日比谷から目指す、その先の大学合格期待値

 2018年、いよいよわが家も大学受験の年を迎えました。

2年生まで塾にも学校主催の講習会にも参加せず、家でも見ればスマホをいじっていた長男も、年を越してからは別人のように勉強し始めました。1日30分にも満たなかった日々の家庭学習時間が、ある日からいきなり10倍程になったような感じです。平日はもちろん休日も、見ればリビングで勉強しているという状態です。

高校受験の際は秋にもまだ余裕があったようですが、大学受験を迎える現在、受験1年前の時点では既に時間的に余裕がないという気持ちが強いのだそうです。私の悪い部分を受け継いで、学校の提出課題など、何事も締切り直前まで手を付けない性格の長男ですが、目的達成のために勉強して成果を出すという点に関しては、既に親である私自身よりも優れた能力を持ち合わせていると感じます。

高校受験で結果を残している以上、受験対策に関しては口出しせずに本人に任せています。親としては子が希望する大学に合格できればよいと思います。

日比谷にわが子を預ける保護者の方も、これから日比谷を目指す受験生も、校内のどの程度の成績であればどのあたりの大学に行けそうか、という点は気になるところです。

そこで今回は、過去の大学合格実績を見ながら、日比谷高校生の大学合格期待値について考えたいと思います。

 

国公立大学合格実績

 まずは国公立大学の合格実績を確認します。

日比谷高校の生徒の多くは国公立大学を志望しているように思いますが、例年どの程度の現役生が国公立大学への合格を手にしているのでしょう。まずは次の一覧をご覧ください。 

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この一覧は、過去4年間の平均合格数を、実績の多い順に上から並べた表です。

毎年120人程度の日比谷現役生が、浪人を含めると200人程度の受験生が国公立大学に合格する状況が理解できます。国公立大は一人一校合格が基本ですので、合格数がそのまま合格受験生の頭数と考えてよいでしょう。

日比谷高校の国立大合格者の特徴は、現役合格が6割を超えるという点ではないでしょうか。東大を含め、首都圏主要国立大学ではその傾向がはっきり現れます。

そしてもう一つは、都内の国公立大学進学志向が強いという点。

毎年合格数が最多の国公立大学が東京大学であり、現役で概ね30人程度が合格しています。今年2018年度は、一橋大学の合格者が25人で全国1位となりました。東京一工、すなわち全国難関大合格の目安となる東大、京大、一橋大、東工大では現役で50人程度が合格していますが、その内京都大学は、現役浪人合わせて毎年数名程度です。

公立高校の国立大学合格ランキングなどで日比谷がそれほど上位に位置しないのは、この東京志向の強さの裏返しでしょう。都内の国公立に現役合格するのは、やはり地方の国立大学に合格するよりも狭き門だと考えられるからです。

個人的には、長男には地方の旧帝大辺りに進学してほしいなという気持ちはあります。母親の至れり尽くせりの環境に慣れ切った生活から自立して生活する日々は、どうなってしまうか心配に思う反面、個人の経験から見てもよいものです。

下宿といえば余談ですが、九州大学が最近郊外のキャンパスに移転してしまい、かつて旧帝大でもトップクラスだった立地の魅力が失われてしまって残念です。研究という点では設備も現在の方が充実しているのかしれませんが、自分が学生でも保護者でも、箱崎キャンパスなら東京から下宿しても面白いなと思う半面、今なら他の大学にしようかと考えてしまいます。ちなみに九大新キャンパスには、移転後実際に3回ほど訪問したことがあります。

個人的には大都市の繁華街に近い大学の方が好きですが、都会の喧騒が好きな受験生も、郊外の静かな環境で勉強したい受験生も、高3になる前の早い段階で、高校受験の学校訪問と同様に、青年期の大切な時期を過ごす志望校のキャンパスを実際に訪れることをお勧めします。

 

私立大学合格実績

 では次に、私立大学の合格実績を確認します。日比谷生の受験傾向を見るために、過去現役合格者が10人以上出た大学のみを、4年平均合格数の多い順に掲載します。

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例年、早稲田、慶応の現役合格者がそれぞれ100人程度であることが確認できます。

次に続く明治および上智、理科大は半分の50人程度、明治以外のMARCHに至っては、それぞれ早慶の2割程度、5校合わせても早慶2校の6割程度の合格数にとどまります。その他の私立大学については、数名程度の学校が多数並ぶという状況です。

一覧からは、早慶MARCHをはじめ都内の有名私立高校への現役合格者について、2018年度入試における合格定員の厳格化の影響をほとんど受けていないことが分かります。

実際、4月1日付の週刊誌の特集号では、早稲田合格数は全国で4位、花形の政治経済学部も4位、慶應大学は全国2位、花形の経済学部は全国トップの合格数となっていますから、十分余裕をもって試験に臨む生徒が多いのではないでしょうか。

MARCH各校の合格数が少ないのは、単純に受験する生徒の数が少ないからでしょう。この状況を見る限り、現在の日比谷高校の大学受験志向は、都内国公立が本命、早慶が併願、MARCHその他の大学が抑えという感じではないでしょうか。

それ以外に医学部を目指す生徒は、医学部向けの私立大学を受験している様子も一覧からうかがえます。

 

志願者数から見る国公立大学

 大学合格実績から、ここ数年の日比谷受験生の動向を確認しました。保護者として気になるのは、校内のどの程度の成績であればどのレベルの大学を目指す意識があるかという点です。

そこで今度は、合格実績から想定される受験者数を考えてみます。国公立大の場合は私立とは異なり一人が複数合格ということが原則ありませんから、受験者数を知ることで在校生の大よその志望大学傾向が見えてくるのではないかと考えます。

