東京都公立中学の内申点シリーズ。今回は教育・文化の都たる文京区の状況について考えます。
まず初めに、内申点の比較基準となる、東京都公立中学全体の平均標準内申点を掲載します。対象となる公立中学は、3年生が40人以下の学校を除く579校となります。
都内公立中学の内申点の状況をまとめると以下の通りです。
- 各教科の標準内申点は概ね3.3点
- 9教科の合計標準内申点は29.8点
- 都立一般入試の標準内申点は300点中の199点
「標準内申点」について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
文京区の標準内申点
では全都平均と比較した、文京区の内申点の特徴について確認します。対象となる8校全体の標準内申点は以下の通りです。
文京区の公立中学平均標準内申点は、全都平均と比較して9教科の素内申点では1.7点、都立高校入試の内申得点で11.7点高い数字となり、区全体としてみると相対的に内申点の高い行政区になります。
この数字は、教育熱心な家庭が多いとされる文京区のイメージを裏付ける結果であるように思います。
文京区の標準内申点ランキング
では次に、区内8校それぞれの内申点を確認します。標準内申点を高い順に並べると、以下の通りとなります。
文京区の中学校の特徴としては、まず8校全てが都全体平均以上の標準内申点を持つという点です。その意味では、区内のどの中学校に通った場合でも、都立高校入試において著しく不利になるということはないでしょう。
その上で、8校それぞれの標準内申点には結構な差があるという印象です。
この2019年度中学3年生の内申点において、区内で最も高い標準内申点が期待される第九中学は、全都平均と比較して都立入試の内申得点で24点のアドバンテージがあるのに対し、最も低い第一中学校は0.1点とほぼ都内平均と同じ得点になり、2校の間には23.9点もの開きがあります。
これは都立一般入試の合否判定において、第九中学の方が第一中学に通う生徒よりも23.9点内申点が高いことが期待されるということを意味しますから、小さくはない学校間格差ということがいえる状況です。
その差をより理解するために、2校の標準内申点を直接比較してみます。
第九中学と第一中学の内申点比較
文京区第一中学校
先に確認した通り、第一中学の9教科全体の標準内申点は、全都平均とほぼ同じ数字になります。その状況をそのまま示すように、9教科それぞれの内申点のボリュームゾーンは社会を除き、3に集まっています。社会についても5,4,3がほぼ同じ割合です。
ところが各教科の加重平均となる素内申を見ると、全都平均とは少し状況が異なります。第一中学の内申点の特徴は、以下のような状況です。
- 社会を除き、5教科の標準内申は全都平均より低い
- 音楽を除き、4教科の標準内申は全都平均より高い
その結果、9教科の素内申合計は、全都平均の29.8点に対し、第一中学は29.6点と都平均を下回っています。ただし、得点2倍となる4教科の内申が相対的に高いため、入試換算した内申点では都平均よりもやや高いという結果となります。
私立国立中学に抜ける生徒の割合が多い文京区とはいえ、公立中学に通う生徒の5教科平均内申点が全都平均よりも低いという状況が妥当であるのかどうか、この資料からは分かりませんが、統一学力テストの結果などを通じて検証する余地のある結果ではないかと感じます。
文京区第九中学校
第九中学校は以下の通り、明らかに第一中学や都平均とは異なる状況です。
- 5教科で、内申4以上の割合が最多
- 保健体育を除き、内申5,4の生徒が半数以上
- 全ての教科で内申2、1の割合が1桁
- 9教科全ての素内申が都平均より高い
どの教科も素内申が4に近い結果、都平均と比較して9教科素内申で3.7点、都立入試の得点で24点ものアドバンテージが生じることになります。
この状況は先の第一中学とは対照的です。学校間も直線距離で2km程度しか離れていない学校同士でこの差は生じるものでしょうか?
第九中学は和風庭園で有名な六義園の東南に位置する地下鉄南北線沿いに位置し、人気の小石川中等教育学校に近い中学校であす。
一方の第一中学は、小石川植物園の南西に位置する地下鉄丸の内線沿線に位置し、周辺には筑波大附属、お茶の水女子大附属、東京学芸大附属各校をはじめとする国立私立学校が集中する文京の名にふさわしい立地の中学校です。
こうした立地や周辺環境から判断する限りでは、第一中学の住環境や教育意識、家庭所得などが第九中学に劣るということは考えにくい状況ですが、内申点という観点で見るとこの2校には歴然とした差が存在します。
ちなみに第一中学とは直線距離で400mほどしか離れていないお隣の音羽中学については、第九中学ほどではないものの、都立入試得点で都平均よりも8.5点のアドバンテージがあるなど、やはり一定の差は生じることとなります。
これらの差を合理的に説明する理由が存在するのか、あるいは、その差が各学校における内申点の評価の厳しさや甘さといった運用差であるのか、ここに掲げる資料だけでは判断をつけることは難しいです。
ただし、この2校に生じる内申点の状況は、都内各校の内申点格差の発生理由を説明するための潜在的な材料としては大いに価値がありそうです。
文京区第六中学の状況
では最後に、都内公立中学の中でも千代田区の麹町中学と並んで特に有名な第六中学校の内申点状況を確認したいと思います。
文京区第六中学校
これまで確認した学校と比較すると、第六中学は第一中学校に近い内申点構成を持つ学校ということができそうです。美術を除き特別内申の高い科目がない一方、一中よりも全体的に少しずつ内申点が高いという状況です。
その結果、全都平均と比較して都立一般入試の内申点では13.8点のアドバンテージが生じることとなり、それなりに都立高校入試を優位に進めることができる立ち位置にある中学校と考えることができます。
定期テストを廃止し、ミニテスト方式の採用で内申点が特異に高い世田谷区桜丘中学の+35.4点、および千代田区麹町中学校の+30.2点と比較すると、圧倒的に有利な状況とは言えない中で、2015年から20年の直近6年間の日比谷高校への累計合格数がトップ3であることを考えると、世間の評価に違わず、中学受験から国私立校へ進学しなかった生徒の意識や学力も、相対的に高いことが伺えます。
今回は、都内でも教育意識が特に高いとされる行政区の一つである文京区の公立中学校の内申点の状況を確認しました。
全ての学校が都平均標準内申点を上回る状況がある中で、それでも各学校間には小さくはない内申格差が存在することが確認できました。
私自身が教育委員会や教育関係機関に所属していたならば、その差異がどこから生じるものであるのか、所属する生徒の資質によるものであるのか、家庭や住環境による斧であるのか、あるいは一般的に言われるように、学校や教師の評価基準の差によって生じるものなのか、文京区であればよいケーススタディモデルになるように思います。
引き続き、都内各区の内申点の状況を明らかにしていきたいと思います。
ではまた次回。
人気の誠之小学校と第六中学