都立進学重点校・男女合同入試結果

2022年10月22日更新:

 2022年令和4年度都立高校入試の注目点と言えば、男女合同定員が全校に導入されたことではないでしょうか。

都立高校は、将来的に全ての高校が男女区別のない混合入試に変わることが決定していますが、本年度はその移行初年度にあたり、男女定員それぞれの1割が男女合同選抜枠として運用されました。

新宿高校や国際高校など、一部の学校では既に100%男女区別のない入試が行われていますが、学力トップ集団となる進学指導重点校では初の試みとなりますので、新制度が男女どちらに有利に働くのか、その結果が注目されています。

今回は、男女合同定員入試の評価について、進学指導重点校の結果に焦点を当ててお届けしたいと思います。

東京都立の進学校

 都立高校で進学校として目されるのは、

  • 進学指導重点校:7校
  • 進学指導特別推進校:7校
  • 進学指導推進校:13校

の計27校と認識してよいと思います。現在の指定は平成35年、2023年令和5年までの期間で設定されています。

都立高校進学指導重点校指定一覧

都立高校から大学受験を目指す家庭であれば、いわゆる都立の2番手校、3番手校と呼ばれる学校も含めて、この一覧の学校のどこかには子を進学させたいと考えている保護者が大半だと思います。

その中でも重点校は、日比谷高校をはじめ、全国的にも名の通った高校が所属し、都立から大学受験を目指す受験生や保護者の憧れの存在として、強く支持される学校です。

重点校の男女合同入試結

 進学指導重点校の中でも、日比谷、西、国立のトップ3校は、都立高校の象徴として一目置かれる存在です。

この重点校の入試結果は、男女合同枠移行への評価を決める上で、そして来年以降の志望校を決定する判断基準の一つとして、多くの受験生や関係者が注目しいる結果に違いありません。

とはいっても、男女合同枠の評価を判断する指標はどこにもありません。東京子育て研究所では、受験生や保護者の方に直感的に理解いただけることを目的に、独自の視点に立って本年度の合同枠を評価してみたいと思います。では結果を見てみましょう。

2022都立進学指導重点校男女合同枠結果

この一覧は、男女それぞれの定員に対し、何人多くの合格者が出たかを確認し、その余剰合格数の男女差に注目する評価方法です。

この方法のよい点は、簡単な計算で男女の定員差や合同枠の大小を気にすることなく、入試全体について男女どちらに有利な入試となったかを明確に確認できるところです。数字の大小は、入試で優勢となった度合の大きさになります。

立川高校は合格掲示板を一般に公開していないため、情報無となります。

日比谷、西、国立トップ3校比較

 この一覧で注目されるのは、トップ3校の内、日比谷と国立(くにたち)は男子の合格者が多く、西高校は女子合格者が多いという結果になったことです。

東京大学の合格者の8割が男子である事実を鑑みた場合、一般的に難関校の学力試験では男子が優勢となる傾向が見られます。

このため入試前は漠然と、トップ3校は全て男子が優勢な入試になるのではないかと考えていましたが、女子にとってはよい意味で予想を覆す結果となりました。

そしてこの中で特に注目したいのは西高校です。

対象進学指導重点校6校の内、唯一男子合格数が定員を割っています。明らかな女子優勢の結果です。

西高にとっては進学校としては少しネガティブな考察となりますが、もしかすると、今回の結果は都内男子の学力トップ層が、日比谷と国立2校に集まりつつある傾向を裏付ける査証になるのではないかと感じています。

実際2021年度の都立重点校の現役難関大合格数を確認すると、日比谷と西が都立2トップという位置づけで捉えるのは難しい状況のように感じます。

2021都立進学指導重点7校大学合格現役実績

2022年度の都立入試結果を見る限り、女子の総合点の方が高い状況であれば、西高は引き続き東大よりも京大志向が継続する状況が続くかもしれません。

そして今回の結果を受けて、来年度はどのような動きが見られるのかも気になります。

本年度の傾向を受け、男子優勢の日比谷と国立には男子が、女子優勢の西高には女子が集まり易い傾向となるのでしょうか?あるいは逆に今年の反動で、男女固定枠の合格ボーダーが高いまたは低いとみて、反対の傾向に振れるのでしょうか?

