日比谷高校を志す君に贈る父の言葉

日比谷高校第一志望ながら、日比谷、開成、塾高のどこに入学すべきか、都立合格発表まで悩んだ父親が贈る、上をめざす君と家族を応援する徒然日記

東京大学現役合格へ歩む道

2019年度 東京大学合格発表

2019年度 東京大学合格発表

 長男が東京大学に合格しました。

このようなことを記載すると少々反感を買ってしまうかもしれませんが、高校受験では直前期の鬼の集中力で開成高校に合格した長男も、傍で見ている限りでは、大学受験に関してはそれほど大きな負荷もなく、淡々と東大に合格したような感じがします。

とはいっても、決して学力に余裕があったわけではなく、直前期最後の駿台模試では見事にE判定となり、家族で夕食を取りながら、

「イイねー、やるねー」

と冗談を言いながら笑い合っていました。

 

東京大学に合格すると感じた日

 愚息が東京大学に受かるだろうなと感じたのは、日比谷高校2年生の冬のことです。

日比谷に入学してからの2年間、塾にも行かず、通信添削を利用するでもなく、家ではスマホを触る日々が続き、学校の成績も悪くはないにしてもそこそこで、親としては心配する面も多々あり、スマホの扱いについて険悪になることも度々ありました。

そんな愚息が2年の冬に部活を引退した後は、誰に言われるまでもなく、カチッと音が鳴ったかのように受験モードに切り替わったのです。

あの鳴るはずのない音の響きは、不思議に今も耳の奥に残っています。

それからは毎日、帰宅して机に向かうという日々となりました。塾にも行きたいということで、英数国3教科+社会1科目を受講し、本格的な大学受験勉強が始まりました。

塾は東大二次の記述対策のために受講したようですが、大手の割に受講者が少なく有名講師を少人数で独占する形となるその塾では、麻布や開成といった他校の仲間ができ、講師ともコミュニケーションが生まれるなど、ある意味部活のような楽しみの場所となったようです。

そのような状況の中、ある日リビングで勉強する愚息の姿を目にした時、ああ、あの高校受験の彼が戻ってきたなと独り感じました。

その時点では、駿台模試の東大判定はせいぜいD判定がやっとだったものの、受験モードに入った息子を目にして、何故だか不思議と合格するなと思ったのです。

 

頑張りすぎない受験戦略

 受験に関し、愚息は他の誰から教わったものではない、ある意味独自の受験センスを身に着けていると感じます。

そこには公立中学の定期テストから高校受験、そして大学受験まで、様々な引き出しがあるようです。周囲の公立中学の保護者などから、アドバイスを求められることが度々あります。

一般的に難関校への合格の近道は、人より早い段階で先取り学習を進め、試験本番までの1年あるいは2年かけて、試験当日に出題される可能性のある、あらゆる種類の問題に対応できる力をつけるというものだと思います。

ところが大学入試に臨む長男は、そのやり方は無駄が多いと考えている節があります。あるいは、1年間で達成することが困難だと考えていたのかもしれません。

彼が取った戦略は、本人曰く、1年と少しの時間で東大に合格するために、最低合格点より少し高い点数で合格することに目標を絞った勉強法なのだということです。

二次本番5教科の中で、各教科できるだけ高い得点を狙うのではなく、どの科目で何問解けば合格できるかを予め見定めて、その得点を最低限獲得することを各教科の目標に掲げたのです。

それは、的を絞ってそれ以外はやらないという切り捨て方式とは異なるようで、詳細はよく分かりませんが、おそらくは時間と物量で全てを網羅する勉強法よりも、ずっとマネジメントが難しい種類のものだと思います。

とにかく、試験当日に合格する学力があればよいとの割り切りで、途中の模試の成績などはそれほど気にかけず、1年間を通してピリピリするでもなく、比較的リラックスしながらマイペースで受験に備えていったのです。

 

