2023年入試、日比谷高校秋の説明会に思う

 日比谷高校秋の学校説明会に参加しました。

2023年度入試に向け、そろそろ志望校を固める季節。

わが家も次男の受験に向けて、様々な学校に足を運んでいるところです。

コロナ禍の現在、どの学校も参加枠の確保が難しい中ですが、日比谷の説明会は先着申込順で受付開始後の数日間申し込み可能な状況にあり、案外楽に予約できました。

参加希望が多すぎて抽選申込み制度を採用する青山高校や、参加枠拡大のために抽選に加えて生徒のみ出席可能な新宿高校などと比較すると、逆に最上位校であるからか、実際に受験を検討する生徒はそこまで多くはないのかもしれません。

今回は、説明会に参加できない生徒や保護者、あるいはこれから都立高校を目指す家庭に向け、最新の情報をお届けします。

地に足着いた梅原校長

 今回参加して最初に感じたことは、梅原校長の挨拶が様になっていたことです。

上から目線のような書き方で申し訳ないですが、2021年就任1年目の挨拶では、まだまだ借りてきた猫という浮足立った印象を強く持った状況と比較すると、今年の様子は在校生にとっても学校にとっても歓迎すべき状況と考えます。

必要最小限伝えるべき思いを、無駄を省いた短く整理した言葉で淡々と述べる姿には好感が持てました。

武内前校長が長く任に着き、マスコミなどの露出も多く日比谷復活の立役者のように登場していたことを考えると非常にやり難い立場のようにも思いますし、赴任直後にネガティブな報道もあったことから、本人も教職員も生徒も保護者も当初はざわざわする環境があったかもしれませんが、今回の説明会を見る限りでは、特別懸念するような状況もないように感じました。

自らの独自色を出そうとし過ぎて却って生徒に窮屈な生活環境を強いることがないよう、校長はじめ新任教職員の方々には黒子に徹して生徒主体の学校運営を心がけていただくのがよいと思います。

そして長男の受験のために参加した7年前の説明会と比較すると、学校側も参加する保護者の意識もだいぶ異なるように感じます。

2015年当時の受験生にとっては選択肢の一つだった日比谷高校も、現在では絶対的第一志望という位置づけになっていることが多いだろうという空気を強く感じました。

当時は開成ではなく日比谷に進学したことを伝えると驚く反応も散見されましたが、現在では状況も異なることでしょう。

トップ進学校としての自覚

 そして今回強く感じた二つ目は、日比谷高校もようやくトップ進学校としての意識や立場を得るに至ったのだなということです。

つまり、学校説明会において、優秀な生徒を確保するために大学合格実績や進学サポートの充実ぶりについて強くアピールするのではなく、そこはさらっと流して教育上の特色や留意点などを伝えることで、学校側が求める生徒像と受験生のミスマッチを避けることを念頭においた説明を行っていたことです。

大学合格実績が伸長する学校では、必然的にその点に期待して入学を希望する生徒や保護者が集まる環境が醸成されます。

日比谷の大学合格実績が全国公立高校屈指の状況であることは間違いないですが、大学受験予備校的な環境を求める生徒や家庭が集まっては学校側も困ることになります。

特に日比谷高校の場合は、最終的な大学受験科目とは直接関係のない基礎科目やSSH的な探求授業についても一般的な進学校より多く履修する必要があることから、急がば回れ的カリキュラムの趣旨や目的を理解し納得して入学していない場合、生徒本人にとって重たい学習環境であるばかりか、学校に対するハレーションも生じやすい状況となりお互い良い結果とはなりません。

どの学校を志望する場合も同じですが、出願前の情報収集は本当に大切です。

2023年度【推薦入試】に向けて

 ではここからは、説明会でも触れられた、令和5年2023年度入試に向けて留意すべき主な情報を記載します。初めに推薦入試です。

  • 内申450点、小論文250点、面接200点の900点満点
  • 内申=9教科45点満点x10倍(傾斜配点無)
  • 2022年度推薦内申点:
    女子はオール5が定員の1.7倍、44以上合わせて定員の2.5倍を超える
    男子は定員に近い数のオール5、44以上合わせて定員の2倍程度
    男女ともに合格者の内申点はかなり高い
  • 小論文:50分で540~600字を書くのが例年の傾向
    過去問は学校HPに掲載
    自由論文ではなく、与えられた資料に基づき考察し、表現する力があるかどうかを試す形式が例年の出題
  • 面接:2022年同様個人面接のみ
    受験生1名に対して面接員2名で15分程度で実施
  • 小論文や面接は「本校の期待する生徒の姿」とも関連する
  • 2022年は小論文、面接とも合格者の得点率が高く、よく練習してきている印象