今後男女合同枠は段階を追って2割に引き上げられ、最終的には100%まで引き上げられます。つまり、全ての学校で男女が同じ得点評価で合否判定されることになります。

このため、しばらくは入試環境が落ち着かない状況がつづくと思われますので、受験生はあまり男女の有利不利や損得を気にし過ぎず、希望する第一志望をぶれずに選択することが賢明な受験判断になるのではないかと思います。

戸山・青山・八王子東の傾向

2022都立進学指導重点校男女合同入試結果

 トップ3校については、男子または女子のどちらかが明らかに優勢な状況に偏っているのに対し、2番手校と呼ばれる重点校3校については、男女差がそれほど大きく現れない結果となりました。

この辺りは学力グループ毎の傾向の違いがはっきり現れており興味深いです。

意外だったのは、戸山が女子やや優勢、青山が男子やや優勢の状況です。

個人的には、戸山は早稲田大学のイメージでバンカラ男子、青山は青山学院大学のイメージでおしゃれ女子という印象がありましたが、今年の入試結果を見る限りでは、それは言われのない印象だったようです。

特に戸山と八王子東は、合格余剰数の男女差がほとんどないことから、間接的に男女の学力が均衡している状況が確認できます。もしかすると、内申点が男女得点の調整スパイスとして利いているのかもしれません。

この状況であればもしかすると、この2校については今年100%の男女合同入試を実施していても、結果はそれほど大きくは変わらなかったかもしれません。

そして女子に人気の青山高校は、逆に男子がやや合格優勢の結果となりました。青山高校は、男女とも実際の受験倍率が2倍を超える人気校ですので、今回の結果を気にしている受験生は多いように思います。

今年の結果が来年以降の入試状況にどのような影響を及ぼすのか、引き続き注目したいと思います。

都立重点校の男女合同選抜

 最後に、進学重点校6校の合計数として、男子が21人優勢な状況となりました。

この状況は、先の東大入試のように、男子が8割を超えるというような状況からすると、ほとんど男女同数と言ってよい結果だと思います。

そしてこの状況は、まだまだ男女別枠合格が9割を占める状況がもたらす効果によるものが大きいのではないかと思います。その意味では、ソフトランディング的に段階を追って男女別枠を廃止するのは、受験生に負担をかけないという意味ではよいアプローチだとは思います。ただ、8割ある男女別枠を全廃する年にどうなるかは、少し懸念材料ではあります。

男女合同枠初年度の進学指導重点校の入試総括としては、男子がわずかに優勢ではあるものの、実際には内申点まで含めた男女の得点力には、全体としてそこまでの差はないものという答えになります。都立入試合格点の3割を占める内申点についても、相対的に内申点が高いとされる女子受験生に有利に働き、男女の得点差を詰めているものと思います。

今後、日比谷、西、国立のトップ3校の動きについて、男女合格差が開く方に進むのか、現状を維持するのか、あるいは差が縮まる方向に向かうのか気になるところです。

今回は、本年度初めての導入となる都立高校入試における男女合同定員枠の影響について、進学指導重点校に注目して確認しました。

重点校の中でも、上位校から下位校に向かう程、男女均衡の状況になる傾向が確認できました。この状況が必然的な結果だと仮定すると、進学指導特別推進校、進学指導推進校と学力母集団の得点力が下がるにつれ、結果的に内申点の影響が大きくなり、重点校とは逆に女子の優位性が高まることが想像されます。

その実際の状況は、別の機会に確認したいと考えています。男女別枠廃止議論の前提となる、女子受験生の学びの機会の確保は進むのでしょうか。

この点は引続き注目したいと思います。

2023年度合同枠20%への拡大

 そして2023年度入試では、男女合同枠が20%に拡大されることとなりました。移行スケジュールを明記していなかった昨年度の状況を思うと、想定より早く移行が進んでいるという印象です。

2割実施の結果により、男女枠撤廃後の入試への影響がより明確に見えて来るものと思います。この点については、スケジュールと共に意識をもって見守っていきたいと考えています。

ではまた次回