都立進学指導推進校の男女合同枠影響

 都立高校2022年度より段階的導入が始まった男女合同定員制度。

男子と女子がそれぞれ別枠で合格者を選別する都立の現行制度は、スケジュールは確定していないものの今後全廃に向かいます。初年度の結果について、先に進学指導重点校への影響を考えました。

日比谷高校をはじめとする重点校では、全体として男子合格者が増加する結果となりました。それでも1割での実施だからでしょうか、男子の合格増加数は当初想定したほどは見られませんでした。

その場合、重点校の次の学力レベルに位置する進学指導特別推進校や推進校では、むしろ当初教育委員会が目論んだように、女子合格者が増加の傾向にあるかもしれません。

今回は、進学指導推進校を中心に、男女合同定員の影響について考えます。

進学指導特別推進校の男女枠影響

 ではまず、進学指導特別推校の結果について確認します。

都立進学指導特別推進校指定7校

都立進学指導特別推進校指定7校

「特別推進校」とは、重点校に次ぐ都立の指定進学校で、2022年現在7校が指定されています。新宿駅前で立地もよく、重点校に手が届きそうな新宿区高校、東大駒場キャンパスと筑駒中学高校に挟まれ、英語教育特化の国際高校、都立高校で今甲子園出場に最も近い小山台高校など、いわゆる都立2番手、3番手校が含まれる人気の学校です。

これらの男女合同枠の結果は以下の通りとなります。

2022都立進学指導特別推進校男女合同枠入試結果

残念ながら一覧の通り、特別推進校の結果は町田高校1校しかデータがありませんでした。

色のついた下の3校、新宿、国分寺、国際高校については、自分の希望の科目を履修する単位制の高校であって、実は現時点で既に100%の男女合同入試が行われています。このため、今年の入試結果はまだ開示されていません。

その他の小山台、駒場、小松川については、インターネット申し込みとなっており、合格発表も受験生のみに開示されているため部外者が結果を確認することができませんでした。

この中で唯一、町田高校のみが一般公開された合格発表サイト上で男女入試結果の開示が行われました。

特別推進校1校のみとなりますが、女子の定員が増え、男子は従来定員を下回るという結果となりました。

この結果だけでは結論を断定することはできませんが、それでも先の重点校内の2番手校の男女合格差が概ね同じであることを考慮すると、その下に位置する特別校では、女子合格者が増える傾向にあると考えられるのではないかと想定されます。

最終的な確定結果は、各学校が公表した際に改めて確認したいと思います。

進学指導推進校の男女枠影響

 では次に、特別推進校の次に位置する推進校の状況を確認します。

都立進学指導推進校指定13校

都立進学指導推進校指定13校

推進校は、慶應大学三田キャンパスに隣接し、東京タワーが目の前に見える三田高校をはじめ、近年理系教育で人気の多摩科学技術高校など13校が指定されています。これら推進校は、都立3番手から言葉はないですが4番手とでも言うべき学力水準の高校になります。

この推進校の男女合同枠の結果は以下のようになります。

2022都立進学指導推進校男女合同枠入試結果

一見して分かる通り、推進校になると女子合格者の増加が強い傾向となります。

尚、先の特別推進校同様、下の隅田川、多摩科学時術高校は既に100%男女合同入試が行われており、三田、江戸川高校は合格掲示板が公開されていません。

この3校を除く9校の結果として、全体で女子合格者が増え、やはり男子は従来定員を割るという結果となりました。

城東、江北高校2校については、女子優位の中で明確に男子合格者が増えていますが、この辺りの理由は現段階では分かりません。

女子優位性が高いか?普通高校

 以上、進学指導特別推進校および推進校の男女枠の影響を確認しました。

ここで改めて注目したい点は、これらの学校の入試問題は、5教科全てが共通問題で行われるということです。つまり、全校全ての受験生が同じ問題を受験しているという点です。

この点に注目し、重点校から始まるこれまでの結果を総合的に勘案すると、進学校として指定された27校(7+7+13校)以外の普通校においては、更に女子の合格数が増加しているのではないかということです。

この男女合同定員は、

東京都立高校の普通科の一般入試は、募集定員を男女に分けて設定しているため性別によって合格ラインが異なる。都教委は毎年30~40校を対象に是正措置を講じているものの、2015~20年に実施した入試では、対象校の約8割で女子の合格ラインが最終的に高かったことが、都教委の内部資料で判明した。1000点満点で最大243点上回るケースや、男子の合格最低点を上回った女子20人が不合格とされた事例もあった。

出典:毎日新聞デジタル 2021/5/26 

という煽り気味の記事に見られる通り、昨今のジェンダー平等に対するヒステリックな感情に突き動かされるまま突然導入された制度のような印象があります。

その是非はともかく、そのヒステリーを解消するかの通り、都立高校全体としては、女子の合格者が増加する方向にあるのではないかと想定されます。

そしてそれが本当に男女平等を推進することになるかどうかは、まだ現時点では判断はつきかねますが、とにかく、今後数年の内に都立高校入試は全て各校男女共通の合格点で合否判定されることになります。

実は、男女別枠で入学者を決定している公立高校は現在都立高校だけです。

それがジェンダー平等にとって遅れた制度であるのか、あるいは女子2割の壁を越えない東大入試から見るとむしろ進んだ制度であるのか、その辺りの評価は今後都立の男女枠撤廃が進むにつれて明らかとなってくるでしょう。

そして都立普通校では、やはり女子優位性が確認されるのでしょうか?この辺りはまた別の機会に考えたいと思います。

ではまた次回。