検証方法として、先の合格実績に大学毎の合格倍率を乗じた数字を確認します。合格者数に受験倍率を掛けることで、おおよその受験者数を得ることができるのではないでしょうか。では見てみましょう。

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大学合格実績にそれぞれの大学の受験倍率を乗じた結果、受験数が合計で367人となりました。この場合の全体合格倍率は367/119=3.08倍です。ただし日比谷の1学年は320人ですから、全員がいずれかの国公立大学を受験したと仮定した場合、320/119=2.69倍となります。全体で見ると日比谷の合格率は全国平均よりも15%ほど高いということが言えるかもしれません。

合格数最多となる東京大学に注目すると、受験者数89人という結果となりました。日比谷高校の東大合格率が受験生平均と比較して高いか低いかは分りませんが、この数字がある程度確からしいと考えると、医学部の想定受験者数51人と合わせて、校内順位140番程度までの生徒であれば、東大や国立医学部を第一志望に考えているということが垣間見えるように思います。

結構な数の日比谷生が、最難関を目指しているのかもしれません。

更に東工大、一橋大の59人を加えると、ちょうど成績199番までの生徒については、旧帝大あるいは理系であれば東工大を、文系であれば一橋大学を狙う位置にあると言えるでしょうか。

ですから目安としては、校内成績200番程度であれば、いわゆる難関国立大学を現役で合格する期待値が十分高いといえるかもしれません。もちろん駿台模試など、全国レベルでの客観的な立ち位置の裏付けがあってのことですが。

なんだか高すぎる期待値のような気もしますが、もし上記の推測が誤りだとすると、逆に100番までの生徒の難関大学合格率が異常に高いという事実につながります。あくまで推測の域を出ませんが、星陵祭後の直前期のラストスパートなどを考えると、どちらかというと前者が正しいような気がします。

尚、武内校長の著書に記載された通り、日比谷高校の校内テストは教員によらず全て共通の試験になっており、各教科毎、合計点数毎に順位が明記されますから、早い段階から自分が何番に位置しているのかを客観的に把握しやすい環境にあると思います。

もちろん、学校の順位と大学受験偏差値は必ずしもイコールではないと思いますが、長男の成績を見る限りでは、校内成績も十分目安になる値であることは確かです。

ですからこれから日比谷を目指す中学生の君や新入生の皆さんは、入学後の目標として校内成績100番以内を安定的に維持することを当面の目標にして、少なくとも200番台に落ちないようにするということが、最難関大学進学を見据えた場合のガイドラインになるのではないでしょうか。

もちろん、入学後初めての校内テストで200番、300番台を取ったからと言って、焦ったり、直ちに悲観することはないでしょう。まだまだ先は長いです。保護者としては学生生活を楽しみながら、勉強のペースをつかんでほしいと思います。

 

志願者数から見る私立大学

 では次に、私立大学の想定志願者数を見てみましょう。私立の場合は一人で何校も受験することが可能ですから、見極めが難しいです。

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2018年度早稲田大学の一般入試の倍率は9倍もありましたので、これに従うと日比谷現役生の受験数は延べ913人にも上ります。

実際は先に見た通り、国立大学を第一志望に併願としての私立受験に臨む生徒が多いと思いますから、特定の私立大学を第一志望にする生徒以外は、同じ大学の異なる学部を複数受けるという状況は考えにくいと思います。むしろ進学したい学部を軸に、複数大学を受ける状況の方が多いでしょう。

そう考えると日比谷生の早稲田合格率は、現役生全員がどこかの学部を受けるとして、320/99で導かれる3倍程度であるといえるかもしれません。

同様に慶應義塾大学の場合も3倍程度でしょうか、先に見た通り、早稲田も慶應も、人気や偏差値の高い花形学部に多くの合格者を出していることから、全国平均から比べると相当合格率も高いのではないかと考えられます。

 

大学受験を見据えた急がば回れ

 中堅進学校の場合、特に首都圏の中高一貫校であれば、早慶合格数が一つの踏み絵のような指標になっていますから、学校をあげて早いうちから受験科目に特化した対策を行っているかもしれません。難関大学の合格数が、翌年の受験生の人気度や保護者からの評価に変化を与え、学校経営に直結するからです。

逆にそうした勉強法は、変化に弱いということも挙げられます。

想定した問題傾向が変われば、点数を確保しにくいし、得点上位での合格も難しい。その結果が、都内大学合格数の厳格化によって、合格者数の大幅減少という直撃を受ける形で表れたのではないかと思います。

これに対して日比谷の場合は、受験科目にかかわらず全教科履修型のカリキュラムを負わされますから、短い学生生活の中で一見無駄な勉強を積み重ねているように見えながら、試験傾向の変化に対応できる底力が培われているのだと思います。

2018年度の開成中学の国語の問題が、適性検査型となったように、今後大学入試改革の方向性に合わせるように様々な大学で入試傾向に変化がみられるかもしれません。

そうした中で、受験特化型でない学びのカリキュラムを持った学校が、結局のところは高い合格実績を残していくのではないかと感じます。

2年生の冬休みまでは特別な大学受援対策など1ミリも行わなかったわが家の長男も、なんだかんだ学校の授業とテストに追従することで、何とか志望校に臨む最低限の学力を維持することができたように思います。

先輩方の中には、塾なしで東京大学理系学科に現役合格する生徒も確かにいるのですから、最低限、学校の勉強は疎かにせず、真摯に取り組んだ方がよいのではないかと思います。

来春、日比谷を目指す君の笑顔と同じように、わが家の長男のうれしい合格報告ができればいいなと思います。

ではまた次回。

 
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