2020年度日比谷入試最前線予測

2020年2月23日更新:

 オリンピックイヤーとなる2020年度入試。

大学入試改革が揺れる中、高校入試は滞りなく本番を迎えます。昨年度自校作成問題の難化により合格点が下がった日比谷高校の今年の合格目標点が何点になるのか、受験生にとっては今一番気になる情報ではないでしょうか。

そこで今回は、直前に迫った2020年度入試について様々検証したいと思います。

ここでお知らせする情報は、あくまで個人が考える一つの参考値であり、受験生にとっては単なる気休めに過ぎないことを予めお断りしておきます。それでも何かにすがりたい気持ちの中では、その気休めこそが今一番必要な情報であるのかもしれません。

入試前のはやる心を落ち着かせるために、まずは過去からの客観的事実を確認してみましょう。 

日比谷【女子】受験倍率推移

日比谷高校倍率推移【女子】

 令和2年度入試の日比谷女子最終応募倍率は、平成29年以降の標準的な倍率となる2.05倍となりました。

例年の傾向でみると、合格実質倍率は1.65~1.70程度になるものと考えられます。

ただし今年度は、学芸大附属高校が入学手続きの際に「入学確約書」の提出を義務付けましたので、場合によっては例年よりも受験者数そのものが減る可能性はありますが、実際のところは結果が出てみなければ誰にも分かりません。


日比谷【男子】受験倍率推移

日比谷高校倍率推移【男子】

 男子の応募倍率は、過去9年間の中で最も低い2.24倍となりました。

これに伴い実質的な合格倍率は、1.6倍前後になることが予測されます。女子と同じく学芸大附属を取り巻く状況によっては1.6倍を割ることも考えられます。

ただし受験倍率が下がる場合でも、日比谷第一志望のガチ勢の数はそれほど変わらないものと考えられますので、結局のところ、例年通り厳しい合格点争いであることに変わりはないといえるでしょう。

この点は、受験制度が変更となった平成28年度から男子の倍率が急激に下がったにも関わらず、入試難易度はむしろ上昇している点から見ても明らかではないかと思います。

男子も女子も、応募倍率や受験倍率は気休めのものであって、気にすべきは自分が合格点を上回ることができるかどうかということだと思います。

男女とも実質的な合格倍率は2倍を下回ることはまず確実だと思われますので、例年の平均に近い内申点、つまり男子で概ね42、女子で43を確保している受験生であれば、入試本番で受験者平均点を獲得することが最低目標ということになります。

 

2020年自校作成問題の難易度

 ではここからは、いよいよ具体的な入試目標点について考えてみたいと思います。

まず最初に認識すべき点は、重点校共通のグループ作成問題時代に上昇した平均点が、完全な自校作成問題に戻った2018年度入試から下降傾向にあるということです。

日比谷高校 3科目入試平均点推移

これはなかなか興味深い資料です。

グループ作成問題が行われていた2017年までの数年間に、日比谷高校受験生の学力レベルが明らかに上昇していることを示しているとともに、自校作成問題復活以降は、英数国3教科の入試問題レベルを上げることで平均点を落ち着かせ、適正な入試環境の確保を試みたという学校側の努力の跡が理解できるからです。

内申点の影響を極力排除し一般入試では適正学力の生徒を獲得したいという学校側の明確なメッセージが示されており、得点を見る限りでは、学校側の意図する成果が得られているように感じます。

今年注目すべきは、英数国の難易度がどの程度まで上がるのかということです。

個人的には、2019年度の入試難易度が継続するのではないかと考えています。

何故ならば、2019年度入試における自校作成3教科の受験者平均点は、男子56.3点、女子53.4点となり、平均点が50~60点の間に納まるという、概ね学校側が求める水準に近いと考えられるからです。

3教科平均点が50点を割るような結果になると、逆に点差が付きにくい状況が発生するため、むしろ学力よりも内申点の影響が増しかねません。ですから試験のレベルは概ね維持されるだろうと考えられます。

ただし油断ならないのは、仮に入試難易度が同程度だったとした場合でも、受験者全体のレベルが上がっている場合には平均点が上昇するという点です。本年度の出願倍率が下がっている状況を鑑みれば、残った受験生の平均レベルは上がっているということは十分考えられます。

また逆に、学校側が受験生のレベルの上昇を予め考慮して、難易度を少し上げてくるということも考えられなくはありません。

いずれにしても総合的に考えると、自校作成3教科の平均点は50点台に落ち着くのではないでしょうか。具体的には、男子で170点、女子で163点程度ではないかと思います。

尚、私自身は教育者でも受験評論家でもないため、あくまで学力の高い生徒獲得を目的とした場合の事業合理性の観点から評価を下している点をお断りしておきます。

 

理社共通問題と5科目平均点

 自校作成3教科については、平均点が極端に上がることも下がることもないと想定していますが、共通問題の理科社会については予測がつき難い状況です。

昨年度は社会において、出題傾向が変わり難易度が急上昇しました。

その結果、日比谷受験生平均で見ても、男子で昨対比マイナス8.3点の81.2点、女子では10.3点も下がる76.3点という結果となりました。

日比谷受験の観点から見るとこの状況はむしろ望ましいと考えられますが、都立受験生全体の社会平均点は52.7点となり、45点未満の受験生の割合が増加する結果となりましたから、都教育委員会としては徒に難易度を上げるわけにもいきません。

