女子学生の子宮頸がんワクチン接種を考える

 厚生労働省が2013年に、小学6年から高校1年の女子を原則無料として接種推奨したものの、副反応などの影響により同年内に接種推奨を取り下げた子宮頸がんワクチン。2021年11月に改めて積極的勧奨に舵を切り、2022年4月からの無料接種再開が告知されています。

若年層の子宮頸がん罹患リスク

 そもそも子宮頸がんは、どの程度罹りやすい病気なのでしょうか?

この点を示す公的確証として、国立がん研究センター・がん情報サービスがホームページ上で公表する統計値を確認します。

がん情報サービスホームページ

子宮頸がん_若年層罹患数

子宮頸がん_若年層罹患数

2021年11月現在、2016年から18年3年間の統計値が公表されていますが、これを見ると、未成年女子の子宮頸がん罹患数は平均で2人。14歳までの女子に至っては0人ですので、小中学生は勿論、高校3年生までは罹るリスクの極めて小さいがんとなります。

大学院卒業の年齢となる24歳まで含めても、合計29人。統計上は、学生の間は発症する心配がほとんどない疾病と言えるのではないでしょうか。

勿論、若年層は検査数が少なく発見されていないだけという考えもありますが、全ての疾病について同様の状況がある以上、子宮頸がんだけその点を指摘しても統計的には意味がありません。

つまり、未成年者や学生の内に子宮頸がんワクチンを接種するという行為は、接種する時期のがんを防ぐものではなく、将来的な罹患に対して予防する効果を期待したものだということになります。

子宮頸がんの罹患リスク

 では全ての年代における子宮頸がんのリスクは如何ほどでしょうか?同様に、がん情報サービスのデータに基づき、2016-18年平均の各年代の女性の全てのがんの罹患数を確認します。

女性の年代別がん罹患数(上皮内がん除く)

女性の年代別がん罹患数(上皮内がん除く)

グラフを見ると、女性にとって子宮頸がんは相対的に罹患リスクの高いがんではないことが直感的に理解されるのではないでしょうか。乳がんの圧倒的な罹患数と比較すると、子宮頸がんは女性のがん全体の2.2%、がん全体の中で15番目に罹りやすい、むしろ10番目に罹りにくいがんという位置づけです。

子宮頸がん_年代別罹患率

子宮頸がん_年代別罹患率

子宮頸がんのみを取り上げると、冒頭の数字の通り、未成年ではほとんど罹ることがなく、30代から罹患数が顕著となります。とはいっても、他のがんと比べると、先の通り全体として特別罹りやすいというわけではありません。

女子学生のHPVワクチン接種

 このように、乳がんほど罹患リスクは高くなく、学生の内はほとんど罹る心配のない病気に対して、小中高生の内からワクチンを打つ意味はどのようなものでしょうか?

10代からのワクチン接種が、30代以降の罹患リスクを抑える効果が期待できるのでしょうか?その期待は、ワクチンの重篤な副反応リスクを上回る利益がもたらされるものなのでしょうか?

本編では、子宮頸がんの発生とヒトパピローマウイルス(HPV)感染の関係性にも触れながら、未成年者がHPVワクチンを積極的に接種すべきものであるかどうかについて検証します。

ここに書かれた内容は、統計的な数字に基づく検証であり、医学的見地からの考察ではない点を予めお伝えします。

続きは以下の文章をご覧ください。

ではまた次回。