戸山高校のリアル授業を見学しました。
戸山高校は、1894年(明治27年)に東京府立第四中学校としてナンバースクールの歴史をスタートし、学校群制度導入前には日比谷高校と並んで日本を代表する進学校として名を馳せた学校です。
学校群以降、日比谷高校の進学実績が急激に落ちる中で、戸山高校は1976年(昭和51年)まで東大トップ10を維持していましたが、それ以降は中学受験ブームの波にのまれれ、他の都立高校同様にランキングから消えていきます。
大学ライクなキャンパス
戸山高校の最大の特徴の一つは、早稲田大学理工学部の正面に位置し、学習院女子大学に隣接するその立地にあります。
新宿と池袋に挟まれた大都市圏にありながら、大学キャンパスや広大な戸山公園と共に緑豊かな文京地区の一角をなし、学習院女子と並んで建つ正門から校舎までの並木通りが空間のゆとりを感じさせるなど、非常に恵まれた環境にあります。
そして副都心線ができたことによる恩恵を、最大限に享受する学校でもあります。
副都心線西早稲田駅から徒歩1分、高田馬場からも12分ほどの距離にある、正に早稲田大学のキャンパスライフとアクセスを共有する学校です。
オーソドックスな敷地と校舎
初めて入った印象は、都市部にありながら、周囲の高い建物や都会の雑音を意識することのない、非常に静かで落ち着いた学校だということです。
校舎棟を中心に、グランドと体育館、プールとテニスコートが取り囲む平坦なその敷地は、正門からの並木道を隔てた奥に位置することで、明治通りの喧騒とはかけ離れた学び舎にふさわしい静けさを保っています。
ゆとりをもって配置された4面のテニスコートが特に印象的でした。
校舎はロの字型の教室配置を持つ、非常に単純で分かりやすい建物です。
南北に位置する建物長辺には各種教室が配置され、東西の短辺部分にはトイレや階段などのサービスが設置されています。
ロの字の中央には、2,3階の屋上部分に設けられた階段広場が広がっており、学校生活にゆとりある憩いの場を提供しています。
この外部世界から隔離された特殊な屋外の空間を目にすると、実際にこの場所で何が行われているのだろうかという想像力が掻き立てられます。授業の合間の団欒やちょっとしたイベント、学園祭の準備や部活の練習、晴れた日のお弁当の場などに活用されているのでしょうか?
学校生活の求心力と成り得る、非常に特徴的な場所だと感じました。
機能的には中央に広場を設けることで、下階の屋根として直下に図書館と講堂を確保しています。
各教室と廊下部分は、ごくごく標準的で特に特筆すべきものがない、オーソドックスな設計となっています。
自由なスタイル
今回リアルな授業を見学して感じたことは、戸山高校は、おそらく校則らしい校則のない、自由な学校生活が確保されているだろうということです。
指定制服がない私服通学が基本ですが、どこかの制服を着用する男女もちらほら見られ、また明らかに髪を染めている生徒も散見されるなど、ごくごく自然で等身大の生徒像が確認できました。
時々、都立高校のトンデモ校則の話題がマスコミに上がることがありますが、進学指導重点校の私服校ともなれば、学校側もよほどのことがない限り、生徒の自主性に任せた学校運営が基本になるのだと思います。
オーソドックススタイルの授業
今回は3年生を除く1、2年生の全てのクラスの授業を見学することができたため、体育以外の概ね全ての科目を見学することができたように思います。
授業に対する全体的な印象としては、生徒間での意見交換や対話練習など、語学だけではない様々な科目でアクティブラーニング的な対話の要素を取り入れた授業が試みられていたことと、逆に英語のような対話型の要素が現れやすい科目については、他校と比較して、むしろまだまだ講義型授業に近い状況にあるということが挙げられます。
来年2023年度からは、全ての都立高校で授業にタブレットが導入されることが決まっています。
今回見学した授業のスタイルも、来年以降はまた大きく変わっていくのだと思います。戸山高校に関わらず、今後の授業の在り方はどのようになっていくのでしょうか。
戸山の現役大学合格実績
では最後に、戸山高校の最近の大学合格実績を確認したいと思います。
国公立大学の[現役]合格数を見ると、2022年度は142人となり、重点7校の中で日比谷に次いで高い数字となっています。
1学年320人ですから、概ね半分の生徒が現役で国公立大学に合格する状況が伺えます。
ただしその内訳をみると、東京都が指定する最難関大学(東大、京大、一橋、東京工大および国公立医学部)への現役合格はそれほど多くはなく、合格者全体の2割程度となっています。
最難関以外の難関国公立大学の内訳は以下の通りとなります。
これを東京一工、旧帝大、東京・神奈川・千葉三都県国公立大学でまとめると以下の状況となります。
大学合格実績比較では、どうしても東大や医学部などの最難関に目が向きがちですが、こうして内訳を見てみると、最難関を含めた旧帝大相当の大学が概ね40~50人程度、激戦区となる首都三都県の国公立大が概ね75人程度、合わせると現役合格120人、概ね合格者の8割程度を主要国公立大学を占めており、中高一貫ではない公立進学校としては決して悪くはない実績と言えそうです。
尚、2022年直近1年の結果となりますが、最難関大学を他の重点校と比較すると以下のようになります。圧倒的な日比谷を軸に、西、国立高校に次ぐ実績が伺えます。
戸山高校は、早稲田の杜に囲まれる都会のオアシス的な環境に恵まれた、今も都立を代表する人気の進学校の一つです。
現在大学進学実績では、日比谷、西、国立に次ぐ2番手校と目されていますが、中学受験を選択しない保護者目線で見ると、私立大学への進学前提ではない首都圏の国公立大学を中心に、主要な大学が狙える進学校として、十分満足のいく結果だと感じます。
今回は、1時間程度という短い滞在時間でしたが、初めて戸山高校を訪問する機会に恵まれましたので、学校環境を中心に第一印象としてお話ししました。
今後夏から秋に向けて、学校説明会などにも積極的に参加しながら、引き続き各高校の等身大のリアルな情報をお伝えしたいと思います。
ではまた次回。