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日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

日比谷高校第一志望ながら、日比谷、開成、塾高のどこに入学すべきか、都立合格発表まで悩んだ父親が贈る、上をめざす君と家族を応援する徒然日記

開成を辞退し、日比谷に進学する受験生は本当にいるのか?

 本日は中秋の名月。東京の夜空には幽かなおぼろ月。

さて今回は、日比谷高校を目指す男子の併願候補の一つ、私学の雄である開成高校の、少しネガティブな話題についてお伝えします。
ネット上では、開成高校の入学辞退者が増えているという情報を目にしますが、何の根拠も示されていません。本当なのでしょうか?

開成といえば、都立入試とは比較にならないほど膨大な受験勉強を経てせっかく合格した受験最難関校。それにもかかわらず、日比谷をはじめとする都立トップ校に進学する生徒はいるのでしょうか? 検証してみたいと思います。

 

日比谷には開成合格者は何人いるか?

 まず一つの事実として、わが子のクラスでは、お互い確認し合った中では少なくとも3人は開成高校合格者が在籍しているそうです。

日比谷男子は1クラス20人ですから、割合では15%ということになります。
案外多いという印象ではないでしょうか。
クラス編成時点では、学校は新入生の受験履歴を把握していませんから、意図的に特定のクラスに集めているということはありません。

そこで、ずいぶん大雑把な統計になりますが、これを1学年に適用してみると、

  男子20人x8クラスx15% = 24人

日比谷高校1学年男子160人の内、24人程度の開成高校合格者が在籍するという結果となります。

この結果がある程度確からしいと考えると、なかなか意味のある数字になります。
なぜならば、この状況は、平成28年度の入試制度改訂後、つまり、4教科内申点の比重がより大きく、また内申点に関係なく合否が決まる特別選考枠廃止後の状況です。

この点もネット上では、特別枠廃止後は内申点必須の影響により、都立トップ校に進学する学力最優秀層が減るという、根拠の曖昧な情報が流れています。
そういう意見のある中で1学年24人の開成合格者がいるというのは、そのそも開成の入学枠が100人ですから、定員のほぼ1/4の合格者、残念ながら不合格となった受験生も含めれば、いったいどれ程多くの開成受験者が内申点を苦にせず日比谷を第一志望にしていたことでしょうか。
本当にこんなに多くの合格者が入学してくるのでしょうか?

 

学習塾の客観的データを調べてみる

開成合格者の進路一覧

 今手元に、ある進学塾の成績上位者の合否判定および進学先を記載した実績一覧があります。上位クラスの学生の中から、ランダムに結果を抽出した平成27年度の資料です。
個人名は伏せてありますが、学習塾が保護者説明会用資料として配布した資料ですから、偽りのない正しい情報源とみていいでしょう。

一覧中、開成受験者は40人、合格者(補欠除く)は29人となります。
実際にはこの数字を大きく上回る合格実績を謳っている塾ですから、この資料はやはり無作為に抽出したものとみなせます。

さて、開成合格者29人の内、日比谷高校進学者は3人(10.3%)です。先ほどと同じように、この数字を日比谷高校の男子1学年に適用してみると、

  20人x8クラスx 10.3% ≒ 16人

約16人程度在席するということになります。

以上、限られた二つの統計からの推測ですが、実数に基づく考察結果であることから、日比谷高校には開成高校合格者が、男子の10~15%程度、1学年20人前後が入学するとみるのが妥当ではないでしょうか。

 

開成高校第一志望は案外少ないのか?

 ところで、先に参照した学習塾の合否一覧ですが、開成合格者29人全員の進学先がどうなっているか、全部確認してみましょう。

  1)開成 16人(55.2%)

  2)筑波大附属駒場 5人(17.2%)

  3)日比谷 3人(10.3%)

  4)西 2人(6.9%)

  5)筑波大附属 1人(3.5%)

  5)学芸大附属 1人(3.5%)

  5)慶應義塾 1人(3.5%)


開成高校入学者は合格者の約半数にとどまっています。
国立大附属高が7人(24.1%)、都立高が5人(17.2%)、私大附属高が1人(3.4%)となります。西高校へも進学しているんですね。
そしてこの表は、ごく限られた数字であるにも関わらず、現在の受験生の世相を反映するような示唆に富んでおり興味深いです。

さて大雑把に整理すると、開成合格者の約半数は、元々別の高校を第一志望にしている、つまり開成を併願校としてみている、ということになります。

これらの値を参考にして、実際の合格者の動向について考えてみましょう。

 
 

開成高校発表の合格実績をみる

 まずは開成高校のHPより、高校入試情報として公開されている数字を確認します。

<開成高校入試結果(繰上合格除く)

       H24    H25 H26 H27   H28

  合格者  174     166 185    200    194

  入学者  102  101    100    101    102 

  入学率 58.6%  60.8  54.1   50.5   52.6

となっています。

先ほどの進学塾のデータを裏付けるような入学率が並んでいますね。
ではこの合格実数に、先ほど調べた日比谷入学率を摘要してみましょう。
 

<開成合格者の日比谷進学推定値>

       H24 H25  H26 H27    H28

  合格者 174 166   185   200  194

  10.3%  18   17   19    20   19 

  15%  26  24     27   30   29

  中間値 22  20     23   25      24

ここでもやはり、20人程度という結果となりました。
統計の力恐るべしです。

 

さて、下の写真は平成28年度の開成高校の合格者掲示板です。
数えてみると、公表通りピッタリ194人の合格者ですので、学校が発表する平成28年度合格194人に、補欠や繰り上げ合格は含まないということが分かります。