「推薦合格者の内申点はかなり高い。合格者は事前によく練習している」と学校側がわざわざ言及していることから判断すると、合格チャンスを広げるためにとりあえず推薦も受験してみようという判断は止めた方が賢明ではないかと感じます。

内申点は高いが自校作成問題で得点するのは難しいという生徒の中には、推薦一本に懸けて一点突破で日比谷合格を狙う推薦ガチ層も多いのだと思います。

学力検査の時間を削ってそれなりの対策を行う覚悟がない場合は、安易な気持ちで推薦に出願するのは、少なくとも日比谷の場合は止めた方が賢明だと思います。

2023年度【学力検査】に向けて

 学力試験に関しては、男女合同枠が2割に増える点とスピーキングテストが導入されることを除けば、ここ最近同じ傾向が続いていると感じました。

  • スピーキングテストは、都内にある国立、私中学校在籍者、都内在住で都外の国立、私立中学校在籍者も受験可能
  • 都内の至る所から出願があり、都外や海外からの出願者も多い(出願資格注意)
  • インターナショナルスクールからの受験生は要事前相談
  • 2022年度男女とも平均点をやや下回る辺りが合否の分かれ目
  • 内申点の高い受験生が学力検査も高い得点を取る傾向
  • 自校作成問題は基本問題を確実に得点した上で、記述問題に真摯に取組む
  • 理社は9割以上が目標

日比谷高校は都立高校ですから、基本的に都内在住者のみが受験資格を持つはずですが、新年度から都内在住となる新規転入者だけでなく、わが家のように中学からの転入者も含めると、実際には出身中学から判断する以上に広いバックボーンを持った受験生が集まっているのだと思います。

帰国子女入試枠がないにも関わらずそのような経験者が数多く集まっている状況は、東京ならではの光景でもあり、特に日比谷高校の魅力の一つでもあると思います。

日比谷高校の願い

 そして最後に、最近の説明会で繰り返される印象的な言葉として、以下の内容を紹介したいと思います。

  • 日比谷高校をゴールにしない。
  • 日比谷高校は、人生の通過点でしかない。
  • 教員は、難関大学に入れることを目標にしているのではなく、生徒の人生の夢の実現を応援している。
  • 日比谷高校には高い志を持った生徒がたくさん集まってきている。
  • そうした生徒が切磋琢磨して、一緒に頑張っている環境が日比谷高校にはある
  • その上で、皆さんの高校選びの選択肢の一つに加えてもらえると嬉しい。

教職員が”羨ましい”という言葉と共に語るその学校環境は、年々中身の濃さが増していることでしょう。正直、長男が入学した2016年当時は、日比谷高校全体としての学力レベルはそれほど高いとは感じませんでした。

その当時はまだまだ入りやすい学校という印象もありましたが、現在ではどうでしょうか。引き続き内申点が3割を占める状況は変わりませんが、それでも現役生だけで東京大学の合格数が50人を越える状況は、上位層の厚みが増していることは確かだと思います。

男女合同枠も1割拡大することから、特に合格ボーダー辺りにいると自覚している受験生にとっては、試験当日に1点でも多く獲得することの重要性は増すものと思います。

高校受験の最終年度

 そして良くも悪くも、私自身が保護者として日比谷高校を訪れるのは、この秋の説明会が最後となりそうです。

わが家の次男は、また別の志を持って現在受験勉強に励んでいます。

ですから来年度以降、また別の学校の保護者となることは確実です。

日比谷高校に関わらず、都内高校受験生が公立高校進学を通じて志の高い環境を手に入れることができるような昨今の状況は、保護者としても好ましい環境の変化と感じています。

今年が最後となる高校受験生の親としての立場を最大限に生かし、もう少しの間、様々な学び舎に足を運んでみたいと思います。

ではまた次回。