2020年3月1日更新:
新型コロナウィルスに世界が揺れる中、2020年度都立高校入試が終了しました。
日比谷高校入試に関しては、学校ホームページで早々に受験者情報が公開されていますので、現時点での限られた情報を頼りに、本年度の入試状況について考察したいと思います。
男子の実質倍率は1.5倍割れ
本年度の日比谷入試でまず注目すべきは、男子受験者の動向です。
本年度の男子受験者数は、平成23年からの直近10年間で最低数となりました。
募集人員は昨年マイナス1名の132人ですが、男女で5人欠員となった2019年度入試の結果を踏まえ、今年は二次募集を行わないために合格数を増加させる可能性が高いと考えらえれます。
仮に、昨年度合格数142人プラス5人の147人の合格者を出すと仮定した場合には、実質的な合格倍率は1.5倍を下回る1.45倍ということになります。
この数字を合格者と不合格者で表すと以下のグラフとなります。
1.5倍ということは、不合格となるのは3人に1人ですから、今年は例年と比較して不合格者が少ない年になると思われます。
ですから、当日の試験の出来が悪くて現在落ち込んでいる男子受験生も、まだまだ諦めるのは早いかもしれません。1.5倍であれば、合格ボーダーは平均点よりも低い点数に落ち着く可能性があるからです。
不合格者減少の影響
ところで合格数と不合格数に注目してみると、入試制度が変わった平成28年度以降の動向が劇的に変化していることが改めて理解できます。
受験者が減り、合格倍率も下がるということは、一見進学校にとってはネガティブな状況のように感じるかもしれませんが、保護者としては現状は平成27年度までの状況よりもむしろ望ましいのではないかと感じます。
理由は徒に不合格者が出ない制度に代わったということができるからです。
平成23年から27年までの不合格者数の平均は163人、平成28年以降は102人ですから、毎年60人近い不合格者が減っていることになります。
都立は基本的に1校しか受験できませんから、この60人は過去には併願の私立高校に入学していたのだと思いますが、現在は都立の2番手3番手校に入学し、都立高校全体の学力層の厚みを増す結果にもつながっていると思われます。
自校作成問題により試験自体の難易度が上がっていることから、内申点が高い割に学力には自信のない男子受験生が回避していると考えられます。
また最初のグラフから、入試欠席者自体も27年度までよりも相対的に減っていることがうかがえますから、受験生が私立や国立に流れているということでもなさそうです。
報道を見る限り、現在ではむしろ学力上位の高校受験生の支持が日比谷に集中しているというのが一般の評価です。
私立進学校の立場から見ると、従来は私立が第一志望だった受験生が都立志向に傾いた上に、日比谷を不合格となるような真面目な学力上位層も減るという状況も重なり、高校受験枠自体の魅力が薄れていると感じることでしょう。
これまで良好な漁場だった海から、いつの間にか魚がいなくなってしまったという感覚に近いのかもしれません。
逆に見ると、昨今の私立高校の高校受験枠の削減の理由は、日比谷高校男子の不合格者数の減少が象徴的に表しているということが言えるのではないでしょうか。
女子の実質倍率は1.6倍
女子については、男子ほど顕著な変化は見られません。
ここ10年の日比谷女子の受験環境は、男子と比較して入試制度の変更にも大きな影響を受けずに推移しています。
ただし、女子の場合も昨年の二次募集の結果から合格者数を増やしてくる可能性がありますので、仮に、昨年度合格数128人プラス4人の132人の合格者を出すと仮定した場合には、実質的な合格倍率は1.61倍となり、直近5年の中では最低となります。
その場合の不合格者数は以下の通りとなります。
男子ほどではないにしても、女子も例年よりは不合格者の少ない年になりそうです。
ですから男子受験生同様、本番の出来が悪い場合でも、合格発表の掲示板を見るまでは、まだ望みを捨てるのは早いのではないでしょうか。
理科共通問題の難化
理社に関しては事前に予想した通り、昨年の社会に続いて今年は理科も問題傾向が変わり、だいぶ難化したようです。
SAPIX中学部の講評によると、理科は問題文の理解が前提となる設問が増加し難化が進んでいます。
このため日比谷受験生の理科平均点も、昨年の社会同様に前年より10点近く下がる80点前半に落ち着くかもしれません。
社会は2019年度の難易度を維持したままのようですので、教育委員会は学習指導要領の改定や大学共通テストに向けた入試改革の意思を貫いているようです。
ただし、社会は昨年既に新傾向の設問が明らかとなったことから、受験生の対策が進んでいると考えると、日比谷の平均点に関しては若干上がるのではないかと感じます。
自校作成3教科の難化
自校作成問題となる英数国に関しては、女子の平均点が50点を下回る数学は予想通り昨年並みのレベルが維持されましたが、英語と国語に関しては更に難化したようです。
受験生のレベルの上昇を見越してか、あるいは従来よりも更に内申点の影響を排除して学力の高い受験生を獲得するためか、いずれにしても骨のある問題となったようです。
特に英語に関しては、よりスピードが求められる結果となりました。
英語は日比谷名物となりつつある最後のイラスト問題に象徴されるように、引き続き自ら考える力と記述力が必要なことに変わりがありませんが、今年は国語についても記述力がより求められる結果となりました。
この結果、3教科共に昨年の数学に近い50点前半の平均点に近づくのではないでしょうか。
当日の出来が悪いと感じた受験生も、不合格者の減少だけでなく、難易度の点からもまだまだ悲観するのは早すぎるといえそうです。
2020平均点と合格ボーダー
ここから先は、上記の結果に基づく個人的な講評となります。
試験の結果、毎日を悲観的に過ごす受験生が多いと思われますので、多少の気休めになればとの思いで合格ボーダーを検討してみたいと思います。
もちろんここで示した点数が正しいわけではありませんが、昨年の合格点よりは明らかに下がると思われますので、その点を認識するための参考情報とお考え下さい。
ではまず想定平均点です。
2019年と比較して、英語、国語、理科は平均点が下がり、数学は同程度、社会は若干戻すとしました。
英語と国語は例年であればもう少し点数が下がるようにも思いますが、受験者減少の内訳について平均点を押し下げる学力下位層が多いと想定し、結果的に極端に大きくは下がらないと判断しました。
その結果、5教科合計は男子で333点、女子で318点程度となります。
次に合格ボーダーの想定ですが、内申点は昨年並みとしてみた場合の1000点換算平均点は以下の通りです。
受検者全体の平均点は、男子745点、女子729点程度になるものと考えられます。
例年であればこの数字が合格ボーダーに近いと思いますが、今年は倍率が下がっていることから、実際の合格点は平均点よりも少し下になりそうです。
ただし、平均点前後には1点刻みで受験生の集団が固まっていますから、極端に平均点からボーダーが下がるということはないと思います。
ここでは男子743点、女子728点を2020年度の想定合格ボーダーとして考えますが、いかがでしょうか。実際にはまだ下がる可能性はあると感じます。
実際の平均点や合格点はまだ誰にも分かりませんが、本年度の日比谷入試では、昨年の合格点を大きく下回ることだけは確かです。ですからまだまだ望みは捨てない。
ですから試験の後に毎日悲観に暮れる君も、合格発表にはしっかりと足を運んで、良くも悪くも、自らの努力の結果をしっかりと確かめることが次の一歩をしっかりと踏み出す力になるように思います。
実際の合格点はどのあたりとなるのでしょうか。春の学校説明会が待たれます。
ではまた次回。
日比谷高校二次募集はなぜ生じたか
合格と不合格それぞれの道
2018年入学の日比谷の先輩の学力