2016年開成高校合格合格発表掲示板1

平成28年度開成合格発表掲示2

平成28年度開成高校合格者掲示板3
撮影:mommapapa

ただし、最終的に繰上げ合格者を出しているかどうかは、学校が公表していないので分かりません

ある大手進学塾の受験情報サイトでは、国私立各学校の過去の補欠・繰り上げ合格者について、独自に集計した数字を発表しています。これによると、開成高校は非公開としながらも、平成25年および26年度については、60~70人の繰り上げ合格を出していると、この塾では推測値を公表しています。27年度以降分は現在未発表です。

どのように集計しているかは分かりませんが、上場している社会的責任のある企業ですから、実際に繰り上げで合格した受験生について、かなり把握しているのでしょう。

そしてこの情報が正しいとすると、先ほどの開成高校が発表する一覧は、以下のように変わってしまいます。

<開成高校入試結果(繰上合格推定値含む)

        H25      H26  

  合格者 226~236人 245人~255人

  入学者  101人     100人 

  入学率 44.7~42.8% 40.8~39.2%

実に、入学率が4割に下がってしまいます

これが現実だとすると、ちょっとショッキングですね。
初めから、開成第一志望の方が少ないということになります。
どの学力層が入学を辞退しているかまでは分かりませんが、状況によっては進学校にとって深刻な問題です。どちらの数字が本当なのでしょうか?

一つ事実としていえることは、開成高校がホームページで自ら発表している通り、ここ数年は、入学定員100人に対して、初めから概ね2倍の合格者を出しているという事実です。
つまり、いずれにしても、正規合格者の半分は入学しないと、学校側が公に認めているということになります。



半世紀を経る価値観の変容

 ところで、現在のような状況に対して、開成高校側はどう感じているのでしょうか?

これはもちろん、学校側がコメントを公表している訳ではないので正しくは分かりませんが、本年度の開成高校合格者説明会に参加した印象としては、正直以下のように強く感じました

開成学園は、高校入学者の確保に対して、相当な危機感を感じている、と。

都立の結果によっては入学する可能性のある学校です。入学金を払い正式に入学許可証を手にした上での参加です。しかも私立の雄と言われる開成高校の、初めての学校側との対面ですから、どれほど将来に可能性のある話が聞けるのだろうと、本人でなくともやはり心が躍ります

しかし高ぶる期待とは裏腹に、説明会でのプレゼンは、入学後の学園生活を夢見るような心躍る内容とは言い難い、むしろ合格者を何とかつなぎとめようとする意図が見え隠れする、学校側の焦りが強く表れたものでした。
そしてまだ入学を保留している受験生や保護者の感情に対して配慮を欠くような対応もあり、同時に保留する者の多さにも圧倒され、正直予想しなかった驚きをもって帰ったのです。
その時の素直な驚きの意味は、機会があればいつかお話しできるかもしれません。
 

 さて、後日妻が知人の一人に、息子が開成へ進学せずに、日比谷へ入学したと話しをした際に、相手が絶叫して目の玉が飛び出す程驚かれたそうです。その方の中ではあり得ない価値観だったようです。

しかし歴史を振り返れば、現役高校生の親世代が生まれる前後、ちょうど50年前、学校群制度が導入される以前は、逆に日比谷を敬遠して開成を選択する日がやってくるなどとは、確かに誰にも想像できない時代だったのです。ゆく川の流れを絶えず見守る時の大きなうねりの中で、学校の体制や評価、そして社会そのものの価値観も少しずつ変わっていくのです。

そして現在では、都内の高校進学先として、日比谷をはじめとする都立高校を積極的に選択する事は、もはや景気の動向や収入とは関係なく、至極自然で全うな価観の一つであると思います。そしてそのために積極的に地元の公立中学の門を叩く。これも消去法ではない前向きな選択肢の一つでしょう。

もちろん、開成高校も国立附属の各高校も、どこも素晴らしい伝統を持つ名門校なのですから、最終的には、君自身の価値観や憧れで進学先を選択すればよいことです。

それぞれの学校がお互いに切磋琢磨しながら、受験生に多様な教育環境と選択肢を提供することができる状況は、社会にとっても望ましいことだと思うのです

現在の都立高校回帰の流れが、引き続き世代を越えて続いてゆくのか、あるいは社会の状況や時の為政者の影響により再び大きく変わってしまうのか今は誰にも分りませんが、都立高校が、学力上位の受験生の進学先として積極的に候補に挙がる現状は、社会基盤の充実という側面からみれば、大いに歓迎すべきことではないでしょうか

今回は開成高校の合格者の現状を垣間見ながら、都内の高校選択に係る価値観の変化についてお話ししました。
ところで、開成学園は現在の状況下においても、高校入試を継続して行っていくのでしょうか?もし打ち切るとすれば、それはいつなのでしょうか?
この点については、また別の機会にお話しします。

ではまた次回。

 

9月18日緊急追伸:

 何と今回の話題を掲載したわずか2日後に、本文章を裏付けるコメントを武内校長が自ら言及するNIKKEI STYLEの記事が出ました。

武内校長の話によると、学校側が把握している開成辞退者はおおよそ1学年15人ということで、当記事の統計に基づく検証通りの数字となっています。

ただし、日経の記者は開成合格者を、女子も含めた320人全体の割合として5%と表現していますので、注意が必要です。

 

11月16日追伸:

 週刊ダイヤモンド11/19号「最強の高校」によると、日比谷平成28年入学者の内、学校が把握する開成高校合格者は17人であると、武内校長自らが語っています。
従って、現在の1年生については、17/160=10.6%の開成合格者が在籍しているということで、ますます検証と一致しています。
統計の力って本当に侮れません。

 

 日比谷か開成か、小学生の保護者はどちらを選ぶのか?

 

それでも開成より日比谷を選ぶ理由