初年度倍率30倍!都立小中高一貫立川国際

都立小中高一貫立川国際ホームページ

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 令和4年2022年度より、小中高12年間一貫教育の都立立川国際中等教育学校附属小学校が開校しました。

この都立学校初となる小学校は、慶應幼稚舎に代表されるような、いわゆるエスタブリッシュメント家庭のご子息ご息女や、上級国民と呼ばれる人々に近づきたい家庭が目指す教育環境とは異なる、一般庶民のための一貫教育なのでしょうか。

都立中高一貫校が継続的に5倍近い入試倍率を誇る中で、小学校から高校までの一貫校は爆発的な人気が出る可能性を秘めているようにも思います。

そこで今回は、この新しい学校の入試状況について確認します。

初年度入試結果

 開校第1期生となる2022年一般入学選抜には、男女それぞれの定員29人に対して1,000人近い応募が集まっており、男女ともに最終応募倍率は30倍を超えています。

小中高一貫立川国際初年度応募状況

小中高一貫立川国際初年度応募状況

最初の難関は、1次審査をパスすることですが、記載の通り「抽選」となっているため神のみぞ知る世界です。

ちなみに1次審査の合格数は男女それぞれ200名となっているため、1次合格倍率は、

  • 1,000/200=5倍=20%

となります。現状では、感度の高い家庭のみが応募する状況だと思いますので、今後一般家庭にまで12年一貫教育学校の存在が知れ亘るにつれ、倍率はしばらくは過熱する方向に向かうように思います。

ちなみに都立小中高一貫校に立場が近い学校の比較情報として、国立附属の中でも人気の高い筑波大学附属小学校は、例年志願者約4,000名、抽選で概ね50%が通過する入試となっていることから、立川国際小の1次審査が厳しい状況にあっても、まだまだ受験生が増える可能性を示唆しています。

一般募集枠・応募資格

 どうせ抽選になるのであれば、とりあえず応募しようという家庭もあるかもしれませんが、小学校1年生という年齢的な特性上、都内在住であれば必ずしも誰でも応募できるわけではありません。

一般枠募集

 アのいずれかに該当し、かつイ又はウのどちらかに該当する者。

  • 必須条件(ア)保護者同居要件
  • 選択要件(イ)または(ウ)
    (イ)通学区域要件
    (ウ)審査承認

アの保護者同居要件は当然としても、意外だったのは通学区域指定が絶対的な応募条件ではないことです。

指定通学区域

 具体的な通学区域は以下の通り、6区28市町となります。

  • 新宿区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、練馬区
  • 八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、羽村市、あきる野市、西東京市、瑞穂町、日の出町

小中高一貫立川国際通学区域

小中高一貫立川国際通学区域

23区で対象となるのは、いわゆる「城西」エリアと呼ばれる6区です。

分かり易く地図上に示すと、以下の通り面積的には都内の半分以上をカバーする、広大な指定通学区域となります。

小中高一貫立川国際指定通学区域

小中高一貫立川国際指定通学区域

このエリアからの一般応募者が男女それぞれ1,000人というのは、新宿、渋谷、世田谷、練馬区が含まれている割には少ない印象です。

そこで、通学区域内の対象生徒がどの程度存在するか確かめます。

通学区域対象人口

 入学対象となる生徒数を確認するために、東京都が公表する「学校基本統計(学校基本調査報告書)」直近令和3年2021年の数字を確かめます。

小中校一貫立川国際応募対象人口

小中校一貫立川国際応募対象人口

指定通学区内である6区28市町内の国・公・私立園に通う5歳児の人口は、男女ともちょうど2万人、つまり最大応募人員は男女ともそれぞれ最大2万人となります。

現在の応募者数は、

  • 1,000/20,000=1/20=5%

ですので、対象児童の僅か5%しか応募資格を行使していないこととなり、先の筑波大附属小学校の状況に照らしても、やはりまだまだ受験生は増えるように思います。

通学路

 もちろん、学区が広いからと言って、小学校1年生ですから、実際は通学時間や環境に縛られることになります。

しかしこの点について学校側は、ホームページ上で電車やバス通学を容認していますから、男女合わせて4万の内、それなりに多くの家庭が実際の通学対象家庭となりそうです。

原則、公共交通機関を利用し、安全上の観点から、立川駅や国立駅からはバスを利用して通学することとする。※詳細は⑴~⑶

⑴立川駅北口から立川国際中等教育学校までバスを利用して通学

出典:都立立川国際附属小学校ホームページ

ちなみに、お受験ママの憧れる雙葉小学校の場合、通学時間に明確な規定が設けられています。

Q:通学時間の制限はありますか。

A:徒歩を含めて60分以内であることが、入学の条件になります。

出典:雙葉小学校ホームページ

学区境界付近の主要駅からJR立川駅まで、午前8時目途に到着する各路線電車の所要時間は概ね以下の通りです。

  • JR:渋谷|47分
  • JR:新宿|37分
  • 東京メトロ:神楽坂|49分
  • 東急:二子玉川|46分
  • 西武:大泉学園|39分
  • JR:町田|43分
  • JR:八王子|11分
  • JR:青梅|32分

