自己表現する喜び、都立国際高校

都立国際高校正面

 都立国際高校の授業見学に参加しましました。

国際高校を一言で表現すると、日本的な価値観にとらわれない自由な高校だということになります。インターナショナルスクール的価値観に近いと言えるかもしれません。

駒場学園都市を形成する高校

 国際高校は、井の頭線駒場東大前駅に位置し東大教養部を中心に分布する、筑波大学附属駒場高校、駒場東邦高校、都立駒場高校などと一緒に学園都市圏を形成する学校の一つです。

駒場東大前までの所要時間

国際高校:駒場東大前からのアクセス

画像出典:都立国際高校ホームページ

駅からも近く、大学共通テストを作成する大学入試センターおよび豊かな自然を感じる駒場野公園に隣接するその敷地は、一連の駒場学校群の中でも特に恵まれた環境にある学校だと感じます。

素晴らしき自由スタイル

 一般の方が国際高校を初めて訪問すると、他の都立高校とのあまりの違いに戸惑うことと思います。むしろ驚くといった方が正しいかもしれません。

そしてその驚きは、校則がない自由さで有名なあの麻布高校を初めて訪問した時よりも大きいはずです。

何故ならば、一見して生徒の7~8割が女子という環境の中で、髪を染めていない生徒の方がむしろ少数といった状況にあり、しかもその髪は金髪だけでなくピンクや緑やあらゆる個性が表現されており、アメリカ映画を地で行くようなスタイルだからです。

髪型だけでなく、メイクもピアスも自由に表現されており、その自由さには麻布高生も驚くことでしょう。

都立高校もなかなかやるな、とエールを送りたい気持ちになります。

勿論、男子生徒の自由さも同様です。

服装は、男子のパンツと女子のスカートは学校指定のグレーの制服を身に着けている生徒が多い印象ですが、上着は様々な個性が輝いており、本来の制服がどれなのか一見しては分からない状況です。

指定服をベースに着こなしを楽しんでいることが伺われる状況で、先生方もそのような些細なことには一切こだわっておらず、素晴らしいです。

未だに多くの学校で行われているような、頭髪チェックや服装検査などのバカバカしさを痛感し、生徒への信頼を感じさせる、本来公立高校とはこうあるべきではないかという自由な教育環境が確保されています。

海外帰国生や在京外国人生徒が多い特殊な集団を抱える国際高校は、都立高校の可能性や多様性を示すよい事例の一つだと思います。

ゼミ教室と多展開授業

 進学校の授業公開では、3年生の授業は見学不可という場合が多いですが、国際高校の授業公開では特に制限なく全学年の授業を見学することができました。

教室は、一般的な普通教室と化学室などの専門教科室に分けられますが、国際高校では普通教室の半分の大きさを持つゼミ教室が14室ほど存在しており、一般教室の授業と並行して少人数授業が行われています。

ゼミ室での少人数授業では、ドイツ語、フランス語、スペイン語のような第二外国語をはじめ日本語や古典など、語学系の授業が主に行われているような印象を持ちました。

本校は、国際学科だけを設置している学校です。

教育課程は普通教科と専門教科でできています。普通教科は、一般にどこの学校にも設置される科目です。専門教科は国際感覚の育成と優れた外国語能力の体得に重点を置き、外国語、国際理解、課題研究(総合的な学習の時間)などの分野から構成され、本校の特色となっています。

習熟度別・多展開授業
在京外国人生徒や海外生活の長かった生徒が、 高校での授業を十分に理解できるようになるまで、 少人数のグループ別学習を実施します。 また、 数学や英語などの科目は習熟度によりグループ編成をします。これらをあわせて「多展開授業」といいます。

出典:都立国際高校2022年学校案内

学校案内からの判断では、専門教科の授業が主にゼミ形式で行われているようです。先生の周りに数人の生徒が集まって、語りかけるような授業形式です。

授業を見学した際に、どのようなカリキュラムなのか不思議に感じた少人数授業が、正に多展開授業なのでしょう。確かに特徴的な授業に違いありません。

充実した外国人教師

 また気づくのは、やはり外国人教師の多さです。

専門教科は国際感覚の育成と優れた外国語能力の体得に重点を置き

と学校案内記載の通り、英語および他外国語の授業を行うことが目的の学校ですから、必然的に各国語の担当教師が必要になるのだと思います。

今回、国際バカロレア・ワールドスクールの方は見学できませんでしたが、こちらの教師も加えると、外国人教師は相当数が在籍しているのではないかと思います。

進学指導特別推進校

 都立国際高校は、学習面では

  • 進学指導特別推進校
  • 東京グローバル10

という顔を持つ学校です。

新宿、小山台、駒場、町田、国分寺、小松川と並び大学進学を意識する学校となっていますが、他の6校と比較すると、語学および国際関係重視の学校ということで、進学先には特徴が現れます。

2022都立進学指導特別推進7校[現役]国公立大合格数

グラフの通り、都立進学校が目標としている国公立大学への合格という視点で見ると、国際高校は他とは一線を画した状況です。

2020-22都立国際高校[現役]大学合格まとめ

国際高校は、特に海外大学合格数が傑出していることが最大の特徴です。

これは帰国子女や在京外国人が多数を占める生徒構成が一因であると考えられますが、逆の見方をすれば、そのような進学を目指す生徒が周囲に存在する環境が国際高校ということになります。

ですから国際高校を受験しようかと考えている中学生は、単に進学指導特別推進校の一つとして安易に考えず、生徒構成や授業内容、大学進学志向などが他校とは大きく異なる点を十分理解した上で志望校として選定することが大切ではないかと思います。

英語の入試問題が自校作成問題である点も注意が必要です。

国際高校を目指す心構え

 都立国際高校は、グローバル感覚の少しオシャレで人とは違う選択肢として選ぶべき気軽な高校ではなく、本格的なインターナショナル志向の高校であると認識した方がよさそうです。

このため志望校として決定する前に、必ず学校説明会に参加することを強くお勧めします。本来どの学校でもそうですが、国際高校は特に、学校のカラーや教育方針などを把握しないまま受験することは避けるべき学校の一つだと思います。

逆に、インターナショナルスクールを検討している生徒や保護者の視点から見ると、国際高校は、日本的環境を重視しながらインターナショナル校に通うことができる非常にお得で都合の良い学校ではないかと感じます。

都立国際高校、それは都立高校の枠組を超え、時代の要請に応えるべく独自進化した特色ある学校であり、その社会的意味は大きいと感じます。

今回実際に学校を訪問し、そのことが初めて認識されました。そんな爽やかで大きな驚きを伴う授業見学となりました。

国際高校は、白金高輪辺りにもう一校開校することが計画されています。東京オリンピックやコロナの影響で先延ばしになっているこの第二国際高校についても、順次情報を確認していきたいと思います。

ではまた次回。