東急目黒線と駅前10秒の好立地、都立小山台高校

 都立小山台高校の授業公開に参加しました。

小山台高校は、東急目黒線武蔵小山駅の目の前にある通学至便な学校です。

東急武蔵小山駅と小山台高校正門

東急武蔵小山駅と小山台高校正門

地下にある改札を出て地上に上がると、すぐ目の前に正門が現れます。

学校ホームページにも次のような説明が書かれています。

都営三田線、東京メトロ南北線で「武蔵小山」駅まで直通で通学できます。
東急目黒線「武蔵小山」駅から徒歩0分です。「日本一駅から近い学校」と言われるほど、駅からのアクセスが良いです。
生徒いわく、「多少の雨なら傘いらず。駆け足です。」とのこと。

出典:小山台高校ホームページ

小山台高校は目黒区と品川区の区境に位置しており、学校西側が目黒区、学校敷地を含む東側が品川区となります。学校周辺は目黒区の落ち着いた住宅街と、品川区の商業的な雑踏が混在する環境にあります。

品川区側の駅前には、関東では見かけることが少ないアーケード商店街が発達しており、全長800mにも及ぶその距離は都内一の長さを誇るとされています。

関西出身者の方であれば、どことなく懐かしさを感じる風景に映るかもしれません。

武蔵小山パルム商店街|出典:しながわ観光協会

パルム商店街|出典:しながわ観光協会

長いアーケードの先には、テレビの食べ歩き番組などでお馴染みの戸越銀座商店街が緩やかに続くなど、住まいとして人気の城南地区で最も発達した地元商店街を擁するエリアの一つと言えるでしょう。

東急目黒線

 武蔵小山駅は、東急目黒線の急行停車駅です。

目黒線については、東急東横線や小田急線と比較して、都内でもあまりメジャーではない印象があります。

都立小山台高校交通アクセスマップ

都立小山台高校交通アクセスマップ

JR山手線目黒駅と直結する東急目黒駅を起点に、田園調布駅で東横線と合流し並走しながら、武蔵小杉を経由して東急日吉駅まで至る目黒線は、目黒では東京メトロ南北線および都営三田線との乗り換えなしの直通運転を実現していています。

この両地下鉄線と連結することで、皇居を東西に挟みながら、東京駅丸の内方面および飯田橋方面から横浜方面への直通バイパス線として機能しており、非常に利便性の高い路線となります。

教育視点で見ると、三田駅と日吉駅を直結する慶應大学御用達路線でもあります。その途中の大岡山駅には、東京工業大学が位置しています。

海外や都外からの転入先としては、統計上世田谷区、路線で言えば小田急線、東急田園都市線、京王線あたりの人気が高いことが確認できますが、これらのエリアは住んでみると新幹線や羽田空港へのアクセスにやや難があることに気づきます。

このため、城南エリアへの居住を希望する場合でも、出張機会の多いビジネスマンや丸の内方面へのアクセスが中心となるビジネスマンの方には、この目黒線沿線エリアへの居住を合わせて検討してみる事をお勧めします。

実は私自身も、仕事の関係で一時期この目黒線を大いに活用していたことがあります。

目黒駅から武蔵小山駅に向かう途中、桜並木で有名な目黒川を渡る短い鉄橋から、ホテル雅叙園方面に向かって眺める一瞬の車窓の景色は、今も心に残る都内の大好きな風景の一つです。

オーソドックスな教室配置

 初めて入る小山台の校舎は、極めてオーソドックスな印象を受けました。

小山台高校は、大正12年1923年に東京府立第八中学校として創立された学校であり、2023年にはちょうど創立100周年を迎えます。

現在WEB上には、小山台高校の同窓会である菊桜会が運営する、同校100周年記念専用サイトが立ち上がっており、当時を偲ぶ写真がいくつも挙げられています。

小山台高校創立100周年ホームページ

小山台高校創立100周年ホームページ

旧校舎正門/出典:小山台100周年WEB

旧校舎正門/出典:小山台100周年WEB

それらの写真を見る限りでは、かつての正門は武蔵小山駅側ではなく、敷地対角線上となる目黒側に位置していたと思われます。

確かに現在でも、目黒区側の住宅地に向かって、当時の正門を偲ばせる門構えがひっそりと佇む姿が確認できます。

もしかすると学校側の認識としては、現在もこちらが正門であり、駅側は通用門なのかもしれませんが、その辺りは情報がないため分かりません。

小山台高校旧正門跡

小山台高校旧正門跡

現在の小山台高校は、大正から昭和の時代を支えた校舎ではなく、昭和末期となる1970年代に建て替えられた建物であり、1学年8クラスの教室がグランドに面して1列に並んで配置されている、非常に標準的な校舎を持つ学校だと感じました。

現在の校舎の屋上には、八角塔と呼ばれるドーム型の屋根を持つ塔が建っており、学校紹介などでは必ずこの屋根の姿が登場します。

これまではずっと、この塔は天文台だと勝手に認識していましたが、実際にはそのような機能はなく、府立中学から続く小山台高校のアイデンティティとして、旧校舎の玄関塔を覆う屋根の意匠を引き継いだものだと理解しました。

その事実は、先の100周年記念サイトの写真からも直感的に理解することができます。

オーソドックスな小山台の授業

 今回は受験を迎える3年生を除く、1、2学年全クラスの授業を見学しました。

小山台高校の授業を実際に見学して感じたことは、学校施設と同様にオーソドックスな授業が展開されているという点、そしてそれと同時に、ICT(Information and Communication Technology)が普通に授業に浸透しているということです。

