力図にどのような影響を与えるのでしょうか?

また、来年度の日比谷高校の実績は、どのように推移するのでしょうか?

オンライン授業や学校行事の運営状況は、どのように変化するのでしょうか?

引き続き高校受験を中心に、全体の動向を見守っていきたいと思います。

ではまた次回。

【動画】2021日比谷難関大学合格速報