おそらくは大学共通テストをにらんだ出題傾向の変更だと思いますので、教育委員会の担当者は昨年の状況を維持したい、あるいは今年は理科も出題傾向を変えようと考えているように思いますが、昨年の結果を受けた都民からの意見によっては元のレベルに戻るかも知れません。

いずれにしても一般的に言われる通り、理社は満点を目指し、難易度に関わらず最低でも90点以上を獲得することが求められるでしょう。

結果的に、5教科の受験者平均点は2019年並みの女子で344点、男子で330点程度ではないかと考えていますが、受験者減少による平均レベルの上昇と社会科の易化が重なるような場合には、自校作成問題がリスタートした2018年入試程度の得点に戻すかもしれません。

日比谷高校 5教科入試平均点【女子】

日比谷高校 5教科入試平均点【男子】

試験問題を開いた瞬間、骨があると感じた場合は2019年平均点並み、易しいと感じた場合には2018年並みというところではないでしょうか。

 

合格への入試目標点

 これまで確認した結果を踏まえ、2020年度の合格目標点について考えます。

学力試験の平均点は先に示した男子344点、女子330点、素内申平均点は自校作成問題となった2018年以降の平均的な値を採用します。

例年の検証ですので細かい説明は省いて結果だけお伝えします。ここに書かれた用語や数字の意味が分からない方は、過去の解説記事をご覧ください。

結果は次の通りとなります。

2020年度 日比谷高校想定換算平均点

合格倍率が2倍を下回る程度の日比谷高校入試においては、平均点付近に合格ボーダーが存在するということになります。

実際に、令和元年度の日比谷高校学校見学会では、平均点付近が合否の分かれ目という発言が学校側からありましたので、内申点も含めた平均値を頼りに想定合格ボーダーを設定するという手法はそれなりに意味のある数字ということになります。

従って、総得点の中間値である男子760点、女子745点が2020年度の想定合格ボーダーとなり、男女それぞれこの得点を上回ることが最低目標となります。

ですから先に見た得点の上振れも含めて、780点の確保を目標に最後の追い込みにかかればよいのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、私自身は教育者でも受験評論家でもありませんし、実際の得点はフタを開けてみなければ分かりませんが、受験直前の心を落ち着かせるという意味での想定目標としては十分な数字ではないかと思います。

合格ボーダーを確保する試験得点 

 では次に、先に見た合格ボーダーを確保するための内申点別の試験当日の得点を考えます。こちらも毎年の検証ですので、結果のみを掲示します。

では男女それぞれについて確認しましょう。

日比谷試験最低目標点【女子】

女子の場合で一覧の見方を説明します。

自分の内申点の内、5教科内申点をヨコ、4教科内申点をタテに選んで交わった点数が、女子目標745点に到達するために試験当日に獲得すべき最低点となります。

例えば、5教科内申23、4教科実技内申17の素内申40の女子受験生であれば、当日の試験500点満点中345点を獲得すれば、総合得点で745点を超えるということになります。

この生徒が理社2科目で180点を取った場合、英数国で165点、つまり3教科平均55点を取れば想定合格圏に到達するということです。万一数学でつまずいて38点だったとしても、国語と英語で127点を超えればまだまだ合格圏内ということになります。

5教科平均80点となる400点以上の得点は背景を黄色としています。こうして一覧を眺めてみると、学力が高い女子の場合は内申点に関わらず、当日の試験でいくらでも逆転が可能なようにも見受けられます。

特に平均点の低調な数学が得意なリケジョにとって、日比谷高校入試は追い風となる試験ということができるでしょう。

次は男子760点の場合の一覧です。

2020年度 日比谷試験最低目標点【男子】

こちらも当日の試験で8割近い点数を確保すれば、内申30点前半でも合格圏に滑り込むことは可能となります。

理社で180点を確保した場合、残り220点、つまり3教科平均74点で400点に到達しますから、自校作成問題とはいえ、学力上位の男子にとってはそれほど難しい要求ではなさそうです。

内申点が低く学力上位の生徒にとっては、合格点が下がるほど、つまり試験の難易度が高いほど、逆転合格の可能性が高まるということが直感的に理解できると思います。

最後に、平均点が上振れした場合の最低獲得点として、平均780点の一覧を掲載します。

2020年度 日比谷試験獲得目標点

3つの一覧を比較すれば、受験者平均点が上がるほど、8割400点のエリアが増加することが一見して理解できます。

日比谷高校が自校作成問題の難易度を高く維持しようとするのは、正にこのような可視化した合格点の動きをみれば分かるというものです。

試験の難易度が適切に難しい範囲にある限りにおいては、内申点の影響を極力抑えながら、試験次第で逆転が期待できる環境を実現することが可能となるからです。

2020年度日比谷入試は、実際にはどのような難易度と平均点に落ち着くのでしょうか。そして大学共通テストの実施を翌年に控えた理社の共通問題は、どのような傾向となるのでしょうか。

学校や教育委員会のメッセージが込められた、興味深い入試となりそうです。

ではまた次回。

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