集団討論なし!2021年度都立推薦入試

推薦入試面接

 新型コロナの影響により、2021年度都立高校入試では、推薦入試における「集団討論」を実施しないことが発表されています。

20年度都立推薦入試では、集団討論を実施した高校は160校もありますので、入試への影響は小さくはないように思います。

 

集団討論の目的

 そもそも都立推薦入試で集団討論を実施する理由は何でしょう?

令和3年度入試検討委員会報告書によると以下の通りです。 

集団討論の目的

 与えられたテーマについて自分の考えを明確に述べることができるか、受検者が協力して一つのテーマに関して論理的に討論を行い妥当な結論を導くことができるかなどを確認することを通して、個人面接では把握しにくい、受検者のコミュニケーション能力、思考力・判断力・表現力、積極性及び協調性、バランス感覚や傾聴力などを評価する。 

出典:R3都立入試検討委員会報告書

参考までに、日比谷高校の集団討論の目的は以下の通りとなります。

  • 出願の動機・進路実現に向けた意欲
  • リーダーシップ・協調性
  • コミュニケーション能力
  • 思考力・判断力・表現力
出典:日比谷高校ホームページ

この二つの目的を照らし合わせてみると、間接的にですが、個人面接の目的が「出願の動機、進路実現に向けた意欲」の確認に力点があるように読み取れます。

この点は確かにそうであることが、日比谷高校のホームページのQ&Aに以下のように記載されています。

集団討論と個人面接に共通な「評価の観点」は、「①リーダーシップ・協調性」「②コミュニケーション能力」「③思考力・判断力・表現力」の3つです。

集団討論では、面接委員からの求めに応じて自分の考えや意見を述べる場面があります。その際、受検者が、自分の頭で考え、それを自分の言葉で表現する力をみていきます。同時に、周囲の考えや意見に耳を傾け、それに対する自分の判断や意見を伝える力もみていきます。

更に個人面接では「④出願の動機・進路実現に向けた意欲」が評価の観点として加わります。面接委員からの質問に対して、質問を理解し、それに対応した自分の考えなどをわかりやすく伝える力をみていきます。同時に、本校を選択した理由や将来を見通してどのように努力してきたか、していくかといった受検者の意欲をみていきます。

個人面接においてのみ測ることができる個人の資質とは、出願動機や進路実現意欲であることが明記されています。 

 

集団討論の実施内容

 実際の集団討論では、概ね30分程度の時間が割り当てられます。  

R2年度都立推薦入試・集団討論人数と時間

R2年度都立推薦入試・集団討論人数と時間

この表は令和2年度、2020年度の集団面接の実施160校の状況を示した一覧となります。

日比谷高校の場合は、赤で囲った運用方式、受験生5人の場合は25分、6人の場合は30分と学校ホームページQ&Aに明記されています。

単純計算ですが一人当たり5分程度の集団の中での発言機会が振り分けられていることになりますから、確かにリーダーシップや協調性、他者の発言に対応する瞬発的な思考力・判断力などを確認するためには特に有効な機会となりそうです。

来年度入試ではこの時間が無くなることで、選抜判断への影響は必至ですが、リーダーシップや協調性という観点をどのように代替させるのか、あるいは代替はせずに個人面接の中で観測することができる評価点のみを拠り所として個人の資質を判断するのか、そのあたりの具体的な対応について気になるところです。

 

個人面接はどう変わるか

 21年度推薦入試における注目点は、集団討論の中止を受けて個人面接の在り方が変わるのかという点です。

具体的には、面接時間が長くなるのか、質問事項に変化が生じるのかといった点が受験生の気になるところだと思います。

配点については、そもそも集団討論と個人面接は一体の評価として実施されているため変わることはありませんが、リーダーシップや協調性をより的確に推し量るためにプラスアルファの何か、例えば集団討論に代わるような質問などが新たに課せられるのかという点は知りたいところです。

【Q7】個人面接の時間は、どれくらいですか。
【A7】入室・退室時間を含めて約10分を予定しています。

出典:日比谷高校ホームページ

日比谷高校の場合、個人面接が例えば先の集団討論の一人分の単純持ち時間5分を加えて15分になるのかどうか、追加した5分にリーダーシップや協調性を確認するような質問があるのかということです。

