男子開成高校受験のススメ

2022年8月13日更新:

開成学園新校舎/画像出典:開成学園HP

開成学園新校舎/画像出典:開成学園HP

 高校受験に臨む男子たる君が、3年後に東京大学に進学希望であり、自分にはその素地が十分あると考えているのなら、高校受験の際に開成高校受験をお勧めします。

これは首都圏に住む中学生に限ったことではなく、地方でも離島でも、全国すべての受験生に贈る言葉です。

開成高校難易度>東大難易度

 わが家の長男曰く、

開成高校受験は120%の力で準備して何とか正規合格、東大受験は80%の力で準備してそれなり現役合格。

だそうです。

どちらも概ね合格倍率3倍の入試ですが、総論として、東大に現役合格するよりも、開成高校に正規合格する方がしんどいという実感を述べた言葉だと理解しています。

2016年当時の高校受験生だった長男は、同時に、

日比谷高校は寝てても受かるから大丈夫。

とも言っていました。当時日比谷に合格できるかどうかやきもきしていた親を尻目に、自分は開成に受かる準備をしているのだから、日比谷の問題など屁でもないと感じていたようです。

長男が受験した当時の日比谷入試問題は、グループ作成問題という、大部分の設問が他の進学指導重点校との共通問題、理社に至っては都立全体の共通問題ということで、開成合格目指して本気で勉強している受験生にとっては、第一志望が日比谷であっても本命はついでの試験といったところだったようです。

現在は当時とは異なり、英数国は各校が任意の試験問題を課す完全な自校作成問題であり、当時よりは試験の難易度もだいぶ高いとはいえ、相変わらず理社は都立全校共通の問題であり、3教科にしても指導要領範囲外の出題はないという縛りがあれば、やはり求められる受験強度に対する状況は大きくは変わらないと思われます。

開成高校受験=東大入試前哨戦

 高校受験の段階で開成合格を目指すことは、それが第一志望であれ併願であれ、また意識的であれ無意識であれ、3年後の東大入試の準備をしていることになります。

長男の日比谷入学後の成績は、3年通じて概ね100番前後。2桁になったり超えたりという状況がずるずる続いた感じです。

親から見ても本人の口から出る言葉を聞いても、定期試験対策は大して行っていないようですので、それを考えるとそれなりの成績と言えるかもしれません。

その様な状況について、当の本人は全く気にしない状況が2年続き、部活引退後にスパッと気持ちを切り替えて、1年で東大に合格するという目標を定めて受験生活をスタートさせたのでした。

3年になるまで塾にも通わず、家でも勉強せずの2年間でしたが、受験に臨むと決めたとたん、開成高校受験当時の鬼の集中力が復活したのです。

東大入試前最後の駿台模試でも、見事なE判定を獲得して家族で笑ったものですが、いざ蓋を開けてみると、年が変わって1月の本番直前2週間前からやっと対策を始めた当時のセンター試験では、目標の早稲田センター合格を見事に獲得し、東大2次でも、得点開示の結果、上位でも下位でもない平均的な得点で合格。本人が順位に対して面白味がなくネタにできないと嘆いた程度に安定した合格だったのです。

その年、日比谷から東大に現役合格した生徒の中に、開成高校合格者が多数含まれていることを妻から聞いた時、やはり高校受験での強度の高い受験を乗り切った経験が、わずか3年後であるが故に、中学受験以上に余韻となって大学入試にも利いてくるのだろうと感じたものです。

高校受験で開成に合格の爪痕を残そうと試みることは、中高一貫校生ではない高校生が、未来の東大入試における合格実現性を疑似的に肌で確かめることのできる貴重な修練の場なのです。

開成高校受験は諸刃の剣

 それであれば、学力に覚えのあるどの男子高校受験生も開成高校を目指すべきかというと、全くそんなことはありません。

冒頭で、「東京大学に進学希望であり、自分にはその素地が十分あると考えている」と書いたのには意味があります。

おそらく、その学力が十分にない生徒が迂闊に開成を目指して受験勉強に臨んだ場合、むしろ本人の高校受験全体にとって良い結果を生まない可能性が高いです。

理由は至極単純、合格に求められる準備範囲が膨大かつ求められる達成度が高いため、受験勉強に向かうための時間や負担が大きすぎ、中途半端にかじると逆に学習内容の消化不良や自己嫌悪に陥るなどのマイナスの影響や結果が出てしまうからです。