オーソドックスな授業

 オーソドックスという点は、別の言葉で表現すれば、従来からの講義形式の授業が中心ということです。

最近の都立高校では、特に英語などのコミュニケーション科目において、板書を伴わない生徒間での対話中心の授業に振り切る学校が散見される傾向にありますが、小山台ではどちらかというと、教師と生徒間の情報の受け渡しを軸にした授業という印象を持ちました。

ICTの活用

 逆に目を引いたのは、どの科目においても、教師が積極的に電子黒板を利用しながら授業を行っているという点です。

現在の都立高校の授業形式や、授業での電子デバイスの利用については、様々な都立高校を見学する中で、個々の学校により扱いがまちまちだと感じています。

それは校長の方針であったり、各学年や科目の主任教員の考え方、あるいは一人一人の教師の判断によるものであるかも分かりませんが、いずれにしても都立高校では、来年度から、全生徒へのタブレットが配布される予定となっていますから、授業スタイルは、どの学校においても今後大きく変わらざるを得ないものと考えられます。

その中で小山台高校は、進学指導特別推進校という、重点校と推進校の中間の立場にあって、同じ特別推進校の国際高校や駒場高校のように英語や体育といった特定科目に特化する学科を持つでもなく、新宿高校のように重点校に肉薄する進学実績を誇るわけでもない、良くも悪くも標準的な、都立進学校全体のベンチマーク的な学校のように感じました。

小山台野球部と定時制

 そんな標準的な学校環境の中にあって、他の高校と明らかに異なる同校の特徴は、野球部と定時制高校です。

小山台野球部は、2014年に21世紀枠で選抜甲子園出場を果たした他、最近では2019年に都大会決勝で惜しくも敗れて甲子園出場を逃すという実力校です。

都心の住宅街の中にあり、専用グラウンドもなく、しかも夕方以降は定時制学校として活動が制限されるといった、甲子園出場校としては決して恵まれてはいない練習環境を持つ公立高校でありながら、全国でも激戦区の一つである東京大会を勝ち進むのは並大抵のことではないと思います。

その様な難題を、進学指導特別推進校という枠組の中でソリューションとして実現することは、小山台全体に多くの学びと活力をもたらしているのではないかと思います。

授業中の生徒の中には、坊主頭で明らかに野球部員と分かる生徒が散見されます。

班活動と呼ばれる部活動の中で、野球部や運動部だけではない多くの生徒が、国立大学進学を目指して取り組む姿勢は、都立普通高校全体が目指すべき標準モデルの一つであるように思います。

定時制課程についてはここでは詳しく触れませんが、”給食”と呼ばれる定時制向け生徒のための学食が、昼間は消灯したまま校舎の一角にひっそりと佇んでいるのが特徴的でした。

小山台の大学入試

 少し前の資料となりますが、平成29年2017年度における重点校及び特別推進校の指定基準達成率が都教育委員会資料として公表されています。

【選定基準1】センター試験結果(現役)

①5教科7科目で受験する者の在籍者に占める割合(おおむね6割以上)

 ⇒小山台:49.5%(特別推進校2位)

②難関国立大学等に合格可能な得点水準以上(おおむね8割以上)の者の受験者に占める割合(おおむね1割以上)

 ⇒小山台:22.3%(特別推進校4位)

こうしてみると小山台高校は、新宿や駒場、あるいは国分寺を進学面におけるライバルとして意識しながら、甲子園出場も目指すという独自の立ち位置を持つ学校です。

実際に小山台を意識する受験生は、新宿高校や駒場高校も同時に検討しているものと思います。

これら人気3校全てを本年度訪問した上での学校環境に対する個人的な感想としては、小山台高校は駒場の充実した体育施設と、新宿の都心の学校特有の特殊な立地条件の間に位置する、やはり全体の基準となるような標準的な学校だということです。

本来であれば、進学実績の近い比較対象校について、夏休みから学園祭の時期にそれぞれの学校を訪問し、自分の目で学校環境や先輩方の様子を体験することができるはずですが、コロナによる活動制限が続く現在では、人気校であればなかなか学校説明会や見学会への参加が叶わない状況が続きます。

私自身も、次男の進学情報収集のために、様々な学校説明会への申込みを行っていますが、人気校の場合は、申込みが先着順であれば受付け開始の瞬間からページがつながらないまま満席、抽選であれば落選といった状況も多いです。

その様な中で、実際に訪問することができた学校については、学校側が発信する情報とは異なる、受験生と保護者の立場に立った様々な情報をお届けしたいと考えています。

そして生物の深川先生

 最後におまけですが、今回授業見学で感慨深いと感じたのは、長男が日比谷高校でお世話になった生物の深川先生が教壇に立っていたことです。

当時と変わらず医療用スクラブを身に着けて授業に臨む姿や、教科書ではカバーできない内容を伝えようとする姿勢は、変わらない懐かしさを感じました。

帰宅して長男にその事実を伝えると、

「あの先生はすごいよ」

と一言つぶやいた後に、

「小山台の生徒にその価値が分かるかな?」

と上から目線の言葉。

教科書を書く側の先生だということは、長男が高校生の当時から聞いていたことですが、そうした教師が他の進学校に異動してその経験やノウハウを伝えることは、都立全体の底上げや裾野を広げる上では悪いことではないように感じた次第です。

いずれにしてもこれからも、様々な学校の環境をお届けできればと思います。

ではまた次回。