多摩科学技術高校を選択する理由

 次男が多摩科学技術高校に進学しました。

推薦入試に合格した次男は、結局、学力試験は受けずに入試が終了。

これまで進学指導重点校の一般入試を前提に勉強に取り組み、3年生10月の模試では戸山、青山高校であれば十分合格圏内といった状況でした。仮に推薦で不合格となった場合でも、多摩科学技術高校の一般入試は都立共通問題のため、自校作成問題が問われる事はありませんので、正直少しもったいない気もしています。

また、この学校でなければ、推薦入試も受けることはなかったでしょう。

保護者としては志望校に合格してホッとすると同時に、入試学力的には現在の次男にとって決して高くはない学校に進むことに少し物足りない気持ちがあるのも確かですが、それでも従来の偏差値序列的な価値観とは一線を画す進路の選択や新しい環境との出会いに、正直楽しみであると同時に大変満足しています。

今回は、多くの学校を検討する中で、わが家からは決して近くはないこの謎多き科学技術科を選択した理由についてお伝えしたいと思います。

大学まで待てない気持ち

 次男が明確に進路について語り始めたのは、中学3年の秋口になってからでした。

理系の特定分野に非常に強い興味を持ち、今すぐにでもその勉強や研究を始めたいという気持ちを声に出して訴えるようになったのでした。

それまでは、合格可能な上位の進学校に入学することが漠然とした目標になっていた次男も、将来の進路や夢の形を明確に意識してからは、むしろ進学校に進むことに対して抵抗を示すようになっていました。

自分が極めたい専門分野があるにもかかわらず、その勉強を3年間保留して、大学入試のための受験勉強に時間を割くことに対して非常な苦痛を感じ、また大いなる時間の浪費として感じるようになっていたからです。

保護者としては従来の価値観に基づき、理系であれば特に、専門分野の研究はできる限りレベルの高い大学に入ってから行うのが賢明な判断と思いつつ、幼少の頃から自分の意見をほとんど言わない子供だった次男が、中学生活を通じて自分の在り方を確立し、将来の夢について自らのプランを語るほど強い意志を持って行動することに対し、子の自主性や成長を邪魔するのではなく、むしろ進路実現を応援する立場に立つことにしたのです。

理系専門分野への進学

 次男が語る内容を保護者視点で整理すると、中学卒業後の進路希望としては概ね以下の通りであると認識しました。

  • 高校から専門分野を勉強したい
  • 大学受験向けの勉強に終始したくない
  • 国立大学理系に進学したい

こうした次男の希望を同時に満たす学校を探した結果、次の2校が最終候補として挙がりました。

  • 多摩科学技術高校
  • 東工大附属科学技術高校

高校で専門科学の基礎を学ぶと同時に、希望の国立大学理系学科に進むという希望を叶えるために、大学への進学経路としては従来の一般入試で大学受験に臨むのではなく、むしろ高校3年間を通じて専門分野への勉強に軸足を置くことで、その成果を基に「総合型選抜」や「学校推薦」で大学に進学するという道を定めたのでした。

こうした進路を取ることに、保護者としての不安がないわけではありませんが、本人の意志が固いのと、従来の価値観が通じない多様性にあふれた今の時代にあっては、むしろ自然体で面白い選択かなと感じています。

専門課程校と理系進学校

 理系国立大学への進学を意識する場合、一般的には日比谷や戸山高校などのSSH指定進学校への進学や、比較的新しい立川高校創造理数科なども候補として挙がるかもしれません。

ただし次男の進路優先順位は、

”高校から専門分野の基礎を学びたい”

という譲れない一線が明確に設定されていたため、むしろそうした進学校は絶対いやだというのです。

そして本人の希望を総合的に考慮して出した答えが、先の科学技術系への進学です。

また次男の最終内申点や英検準2級などの付加要件を考慮した場合、高校受験押さえ校となる私立併願優遇校の進学最上位クラスへの入学権利も容易に取得できる状況にありましたが、次男にとってはそのような大学受験特化型カリキュラムの学校に進むことは、都立進学校以上に避けるべき状況であり、先入観なしによくよく調べた結果、志望校に不合格だった場合の進路として、N高等学校を候補として見定めたのでした。

その他の進学候補としては、都立科学技術高校や東京工業高等専門学校(いわゆる高専)、芝浦工大附属高校なども検討しましたが、次男の希望を満たす学校ではないとの判断により、志望校とはなりませんでした。

尚、芝浦工大附属は、学校案内などからは多摩科技のように高校から科学専門分野を学ぶ印象のある学校ですが、実際はそのようなカリキュラムではないように思います。

多摩科技と東工大附属

 それなりの学力を持つ生徒が、国立大学進学を意識して科学技術専門学科を意識する場合、わが家と同じく多摩科学技術と東工大附属を候補として定めるケースは少なくないように思います。

ただし注意したいのは、私自身が両校の説明会に参加し、様々調べた情報から判断するに、この二つの科学技術高校は、名前から受ける印象としての

”同じ科学技術系高校で、都立版と国立版の違い”

とは大きく異なり、実際には似て非なる学校だということです。その違いをざっと並べると、以下のようなものとなります。

多摩科学技術高校と東工大附属高校比較

大きく異なる点としては、運営主体や立地は勿論ですが、

  • 多摩科技は理系専門型進学校
  • 東工大附属は専門型工業科高校

という点と、2年次の専門課程への進学時に、

  • 多摩科技は希望領域に進学可能
  • 東工大附属は1年次の成績などで振分け
    (推薦合格者は入学時に分野決定)

となる点です。東工大附属の一般入試合格者の場合は、入学者の希望分野次第ですが、2年生で希望分野に進学できないリスクを持って入学することになります。

そう考えると、東工大附属を選択する場合は、入学時に希望分野が確定する推薦入試で入学するのが妥当なように感じます。

多摩科技選択の理由

 わが家の場合、東工大附属高校の方が通学時間が圧倒的に短いのですが、実際に両校を訪問見学し、説明を受けた結果、次男は多摩科技で学びたいとの結論を出しました。

理由は様々あると思いますが、その一つとしてあるのは、学校説明会で実際に五感で受けた印象ではないかと思います。

両校を訪問すると明らかですが、学校のイメージとしては、陽と陰のように非常に対照的な印象であることは間違いありません。多摩科技の方が明らかに、これからの学校のように感じるのです。

東工大が東京医科歯科大学と統合して東京科学大学(仮称)となり、附属高校が2026年に目黒区大岡山の東工大キャンパス内に移転した後の状況は分かりませんが、少なくとも現在はそのような小さくはないギャップを感じることは確かです。

一保護者としては、次男の際には間に合いませんでしたが、生まれ変わる東工大附属高校にも大いに期待しています。

学校制度やあり方そのものから見直して、より魅力的な学校に生まれ変わればよいと思います。

今回お話しした学校への印象は一個人の判断でしかありませんし、生徒によってそれぞれ合う合わないなどもあるかと思いますので、理科学系高校を選択する場合には、高専その他の学校も含め、実際に自ら説明会などに参加して、その学校の印象や特色を十分理解した上で進路選択することが重要だと思います。

今回は、次男の高校選びを通じ、科学技術系高校進学について考えてみました。

これらの学校は、カリキュラムが普通科進学校とは異なりますので、理系進学希望だからといって安易な気持ちで選択した場合、大学受験勉強の足を引っ張るなど、入学後に後悔する可能性を孕んだ学校ではないかと感じます。

その第一印象の真偽や学校の在り方なども含め、これからこの謎多き学校について、少しずつお伝えできればと考えています。

ではまた次回。

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