2022年日比谷男女合格割合【女子編】

 男女合同定員枠が1割導入されたことにより、都立入試全体では女子受験生の合格者が大幅に増加する見込みとされています。

その一方で、学力上位のトップ校に近づくにつれ、女子の合格者はむしろ例年よりも減少するのではないかと懸念しています。

そこで今回は、男女合同枠の影響による日比谷高校の女子合格者がどのように変化するか、具体的に検証してみたいと思います。

男女合同定員合格者イメージ

 男女合格者数を算出する前に、合同枠での合格イメージを確認します。

日比谷高校の場合、例年の受験者平均点について、男子の方が女子よりも16点程高いという傾向があります。

日比谷高校入試男女想定合計得点差

仮に、男女それぞれの受験生の合計得点が同じ正規分布に従っていると想定した上で、それぞれの平均点のやや下辺りに合格ラインがあると仮定した場合、男女の得点分布は概ね以下のようなイメージとなります。

日比谷高校男女合同定員枠合格者イメージ

この場合、男女合同枠における男女それぞれの合格者は、母集団平均点の高い男子の不合格者の内、得点の高い者から対象となり、女子不合格者の最高得点と同じ得点になるまで「男子の合格」が進むことになるはずです。
日比谷高校の男女合同枠の1割定員は、概ね25人ですから、男女の入試平均点に16点ほどの差があるとすると、合同枠の多くが男子で埋まるということがあるかもしれません。

都立高校男女合同枠選抜イメージ

教育委員会が示した例では、女子の合格点が男子より18点高く、ちょうど日比谷の逆パターンとなっています。そして合同枠の合格対象者は男女概ね同数となっていますが、この事例には違和感を覚えます。

何故ならば、受験生一人一人の得点の開きが大きすぎるからです。

例えば合格者が全学部合計で毎年3,000人余りとなる東大入試の場合、合格と不合格を分けるのは、わずか0.2点程度です。都立高校入試の場合はこの1/10程度の規模で倍率も半分程度ですが、合否の分かれ目の得点差がこの例のようにスカスカということは考えにくいです。

特にトップ校の場合は1点の差で複数人数が動くために、毎年合格ボーダーの線引きに苦労する状況ではないかと思うのです。そしてこの教育委員会の例でも、平均点の高い女子が合同枠合格の3/4を占めていることから、男女平均点の差が開く場合は、平均点の高い方が合同枠の恩恵を受けやすいと想定されます。

ただし、実際の得点分布は分からないことから、ここでは合同枠25人の内、男子合格者が20人、女子合格者が5人と仮定して、実際の女子受験生の状況を検証することとします。

2022年日比谷女子受験状況

 ではまず2022年度の受験者数を確認します。

2022年度日比谷女子受験者数

2022年度の男子受験生が大幅に増加したのとは対照的に、女子は昨年よりも応募者、受験者ともに減少しました。

この要因としては主として、やはり男女合同定員1割枠新設の影響ではないかと思います。日比谷の場合、女子受験生にとって男女合同枠が女子に不利との判断があったのかもしれません。それが理由の場合には、2番手校辺りの女子受験状況が激化しているかもしれません。

2022年日比谷女子合格者数

 では次に、本年度女子受験生が最も気になる合格者の状況を確認します。

2022年度日比谷女子合格者数

2022年度の女子合格者は、過去10年の中で最も少ない123人程度となるように思います。もちろん、女子の受験者平均点が2020年度のように男子とほとんど変わらない状況になれば、合格者は例年並みに落ち着くことになります。逆に男女差が大きい場合には、120人を下回るかもしれません。

女子募集人員122人の内、男女合同枠に12人振り分けられる結果、固定合格人数は110人となり、そこから何人積み増しするかの結果となります。

仮に日比谷女子の合格者が減少した場合でも、受験者数の減少により、不合格となる人数は過去最低水準の60人台に落ち着くことになりそうです。そういう意味では、女子受験者の減少は、先を見越した集団意識の選択であったのかもしれません。

2022年日比谷女子受験倍率

 では最後に受検倍率です。

2022年度日比谷女子受験倍率

先に見た通り、受験者そのものが減ったものの、合格者数も例年よりは少ないと考えられる状況の中、合格倍率は例年並みか例年よりもむしろ過去10年の中で2番目に低い結果となりそうです。

そういう意味では本当に、女子受験生が自ら調整して無理のない受験環境を作り出したと考えられます。本年度は様々な特殊要因が重なったことにより、男子よりも保守的な心理が働いたということかもしれません。

個人的には今回の結果を見て、少しホッとしています。

何故ならば、例年通りの受験倍率となった場合には、例年よりも多くの女子受験生が涙を呑むことになったかもしれないからです。

そのような悲しい状況が、制度の変更により必要以上に発生しないことは、大変な時期の受験にあっては不幸中の幸いといったとことでしょうか。

今回始まった男女合同定員は、現在の1割から2割への増加を通じて最終的には男女別枠は全廃されることになっています。

偏差値上位の共学校で男女合同選抜試験の場合、一般的には女子よりも男子の生徒数が多い傾向が見られます。その極端な例が女子比率2割の壁を超えることができない東京大学です。

そういう意味では都立高校の男女別枠の入試制度は、東京大学が見習うべき、ある意味で優れた制度ではないかと考えることがあります。

いずれにしても、既に男女別枠入試が廃止されることが決定している以上、今後しばらくの間は都立入試が落ち着かない状況が続く可能性が高いということになります。

政治家や行政の安易な判断で、多くの受験生が不安な気持ちや不利益を被らないよう、これからの都立高校の入試制度については追いかけたいと考えています。

本年度入学する男女の割合は実際にはどのようになるのでしょうか。注目です。

ではまた次回。