このように見ると、学校側が設定している通学区はやはり概ね片道1時間程度ということが言えるように思います。

そのような状況を考えると、学区と並ぶ応募資格の選択基準として掲げられた(ウ)の「審査承認」は、もしかするとこの通学時間60分程度を明確に示すことでクリアする通学基準なのかもしれません。

実際の審査とはどのようなものを指すのか、指定学区外でにゅうがうを希望する過程は一度学校に問い合わせてみてもよいと思います。

初年度から厳しい倍率となっている立川子国際小学校ですが、実は現在はこれからまだまだ倍率が高くなるのかもしれません。

緩すぎる?帰国子女枠

 初年度から過熱気味な一般入学枠に対し、帰国子女枠は驚くほど緩い状況です。

小中高一貫立川国際初年度応募状況(帰国枠)

小中高一貫立川国際初年度応募状況(帰国枠)

何と、帰国子女枠の最終応募倍率は1.5倍しかなく、不合格者の方が少ないどころか男女合わせて6名しか不合格になっていない状況です。

このため当然ですが、初年度は1次審査の抽選も行われていません。

もしかするとこの状況は、帰国枠の応募基準が厳しい結果であるのかもしれません。

これを確かめるべく、応募資格を確認します。

帰国子女枠・応募資格

 帰国子女枠で出願できる日本国籍者の要件は、(ア)または(イ)のどちらかに該当し、かつ(ウ)又は(エ)のどちらかに該当する者。

  • 海外在住要件(ア)または(イ)
    (ア)現在海外在住者要件
    (イ)過去海外在住者要件
  • 選択要件(ウ)または(エ)
    (ウ)通学区域要件
    (エ)審査承認

上記の帰国子女枠要件を確認してみると、驚きを隠せません。

何故ならば、求められる要件が相当緩いと思うからです。

お得過ぎる帰国子女枠

 海外に1年以上保護者と共に駐在し、小学校入学時、またはその1年前に帰国した児童であれば海外在住要件はクリアできますので、そのような児童は、例えば全転入世帯の9%近くを集める世田谷区だけ見ても相当数いるように思うのです。

具体的には、正にわが家の次男がかつてちょどその要件に合うタイミングで帰国していますので、実際特に珍しいことではないと思います。

それでも1学年全体で男女それぞれ10人程度の応募者しかないという状況は、情報が全く届いていないということでしょうか?

現在の資格条件であれば、少なくとも100人程度の応募があってもよいのではないかと思います。

しかも、帰国子女枠の生徒は一般枠にも応募可能なため、出願時に2度おいしいという特典付き。

この、一般枠と帰国子女枠のギャップは何なのだろうかと思ってしまいます。

今回は入試全体の概要の確認が目的であるため、本当の理由を探るところまでは踏み込みませんが、一般枠入試が30倍を超える状況にあって、勿体ないように思います。

本ブログは海外駐在者の閲覧も多いため、都立の新しい小中高12年一貫教育の学校が開校したという事実がもっと広まればよいと思います。

学校説明会に行こう

 2期目の募集となる令和5年2023年度入試は現在ちょうどスタートしたところです。

この夏から秋にかけて、学校説明会が開催されますから、気になる保護者の方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

小中高一貫立川国際2022年学校説明会

小中高一貫立川国際2022年学校説明会

ただし、1回の定員が140名程度であれば、申し込みはほぼ秒殺で終了となるはずです。

コロナの今、こうした状況は都立高校でも同じこと。

人気校の場合、なかなか志望校の敷地にさえ入ることができない状況があります。

このため1次審査の抽選同様、当たればラッキーという余裕ある気持ちで参加することが大切だと思います。

新たな市場と受験低年齢化懸念

 もし仮に、立川国際附属小学校の開口が、一般市民に対する小学受験の門戸を開くきっかけである場合、これが保護者や子供たちにとって良い状況であるのかどうか、今のところ判断がつきません。

もしかすると、受験年齢の低学年化の裾野が広がる懸念があるからです。

東京子育て研究所では、高校受験までは自由な遊びや家族時間を大切にすることで、子の可能性を伸ばし自立心を育むという立場ですから、立川国際小の開校に対してはやや複雑な思いで見ています。

少なくとも、学習塾にとっては大いに歓迎すべき状況であることは間違いないでしょう。一般家庭の小学受験需要という、新たなマーケットが創出されるからです。

都内受験の状況がどのような変化を見せるのか、今後も継続して同校の情報を確認していきたいと思います。

ではまた次回。