2023年度都立入試、男女合同枠20%への拡大

 令和5年、2023年度入試における制度変更点について、英語スピーキングテストと並んで大きな変更点の一つが男女合同枠の20%への増加です。

男女別定員から男女合同定員への段階的な移行

男女別定員から男女合同定員への段階的な移行

2022年度入試が終了した段階では、第二段階以降のスケジュールは全く示されていませんでした。

このため枠の拡大については複数年単位で徐々に実施されるような感覚がありましたが、令和5年、2023年度入試要項では前年に続いて10%増加となる20%への拡大が発表され驚きました。

そして最も注目すべきは、第三段階についてです。

現在の移行スケジュールで見る限り、20%となる第二段階の次、第三段階はいきなり100%の合同枠、つまり男女別入試が廃止されるということになります。

その実施時期については、「令和6年度以降早期に移行」との記載があります。

つまり早ければ、2024年入試から男女別の入試定員は完全撤廃され、全ての都立高校で性別に関係しない点数順での合格判定が行われるということになります。

正しいか?合同枠評価基準

 2022年度に引き続いて2023年度に合同枠を拡大する根拠として、東京都教育委員会はいくつかのシミュレーション結果を公開しています。

都教育委員会:男女合同枠と別枠の差異検証

都教育委員会:男女合同枠と別枠の差異検証

東京都教育委員会が公表するこの資料については、訴えたい意図、要するに男女別枠でも合同枠でも、入試結果に大きな差異は生じませんという趣旨は分かるのですが、個別の数字の意味についてはよく分からない点が含まれます。

男女合同と男女別との女子合格者数の差

 まず制度別の女子合格者数の差について、一覧にある重点5校の値については、2022年度実施結果である合同枠10%の場合も、2023年度入試予測となる20%枠の場合も、どちらも全て0となっています。

例えば日比谷高校の場合は、女子募集人員122人に対して2022年度の女子合格者が122人であるので差異0というのは理解できます。

ところがそれ以外の4校については、どのように考えると差異が0となるのか計算式や考え方が示されておらず、実際によく分かりません。

例えば、西高校の場合は女子定員122人に対して2022年度実際の合格者は136人ですから、女子合格者数の差は+14ではないかと思いますし、逆に国立高校の場合は122定員に対して女子合格者は114人ですから-8となるのではないかと思いますが、教育委員会の評価方法ではどちらも差が0となっており、そのような認識とは異なるようです。

合格最低点の差(女子-男子)

 この点数差については、男女合同枠における最低点の男女差となるはずですが、そもそも男女混合点数で線引きする場合には、受験生の得点が集中する合否ボーダーライン上で男女得点差が生じないのは当然の結果のように思います。逆にそのための男女合同枠であるはずです。

その他の学校を見ても、それぞれの数字がどのように算出されているかはっきりせず、狐に包まれたような気持になります。

男女合同選抜10%実施のリアル

 教育委員会の資料とは別に、東京子育て研究所が2022年3月8日に発信した合同枠結果についての速報では、各校の結果は以下の通りと評価しています。

2022男女合同定員枠入試結果

この一覧は、男女それぞれの定員数に対し、合同枠の影響による男女合格者数の増減を評価するためのものです。

例えば日比谷高校の場合、

  • 男子定員132:合格数149(+17)
  • 女子定員122:合格数122(±0)

となりますから、定員からの増加分は、17-0=17、つまり男子の方が女子より17人分増えているとなることを示しています。

同様に西高校の場合は、

  • 男子定員132:合格数126(-6)
  • 女子定員122:合格者数136(+14)

となりますから、-6-14=-20、つまり女子が20人増えていることを示しています。

その様に評価すると、2022年度入試では都立トップ3校については男女差異が大きく生じ、それ以外の重点校については極端な差は生じなかったという結論になります。

早期男女別枠撤廃への道程

 このような状況に対する個人的な解釈としては、男女合同枠の導入と移行が従来の別枠入試と比較して著しい結果の相違を生じない、ということを示すために準備された結論ありきの資料ではないかという気がしています。

要するに教育委員会としては、早期に男女別枠入試を廃止して、全ての都立高校について男女合同枠に移行したいと考えているのではないかということです。

もしその推察が正しいのであれば、移行の第3段階、つまり男女別枠の廃止と男女合同枠の完全実施は、最短期間となる令和6年2024年度入試から実施されるということになりそうです。

その場合には、少なくはない悲喜劇が各地で発生するように思いますが、事前に正確な予測を立てるために、まずは令和5年2023年度入試の結果を見るより他にありません。

何しろ20%実施の次が100%実施ですから、その飛躍の年に実際どのような状況が生じるのか気になるところではあります。

初年度の結果が増長され、差異が広がる方向に向かうのか、あるいは逆に教育委員会の資料のように波風立たない入試であることが証明されるのか、まずは2023年度第二段の入試結果を待ちたいと思います。

できる事なら過渡期となるこの数年は、男女合格数の著しい差異によって不安や混乱が生じない入試結果となることを願って止みません。

ではまた次回。