都立の進学校の特徴の一つに、教師の公募制度が挙げられます。
教育委員会のローテーションでたまたま進学校に赴任するのではなく、自ら大学進学指導を行いたいと考える教師を募集し、学校とのマッチングを実現する制度になります。
そして今年の夏も、都立進学校向け教員の公募が行われます。
公募の対象となるのは、以下の都立進学校と専門校です。
- 進学指導重点校
(1)日比谷高校
(2)戸山高校
(3)西高校
(4)八王子東高校
(5)青山高校
(6)立川高校
(7)国立高校 - 進学指導特別推進校
(8)小山台高校
(9)駒場高校
(10)新宿高校
(11)国際高校
(12)町田高校
(13)国分寺高校
(14)小松川高校 - 進学指導推進校
(15)江北高校
(16)三田高校
(17)豊多摩高校
(18)竹早高校
(19)北園高校
(20)墨田川高校
(21)城東高校
(22)江戸川高校
(23)日野台高校
(24)武蔵野北高校
(25)小金井北高校
(26)調布北高校
(27)多摩科学技術高校 - 国際バカロレア校
(11)国際高校
これらの進学校で教鞭をとりたいと希望する教員は、都の公募制度により自ら赴任先を選択することが可能です。
令和4年2022年教員公募要項
- 応募期間
8月29日(月) ~ 9月2日(金)必着 - 提出先
教育庁人事部職員課都立班専用アドレス - 提出書類
ア 「応募用紙」
イ 「進学指導への対応」
及び学習指導案(様式自由)
ウ 「応募者要件確認データ」進学指導
公募要項や資料詳細は、先の該当高校のホームページから共通書式がダウンロード可能です。
これらの提出書類を確認すると、進学校で求められる教師の資質が明らかとなります。
提出書類ア|応募用紙
応募用紙には、どの学校への赴任を希望するか明記することになります。
ただし進学校を希望する場合は、進学指導重点校、特別推進校、推進校からそれぞれ1校を選択する必要がありますので、学校側の教科需要や応募教師の資質などの事情により、必ずしも希望の学校に赴任できるとは限らないようです。
特定の学校を指定しない場合は、「どこでも可」も選択可能です。
日比谷を希望したのに青山高校に赴任、あるいは新宿を希望したのに駒場高校ということはなさそうですが、日比谷か新宿かどちらになるかは応募状況や選抜結果次第ということはありそうです。
このため各校では、希望教師に対しての事前の個別相談会を行っています。
日程や詳細は、希望する学校ホームページからそれぞれ確認できます。例えば日比谷高校の場合は以下の通りです。
赴任を希望する学校に対しては、各校が実施する、この事前相談という名の個別面談を受けるべきと思います。(各校ともすでに終了)
企業人の発想で考えると、この事前相談こそ、選考過程として公募後に実施される個別面談よりも大切と思います。
理由は以下の通りです。
- 担当教科の需要を確認できる
- 学校の雰囲気や指導方針を確認できる
- 学校関係者の人柄を確認できる
- 自分を自由にアピールできる
要するに、自分が希望する学校に合うか、逆に学校側が自分を必要としているか、お互い採用という公式な場以外でより自由に確認し合うことができるからです。
公募後の面談がお見合いとするならば、事前相談は自由恋愛という感じでしょうか。
いずれにしても、お互いのミスマッチングが生じないよう、事前相談機会は有効に利用するのがよいと思います。
提出書類イ|進学指導への対応
公募に際しては、具体的に以下の情報が求められます。
- 最近の大学入学試験問題をどのように研究し、分析してきたか
- 進学指導重点校等に配置された場合の授業の学習指導案
都立進学校への赴任を自ら希望する場合には、昨今の大学入試について日頃から研究分析する習慣が求められるようです。
この点は、例えば東大入試について興味を持って追及しているとか、医学部入試について研究しているとか、あるいは大学共通テストの傾向を分析しているなど、赴任する学校との指導傾向や相性を確認するために必要な情報でしょうか?
特に”重点校”を希望する場合は、実際の授業構成を提出する必要があります。
教育委員会は必ずしも予備校的な授業を求めているわけではないと思いますが、いずれにしても教師としては、日頃から授業や進学指導に対し、高い意識をもって取り組んでいることが求められそうです。
提出書類ウ|応募者要件確認書
こちらは応募教員のプロファイルを整理するための事務手続き上の情報となります。
自ら切り開く未来
教師に限らず企業でも、やる気のある社員登用や能力のある人員の発掘機会となる公募制度を採用している組織は多いと思います。
かく言う私自身も、企業内で自ら手を挙げて海外事業に進出した経験があります。
ちょうど20年ほど前、海外で新しい事業を開拓するので希望者は名乗り出てほしいと社内でアナウンスがあった際、私自身はその話を聞いた若手や先輩社員全員が手を挙げるものと思い込み焦りを覚えたのでした。
そして、何とか自分がその担当に着きたいという強い想いで、
- そのプロジェクトに懸ける強い想い
- 如何に自分がその担当に適任なのか
- どのようにプロジェクトを進めるか
について、求められてもいない小論文をその晩朝方近くまでかかりながら直ちに書いて、提出したことがあります。
嘘か本当か後から知ったところでは、私以外は誰も手を挙げなかったのだとか。
会社側はまだ若く前向きな社員の意欲を快く思ったのか、あるいは仕方ない選択であったのか分かりませんが、いずれにしてもその一瞬の閃きとアクションをきっかけに、その後大きく発展する海外事業に初期段階で携わり、初めて見る様々な都市へ出張する機会を得、現地の責任者として家族と共に海外の複数拠点での暮らしを経験することができました。
今でも、出不精で日々の生活を淡々とこなすタイプの自分自身があの時行動を起こしたことは、人生の中で本当に正解だったと感じます。
私自身は企業人として働く中で、20代の入社後に直ぐに辞めようとしたところを兄の言葉に従い3年は続けると決意した頃から、誰かに指示される前に、自ら動いて働くことで、自分自身のモチベーションを保ってきました。
そして50歳を超えた今も尚、相も変わらず新しいプロジェクトへの挑戦が続く日々。
都立学校の先生方も、せっかく自らを活かすための制度があるのですから、若い先生方もベテランの先生方も、是非積極的に動いてみてはいかがでしょうか。
進学指導という側面は、必ずしも本来の教師としての在り方とは異なる一側面だけの価値観であるかもしれません。却って毛嫌いする向きもあるでしょう。
ただ進学校での経験やノウハウを、将来普通校に還元する循環が生じることは、教員自らのスキルアップだけではなく、都立学校全体の活性化にとってもプラスになるのではないでしょうか。
保護者としても、やる気ある教師に囲まれた、活力ある都立学校であってほしいと願います。
ではまた次回。