日比谷では、10/3と11/7に秋の学校説明会が行われました。

私自身は参加していないので説明会の内容を把握してませんが、11/7は10/3と同内容と説明会募集ページに明記されており、10/3の時点では都立高校の募集要項は発表されていませんから、基本的に入試に関する決定済みの運用方法の発表はなかったものと思います。

(個人面接の時間が延びるのか10分のまま変わらないのか、秋の説明会で言及があった場合はどなたかお知らせいただくと助かります)

【Q10】推薦に基づく選抜は2日間で行うのですか。
【A10】いいえ、1日で行う予定です。受検者の負担減や本校在校生への指導(授業確保や進学指導)といったことを考え、1日で行う予定にしています。

出典:日比谷高校ホームページ

集団討論がある場合でも、推薦入試は一日限りで実施されていましたから、入試に対して最大限の努力を払う日比谷の場合、集団討論分の時間を面接に回す可能性が高いのではないかと感じます。

ただし、そもそもが新型コロナ感染症予防のための変則的措置なのですから、感染可能性を最小限に抑えるために、面接時間は延ばさないという可能性も否定できません。

あるいは個人面接だけであれば、感染症予防の観点から換気や消毒の徹底ということで、面接を連続しては行わず、時間をあけながら二日間にわたって実施するということも可能性としてはあるかもしれません。

この辺りは各校正式な学校の発表が待たれます。

 

推薦入試希望者は増えるか?

 都立全体の一般論として、2021年度は都立推薦入試を希望する受験生は増えると思います。

理由は少なくとも3点はあるかと感じます。

  • 金銭的な不安から都立に確実に入りたいと考える家庭が増える。
  • 模試等が十分行われず自分の学力や学習到達度の立ち位置が見えにくい中で、学力に依らない入試方法として魅力的に映る。
  • 集団討論が行われないことで、ディベート的な場を苦手として推薦を敬遠してきた生徒が希望する可能性が高まる。

希望者が増えたとしても、推薦の場合は文字通り学校長の推薦が必要であることから、最終的な受験者数は変わらないかもしれません。ただ推薦を希望する潜在的な受験者は増えると思います。

そういう意味では、来年度の推薦入試は、憧れの志望校へのチャレンジの機会というよりは、内申点と照らし合わせた場合の合格確実性の高い現実的な学校を選択する生徒の割合が増えるのではないかと考えます。

 

集団討論に代わる備え

 集団討論が実施されないことにより、学校側も受験者個人の資質が測りにくい状況に見舞われます。

これを打開するために、先に記載した通り一人当たりの面接時間を5分程度伸ばしたり、志望動機や入学後のやる気を確認する質問以外にも、集団討論でのテーマとなるような社会的な課題や時事問題に対する個人の考えを問うような質問が投げかけられるかもしれません。

デジタル化したらよいと思うものは何か、感染症対策と経済どちらを優先すべきかなど、躊躇せず明確に自分の意見を述べることができるよう、主だった社会テーマについては予め自分の意見を整理しておくことが望まれます。

面接で大切なことは、テーマに対する個人の考えの是非ではなく、あくまでも冒頭に掲げた4つの観点の確認なのですから、明確に自分の考えを述べるとともに、そう考えるに至った理由を相手に分かりやすく簡潔に述べる練習はする必要があるだろうと思います。

リーダーシップを推し量るという観点では、個人の考えを述べるというよりは、例えば自分が東京都知事だったらどういう判断を下すかといった視点で答えを出すということが、感情を挟まずに問題を客観的に捉える上でも、よい方法であるのかもしれません。

各校の集団討論テーマは、学校や教育委員会ホームページに掲載されていますから、どのようなテーマが出されるのかについて、予め把握する必要があるでしょう。

令和3年、2021年度推薦入試はどのように行われるのでしょうか。

学校にとっても受験生にとっても、例年とは異なる不安の中で行われることに間違いはなさそうです。

新しい日常の中で志望校合格に向けて真摯に取り組む受験生を、陰ながら応援しています。

ではまた次回。

先の見えない不安の中で

受験勉強の成果を試したい気持ち

大部分の受験生が不合格となる現実