早稲田大学センター利用合格

 センター試験対策は、本番2週間前から行ったようです。

1科目に1週間かけて、1冊の参考書を仕上げるという短期決戦です。センター対策は基本的に学校の授業をベースに仕上げたそうです。その場ではうっとうしいはずの日比谷の全科目履修型授業も、センターが終わってみると逆に良かったと感じたよう。

本人の目標は、早稲田大学のセンター利用試験での合格点を取ることでした。

親から見てすごいなと思うのは、センターとはいえ1年間一度も取ったことのない高得点を本番できっちり積み上げて、結局は目標通り早稲田センター利用の合格を勝ち取ったことです。

結果、センター試験の東大判定は、受験開始後初めてB判定となったのです。

愚息が選択した効率的な勉強法は、時間とお金に余裕のある絨毯攻撃的な受験対策を長い間行ってきた多くの受験生の受験対策よりも、社会に出てから長い間役に立つノウハウではないかと感じます。

社会に出てからそのように、時間と労力を十分かけて試験に臨むというような機会はなかなかないからです。

初めて経験する大学入試であるにも関わらず、合格するための必要条件を始めに定め、それを達成するための進捗について、受験本番までに活用可能な時間から割り戻した日々の勉強を実行するという計画が、彼の体の中の感覚としてあるのだと思います。

高校受験ではどちらかというと、合格請負塾の神輿に乗って歩いた道を、大学受験では自ら考え組み立てた方法に基づいて、学校や塾をうまく利用しながら自分の足で歩くという方法を選んだのでした。

こうした、目標に対する計画を組み立てる能力は、合格請負塾の神輿にどっぷり漬かった受験生よりも合格確実性が低いものの、やはりこれからの長い人生においてこそ、発揮される力ではないかと思います。

 

直前期まさかのペースダウン

 今回の大学受験で妻と共に最も心配したのは、センター試験が終了した直後から、公立高校生であれば最も実力が伸びるはずの受験直前期にも関わらず、突然勉強のペースが落ちたことです。

本人曰く、一度集中して試験本番を迎えると、その後は気が抜けたようになってしまうのだそうです。実は高校受験の際も、あれほど集中力を発揮した開成高校受験の後、日比谷受験までの2週間ほどの間は、やはりそのような状態に陥ったそうです。

ただ今回は、センターから本番までの期間が1か月以上あるために、減速のマイナス効果が高いことが気になりました。

センター利用試験で第2志望に合格したことで、結果的に私立大学は1校も受験せず、受験対策さえ一切しないということになり、本来は二次試験に向けた万全の体制となるはずでしたが、むしろ毎日家の中でスマホをいじるダラダラ時間が増え、一応数時間程度は勉強するものの、外から見ると腑抜けのような状態に陥ったのでした。

親としては、センター試験後に、開成受験前のあの鬼の集中力を発揮する姿をずっと想像していただけに、そのギャップに焦りを覚えたのでした。

それまで1年以上、本人任せで口をはさむことがなかった私自身も、ついつい小言を口に出してしまうような状況になりました。あるいは明らかに、ちゃんと勉強しろよというような態度をとっていたのかもしれません。

「自分でもやらないといけないのは分かっているけどできない。できることしかやれないから」

そのようなセリフで、親から見ると本番直前期を無為に過ごしているように見えたのですが、本人は過ぎ行く時間の中で、残り何をすべきかを適宜予定を変更しながら、気持ちの整理も含めて調整していたのだと思います。

リラックスというよりは、伸びきったゴムのように過ごした直前期で一つだけ良かったと思うことは、毎晩10時過ぎには寝てしまい、体調がすこぶる万全なまま本番を迎えたことです。

 

勉強の仕方は人それぞれ

 われわれ保護者の中には、子の勉強する姿に対して、ステレオタイプなイメージがあるのかもしれません。例えば、先の受験直前期の最後の追い込みに対する、ねじり鉢巻きで頑張る姿などがそうです。