そういう意味では、当時何も知らずに塾の勧められたままに開成受験を目指した長男は、今思えば確かにその素地があると理解しつつも、その当時を振り返ればある意味無知がもたらした出来過ぎた結果だったかもしれません。

確かに合格難易度だけ見れば、現在では筑波大付属駒場高校など難関国立系の方が高いかもしれません。入試問題についても完答するのが難しい問題であるのは確かにせよ、高校学習範囲を一定量押さえておかないと太刀打ちでいない開成入試は、やはり対応負荷が一段高いと言えるでしょう。

常人が安易に手を出した場合には、返り討ちに合って瀕死の重傷を負ってしまう諸刃の剣なのです。

そして多くの場合、入試に臨むためには独学での勉強ではなく、実績のある学習塾等の利用が必要になると思います。

東大受験の場合は塾なし合格も比較的一般的ですが、開成高校に対しては、もちろん自力で合格する上位層がいるのも確かな事実ですが、そうではない一般の秀才にとっては、やはり適切なコーチングを行う伴走者が必要になるため、保護者にとってもそれなりの経済的負担が求められることになります。

その様に、強い覚悟が求められる開成高校受験ですが、それをやり切って結果を出した暁には、わが家の長男がそうであったように、大学受験を含めたその後の様々な試験に対する大きな自信や独自の成功法則が得られることになります。

長男の場合、開成受験に対して120%の集中力で取り組んだからこそ、その後の学習に対する説明しがたい余裕が生まれたのであり、現在も、バイトとはいえ大手学習塾の地域の人気講師として活躍できているのだと思います。

地方から開成受験のススメ

 個人的には、地元で過ごす高校受験対策だけでは物足りない地方受験生にこそ、将来に向けての開成高校受験をお勧めしたいと思います。

現在では中学受験においても、首都圏の生徒が関西の中学を受験するなど、上位層にとっては遠方受験も比較的普通の事と捉えられています。

筑駒中に進学した次男の小学6年生のクラスメートも、当時力試しに灘中学を遠方受験して合格していました。

高校生であれば、その気になれば合格すればそのまま下宿して通うということも非現実的ではないはずです。慶應義塾高校などであれば、実際に地方の経営者や名士のご子息が多数通っていると思います。

開成は、大学受験を前提とした進学校ですから、慶應のように学問よりも将来のネットワークづくりに主眼を置くという状況とは少し異なるかもしれませんが、将来の日本社会を支える人材が多数含まれることを考えると、経済的な課題はあるにせよ、未来に対する投資という選択肢であることに違いありません。

地方の受験生であれば、身近になかなか開成入試対策が可能な環境がないという現実があるかもしれません。それでもオンラインその他の手段が発達した現在ですから、せっかくの受験期間を最大限有効に活用するという意味においては、現在の日本における最高難易度の受験対応を経験する価値もあるだろうと思います。

それぞれの道

 このように、男子高校受験生にとって開成高校受験というものは、3年後の東大受験に対する明確な指標になる入試です。かつて柳沢前校長が新聞インタビューで言及した通り、そのように意識の高い母集団が内部生に与えるプラスの刺激は、開成自身にとっても重要なものと認識され、前向きに門戸が開かれています。

ですので受験生の側も、第一志望であっても併願候補であっても、気後れなく積極的にチャレンジすればよいのです。開成側にとっても、全国から多様な受験生が集まるのはそれ自体学校にとって前向きなことですし、遠方から合格した受験生の中には、最終的に入学を希望する生徒が現れるかもしれません。

内部からの批判があっても高校受験を止めないのは、開成学園にとっても実りあるチャレンジなのです。

これから高校受験を目指す中学1年、2年の男子生徒である君が、開成を狙うことがどれほど現実的なのかを知る目安が知りたい場合、駿台中学生テストを受けてみるのが現実的な手段の一つです。

コロナの影響か、自宅受験も選択できる今、学力に覚えのある君であれば開成受験に向かうか否かの判断のために受験してみてはいかがでしょうか。

ではまた次回。