狭小3階建のリビングを2階に設置すべき8つの理由

 都市部の限られた土地に戸建を建てる場合、4人家族が居住可能な面積を確保しようと思えば、必然的に3階建ての住宅となります。

この場合、ざっくり言うと各階の床面積(1階は建築面積)が10坪の合計30坪、1階は玄関やガレージなどの非居住空間が含まれますから、実際にはそれよりだいぶ小さな床面積となります。

リビングは何階に?

 3階建住宅を建築する場合に最初に決めるべきことは、リビングをどこに配置するか?ということになります。

具体的にはリビングを1階、2階、3階のどの階に設けるかということからスタートするわけですが、結論から言うと、子育て家族であれば2階にリビングを配置するプランをお勧めします。

実際、23区内の狭小敷地に3階建て注文住宅を建てて暮らすわが家は、その2階リビングの家に住んでいます。

2階リビングをお勧めする理由

 3階建の場合に、2階リビングをお勧めする積極的な理由は様々ありますが、そのメリットを直接お伝えするよりも、逆に2階以外にリビングを設置する場合のデメリットをお伝えする方が理由が分かりやすいと思いますので、先ずは1階、または3階にリビングを設定する場合の懸念事項についてお知らせします。

3階建の1階リビングのデメリット

  • リビングが暗く、寒くなりやすい
  • 1階床面積が狭く、キッチンと併設してゆとりある空間を作りにくい
  • 子どもの気配を感じにくい

都市部で3階建を建てる場合、多くの場合は狭小敷地上に隣家との間が民法上の最低寸法しかないような配置の家になると思います。

この場合、1階は上階よりも暗く、また寒くなりやすいのです。

ゆとりある土地の上に敢えて3階建を建てるのであれば別ですが、一般的なビジネスマン家庭の場合は建蔽率や容積率を最大限活用した狭小建物になると思います。

その場合、たとえリビングが南東方面に向いたとしても、1階であれば目隠しが必要な状況となり、それ以外の方角であればなおさらですが、結果的には明るく開放的で温かいリビングを実現するのは少し難しいということになります。

そしてそもそも、狭小3階であれば、1階にゆとりのリビングとキッチンを併設するというのも面積要件的になかなか現実には難しい話です。

もっとも、カフェやレストランのように、玄関から続くオープンリビングキッチンの場合、あるいはガレージハウス的に車を眺めながら住まう暮らしの場合には積極的に1階にリビングを配置する理由が生じることになるかもしれませんが、一般家庭であればそのような状況はあまりないということができるように思います。

3階建て3階リビングのデメリット

  • 3階まで日用品を上げる煩わしさ
  • 夏場の暑いリビングキッチン

3階建ての3階にリビングを設けるのは、主に景観を含めた明るく開放的な空間を求めてのことだと思います。

ところが3階は夏暑く、また食料品の詰まった買い物袋を持って上るのがなかなか大変です。そして現実的には、3階建てを建てる敷地での景観は、正面にある家屋の視線を含めてあまり過度な期待はできません。

更には給排水設備を3階まで上げるという地味な負担や、特に将来的な排水の漏れや詰まりへの懸念も見逃せません。キッチンの油汚れによる配管のつまりは、その時になって初めて気づくことですが、なかなか馬鹿にできません。

3階建建ての3階リビングキッチンは、明るく開放的な憧れ的なアイテムには違いありませんが、一般的なサラリーマン家庭が立てる物件であれば現実とのギャップが大きい計画と言えるかもしれません。

3階建ての2階リビング

 これまで確認してきたように、消去法的に3階建てのリビングの位置を選択してみると、2階にリビングキッチンを配置するのがベターではないかという結論に至ります。

実際2階リビングはかなり明るくかつ暑すぎず、隣家の視線も気にならないプランが可能となる他、玄関からのアプローチも確かに必ず階段を上る必要はありますが、それなりに現実的な選択肢となり得ます。

3階建て2階リビングのメリット

 そして何よりも2階リビングの良いと感じるところは、

  • 建物の中間階にパブリックスペースを設けることで、1階と3階の居室の緩やかな分離が可能なこと。

そして

  • どちらの階からもアプローチが1階層分で容易なこと

があります。

わが家は1階に夫婦の寝室、3階に子供部屋を配置していますが、食事やちょっとした活動は2階のリビングダイニングのテーブルに自然に人が集まる形となります。

子供たちの勉強も、2階のダイニングテーブル中心に行われています。

このため長男が東大入試に向けて続けた1年間の大学受験向けの勉強を、常に身近に感じながら生活していました。この程度勉強すれば東大に合格するのだな、と理解したものです。

そして現在は、次男の高校受験の勉強ぶりを日々眺めながら生活しています。

2階リビングから3階の子ども部屋へは、わが家の場合はいわゆるリビング階段となっているため、子供たちはリビングを通らなければ子供部屋に向かうことはできません。

このため子供たちは、毎日2階のキッチンで食事の準備をする母親の顔を無意識の内に視界に収めながら生活しているのです。

勿論設計上の計画次第ではありますが、2階リビングは様々なオプションや選択肢が可能となる扱いやすいプランのように思います。

子育てファミリーの2階リビング

 子育てファミリーにとっての2階リビングは、子供が小学中高学年になる頃から特にそのメリットを感じることになります。

先に記載した通り、

  • 子のリビング学習の場として機能しやすい

からです。

わが家も正に該当しますが、東大生など賢い子の育つ条件として、リビング学習を挙げる保護者や専門家の方は少なくありません。

これが自然な形で発生するのが、3階建ての2階リビングです。

それはちょうどシェアハウスのパブリックスペースのように、自然と家族が集う場として機能しやすいのです。

1階、または3階にリビングがある場合、3階または1階から2層分隔ててリビングやキッチンに向かうのは、想像しても少し負担がかかるものです。

その様に考えると、3階建ての2階リビングは、積極的にも消極的にも選択しやすい結果となって現れます。

もっとも、2階であっても買い物袋を持ち上がる負担やゴミを下階に運ぶストレスその他のデメリットがあることも確かです。3階リビングについても、ホームエレベーターなどの設備を導入することで、昇降の負荷から解放されるということもあるでしょう。

それでもわが家の暮らしの中では、狭い居住空間の中で子供部屋と夫婦の寝室を緩やかに仕切る緩衝帯としての役割も含めて、2階にリビングを設置したことへの満足感は非常に高いです。

2階建てを建てられる恵まれた地域や経済力をお持ちの方には、今回の内容は参考にならないことでしょう。それでもこれから都市部に狭小戸建を建て、賢く暮らそうと考えている子育て家族にとっては、お役に立つ情報になるのではないかと期待しています。

今回は、狭小3階建て住宅のリビングの配置について考えてみました。今後とも一つのテーマとして、都市部の住まいの在り方について発信したいと思います。

ではまた次回。