2023年、東京学芸大附属高校の現在地

 一定以上の学力を持つ都立高校受験生にとって、国立大附属高校受験は有力な併願オプションです。

その中でも一般生の受け入れ枠が多い東京学芸大附属高校は、例年都立高校入試を超える非常に多くの受験生が受験することとなります。

令和5年2023年度入試はどのような内容で実施されるのか、次男の高校受験の情報収集の一環として秋の学校説明会に参加しましたので、入試制度と合わせて同校の現在地について報告したいと思います。

入試日程の変更

 2017年度入試以降、毎年小さくはない入試制度の変更が継続している同校ですが、2023年度入試においても確かな変更が見られます。

主な変更点は以下の通りです。

  • 入試スケジュール変更
  • 帰国生入試の面接廃止

入試スケジュールの変更

 説明会の中では触れられることがありませんでしたが、10月1日に公表された入試要項を確認すると、来年度入試における日程変更が明らかとなります。

2017-23年東京学芸大附属高校入試スケジュール

2023年度入試では、合格発表日が2月16日に1日前倒しされます。

それに伴い、入学手続き日や繰上げ合格日も1日ずつ前倒しとなります。

この点は地味ながら、これまで不変であった日程の変更であることから、明確な意図を持った対応だと考えられます。

ちなみに他の国立大学附属高校について、入試日は2月13日で全校統一ですが、合格発表日は各校により異なる状況となっています。

  • 筑波大附属駒場 2月15日(2022年度)
  • 筑波大附属 2月16日
  • お茶の水大附属 2月16日

こうしてみると、学芸大附属高校はこれまでは2月17日という独自の合格発表日を設定していたということになりますが、本年度は他校に追従する日程となります。

合格発表日を1日繰り上げるということは、2月13日の入試日を除いて3日間で採点・評価していた学力テストを2日間で仕上げるということですから、教員にとっての負荷は小さくないはずです。

令和4年2022年受験者数
  • 筑波大附属駒場:142人 ⇒2/15合格発表
  • 筑波大附属  :549人 ⇒2/16合格発表
  • 東京学芸大附属:825人 ⇒2/17合格発表

2022年度入試における実際の受験者数と合格発表日を並べてみると、学芸大附属の発表日が2月17日であることは、受験生の数から見て非常に合理的であるように感じます。

この状況で採点日を1日削るという判断ですから、来年度の答案採点と合格者決定スキームは、教職員にとって時間との闘いになるようにも思います。

今回の変更の意図がどこにあるのか勿論正確なことは分かりませんが、とにかく明確な意図と覚悟を持った制度変更であると言えそうです。

いずれにしても同校は、2017年入試以降、2年として同じ運用ルールでの入試を行った実績がないことから、最適な入試運用方法についてまだまだ手探りの状況が続いているのだなと感じます。

当事者である受験生の親としては、どのような日程であれ、同校自身にとっても高校受験生にとっても、必要以上に負荷のない安定した受験体制が早く確立することを願います。

帰国生受験、面接廃止の意味

 そして2023年度入試で最も大きな変更と言えるのが、帰国生入試における面接の廃止ではないでしょうか。

帰国生入試は毎年5,60人程度が受ける入試ですから、実際の影響人数は多くはないとはいえ、入試の質的変化は劇的に大きなものだと考えられます。

先の2017年度一般入試スケジュールをご覧いただくと分かる通り、実は同校は5年ほど前までは、一般入試の学力試験合格者に対しても、全員面接を行う2段階選抜を実施していましたが、来年度はついに、全ての面接が廃止されることとなります。

小さくはない労力を負ってまで面接試験を行うことは、教育機関にとっては譲れない大きな意味があってのことだと思いますので、逆にこれを完全に廃止するということの意味もまた、大きいものではないかと思います。

そして面接の廃止により、帰国生受験の入試スケジュールにも一部変更があります。

2023年度帰国生入試(カッコ内は2022年)
  • 学力試験:2月13日(2月13日)
  • 面  接: 廃 止 (2月14日)
  • 合格発表:2月16日(2月17日)

そしてこれを見た瞬間私は、

「そうか、分かった」

と金田一耕助ばりに叫びそうになりました。(古くてごめんなさい)

そうだ、2023年度入試の合格発表の前倒しは、この帰国生面接の廃止とバーターだったのだと。

それなら確かに、教職員の負荷を増やすことなく1日合格発表を前倒しできる。

そうか、そうだったのだと明快な謎解きに納得しつつも、直後からある疑問が浮かびます。それは次のようなものです。

  • 合格発表を前倒しするために、帰国生面接を廃止したのか
  • 帰国生面接を廃止した結果、合格発表を前倒ししたのか

というものです。

この二つは入試制度としての結果は同じであれ、教育機関としての意図や意味は全く異なります。

前者であれば、面接のような重要な入試選抜情報を削ってまで成し遂げるべき、おそらくは入試制度安定化に向けた切り札として、学校側が何某かの確信を掴んだということになるでしょう。

後者であれば、学校として求める生徒像の大転換、結果的には人物本位から学力本位への移行ということになるでしょうか。

面接の廃止について、説明会で触れた時間はほんの一言、わずか数秒ですが、実際はここに大きな学校の変化が現れているように思います。今思えばそこに込められた意図こそ説明してほしかったと感じます。

面接の廃止によって結果的に学力試験のみとなるため、もしかすると帰国生に対して、今後の大学合格実績を牽引する学生を求めているのでしょうか?

正確なところは勿論外部には分かりません。 

学芸大附属高校の行方

 数年前の説明会では、それなりの時間を使って説明していた大学合格実績も、今年は「後で読んでください」という程度でほとんど触れることはありませんでした。

逆にプレゼンの最後に、いじめに対する取り組みの言及がわざわざあり、少し違和感を覚えました。

個人的には、いじめへの学校側の取り組み説明は、そろそろ止めていいんじゃないかと感じました。

もしかするとそこには、高校からの入学者が安心して学校に馴染める環境があるという点をアピールしたい意図があるのかもしれません。もしそうだとしたら、それはむしろ逆効果に近いので、別の方法にした方がよいだろうと感じます。

今回説明会に参加して気づいたことは、学芸大附属高校は、入試制度も含めてまだまだ大きな変化の過渡期にある学校だということです。

その変化が、単なる進学校として大学合格実績の向上を目指すのではなく、校長がアピールする本質的な学びを行うための教育機関に向けた変化であってほしいと思います。

そういう意味では、帰国生に対する面接の廃止に関しては一抹の不安を覚えつつも、今の時点では、新しい学校の在り方に向けた前向きな取組であると考えたいと思います。

学芸大附属高校の2023年度入試はどのように行われるのでしょうか。

当事者の一人となるかもしれない保護者として、混乱のない落ち着いた入試選抜が行われることを願って止みません。

ではまた次回。