都立青山高校、キラキラの青春

都立青山高校正門

都立青山高校正門

 都立高校屈指の人気を誇る青山高校。

直近の女子の推薦入試倍率を見ると、とんでもないことになっています。

  • 令和4年(2022年)度:9.62倍
  • 令和3年(2021年)度:9.77倍

都立高校では異例の10倍近い倍率であることに驚きます。推薦倍率は男子でも6倍という高倍率を誇り、同校の人気ぶりが伺えます。

個人的には人気の秘密は2つの要因があると考えています。

  • 立地が抜群に良いこと
  • 難易度が高過ぎず低過ぎないこと

この2つに当てはまる都立高校として、青山と並んで新宿高校が挙げられるように思いますが、その中でも立地に関して青山高校は、青春期を過ごす環境としては羨ましすぎるように感じます。

その辺りを確認すべく、ずっと訪問したいと考えていた同校ですが、コロナの中での人数制限のためか、抽選申し込みとなっている学校説明会などのイベントに残念ながら落ちまくっていました。

そしてこの秋やっとのことで説明会に参加することができましたので、実際に学校を訪問して感じたことについてお話ししたいと思います。

スポーツの聖地

都立青山高校と国立競技場

都立青山高校と国立競技場

 青山高校人気の一つが、その立地にあることは間違いありません。

 青山高校は、東京メトロ銀座線外苑前駅から徒歩3分、日本のファッションをリードする青山通りから国立競技場に向かう途中、ヤクルトスワローズの本拠地であり、東京大学野球の聖地である神宮球場と、ラグビーの聖地秩父宮ラグビー場の正面に位置する学校です。

秋の紅葉が美しい外苑前の銀杏並木や、迎賓館の建つ赤坂御所までも目と鼻の先となる、都心のオアシスとでも言うべき非常にゆとりある閑静な環境の中にあります。

「君の名は。」の青春像

映画「君の名は。」外苑前銀杏並木

神宮外苑銀杏並木の紅葉

神宮外苑銀杏並木の紅葉

 新海誠監督「君の名は。」の高校生瀧君が、放課後に友人3人とカフェへ向かうシーン、ここが外苑前の銀杏並木です。秩父宮ラグビー場を挟む西側道路が青山高校、東側が銀杏並木という関係にあります。

劇中で田舎暮らしの三葉が憧れる、キラキラとした都会の青春の舞台として、洗練された青山エリアの環境が選ばれたのはごく自然な設定と感じます。

実際に青山高校を訪問してみると、買い物やデートで訪れる青山通りとは異なり、一般の方にとってはスポーツ競技の観戦など特別な場合にのみ訪れる特殊な通りにあることが理解できます。

生徒も、進学指導重点校に指定された都立進学校とはいえ、どことなく垢抜けた雰囲気の学生が多い印象です。学校内を案内してくれた女子生徒も、軽やかな着こなしとさっぱりとした屈託のない明るい笑顔が印象的でした。

ただし実際の高校生活では、アニメのように放課後のカフェやバイトはなく、部活に参加したり自習室で勉強に勤しむのが現実的な学生像だと思います。

生徒への信頼と期待

 学校説明会に参加して印象的だったのは、教員が生徒を大いに信頼して見守っているなと感じた点です。

非常にキラキラとした、都会の華やかな環境の中にありながら、生徒の風紀に係る服装や行動に対して制限を行う気持ちは一切ないようです。

「頭もいろんなレインボーカラーで染める生徒もいます。ちょっとやり過ぎじゃないのと思う子も散見されますが、何色でもきちんと勉強してくれればいいかなという気持ちです」

「コロナでオンライン授業やりましたよ。1日6時間もタブレットで授業聞かされる生徒はたまったもんじゃないと思いますよ。学校というのは人間関係もいろいろありますけど、やっぱり友達同士人が集まってなんぼのものかなと思う」

明らかにベテランといった教師とはいえ、こうした正直な気持ちを、入学を検討している中学生や保護者の前で隠さず話す教師が説明会を行う学校は、きっとよい学校なのだろうと感じました。

学校説明会ならば通常は、「わが校は他校に先駆けオンライン化を進め、学びを止めることなく...」と説明するところ。

先生がそうした軽やかな意識であれば、親も警戒せず子を預けることができるというものです。

青山高校は、周辺環境はゆとりある反面、キャンパス内はグランド以外は外に解放された場所の少ない、校舎中心の学校生活のように感じましたが、それでも窮屈さはそれほど感じることはなく、むしろ解放された自由な校風が思春期の心を伸びやかに育む環境がありそうです。

生徒も先生も、どことなく洗練された都会的な高校生活が始まる予感が漂っています。

目指せ難関国立大学

”AD ALTA” 高きを望め、青山で

”AD ALTA” 高きを望め、青山で

 説明会に参加して学習面で印象的だったのは、学校側が難関国立大学進学に非常に熱心だということです。

「皆さんが目指すのは難関国公立大学。早慶ではないですよ」

先のベテラン教師がこのような語り口で中学生に対して何度も繰り返す言葉の中から、青山高校の進学指導方針として、難関国公立大を目指すという明確な目標があることが伺えました。

この点は、教育委員会が重点校の認定基準として難関国公立大の現役合格数基準を定めている以上、他の重点校も含めた必然的な学校方針であると言えるでしょう。

早慶上理といった私立大学上位校進学を初めからゴールとして考えるのではなく、大学進学においても将来の可能性を広げるために、上位国公立を目指す。

学校がスローガンとして掲げる、

”AD ALTA”

青山での学びを通じて高きを望む姿勢を、教師も意識していることが伺えました。

青山高校の場合、実際には東大や国公立医学部のような最難関国公立大学への進学はそれほど簡単ではない実情があるとは思いますが、都心の高校にありがちな早々に早慶進学を目指す環境ではなく、あくまで都立の進学重点校なのだという点について改めて再認識するに至りました。

青春と受験倍率と

 青山高校を目指す受験生は、常に受検倍率との闘いになります。

青山通りでのキラキラした高校生活に憧れる反面、不合格という万が一の重たい現実と向かい合うことが求められるからです。

青山高校は、日比谷や戸山ほどの上位進学重点校ではないにせよ、それでも都心の進学校という立場から、安全をみてランクを落として受験する学力上位層と、学力相応の受験生、そしてどうしても都心の重点校に入学したいというチャレンジ層の厚き三層構造で入試が構成されているものと思います。

青山入試は男女とも毎年実質倍率が概ね2倍となる試験。

どちらも120~30人程度の合格者と不合格者が発生する、公立高校受験としてはなかなか厳しい入試です。

ただその代え難い学校環境には、やはり憧れる者を惹きつけてやまない都会の大人びた空気が流れる学校であることもまた事実です。

そんな都会の進学校に憧れる生徒にとっては、唯一無二の立地を持つ青山高校。東京ならではの特殊な香り漂う環境です。

来年度の入試は、どのような結果になるのでしょうか。そして男女合同枠の拡大は、男女どちらに有利となって現れるのでしょうか。

来春、改めてその結果に注目したいと思います。

ではまた次回。