そうした親の中のイメージと、実際の子が目の前でさらけ出す姿にギャップがある時、親の中には何か不安というか、不満足や危機感というようなマイナスの感情が芽生え、自分のイメージと子の見せる行動を一致させようとする感情が芽生えるのではないでしょうか。

そして駄目だと分かりつつも、ついつい一言発してしまう。

そのような保護者に共通する状況の中、わが家の高校受験と大学受験を通して感じることは、勉強の仕方は人それぞれだということです。

例えば愚息の場合、面白いことに、静かな環境ではむしろ勉強できないという性質があるようです。

そのため高校受験の際には、常にタブレットでわざわざアニメを流しながら勉強していましたし、大学受験の際にも常に音楽を聴きながら勉強に向かっていました。

ですから図書館や自習室などは全く利用せず、常に自宅のリビングに学習場所を構え、母親が家事をしたり弟がゲームをする決して静かではない環境の中で、ずっと勉強していたのです。

ですから、もしわが子が、親の期待する姿や状態で勉強していなかったとしても、ある程度結果を出しているのであれば、それがその子の勉強のスタイルなのだと思うのが、保護者としても健全な心の持ちようではないかと思います。子は皆それぞれ自分のスタイルを模索しているのです。

 

本番当日の事件とその後の展開

 受験の神様は本当にイタズラ好きなようで、愚息の東大受験当日1日目の試験開始5分程前に、1本しか持っていなかったシャーペンが突然壊れたのだそうです。

その瞬間、珍しく手がブルブルと振るえ絶望を感じたそうですが、前に座っていた女子が4本もシャーペンを机に並べているのがたまたま目に入り、思い切って声をかけ、結果的に事なきを得たようです。 

大事な試験本番に、予備の筆記用具を持っていないのも呑気といば呑気、長男らしいといえばらしいのですが、一瞬の動揺も後を引かず、試験自体は淡々と進んだようです。

これまで散々足を引っ張ってきた数学も、難化と言われる状況の中で、1問はきっぱり捨て、4問中3問は完答でき、世界史の第1問、オスマン帝国の解体過程を述べる問題などは、簡単過ぎて逆に引っ掛けがあるのではないかと疑った程のようですので、神様もイタズラ好きの反面、長男を優しく見守っていたのかもしれません。

そして合格発表までの時間の長いこと長いこと。

合格発表当日の正午、ウェブ上で合格者番号を追うあの時の緊張感。

そして、見覚えのある受験番号を画面上に確認した際の喜び。

愚息が1年間、東大受験に向け座り続けたダイニングテーブル上のパソコンを家族で囲みながら、皆でその喜びの瞬間を共有したのでした。

その後家族4人で東大まで出かけ、掲示板の自分の受験番号と一緒に記念写真に収まりました。親としてもうれしく、そして誇らしいひと時です。


そしてその後、

愚息は高校受験でお世話になった大手学習塾から、早速スカウトされたのだそうです。

この4月、桜の花が駒場のキャンパスを彩る頃、日比谷高校を目指して学ぶ君の前で、わが家の長男は、塾の新任講師として教鞭を執っているのかもしれません。

親から見ると、彼は個別の科目を教える以上に、勉強への取組み方や合格への計画の組み立て方などをアドバイスする、受験コンサルのような役回りが向いているのではないかと感じます。

教えることにも興味があるのであれば、将来、一緒に教育について考える組織を立ち上げるのも面白いかなと感じています。

今回は、愚息の大学受験の概要をお知らせするために記載した内容であり、ここに書かれた受験勉強方針を推奨しているわけではありません。逆に、他の受験生が迂闊にマネをした場合には、最後に大火傷を負うことになるように思いますので、くれぐれも君自身の勉強の計画とスタイルで高校受験や大学受験に臨むことを期待しています。

ではまた次回。


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