いよいよ都立高校入試の男女合同定員制度が始まります。
入試結果については、各校どのような状況となるのかふたを開けるまでは分かりませんが、入試情報に関しては、日比谷高校のホームページ上に早々影響が現れました。
入試情報が開示できない
例年は、刻々と変わる応募状況や受験状況について下のように都度情報が開示されていましたが、男女合同定員初年度となった今年は、入試が終わり、入学者も確定した5月まで一切情報が開示されない事態となりました。
この変化は、男女合同選抜導入によるものであることは間違いなく、直接の要因としては従来は有効であった男女それぞれの「募集人員」が変動数となってしまったため、倍率なども明示しにくい状況となったことがあるでしょう。
ただ、「応募人員」や「最終応募人員」などは確定数として明示できるはずですし、教育委員会のホームページ上では公開されていますので、公開しようと思えばできるとは思いますが、学校側の心理としては、初めての制度によりどのような事態が生じるか分からない中で、一切開示しないという最も保守的な対応となったことが予想されます。
この辺りの情報開示状況は、受験生にとっては男女合同枠導入のマイナス効果となって現れたのが残念です。
東京都教育委員会自体はホームページ上で、合同定員の影響は無視した上で、継続的に男女の募集人員数と応募倍率を公表していますから、現場の学校側と比較するとだいぶ緊張感がないのかもしれません。
結果が出るまで男女合格者が定かではない合同枠があるために、都の公開する応募倍率もあくまで参考値程度の価値しかないことになります。
2022年度日比谷実質応募倍率
受験生にとっては気持ちの上でも受験校の状況が分からないのは不安なものです。
そこで、結果によって変動する実質的な応募倍率を示してみます。結果は以下の通りとなります。
男女別固定募集人員は以下の通り
- 男子:119人/2.77倍
- 女子:110人/1.96倍
男子で2.8倍、女子でも2倍ほどの倍率があります。
入学辞退者を見込んだ定員プラスアルファの余剰合格者について、男女それぞれ別枠で合格数を拡大する場合は、上記よりも若干倍率は低くなります。
日比谷の男女合同定員は、定員の1割を切り上げるのか切り捨てるのかにもよりますが、端数切捨てとした場合は男女合わせて25人の合格枠となります。
一覧の通り、合同枠の男女合格者の状況により、男女入学者の数には大きな開きが生じます。もともと人口割合の反映により男子の方が定員が多い中で、仮に合同定員25人が全員男子だった場合、男子の方が女子よりも34人、概ね1クラス分男子が多い構成ということになります。
制度対応へ不安な学校側
初年度となる男女合同定員制度ですが、制度変更により学校側も負担が大きいものと考えられます。
合格者の決定スキームが2段階になることで、確かに従来よりも手間が増えることになります。しかしその辺りは平成27年度まで実施されていた、内申点不問で当日のテストの点だけで合否が決まる定員1割の特別枠制度に近く、また客観的な数字に基づき合格者が明確に決定するという意味においては、手間の増加は心理的にはそれほどの負担ではないように思います。
それよりも学校側が警戒しているのは、あくまで想像ですが、初めての制度の影響により入学手続き後に欠員が生じ、二次募集が発生するような事態ではないかと思います。
ちょうど東京学芸大附属校高校の大幅な入試制度の変更により、実際に二次募集が発生した3年前のトラウマが、その当時から在籍の教員の間にあることは想像に難くありません。
冒頭で指摘した通り、入試情報がリアルタイムで開示されない状況からも、その警戒感が伺い知れます。
情報を明示しないことは、前向きに考えると、男女定員が定かではない状況にあって未確定の情報を掲載することで混乱を招かないようにするためとも考えられますが、ネガティブな受け止め方をすると、何が起きるか分からない中でとりあえず非開示を選択するという保守的な気持ちからの対応と判断されても仕方ありません。
いずれにしても、以下の通り例年女子よりも男子の方が入学辞退者が若干多い傾向があるため、男子合格者が多ければ多いほど、欠員リスクは大きくなると考えられます。
2021年度入学手続状況
- 男子:合格者142人/入学辞退者8人
- 女子:合格者130人/入学辞退者4人
2020年度入学手続状況
- 男子:合格者142人/入学辞退者7人
- 女子:合格者133人/入学辞退者5人
かつて二次募集が行われた後の日比谷の学校説明会で、合格者の割り増し人数は教育委員会が決定するため、学校側では自由に決定できないと担当教員から愚痴めいた説明がありました。
その決定方法が現在も同じである場合、男女定員と募集最終倍率を呑気に公開している教育委員会は、おそらく男女合同定員実施による日比谷高校の欠員リスクの増大を事前に認識していないでしょうから、学校側は本年度の二次募集リスクが例年よりも高い状況にあると密かに構え、強く警戒しているのかもしれません。
欠員が出るかでないかは、例年薄氷を踏むようなわずか数名の差でしかない事実がありますから、本年度入試ではそのリスクがより高いことが直感的に理解できますし、日比谷ホームページに記載のある、5月まで情報を開示しないというメッセージからは、隠蔽とは言わないまでも強い警戒感が伝わってくることは確かです。
確かに、新型コロナへの対応が引き続き求められる中で、二次募集が発生するのは何としても避けなければならないという事情もあるでしょうから、万が一ルール上では欠員が発生した場合でも、追加合格の連絡をするなど非公式の対応を行ってでも入学者を追試なしで決定するのは不可欠とも言えるでしょう。
入試に関する経過を非公開とするのは、そのような特殊な状況の中では止むを得ない状況とも思いますので、逆に二次募集を発生させないという学校側の強い決意の表れであるのかもしれません。
男女合同定員の行方
今年スタートする男女合同選抜は、3段階を経て男女別定員の完全撤廃に移行することが決定しています。
現時点では、第二段階および第三段階導入の年度は明示されていないものと認識していますが、その辺りは本年度の入試結果を踏まえ、各校へのヒアリングも行いながら今後の具体的なスケジュールが落とし込まれるものと思います。
都立高校入試の男女別定員はいつまで続くのでしょうか、そして初となる男女合同定員入試はどのような結果になるでしょうか。
本年度都立高校入試の最大の注目点の一つとなるこの制度の結果は、来年度情報の確定次第改めて分析しお伝えしたいと思います。
ではまた次回。