2022日比谷高校難関大合格速報

 2022年3月12日現在、東京大学63人合格で2年連続の60人越えとなった日比谷高校。現役数でも53人と、50人を越えてきました。

そして現在、東大合格数に関しては、1970年以来52年ぶりに麻布高校を上回る数字を出しており、東大トップテン入りの定着も見えつつあるなど、都立学校群制度導入半世紀にして、大学受験の景色が少し変わりつつある予感がします。

1970年東大トップ10

1970年東大TOP10/出典:中学・高校探しナビ

今回は、2022年度大学合格実績の速報値として、受験と教育情報サイト「インターエデュ」の合格実績を採用し、日比谷高校の大学合格推移を確認します。

尚、現時点での情報は国立二次試験結果が出る前の速報値であり、未集計分も今後加わるため、あくまで一次試験直後の瞬間風速的な参考情報としてご覧ください。

東大+国公立医学部【現役】数

 初めに東京大学と、国公立医学部の合格数を確認します。

2022年度日比谷高校東大+国公立医現役合格数

2020年からの東大・国公立医学部合格数の伸びが顕著です。昨年に引続き、東大合格数は全国トップ10に入る見込みです。

先の1970年代の東大合格数を見ると、学校群導入の影響でその後急激に合格数を落とすことになる日比谷高校が、東大トップ10に残った最後の年は1970年となります。

2021年、ピッタリ50年後に、再び東大トップ10に返り咲きました。

迷信じみたように聞こえても構わないのですが、この数字の巡りあわせは偶然ではないと感じています。半世紀を経て、日比谷高校が日本で初めて学校の栄枯盛衰の2週目を迎えたものと考えています。

それはともかく、現役生の1/4が東大または国公立医学部に現役合格するという状況は、長男が日比谷に通っていた2016-19年当時に保護者として素直に感じた、それほど勉強ができる生徒は多くないという感覚とは全く異なる状況に変わっているのではないかと思います。

この点の具体例として、今年の東大入試環境では、共通テストの数学難化に加え、東大数学の難化が指摘されていました。これにより、公立高校の現役生はダメージを受けるとの予想がありましたが、少なくとも日比谷高校に関しては、数学の難易度は既に影響があまりないようです。

そして校内の相対学力の上昇は、都立の男女合同選抜が進むにつれ今後も進むでしょう。その結果、そろそろ頭打ちではないどころか、毎年上げ下げを繰り返しながら、中長期的には実績が伸びる方向に向かうと思われます。

そういう意味では、東大現役50人、国公立医学部25人という数字が、当面意識すべきベンチマークになるように思います。

東京一工医学部【現役】数

 では次に、最難関大学の指標として取り上げられる、京都大学、一橋大学、東京工業大学を加えた合格数を確認します。

2022年度日比谷高校 東京一工【現役】合格数推移

東大と国公立医学部に、京大、一橋、東京工大を加えると、現役合格は99人となり、現時点では昨年を2人下回ります。最終的には、例年二次試験後に増える一橋の合格者などにより、100人を越えてくるだろうと思います。

そして今年は京都大学が10人となり、近年初めて現役2桁となりました。

合格者100人は、在校生の概ね1/3に当たりますので、日比谷現役生の3人に1人が全国最難関の国公立大学に現役で進学することになります。

グラフを見ると、過去8年間多少の凸凹を生じながら、右肩上がりに増加していることが理解できます。東大+国公立医学部と同様に、当面は緩やかな右肩上がりが続くと思います。

尚、この数字には医学部を除くその他の国公立大学の数字は含まれていません。これを含めると、今年度は未定ですが、2021年度は173人となりますので、実に生徒の半数以上が現役で国公立大学に進学する状況となります。

合格率を考慮すると、日比谷の場合現役生の大部分が、国公立大学進学を目指しているという環境ではないでしょうか。

都立進学指導重点7校の比較

 次に客観的な視点として、他の都立重点校との比較を行います。

2022都立進学指導重点校【現役】大学合格数推移

このグラフからは、2022年度の最難関国公立大学の合格に関しては、日比谷高校が完全に抜けていると言うことができます。現時点で西高と国立(くにたち)高校の全体の合計数とピッタリ同じ数となっており、まさに1強と呼べる状況ではないでしょうか。

これが今年に限った状況かどうか見るために。2020年度の結果と比較してみます。

2020-22都立進学指導重点校【現役】合格数比較

2年前の実績との比較で理解できることは、日比谷高校がやはり大きく伸びているということです。

西高と国立高の合計も若干増えていますが、ほとんど変化がないですし、その他の重点校もそれぞれ同程度の実績が継続しています。これはつまり、日比谷高校が、従来は他の重点校へ進学していた都立受験優秀層を引っ張ってきて一極集中に向かっているのではなく、従来は都立以外の国私立高校等に進学していた生徒を集めているということになります。

そしてその傾向は、まだしばらく続くものと考えられます。

都立男女合同入試の影響

 では最後に、今後しばらくは日比谷高校の大学合格実績が伸びる可能性がある点について考えたいと思います。

日比谷高校だけでなく、他の重点校や進学指導特別推進校などについても、大学合格実績は今後上昇余地があると考えています。

その理由は、今年2022年度入試から始まった、男女別の合格枠を撤廃する、男女合同定員の導入の影響です。

理由など詳細はここでは割愛しますが、都立高校が男女合同入試に移行することで、結果的に、各学校の合格最低点は上昇します。これは現在の男女別枠入試と合同入試の制度上の違いにより、学力に関わらずどの学校でも普遍的に発生する現象です。

そして学力上位の進学校ほど、内申点よりも入試得点による合格影響が大きいため、結果的に、入学時の生徒母集団の平均学力が相対的に上がることになります。学力上位層が増えるというよりは、学力下位層が減るというイメージです。

それにより、各学校の学力中間層の厚みが増し、学校側も学習指導が行いやすくなるものと思います。そのように構造的にも、学力が伸びやすい環境が整うものと思います。

この男女合同枠は、初年度の2022年度入試では定員の1割にとどまっていますが、今後2割への拡大を経て男女別枠のない100%合同入試へと移行します。

100%男女区別のない入試判定になった場合には、現在の男女別枠入試と比較して、合格最低レベルが現在よりも上昇することは間違いありません。これにより、現在よりも大学合格実績が上振れする土壌が育つと共に、実際に進学実績を見た受験生や保護者の方が都立を積極的に志向し、更に上昇するという循環が発生するものと考えられます。

この男女合同入試への移行に関する具体的なスケジュールは現在のところ示されていませんが、初年度入試では大きな混乱はなかったものと思いますので、今後移行の各段階に2,3年かけながら5年程度では男女枠は撤廃されるものと思います。

従って、今後緩やかに、都立進学校全体の大学合格実績は質の向上が進むのではないかと感じます。

尚、偏差値下位層の学校では、男女合同入試により合格点が上がるのは同じですが、逆に内申点の影響が強くなり、こちらは相対的に学校環境がより落ち着いた雰囲気になるのではないかと期待されます。

以上、2022年度日比谷高校の大学合格実績速報を基に、都立高校全体の今後の動向まで考えてみました。

都立学校群制度による日比谷高校の大学合格実績への影響が現れ、高校受験業界だけでなく中学受験業界に至るまで、日本の教育構造を大きく変えてしまった入試改革から半世紀。今再び緩やかに、その影響が全体に及ぶような動きが静かに始まっています。

10年後の大学入試合格地図は、どのように変わっているのでしょうか?継続的に見守っていきたいと思います。

ではまた次回。